NPT延長後の核軍縮セミナー・池田外務大臣挨拶(抜粋)
1996年12月2日
*(見出しは編集部、「 」は正確な引用。「非核地帯の拡大」や「消極的安全保障―第1使用禁止」などへの言及はない。)
現実的・段階的アプローチ
「核軍縮に向け国際社会としてまず取り組むべき課題は、核廃絶という共通目標を達成するためのアプローチに合意することであり、まさにこの点をめぐり国際社会に深い意見の対立があることが問題となっています。一つの考え方として、核兵器国に対して即時、あるいは期限を付して核廃絶を約束させるための条約交渉を直ちに開始すべきという主張があります。このような主張は、核廃絶という目標を直ちに実現しようとするいわばdirect approach とでもいうべきものですが、現実の国際社会においてかかるアプローチを進めていくための諸条件が存在するか否か疑問なしとしません。未だに大量の核兵器が現実に存在する中で、国際社会の安全と安定の問題を置き去りにして、単に軍縮措置だけを進めるということはできないということに留意する必要があります。むしろ、わが国としては、核兵器のない世界を実現していくためには、現実的な核軍縮措置を一歩一歩積み重ねていくことが必要であると考えております。これは、先ほどのdirect approachとの対比でいえば、realistic and incremental approachとでも呼びうる考えです。国際社会の共通理解が得られないアプローチを提唱し続けていくだけでは核軍縮に向け一歩も前に進みません。重要なことは、現実の国際安全保障環境に配慮しつつ核兵器国も含め国際社会全体として同意しうる措置を一つ一つ実現していくことであると信じております。」
NPT体制を重視
「まず第一に、我が国は、NPTの役割を重視しています。この条約がなければ、核兵器国は現在よりも多数となり、国際社会ははるかに不安定になっていたでしょう。」「我が国としては、NPTの無期限延長と同時に、『核不拡散と核軍縮のための原則と目標』と、『NPTの再検討プロセスの強化』という二つの決定が行われたことを重視しています。」「2000年に開催される予定の次回再検討会議の成功に向けて、1997年に開催される第1回準備委員会において、強化された再検討プロセスが円滑に開始されることが重要であり、全てのNPT締約国に対し、そのために最大の努力を払うことを改めて呼びかけたいと思います。」
CTBTの重要性
「第二に、核軍縮と核不拡散を進める上で、かくへいきの質的向上に歯止めをかけることが必要であり、その意味で、包括的核実験禁止条約(CTBT)の重要性を改めて強調したいと思います。」「我が国は、現在核実験の停止を宣言している核兵器国が、」「今後再び核実験を行わないことを革新しており、また、この条約に反対の立場を表明した国が」「この条約を早期に締結することによりこの条約が可能な限り早期に発効することを強く希望しています。」「軍縮のための措置は、有効な検証手段を基礎とした効果的な実施体制を伴って始めて真に実効的なものとなるのであり、CTBTもその例外ではありません。」「我が国は、」「地震観測技術を活用した核実験探知技術の向上」や「開発途上国を対象として地震学の専門家を育成する研修」など「(CTBT機関準備)委員会の活動の円滑な立上がりのために人的、財政的な支援を積極的に行っていきます。」
次はカットオフ条約
「第三に、」「核兵器の原料物質となる核分裂性物質の生産を禁止する、いわゆるカットオフ条約をジュネーブの軍縮会議において早期に開始することが重要です。これまでの核軍縮に関する多くの多国間条約交渉と同様、カットオフ条約の交渉においても、有効な検証措置をいかに整備するかといった点を含め、多くの困難な問題を解決していかなければならないでしょう。しかしながら、私は、先に述べた『核不拡散と核軍縮のための原則と目標』において再検討延長会議に参加した全ての加盟国が、CTBTの次のステップとしてカットオフ条約交渉の即時開始と早期妥結が重要であることについて合意していることを再確認したいと思います。」
いっそうの核兵器削減
「第四に、これらの現実的な多国間軍縮措置を着実に進めていく一方、核兵器国は自らの措置として核軍縮を一層伸展していくことが強く期待されます。核兵器国は、世界の平和と安定に寄与するため、NPTへの参加を通じ核の選択を自ら放棄した多数の非核兵器国の信頼に応え、この条約の第六条で約束した核軍縮努力を積極的に推進していくことが求められています。」
解体核物質の処分
「第五に、既存の核兵器の廃棄を着実に進め、また、解体された核兵器から生ずるプルトニュウムや高濃縮ウランに関する透明性を高め、軍事再利用されないように処理・処分することも、核軍縮を不可逆的なプロセスとするために重要です。」「我が国は、1993年4月に旧ソ連の核兵器解体を支援するために一億ドル相当の協力を行うことを発表し、その後ロシア、ウクライナ、カザフスタン、およびベラルーシ各国と二国間の枠組みに関する協定を締結しました。」「また本年4月にモスクワで行われた原子力安全サミットにおける決定に従い、10月には、パリにおいて、防?衛目的にとり不要となった核分裂性物質の処理・処分を検討する国際的専門家会合が開催されました。」「我が国としては、このような兵器級核分裂物質の透明性を高め、軍事再利用されないよう、核兵器国自身がこのような物質を可能な限り早急にIAEAの保障措置の下に置くことを求めて」います。
▲ページの先頭に戻る
|