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国連・核軍縮公開作業部会 第3会期
ジュネーブ現地報告 その2


 8月16日の会合冒頭でタニ・トングファクディ議長(タイ大使)は、勧告部分の報告書改訂案パラ62(以下、パラグラフ番号は8月15日付報告書改訂案のものを指します)について、全参加者が賛成できるようになるまで議論を続けたいと述べました。そして、「報告その1」のとおり今後の進め方を確認した後、会場発言に移りました。

 この日の会場発言は、24か国の政府代表とNGO2団体からなされました。発言者一覧は「リーチング・クリティカル・ウィル」ウェブサイト
(外部リンク)に掲載されています。24か国のうち、いわゆる「前(漸)進的アプローチ」をとる国々は、これらの国々を代表して発言したカナダのほか日本、豪州のみで、残り21か国は核兵器禁止交渉の早期開始を求める国々でした。

 最初に、複数国の国家グループを代表して5人から発言がありました。発言順に、@太平洋諸国(パラオ、ナウル、サモア、フィジー)(代表してフィジー)、ACELAC諸国(中南米・カリブ海の国々)(代表してドミニカ共和国)、BASEAN諸国(代表してラオス)、Cアフリカグループ(代表して南アフリカ共和国)、そして、D前(漸)進的アプローチに関する作業文書提出国(代表してカナダ)です。

 国家グループ5発言のうち4つが「禁止交渉開始」を求める立場からのもので、この立場がまさにマジョリティ、多数派であることを印象付けました。4発言はいずれも、パラ62前段の文言をほぼそのまま引用しながら、「2017年に国連総会が、すべての国家・国際機関・市民社会に開かれた、核兵器の完全廃棄につながる、核兵器を禁止するための法的拘束力を持った文書を交渉する会議を開催する」ことへの支持を表明しました。

■禁止交渉開始を先導する非核兵器地帯諸国


 ところでピースデポは、核抑止力に代わる安全保障政策として北東アジア非核兵器地帯の設立を提唱・推進し、OEWG第2会期に提出した作業文書の中で非核兵器地帯条約国が主導しての使用禁止交渉開始を提案しています。そのような立場からは、前記4グループが一部例外を除き、4つの非核兵器地帯構成国と重なっていることが注目されました。すなわち、グループ@はパラオを除く3か国がラロトンガ条約に加盟し、Aトラテロルコ条約Bバンコク条約Cペリンダバ条約の加盟国と重なります。

 実際に発言当事者からもその点を意識した言及がありました。CELAC代表は「最初の非核兵器地帯条約であるトラテロルコ条約の締約国である我々は、核兵器の深刻な脅威を十分認識し、これを禁止し廃絶する差し迫った必要を認識している。我々にとり現状は受け入れがたいことを改めて表明する」、ASEAN代表は「核兵器の廃絶のみが使用と威嚇に対する究極的保証である。今こそ我々は、東南アジア地域が非核兵器地帯であることを銘記する」旨を述べました。アフリカグループ代表は、非核兵器地帯一般の意義にも踏み込んで「アフリカグループは……世界の全地域にわたり核軍縮・不拡散を推進するという点での、非核兵器地帯の有用性を再確認する。ペリンダバ条約、トラテロルコ条約、ラロトンガ条約、バンコク条約、中央アジア非核地帯条約、モンゴル非核兵器地帯地位は、核兵器なき世界という全体目標に大きく貢献する。それらは地域および世界の平和と安全を高め、核不拡散体制を強化し、核軍縮目標の実現に貢献する」と訴えました。

 非核兵器地帯条約加盟諸国は第2会期でも共同で作業文書を提出するなど、核兵器禁止を先導する動きが見られましたが、今回それが一層明確に表現されました。

■「禁止推進」諸国は改訂案を概ね支持

 国家グループ発言の後は、個々の政府代表からの発言が続きます。中でも中南米・カリブ海諸国が目立ち、CELAC全体を代表したドミニカ共和国を含め10か国が発言しました。

 発言国の多くは、核兵器は非人道兵器であり人類全体への脅威であること、その点にかんがみると集団的な安全保障こそが重要であること、核兵器廃絶のためにはこれをまず禁止するのが有用なこと、禁止のための法的文書の交渉はNPTの目的に沿っておりNPTを強化することなどを、口をそろえて述べました。CELACやASEAN諸国はほぼ例外なく、冒頭で自国の所属グループ代表の発言への同調を表明しました。また、多くの国が前述の4グループと同様、パラ62前段の文言をそのまま用いて、2017年の禁止交渉会議開催を支持しました。こうした発言は、報告書採択を意識した多数派としてのデモンストレーションの色彩を濃厚に帯びていると感じました。

 メキシコは「現状維持派と核軍縮推進派の2陣営がある」と改めて言明し、「今日も明らかになったように、4つの地域グループを含む後者は前者の数倍だ。CELAC諸国33か国、アフリカグループ54か国、これだけでも漸進的アプローチ派24か国の3倍を優に上回る。これに東南アジア諸国や太平洋島嶼国、そして一握りの欧州の国々が加わる」と、自分たちが圧倒的多数派であることを宣言しました。

 報告書改訂案は、これらの国々からおおむね支持、歓迎されていました。例えばアイルランドは、「報告書は公正であり、集団的な人間の安全保障に関するものなど我々の意見が反映された」とパラ27の新設を歓迎し、「核兵器国が、その保有核兵器の質的改良と近代化の取り組みを継続するとともに核兵器に依存し続けていることに対し、懸念が表明された」(パラ28)との一文が追加されたことも高く評価していました
 他方、アイルランド、フィジー、オーストリアは、「核兵器の使用の威嚇の禁止規範の希薄化」「核兵器の国内持ち込みの禁止、核兵器・核実験の被害者の権利」「核兵器の倫理的側面の分析評価」といった、それぞれ自国を中心に過去の会期で主張されてきた事項がより適切に反映されるよう求めました。改訂版での「a number of」「many」など国の数を表す用語法についても、ブラジルやオーストリアから、実態と離れていると指摘がされました。イランは、「前(漸)進的アプローチ」の具体的内容を述べた「別添1」の新設について、特定の立場を不当に優遇しているとの強い不満を表明しました。

 少なくない国が、報告書の全会一致での採択をめざしたいとの意向を示しました。この日、多数決を明示的に望む発言はありませんでした。メキシコは、第2会期の特に初めの頃は全会一致に否定的でしたがそこから完全に転換したようで、「望ましい形での全会一致に傾斜している」と態度表明しました。そして「妥協点を見出すことに集中しようではないか。我が代表団は少数派(マイノリティ)の提示した立場をより詳細な形で盛り込む追加を受け入れる用意がある」(別添1のことでしょう)「その代わり、有志国の提案や立場が多数の支持を集めたことの圧倒的証拠の隠ぺいを意図する修正には反対する」と述べました。

 なお、パラ62についてキューバは直截に、「これが最も重要なパラグラフであり、ここが曖昧であってはならない。このパラグラフ自体は審議内容の報告部分である第W章に移し、代わりに第X章では端的に2017年の禁止交渉会議開催を勧告すべき。それが、今日も十二分に示された多数派の意思だ」と踏み込みました。この提案に対してはブラジルが、「圧倒的多数派の立場からはそれも1つのありうる(ないしあるべき)姿かもしれないが、少数派の考え方を反映した現行のパラ62も1つの合理的な妥協点ではないだろうか」とコメントしました。

 メキシコやブラジル、それにニュージーランドも、前(漸)進的アプローチの国々を「少数派」(マイノリティ)と呼んでいましたが、そこに「多数派」としての余裕が感じ取れました。

■個別折衝に期待する前(漸)進的アプローチの国々と、NGOからの批判

 前(漸)進的アプローチの国々が、「禁止推進派」諸国の熱気と迫力に押され気味だった様子は否めません。同アプローチ国を代表したカナダは「改訂案は我々の提案の重要部分を反映していない。第X章、中でもパラ62は受け入れがたい」と不満を述べた後、「時間も限られているので立場表明は繰り返さない。非公式協議や個別折衝に注力したい」と、そそくさと発言を終えました。日本は「報告書の全会一致採択のためにはいくつか改善を要する。日本は、国際的核軍縮コミュニティが結束して行動し実際的な核軍縮措置を1つ1つとっていく必要を繰り返し強調してきた。この立場から引き続き建設的に議論に加わりたい。全会一致採択を強く望む。議長の外交手腕を信じている」と述べ、個別折衝への期待をにじませていました。

 前(漸)進的アプローチの国々に対しては終盤、NGO「ワイルド・ファイアー」が手厳しい批判を行い、強い印象を残しました。ワイルド・ファイアー代表は、日本と韓国が核兵器の先行不使用政策を検討している米政府に対しそのような政策をとらないよう申し入れているとの最近の報道を取り上げて、「日韓を含む前(漸)進的アプローチの国々はNPTがすべての核軍縮努力の枠組みであるべきだと言ってきたのに、2010年NPT行動計画での合意事項を実施しないよう求めるのか? 先行不使用は同アプローチの要素の1つでもあり、同派の国々は核兵器国を核軍縮に関与させる必要を言ってきたにもかかわらず、核兵器国に核軍縮措置を取らないよう求めるのか?」とたたみかけ、これはNPT第6条下の誠実な核軍縮交渉義務に反したふるまいであると断じました。そして「同派の他の国で米国に先行不使用政策の採用を奨励した国があれば挙手を」と求め、挙手がないと見るや「これが前(漸)進的アプローチの実態だ」と切り捨てました。

 この発言に豪州政府代表は、「このような場で特定の国々に挙手を求める行為は不当である」「我々はOEWGで共通の利益のため取り組んでいる。特定国を名指しではずかしめるような行為は共通の大義の実現に役立たない」と意見しました。

 議長が会議の締めくくりに際し「どうか参加者はこの会合の前向きで建設的な空気を保つよう協力してほしい。全会一致の結果に到達するには我々皆が一定の柔軟性を発揮する必要があるからだ」と付け加えたのは、ワイルド・ファイアーの発言を意識したもののようにも思えました。

■最終日に向けて続く非公式協議

 8月17日の公式会合は、スリランカ1国が、「OEWGは既定の措置を再確認し現状を維持するのではなく効果的法的措置を議論すべき場だ」との立場を表明しつつ、報告書の全会一致での採択を求め、軍縮会議(CD)で包括的核兵器条約の交渉など実質的作業を再開すべき、などとする発言を行ったのみで、開始後15分ほどで終了しました。終了に際し、タニ議長は「2国間交渉や非公式協議を続ける。すべての国が受け入れ可能な報告書を目指す。18日の終わりまでに報告書案の再改訂版を作成したい」と述べました。

 この日も前日と同様、会場には多くの参加者がいました。机上にある国名の札を数えたところ90を超えていました。

 「結論と合意された勧告」の章で両論併記になっているパラ62がどうなるのか。報告書を全会一致で採択できるのか。会場で見届けたいと思います。


(文責:荒井摂子)



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