■ 自治体と市民のための「ガイドライン法案」速報
第1号 1999年3月23日
発行:ピースデポ(平和資料協同組合)・ガイドライン法案プロジェクトチーム
監修:前田哲男、梅林宏道 編集:川崎哲
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【すでに進行している米軍の施設使用】
来る3月26日に在韓米軍が福岡空港で訓練をおこなうこと、また、94年の朝鮮半島情勢緊迫時に在日米軍の要請を受けた防衛庁が、民間主要空港・港湾を米軍に提供することを検討しており、その考え方は今も続いていることを朝日新聞が報じた。
◆在韓米軍、福岡空港で非戦闘員退避訓練を計画(3月20日朝日より)
在韓米軍司令部が26日に、朝鮮半島有事を想定し韓国在住の民間米国人の福岡空港への避難訓練を計画していることが分かった。同様の訓練は在日米軍基地を使ってこれまでも行われているが、民間空港の使用例は運輸省では把握しておらず、今回の計画も運輸省にはまだ伝えられてないという。
今回、福岡空港を使う理由について、米軍関係者は「避難先が佐世保基地になったため最寄りの空港を選んだ」としている。昨年10月にも計画されたが、台風のため中止されたという。
◆94年に防衛庁が空港・港湾を「米軍への提供」検討(3月22日朝日より)
朝鮮半島情勢が緊迫した1994年時点に在日米軍の要求を受け、防衛庁が、民間主要空港や主要港湾を、期間を区切った米軍の施設として提供する検討をした。日米地位協定の米軍による日本施設の「共同使用」条項(2条4項b)を適用する手法で、この条項では日米の合意に基づいて、米軍が日本の施設を一定期間使用でき、期間の取り方は柔軟で、場合によっては事実上専用施設として使用もできる。この考え方はいまも消えていないと防衛庁幹部はしている。
検討対象施設は、新千歳(北海道)、成田、関西、福岡、長崎、宮崎、鹿児島、那覇の各空港。港湾は苫小牧(北海道)、八戸(青森県)、天願、金武湾、那覇(いずれも沖縄)、松山、大阪、名古屋、福岡、神戸、水島(岡山県倉敷市)各港。
94年当時、米軍は1059項目の支援を要求した。防衛庁は、米軍による空港・港湾の優先使用や、飛行場での宿泊施設の提供や医療支援、通信機器や弾薬、燃料の提供などを検討。その中で「共同使用」による提供が浮上した。
防衛庁が検討した支援項目と担当する省庁が同日付の朝日新聞紙上に羅列されている。
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<解説:日米地位協定と「施設の使用」>
(前田哲男)
周辺事態法案第9条に掲げられた自治体と民間の協力の規定は、国会質疑でもたびたび指摘されているように、きわめて漠然としている。法案第12条に「政令委任規定」が設けられているので、成立後、そこに地方自治や国民の権利に関する規定が書き込まれると思われる。
それから対処するのでは遅い。そこであらためて、現行の安保条約と新ガイドラインを読みときながら、「施設の使用」がどのように規定されているのかを見ていく。
(1)新ガイドラインに記された「施設の使用」
まず、新ガイドライン(97年9月)本文には、次のような記述がある。
X.日本周辺地域における事態で日本の平和と安全に重要な影響を与える場合(周辺事態)の協力
2 周辺事態への対応
・・・日米両国政府は、適切な取決めに従って、必要に応じて相互支援を行う。
(2)米軍の活動に対する日本の支援
(イ)施設の使用
日米安全保障条約及びその関連取極に基づき、日本は、必要に応じ、新たな施設・区域の提供を適時かつ適切に行うとともに、米軍による自衛隊施設及び民間空港・港湾の一時的使用を確保する。
以上の本文に続く〈別表〉には、6つの機能・分野40項目にわたり、「周辺事態における検討協力項目の例」が列挙されているが、その中で施設の使用に関しては6項目が挙げられている。
〈別表〉
米軍の活動に対する日本の支援
施設の使用
○補給等を目的とする米航空機・船舶による自衛隊施設及び民間空港・港湾の使用
○自衛隊施設及び民間空港・港湾における米国による人員及び物資の積卸しに必要な場所及び保管場所の確保
○米航空機・船舶による使用のための自衛隊施設及び民間空港・港湾の運用時間の延長
○米航空機による自衛隊の飛行場の使用
○訓練・演習区域の提供
○米軍施設・区域内における暫定的構築物の建設
これらの規定に基づいて、新基地の提供、自衛隊基地の米軍使用、民間空港と港湾の一時使用について、それがそれがどのようなかたちでおこなわれるか/ているかを検討してみる。
(2)日米地位協定第2条第4項B
一つは、日米地位協定第2条による「共同使用」の実現である。3月22日の朝日新聞記事も、これに基づく防衛庁の検討内容に関するものであった。
日米地位協定は、安保条約第6条(基地提供条項)に基づき細則を定めた協定であるが、その第2条第4項Bには、米軍による基地の一時使用ないし再使用権が規定されている。条文は次の通りだ。
「合衆国軍隊が一定の期間を限って使用すべき施設及び区域に関しては、(日米)合同委員会は、当該施設及び区域に関する規定中に、適用があるこの協定の規定の範囲を明記しなければならない」
つまり日米合同委員会で合意すれば、そして「規定の範囲を明記」すれば、日本全国どの場所でも事実上の米軍基地になしうることが読みとれる。日米合同委員会の議事内容は原則非公開なので、どこが、どんな条件で一時使用基地になったのか国民は知ることはできない。まして、すでに2−4−B条項によってリストアップされている基地については、合同委了解によって、いつでも米軍基地として再使用できると考えておかなければならない。そのような潜在米軍基地が以下に掲げるほども存在するのである(防衛ハンドブック98年版による)。
〈資料・日米地位協定2−4−Bが適用される施設〉
〈北海道〉16か所
◆東千歳駐屯地 ◆鹿追然別中演習場
◆千歳演習場 ◆帯広駐屯地
◆千歳飛行場 ◆旭川近文台演習場
◆別海矢臼別大演習場 ◆丘珠駐屯地
◆釧路演習場 ◆名寄駐屯地
◆鹿追駐屯地 ◆浦川演習場
◆上富良野中演習場 ◆美幌訓練場
◆札幌駐屯地 ◆倶知安高嶺演習場
〈本州〉11か所
◆高田関山演習場 ◆百里飛行場
◆相馬原演習場 ◆長坂小銃射撃場
◆富士演習場 ◆滝ケ原駐屯地
◆小松飛行場 ◆今津饗庭野中演習場
◆岐阜飛行場
◆第1術科学校訓練施設(建物)
◆原村演習場
〈九州・沖縄〉7か所
◆新田原飛行場 ◆崎辺小銃射撃場
◆日出生台十文字原演習場
◆大村飛行場 ◆安波訓練場
◆浮原島訓練場
これらはおもに自衛隊が演習場や駐屯地として使用している場所だが、なかには小松飛行場のように、民間空港(自衛隊との共用)もある。
(3)日米地位協定第5条
2−4−B方式だけではない。このほかにも、米軍基地を返還するさい、形ばかりの建物や倉庫を紙の上の基地として残しておき、必要があるときに再使用の権利を留保する「唾つけ基地」のような方式もある。福岡空港=板付飛行場のケースがそれにあたる。
板付飛行場は1972年に返還され、福岡空港として成田、羽田に次ぐ国内第三の民間空港になっているが、現在でも防衛施設庁の提供施設リストには「板付飛行場」の名で記載されている。そのしかけは、大部分は返還したものの、ごく小さな建物と敷地を名目上滑走路のそばに確保し、そこに至るアクセス権を根拠に福岡空港を「米軍板付飛行場」として利用するやり方であった。
日米地位協定第5条第1項には、次のようにある。
「合衆国及び合衆国以外の国の船舶及び航空機で、合衆国によって、合衆国のために又は合衆国の管理の下に公の目的で運行されるものは、入港料又は着陸料を課せられないで日本国の港又は飛行場に出入することができる。」
これを基に、米軍航空機は、福岡空港の一角にある「板付飛行場」の休眠建築物に立ち寄るという名目で、毎年200回ほどの無料の空港利用を続けてきた。(98年は米軍機は福岡空港に162回発着。99年3月20日付朝日新聞。)着陸料も維持費も払わず、利用権のみ享受できるのである。「朝鮮有事」に備え、米側はこの権益に固執した。
1970年1月の米上院外交委員会(サイミントン委)で次のやり取りが記録されている。
○ポール委員「朝鮮における危機の際、板付のような基地へのなんらかの再使用を認めてもらえるよう日本側の善意に期待しうべきもののように思われる」
○ジョンソン次官「私も同感である。・・・原則に関する限りは、日本政府も同意している。我々は、その方向に向かうべく絶えず努力してきたし、また今後も引続き努力してゆきたい。事情が許す限り、この方向に進むことができるよう日本側にずっと圧力をかけている」
○ジョージ在日米大使館政治軍事担当官「東京で話し合った際、日本側はこの考え方に好意(同意)を示していたことを申しそえたい」
(『軍事民論』特集3号所収 楢崎弥之助「返還基地の再使用権をめぐって」76年1月)
板付返還、福岡空港誕生の裏には、こんな条件がついていたのである。
以上のように、久しい以前から有事再使用にむけた下地は整えられ、多くの旧米軍基地が休眠状態のまま維持されてきたのである。2−4−B方式による「隠れ基地」や板付飛行場型の「唾つけ基地」は、前掲資料の通り全国いたるところに散在する。
新ガイドラインによってこれらの施設の米軍による使用が規定され、周辺事態法案によって、これに対する地域社会の協力規定までが加えられようとしている。
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◆関連資料
運輸省の「極東有事対応」(96年4月)
−政府内の「ずれ」が明らかに−
主要空港が米軍施設を提供する手法について、運輸省幹部らは「米軍側からどんな要求があったのかも、防衛庁から聞かされていない。まして、民間空港を基地とするような話は知りようもない」としている。また同省は、所管の空港・港湾についての見解を国会対策用にまとめ、その中で「成田空港の米軍使用」に関し、日米地位協定第5条により一時的な使用は可能としつつ、「その優先使用は認められていないので、成田のような混雑空港は難しい問題がある」などとしている。(以上、3月22日朝日。)
ここでは、96年4月に自民党安全保障調査会に対して防衛庁、運輸省、外務省が提出したそれぞれの省庁の「極東有事への対応」についての文書のうち、運輸省のものの全文を紹介する。短い文書の中で周辺住民、各航空会社、各国政府、自治体との調整・合意や、安全対策などに重点を置いているのが特徴的である。
同じときに出された防衛庁、外務省の文書はファックスでボックス番号それぞれ823#、824#でとり出せる。省庁間の見解の対比、新ガイドラインおよび関連法案との対比をしていただきたい。
極東有事への対応について
(H8.4.11 運輸省)
1.空港の使用
(1)地位協定に基づき使用可。
個々の施設及び区域については合同委員会を通じて協定を締結。
(2)使用の具体的内容を明確にした上で、次の事項について調整。
・騒音対策に関し制約がある場合には、周辺住民の合意。
・民間機の減便が必要となる場合には、その航空会社との調整。
・航空会社が外国の会社である場合には、その外国政府の合意。
・地方公共団体の管理する空港の場合には、その地方公共団体の同意。
・安全上必要な特定空域の確保、要員の配置等。
2.港湾の使用
(1)地位協定上の扱いは空港と同じ。
(2)使用の具体的内容を明確にした上で、次の事項について調整。
・港湾を管理する地方公共団体の同意。
・民間船舶の使用制限が必要となる場合には、その民間会社との調整。
3.物資の輸送等
輸送の具体的内容を明確にした上で、米軍等と運送事業者等との間で任意の契約を締結。
4.海上の警備等
具体的情勢に応じて、問題となる海域において海上保安庁の巡視船艇、航空機を増強配備する等により適切に対処。
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◆関連ニュース(続報)
民間機での武器輸送問題なし:外相が初の見解(3月18日琉球新報より)
在沖米軍の実弾訓練に伴い全日空機が銃・弾薬を輸送した問題で、高村外相は17日の参院予算委員会で、照屋寛徳氏(社民・護憲)の質問に答え、日米地位協定第五条の適用により、民間機による武器・弾薬の輸送は問題ないとの見解を初めて示した。
照屋氏は69年4月19日の衆院内閣委員会における政府答弁で、緊急時に地位協定第五条が適用されるとしている点を指摘し、「訓練移転に伴う武器・弾薬の輸送で地位協定第五条を適用をするのはおかしい」と批判。
これに対し、外務省の竹内北米局長は「(地位協定第5条は)合衆国の管理の下、公の目的で運航されるものは、入港料または着陸料を科さないで港または飛行場に出入りできると想定している」と説明。その上で、民間の船舶や航空機が日本政府による間接調達であっても「合衆国の管理の下で運航される船舶、航空機があり得ることは地位協定第五条が想定している」との見解を示した。
これに対し、照屋氏は「移転訓練のための武器・弾薬、兵員の輸送に地位協定第五条をストレートに適用されるなら、周辺事態法は要らない。新ガイドライン法が成立する前に、既に先どりされている」と批判。
大森防衛施設庁長官と竹内北米局長は、照屋氏の質問に対し、今回の輸送以外で、過去に地位協定第5条が適用された事例がないことを明らかにした。
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◆陸・海・空・港湾 交通運輸関係労組がアピール
3月19日、末尾に付す、27万7千人の組合員をかかえる18の交通運輸関係労組が、ガイドライン関連法案の廃案を求める共同のアピールを出した。
その内容は、法案の問題点を、@アメリカが始める戦争に自動的に巻き込まれる危険性、A「後方地域支援だから安全だ」という宣伝は欺瞞、B第三は、日本国憲法や国際法などの法律と法の精神に違反、C経済活動と国民生活に計り知れない影響を与える、D「自治体や民間への協力依頼」は実質的な強制、と整理した上で、次のように述べている。
「では、過去に何が起こったか、「周辺事態」で何が起こるか、具体的に見てみましょう。
海上輸送分野の分野では、第二次大戦中、我が国商船は根こそぎ徴用され、「後方」といわれる兵たん活動で壊滅、船員も6万人余りが戦没しました。先のイラン・イラク戦争でも、多数の中立国船舶が戦闘に巻き込まれ650万人が死傷、日本人が乗り組む船舶も12隻が攻撃を受け2人が犠牲となりました。いったん戦争となれば前方後方の区別なく、まして戦争当事国として武器弾薬・兵員等を輸送するとなれば、直接攻撃の対象となることは明白です。
海上輸送と一体の港湾運送や陸上輸送では、クレーン、トラック、バス、鉄道などの輸送手段だけでなく、港湾やターミナルなど関連する施設・設備も、兵たん基地として攻撃目標となることは常識です。前記イラン・イラク戦争では、ペルシャ湾が戦場になったあとの物資輸送はトラックが中心となり、それに携わった運転手の死者が多かったという事実があります。また、軍事物資の輸送が優先されることにより生活必需品の輸送が滞るのは明らかです。
航空の分野では、平時であっても米軍機とのニアミスが相次ぐ日本において、「周辺事態」となれば米軍機や自衛隊機が優先して飛びまわり、民間航空が使用する空域や航空路は寸断されるでしょう。
テロは許せない犯罪行為であり厳しく糾弾するものですが、かつて北朝鮮が韓国への軍事行動として大韓航空機をアンダマン海で爆発させたテロや、パンアメリカン航空のジャンボ機がアメリカへのテロの対象としてスコットランド上空で爆破された例を見るとき、民間機がテロの対象になる危険性があることも見ておかねばなりません。
航空機・船舶の運航や国民生活に欠かせない気象情報も、軍事機密として取り扱われることは過去の幾多の経験で明らかです。
以上のように「周辺事態」になれば、陸・海・空・港湾すべての物流が停滞し、公共輸送機関はその役割を果たせなくなり、全国民に多大な影響を与えます。そこに働く労働者の生命と財産も危機に瀕します。このような「ガイドライン」関連法案は、とうてい容認できるものではありません。」
賛同団体(順不同):全日本海員組合/船舶通信士労働組合/全国港湾労働組合協議会/全国港運海貨物流労働組合協議会/全日本運輸一般労働組合/交通運輸労働組合共闘会議/全国自動車交通労働組合総連合会/全国鉄動力車労働組合/全運輸省労働組合/全運輸省港湾建設労働組合/全気象労働組合/全国税関労働組合/東京都区職員労働組合港湾支部/横浜市従業員労働組合建設支部港湾分会/川崎市職員労働組合港湾支部/航空労組連絡会/日本乗員組合連絡会議/航空安全推進連絡会議
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【注目:対人地雷禁止条約「禁止行為を援助してはならない義務」】
3月1日に発効した「対人地雷全面禁止条約(対人地雷の使用、貯蔵、製造、委譲の禁止およびその破壊に関する条約)」への日本の批准に小渕首相がリーダーシップを発揮したことは周知のとおりである。この条約の第1条「全般的義務」第1項には、次のように書かれている。
「各締約国は、いかなる状況下においても、下記の行為をおこなわないことを約束する。
(a)対人地雷を使用すること;
(b)対人地雷を、直接的にも、間接的にも、開発し、製造し、その他の方法で入手し、貯蔵し、保有し、あるいはいかなる者に対しても委譲すること;
(c)この「条約」に基づき締約国に禁止されている行為を、いかなる方法にても、いかなる者に対してもこれを援助し、奨励し、または誘引すること」
この(c)項によれば、対人地雷に依存する米軍活動を日本が援助することは、条約義務に違反する行為となる。米国が朝鮮半島において対人地雷が必要であると強調していることを考えると、日本政府はこの点についての明確な方針をうち出す必要がある。
対人地雷全面禁止条約では、条約遵守の透明性を高めるために、締約国の疑わしい行為について率先した情報開示を求めている。5月3日から7日には、モザンビークで第1回締約国会議が開催される。
この観点から米軍支援の是非についての論争が、国会やマスコミでなされるべきであろう。
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