米核態勢見直し要約(全訳)

2018.07.09

序論

2017年1月27日、ドナルド・トランプ大統領はジェームズ・マティス国防長官に、新しい核態勢見直し(NPR)の開始を指示した。大統領は、米国、同盟国、パートナー国の防護が最優先課題であることを明確にした。さらに、大統領は、長期的な目標としての核兵器の廃絶と、世界から慎重に核兵器が除去されるときが来るまで、安全で安心な、近代的、柔軟かつ弾力性のある核能力を米国が有するという要件の双方を強調した。

米国は核、生物、化学兵器の究極的な世界的廃絶を支援する努力を引き続いて誓約する。米国は冷戦期のピークと比べ85パーセント以上保有核兵器を削減し、20年間以上にわたり新しい核能力を配備していない。それにもかかわらず、直近の2010年NPR以来、潜在的な敵対国からの一層明白な核脅威を含めて、世界的な脅威の状況は明らかに悪化してきた。潜在的な敵対国の核兵器および運搬システムの開発と配備のプログラムも相当にダイナミックになってきており、米国はいま、過去のいかなる時よりもより多様で高度な核脅威の環境に直面している。

 

進展し不確定な国際安全保障環境

米国は核兵器の数と重要性を低減し続けてきたが、ロシアと中国を含む他国は反対の方向に進んできた。他国は保有兵器に新型の核能力を追加し、戦略と計画における核戦力の重要性を増大させ、宇宙空間およびサイバー空間を含めて、これまでにも増して攻撃的行動を行うようになっている。北朝鮮は国連安全保障理事会の決議に直接違反して非合法な核兵器やミサイル能力の追求を続けている。イランは包括的共同行動計画(JCPOA)において自国の核プログラムへの制約に合意した。にもかかわらず、同国は技術能力とその気になれば1年以内に核兵器を開発するために必要なキャパシティの大部分を保持している。

今では、主要な通常兵器、化学、生物、核兵器、宇宙、サイバーの脅威および暴力的な非政府主体を含めて、これまでになかった範囲と種類の脅威が、存在している。この展開は増大する不確定性とリスクを生み出した。

我々が政策と戦略を策定し、米国の核戦力の維持と更新を開始するに当たり、2010年NPR以降の脅威環境のこの急激な悪化が、いま我々の思考の枠組みとなるべきである。この2018年NPRは、より安全な核環境とより友好的な大国関係の中で確立された以前の核政策と要求項目を再評価する。本NPRは、米国、同盟国、パートナー国が直面する悪化しつつある脅威環境の中でアメリカを防護するために必要な核政策、戦略、それに見合った能力を特定することに焦点を当てる。それは戦略主導で、現在と将来に必要な核戦力態勢と政策要求に指針を提供するものである。

米国はロシアや中国を敵対国家と見なすことを望んでおらず、両国と安定した関係を模索している。我々は長年にわたり、米中それぞれの核政策、ドクトリン、能力への理解を強化し、透明性を改善し、誤算と誤解に対するリスク管理を助けるために中国との対話を求めてきた。我々は中国がこの関心を共有し、意味ある対話を開始することを希望している。米国とロシアは過去においては、核競争と核リスクを管理するための戦略的対話を維持していた。ロシアのクリミア占領を含む行動により、この建設的な関与は大幅に低下してきた。我々は、ロシアとの透明性ある建設的な関与を再び許容する条件が整うよう期待している。

しかしながら、本見直しでは、ロシア、中国、その他諸国の戦略的政策、計画、能力、とりわけ核能力を率直に取り上げる。本見直しは、米国、同盟国、パートナー国を防護し戦略的安定を促進するために目下必要とされる柔軟で適応性と弾力性のある米国の核能力を提示する。

 

米国の核能力の価値

米国の核能力と抑止戦略が米国、同盟国、パートナー国の安全保障に必要であるという根本的理由は明白である。米国の核能力は、核・非核攻撃の抑止に不可欠の貢献をしている。それが提供する抑止効果は敵対国の核攻撃を防止する上で独特かつ不可欠であり、米国の最優先事項である。

米国の核能力は全ての紛争を防止できるわけではないし、そう期待されるべきでもない。しかし、それは核・非核攻撃の双方の抑止に独特の貢献をする。それはこうした目的のために不可欠であり、予見できる将来にわたってもそうである。非核戦力も不可欠な抑止の役割を果たすが、核抑止時代の到来前に大国間の戦争を防止する通常抑止が過去、断続的かつ壊滅的に失敗してきたことに示されているように、核戦力に比肩できるような抑止効果は提供しない。さらに、自国の安全保障のため米国の拡大核抑止に当然にも大きな価値を置く多くの同盟国を安心させるには通常戦力だけでは不十分であり、それに応じて米国の拡大核抑止は不拡散の鍵にもなっている。

 

米国の核能力と永続化する国家目標

米国の核政策および戦略の最優先課題は、潜在的な敵対国によるあらゆる規模の核攻撃を抑止することである。しかし、核攻撃抑止が核兵器の唯一の目的ではない。現在と将来の脅威環境の多様な脅威と深刻な不確定性を考えると、米国の核戦力は米国家安全保障戦略において次のような重要な役割を果たす。米核戦力は以下に貢献する:

› 核・非核攻撃の抑止;

› 同盟国およびパートナー国への保証;

› 抑止が失敗した場合の米国の目的達成;

› 不確定な将来に対して備える(ヘッジ)能力。

これらの役割は相互補完的で相互関連しており、米核戦力の妥当性は各役割とその達成を目的とする戦略に照らして評価されなければならない。拡散を防止し、テロリストに完成兵器、物質、あるいは専門知識へのアクセスを拒否することも、米国の核政策と要求項目を検討する際の重要な考慮事項である。これら多角的な役割と目標は米国の核政策および要求の指針となる柱を構成する。

 

核および非核攻撃の抑止

核攻撃および非核戦略攻撃に対する米国の効果的な抑止には、潜在的な敵対国が地域や米国自体に対する先行核使用の結果に関して誤算のないよう保証することが必要である。彼らは非核攻撃または限定的核エスカレーションからは何の利益も得られないことを理解しなければならない。このような誤解を正すことは、欧州とアジアにおいて戦略的安定を維持するために現在重要である。

潜在的な敵対国は、脅威と状況が新たに出現する全範囲において、1)米国はそれを識別でき、新形態の攻撃を含む侵略行為に対して彼らに責任を負わせることができること、2)我々は非核戦略攻撃を撃退すること、3)いかなる核エスカレーションも彼らの目標達成を失敗させ、むしろ彼らにとって受け入れ難い結果をもたらすこと、を認識しなければならない。

抑止においては「全てに当てはまる」ものはない。結果的に、米国は広範囲にわたる敵対国、脅威、状況を効果的に抑止するためにふさわしい柔軟なアプローチを適用する。ふさわしい抑止戦略は、様々な潜在的な敵対国に対して、彼らの攻撃は彼ら独自のリスクと代価の計算から見て受け入れ難いリスクと容認し得ない代価を伴うことをわからせる。

米国の核能力および核指揮・統制・通信(NC3)は、広範囲にわたる潜在的な敵対国や脅威に抑止戦略を適合させ、時間経過に伴う調整を可能にできるますます柔軟なものでなければならない。したがって、米国、同盟国、パートナー国に対する核と非核攻撃がその目標達成に失敗し、現在・将来にわたって潜在的な敵対国にとって容認し得ない結果を生む確実なリスクがあることを保証するため、米国は必要な広範囲にわたる柔軟な核能力を維持する。

そのために、米国は自国の核能力を持続し更新し、NC3を近代化し、核と非核軍事計画の統合を強化する。各戦闘軍および四軍部隊はこの任務のために組織され装備を提供され、敵対国の核脅威や配備に対抗して運用する米国の核と非核戦力を統合するために計画し訓練し演習する。米国は核脅威に直面する同盟国との統合活動を調整し、同盟国との核抑止任務におけるさらなる責任分担の機会を検討する。

 

同盟国およびパートナー国への保証

米国は、欧州、アジア、太平洋地域の同盟国に保証を与える拡大抑止への正式な誓約を有している。保証は、我々が直面する脅威を抑止あるいは撃退するための同盟国及びパートナー国との協力に基づいた共通の到達目標である。いかなる国も、我々の拡大抑止の誓約の強さ、あるいはいかなる潜在的な敵対国の核や非核攻撃も抑止し、必要であればそれを撃退する米国と同盟国の能力の強さを疑うべきではない。多くの場合、同盟国とパートナー国を効果的に保証することは、米国の拡大核抑止の信頼性に対する彼らの核深度に依存しており、その確信によりほとんどの国は核兵器保有を避けることが可能になっており、米国の核拡散防止目標に貢献している。

 

抑止に失敗した場合の米国の目的達成

米国は、米国、同盟国、パートナー国の死活的な利益を守るために極限的な状況においてのみ核兵器の使用を考慮する。 とはいえ、抑止ができなかった場合、米国は、米国、同盟国、パートナー国にとっての損害を可能な限り最低限の水準に抑え、達成可能な最良の条件で紛争を終結させる努力をする。過去何十年間にわたる米国の核政策は、抑止ができなかった場合に損害を制限するというこの目的を一貫して含んできた。

 

不確定な未来に備える(ヘッジ)

米国は、より協力的で良好な安全保障環境の創出に努力を続けるが、同時に予想されるリスクや予期しないリスクに対する備え(ヘッジ)も講じなければならない。防備(ヘッジ)戦略は、時間の経過とともに浮上しうる地政学的、技術的、作戦的、及びプログラム的なものを含めてのリスクを低減し脅威を回避するのを助ける。それはまた、核能力の強行突破や拡大を通じて優位に立てるという、潜在的な敵対国の自信の低下をもたらすことができる。潜在的な敵対国の防衛政策と戦略において増大を続ける核兵器重視と将来の脅威環境の不確定性を考えると、米国の核能力と当該能力を迅速に修正する能力は、予期しないリスクを含めリスクを低減し克服するために不可欠といえる。

 

米国の核エンタープライズ人員

効果的な抑止は、戦争抑止と国家の防護のために職業人としての人生を捧げる米国軍の何千人もの兵員と軍属なくしては不可能である。これらの優れた男女は最も厳格な基準を要求され、米国の核能力と抑止に最も重要な貢献をしている。

核抑止任務に関与する軍人・軍属は、公に認められたリ、派手な歓迎を受けたりすることもなく任務を行う。彼らの任務は褒め称えられることもない極めて重要な責務である。彼らは、国家や世界に提供している安全、安心、安定というものに対して米国民の支持を受けるに値する。我々がそれに応じて実施してきた軍の改革は永らく遅延しており、国防総省は、米国を核脅威から防護する軍人への適切な支援に引き続いて全面的に取り組むことを約束する。

 

三本柱:現在と未来

現在の戦略核の三本柱は主に1980年代かそれ以前に配備されたものだが、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を装備した潜水艦(SSBN)、陸上配備型大陸間弾道ミサイル(ICBM)、自由落下爆弾および空中発射巡航ミサイル(ALCM)を運搬する戦略爆撃機から構成される。三本柱と非戦略核戦力は、それを支援するNC3とともに、抑止、保証、抑止が失敗した際の目的遂行、および防備(ヘッジ)手段のために米国の戦略に適合させるべく必要な多様性と柔軟性を提供する。

この多様性と柔軟性の必要性が増大していることは、核の三本柱と非戦略核能力を持続し更新させ、NC3を近代化することが今なぜ必要なのかの中心理由の1つである。三本柱の相乗効果と重複する属性は、攻撃に対する我々の抑止能力と危機や紛争の期間に敵対国の多様な標的を危険に晒す我々の能力の永続的な生き残り可能性を保証することを助ける。三本柱のいずれかの柱を除去することは、敵対国の攻撃計画を大幅に容易にし、敵対国が資源と関心とを残る二本柱を撃破することに集中させることを可能にする。このため、我々は、計画されている更新プログラムが展開されるまで、我々の従来からの三本柱体制を持続する。

米国は現在、14隻のオハイオ級SSBNを運用しており、それがコロンビア級SSBNに交代されるまでオハイオ級SSBNが作戦上有効であり生存可能であることを保証するために必要な措置を講じ続ける。コロンビア・プログラムは、現在のオハイオ級潜水艦群を交代させ、最低限12隻のSSBN を提供し、何十年間にもわたって要求される抑止能力を提供するよう設計されている。

ICBM戦力は幾つかの州に分散配備され、地下サイロに格納された単弾頭式ミニットマンⅢ型ミサイル400基から成っている。米国は、2029年にミニットマンⅢ型との交代を開始する地上配備戦略抑止(GBSD)プログラムを開始した。GBSDプログラムは400基のICBMの配備を支援する450基のICBM発射設備の近代化も行う。

三本柱の爆撃機の柱は46機の核爆弾搭載可能なB-52Hおよび20機の核爆弾搭載可能なB-2A“ステルス戦略爆撃機から成っている。米国は次世代爆撃機、B-21レイダーを開発、配備するプログラムを開始した。それは、2020年代半ばから通常型および核能力をもった爆撃機戦力の一部をまず補い、最終的に交代させる。

B83-1およびB61-11自由落下爆弾は、多様な防護された標的を危険に晒すことができる。このため、両爆弾は、少なくとも2020年に使用可能になるB61-12自由落下爆弾に十分な信頼が置けるようになるまで備蓄される。

B-52H爆撃機は1982年から空中発射巡航ミサイルALCMを搭載するようになった。ALCM装備のB-52Hは敵対国の防空圏外に滞空しながら効果を発揮できる。しかし、ALCMは今では設計寿命から25年以上経過しており、継続的に改良されている敵対国の防空システムに直面している。長距離スタンドオフ(LRSO)巡航ミサイル更新プログラムは、高度統合防空システムに侵入し生存することができるスタンドオフ兵器を運搬する能力を持つ爆撃機戦力を将来まで維持し、爆撃機の柱の長期的な有効性を支援する。

現在の非戦略核戦力は、専らF-15Eおよび同盟国にある核・非核両用戦術航空機(DCA)により運搬される比較的少数のB61自由落下爆弾から成っている。米国は、現在の老朽化しつつあるDCAの交代機として前方展開可能で核爆弾搭載可能なF-35に核能力を組み込みつつある。B61爆弾用に進行中の寿命延長プログラムと共に、それは継続的な地域抑止の安定性と同盟国への保証に重要な貢献をするものである。

 

柔軟かつ安全な核能力:財政的に可能な優先課題

過去何十年間にわたり、米国の高官は、国防総省の最優先課題は核攻撃を抑止し、それに必要な核能力を維持することだと強調してきた。米国の核能力を持続し更新させるプログラムの費用見積りは一様でないが、これら推計の最も高額なものでも将来の費用の最高点を現在の国防総省予算の約6.4%と見積もっている。現在の老朽化しつつある核戦力を維持し運用するには、国防総省予算の2%から3%の間を必要とする。何十年にもわたって活用できるよう三本柱を再構築する交代プログラムは、維持・運用に必要な2%から3%を約4%だけ超過する価額で頂点に達し数年間継続する。長期更新プログラム用の現在の国防総省予算の6.4%というと、連邦予算総額の1%以下である。米国の核能力を更新させるためのこの支出水準は、1980年代の前回の同様な投資期間に必要になった国防総省予算の10.6%、当時の連邦予算のほぼ3.7%、また1960年代初めに要求された国防総省予算の17.1%と比較しても好ましい数値である。

米国民、同盟国、パートナー国の安全に対する効果的な米国による核抑止の重要性を考えると、持続・更新プログラムは必要かつ財政的に可能であると見なされるべきである。

 

非戦略核能力による抑止の強化

核戦力交代プログラムの既存の諸要素は戦略的環境の劇的な悪化よりも前につくられた。米戦略の新しい要求を満たすために、米国はいま、核戦力の柔軟性と対応性を強化する更新プログラムへの選択的補完措置を追求する。このはるかに挑戦的な脅威環境においても控えめな補完措置が必要になるだけであることは、米国の三本柱の多能性と柔軟性の反映である。

この補完措置は、低威力兵器を含む限定的な核使用が米国と同盟国に対する優位性を提供するという潜在的な敵対国の誤った自信を否定することによって抑止を強化する。限定的な核の先行使用がこうした優位性を提供しうるというロシアの信念は、部分的には、より多くの数量と種類を有する非戦略核システムが危機や低水準の紛争において威圧的優位を提供するというモスクワの認識に基づいている。この進化する核兵器ドクトリンに関する最近のロシアの声明は、モスクワの核兵器先行使用の敷居を低くしているように見える。ロシアは数多くの演習や声明を通じて、これらのシステムが提供する優位に関する認識を実際の行動に移している。このロシアの誤った認識を正すことは戦略的に肝要である。

これらの挑戦課題に対処し、抑止の安定性を維持するために、米国は目的に適合した抑止オプションの柔軟性と多様性を強化する。誤解のないように言うと、これは核戦闘を意図したものでも可能にするものでもない。いま、低威力オプションをも含め米国の柔軟な核オプションを拡大することは、地域侵略に対する信頼できる抑止力の維持にとって重要である。それは核使用の敷居を引き上げ、潜在的な敵対国が限定的核エスカレーションにより優位になりうると考えないよう保証することをもたらし、核使用の可能性を低減するものである。

それゆえに、米国は、世界中で核搭載爆撃機およびDCAを前方配備する能力を維持し、必要に応じて強化する。我々は、DCAを核爆弾搭載可能なF-35戦闘機に切り替えることに取り組む。我々は、欧州に配備されたDCAの即応性、生残性、作戦上の有効性を最大限確保し、必要に応じて改善するためにNATOと連携する。

さらに米国は、短期的には、近いうちに低威力オプションを提供するために少数の既存のSLBM弾頭を改造し、長期的には、核装備した近代的海洋発射巡航ミサイル(SLCM)を追求する。DCAと違って、低威力SLBM弾頭およびSLCMは、抑止効果を提供する上で、受け入れ国支援を必要としたりそれに依存したりする必要がない。それらはプラットフォーム、射程及び生残性における追加的な多様性を提供し、将来の核強行突破シナリオに対する貴重な防護(ヘッジ)手段を提供する。

国防総省と国家核安全保障管理局(NNSA)は、敵対国の防衛を突破することが可能な迅速対応を保証するための低威力SLBM弾頭を配備するために開発する。これは、米国の地域的な抑止能力につけ込む“隙”があるとする誤った認識に対抗することを助ける比較的低コストの短期的な改造である。

この短期措置に加えて、米国は長期的には核装備SLCMを追求し、その費用対効果を確保するために既存技術を活用する。SLCMは、確証のある対応能力として、必要とされる非戦略的な地域プレゼンスを提供する。それはまた、ロシアの中距離核戦力全廃条約違反、非戦略核兵器の保有量、その他の安定を損なう行動に対する軍備管理に準拠した対応を提供する。

2010年NPRにおいて米国は、何十年間も抑止と、特にアジアにおける同盟国への保証に貢献した従来型の核装備SLCMの退役を発表した。我々は、近代的SLCMの迅速な開発のための選択肢分析(AoA)につながる能力研究の開始により、この能力を回復する努力を即時開始する。

計画された核戦力更新プログラムのこれらの補完措置は、米国の核能力の柔軟性と多様性を強化するための堅実なオプションである。これらの措置は、全ての条約・協定に準拠しており、合わせて、抑止と保証を適合させる我々の能力を強化する多様な特性を提供し、核あるいは非核戦略攻撃に対応する信頼できる米国のオプションの範囲を拡大し、潜在的な敵対国に彼らの限定された核エスカレーションは優位性を提供しないとのシグナルを送ることによって抑止を強化する。

 

核指揮・統制・通信の近代化

核攻撃の非常な緊張状態にあってすら、常時、米国は核戦力の統制を行うNC3 システムを保持しなければならない。NC3能力は送信される情報の完全性を保証し、核攻撃の効果に信頼できる形で打ち勝つために必要な回復力と生残性を保持しなければならない。平時であれ危機時であれ、NC3システムは5つの重要機能を遂行する:すなわち検知、警報および攻撃の特徴把握、適用可能な核計画立案、意思決定会議実施、大統領命令の受信、部隊の管理と命令の発動、である。

現在のNC3システムは冷戦の遺産であり、前回包括的に更新されたのは約30年前だった。同システムは、警戒衛星とレーダー、通信衛星、航空機、地上局、固定および移動指揮所、核システムの統制センターから成る相互接続された要素を含んでいる。

NC3システムは、かつては技術的に最先端だったが、今はシステム構成要素の老朽化と新しく増大を続ける21世紀の脅威という両方からの挑戦にさらされている。とりわけ懸念されるのは、宇宙空間とサイバー空間において拡大を続ける脅威、敵対国の限定核エスカレーション戦略、国防総省内におけるNC3システム統治の権限と責任が広範囲にわたって分散していることである。統治機能はその性格上統合されていなければならない。

我々のNC3システムの生残性と効果の維持を保証するという重要な必要性という点から、米国は一連のイニシャティブを追求する。これには、サイバー脅威への防護強化、宇宙空間にある脅威への防護強化、統合された戦術的警報および攻撃評価の強化、指揮所および通信リンクの改善、決定支援技術の高度化、計画立案と運用の統合、そして全般的NC3システムの統治の改革が含まれる。

 

核兵器インフラストラクチャ―

効果的で対応性、回復力のある核兵器インフラは、変化する要求に柔軟に適応する米国の能力にとって不可欠である。このようなインフラは、米国の核兵器能力の具体的な証明を同盟国と潜在的な敵対国両方に示し、それゆえに敵対的な状況変化に対する抑止、保証、防備(ヘッジ)に貢献する。それはまた、敵対国の軍備競争への関心を思い止まらせる。

国防総省は、核弾頭を運搬プラットフォームに載せて運搬する軍事的要求を生み出す。NNSAは、国防総省の弾頭要求に対応する研究、開発、試験、評価、生産プログラムを監督する。

過去幾十年にもわたり、米国の核兵器インフラは老朽化と資金不足の影響を受けてきた。NNSAのインフラの半分以上が40年以上経過しており、4分の1はマンハッタン計画時代にまで遡る。過去の全てのNPRは、近代的な核兵器インフラを維持する必要性を強調したが、米国では回復力があり、予期しない展開に対応する能力をもつ近代的インフラを持続することができていない。現在は、戦略物資と米国の核兵器の構成部品を生産するために必要な物理的インフラへの資金増強をこれ以上遅らせる余裕はない。我々の核戦力が財政的に可能な優先課題であると同じように、回復力のある効果的な核兵器インフラもそうであり、それなくして我々の核抑止は存在し得ない。

米国は安全で安心な、かつ効果的な核兵器保有を維持し、認証する能力を持たねばならない。米国は、国防総省の更新プログラムと調和させ、以下を実施することにより戦略的、非戦略的な核能力の双方を支援するために必要な弾頭を予定通りに維持・提供する:

 

 W76-1寿命延長プログラム(LEP)を会計年度(FY)2019年までに完了する。

 B61-12LEPFY2024年までに完了する。

 W88改造をFY2024年までに完了する。

 NNSAのW80-4寿命延長を国防総省のLRSOプログラムと調和し、W80-4LEPをFY2031年までに完了する。

 GBSDの2030年までの実戦配備を支援するため、W78 弾頭交代をFY19年に1年間前倒しし、海軍航空機への核爆弾パッケージの実戦配備の実現可能性を調査する。

 B83-1 を現在計画されている退役期日を超えて持続し、適切な代替品が特定されるまで維持する。

› 空軍および海軍システムの共通再突入システムの可能性を含め、潜在的な敵対国の脅威と脆弱性に基づく将来の弾道ミサイル弾頭の要求を模索する。

 

米国は、以下を含め、核兵器インフラの必要な能力、定員、対応性と労働力の必要な技能を保証するイニシャティブを追求する:

 

› 取り組みが国防総省のニーズを満足させるべく適切に統合されていることを保証するため、国防総省とエネルギー省との共同高度技術開発能力を追求する。

 2030年までプルトニウム・ピットを年間80ピット以上の割合で生産する永続的能力と定員を提供する。この作業の遅れは、より高額な費用でより高いピット生産率が必要となる結果を生じる。

› 米国のリチウム化合物生産能力を再構成する現在の計画が軍事的要求を満たすに十分であることを確実にする。

› 軍事的要求を満たすために、ウラン処理施設に全面的に資金提供し、十分な量の低濃縮ウランの入手可能性を確保する。

› 軍事的要求を満たすため、十分な量のトリチウムを生産し供給するに必要な原子炉容量を確保する。

› 備蓄兵器近代化を支援するため、2025年以降まで安全で信頼できる戦略的な耐放射線型マイクロエレクトロニクス・システムを開発製造する米国の能力の継続性を確保する。

› 若手科学者および技術者が弾頭設計、開発、生産技能を高める機会を拡大するため議会によって設置された備蓄兵器即応プログラムを迅速に追求する。

› 生産容量の規模を近代化と防備(ヘッジ)の要求に合わせて調整するNNSAロードマップを開発する。

› 抑止の必要を満たすために必要な自由落下核爆弾に対する信頼性を維持する。

› 毎年核兵器を評価するために必要な計算、実験、試験の能力を維持し、強化する。

 

核テロリズム対策

核テロリズムと戦う米国の戦略は、現在の危険と新たに発生する危険に対する多層防衛などから成る広範囲にわたる活動を含んでいる。米国はこの多層的アプローチにより、テロリストによる核兵器あるいは兵器用に使用可能な物質、技術、専門知識の獲得を防止し、彼らがそれらの資産を取得、移転・活用する努力に対抗し、核装置の所在を突き止め無効化することや核爆発の結果を管理することによって核インシデントに対応する。

効果的な抑止のため、米国は、核装置を獲得・活用するテロリストの努力を支援したり、あるいは可能にするあらゆる国家、テロリスト・グループ、その他の非国家主体に全面的に責任を負わせる。核テロリズム対策における米国の核兵器の役割は限定されているが、我々の敵対国は米国、同盟国、パートナー国に対するテロリストの核攻撃は極限的な状況に該当し、米国が究極的な報復形態を考慮できることを理解しなければならない。

 

不拡散および軍備管理

効果的な核不拡散と軍備管理措置は、核物質・核技術の拡散を制御し、核兵器の生産、備蓄、配備に制限を課し、誤解と誤算を低減し、不安定化させる核軍備競争を回避することにより、米国、同盟国、パートナー国の安全保障を支援することができる。米国は、1)信頼できる米国の拡大核抑止と保証の維持を含めて、核兵器保有国の数を最低限に抑え、2)テロリスト組織に核兵器・核物質へのアクセスを拒否し、3)兵器に使用可能な物質、関連技術、専門知識を厳格に管理し、4)安全保障を強化する検証可能で執行可能な軍備管理協定を追求する、といった努力を継続する。

核不拡散条約(NPT)は核の拡散防止体制の礎石である。同条約は、拡散防止のためのコンセンサスを構築する上で建設的な役割を果たし、条約外で核兵器を追求しようとする者に代価を強いる国際的努力を強化する。

しかし、核拡散防止は現在、深刻な課題に直面している。最も重要なことは、北朝鮮が、NPTに直接違反し、数多くの国連安全保障理事会決議に真っ向から反対して、核保有の道を追求していることである。北朝鮮以外では、イラン問題が浮上してきている。JCPOAはテヘランの核兵器プログラムを抑制する可能性があるが、イランがその気になればすぐに核兵器能力を達成できることにほぼ疑いの余地はない。

核拡散防止への支援を継続する中で、米国は、必要な場合には、戦略的対話、リスク低減のための通信チャンネル、また核兵器の安全と保安に関連した成功事例の共有を通じて、核兵器国や他の核保有国との間の誤算の可能性を回避するため透明性と予測性を増大させるよう努力する。

米国は包括的核実験禁止条約の批准は求めないが、包括的核実験禁止条約機関準備委員会や国際監視システム、国際データ・センターへの支持は継続する。米国は米国の保有核兵器の安全性と効果を確保するために必要でない限りは核爆発実験は再開しない。また核兵器を保有する全ての国に核実験の一時停止を宣言するか、維持するよう呼びかける。

軍備管理は、諸国間の戦略的競争の管理を助けることにより、米国の安全保障に貢献できる。それは、敵対関係における透明性、理解、予測性を促進し、それにより誤解と誤算のリスクを低減することができる。

米国は、米国、同盟国、パートナー国の安全保障を促進し、検証可能で執行可能であり、自国の義務を責任をもって順守するパートナー国を含む軍備管理努力に取り組んでいる。このような軍備管理努力は米国の戦略的安定を持続させる能力に貢献しうる。しかし、既存の軍事管理義務や誓約への重大な順守違反の継続、国境変更を試み既存の規範を覆す潜在的な敵対国によって特徴づけられる環境においては、さらなる進歩を想像することは困難である。

この点に関して、ロシアは一連の軍備管理条約と誓約に違反し続けている。核関連では、ロシアの最も重要な違反は、中距離核戦力全廃条約によって禁止されているシステムに関する違反である。より広い分野では、ロシアは数多くの協定で規定された自国の義務と誓約を拒絶あるいは回避しており、新戦略兵器削減条約(START)の後継ラウンドの削減交渉を実施し、非戦略核戦力の削減を追求する米国の努力を拒絶した。

それでも、新STARTは2021年2月まで有効であり、相互合意によりさらに5年、2026年まで延長可能である。米国はすでに同条約の2018年2月5日に発効する中心的な制限を達成しており、新START条約の履行を継続する。

米国は、分別のある軍備管理アジェンダに関与する意思を持ち続けている。我々は、当事国を順守、予測性、透明性に立ち帰らせるような軍備管理の機会について考える用意があり、条件が整い、また米国、同盟国、パートナー国の安全保障を改善する結果を生む可能性があるならば、さらなる軍備管理交渉を受け入れる用意がある。(国防総省訳を元にピースデポが改訂)

 

(出典)
media.defense.gov/2018/Feb/02/2001872891/-1/-1/1/EXECUTIVE-SUMMARY-TRANSLATION-JAPANESE.PDF