ジュネーブ軍縮会議における林アキラ日本大使の声明

(1998年8月11日、ジュネーブ)



 総裁、
 きょう、3年間のゆき詰まり状態ののち、ジュネーブ軍縮会議(CD)は「兵器用核分裂物質の生産禁止(カットオフ)条約」に関する特別委員会の設置に全会一致で同意しました。カットオフ条約(FMCT)の主要な主張国のひとつとして、日本政府は、CD参加国すべてが柔軟な姿勢で臨んだことが功を奏し、このような前進を実現できたことを心から歓迎します。しかし、私たちが合意に向かうよう促した、総裁、あなたの数え切れない協議と粘り強い努力なしには、特別委員会の設置は実現をみなかったでありましょう。あなたの努力はこの度のようなポジティブな進展には全く不可欠なものでした。この意味において、総裁、私はあなたに心より感謝申し上げます。

 総裁、
 日本政府は、カットオフ条約は核軍縮の分野できわめて意義深いものであると考えます。1995年の核不拡散条約(NPT)の再検討・延長会議は、この考えを支持しています。カットオフ条約のみで核弾頭の削減をもたらすことができないことは明らかですが、核兵器国の核生産力に歯止めをかけるという点で核軍縮の強化と促進に貢献すると、私たちは信じています。
 同時に、カットオフ条約は核不拡散の点において計り知れないほど貴重なものです。なぜなら、この条約は兵器目的の核分裂性物質の生産を世界的に中止させ、そのことによって不拡散体制を大幅に強固にするからです。核不拡散体制が現在直面している困難を考えるとカットオフ条約はなおさら重要です。
 したがって、カットオフ条約は、核不拡散と核軍縮をともに促進することによって、核兵器廃絶という究極の目標の達成に不可欠な中間的ステップとして役立ちます。

 総裁、
 このような観点から、議題項目T「核軍備競争の中止と核軍縮」に関する協議の重要性を明確に表明している総裁声明に、私は完全に同意します。カットオフ条約の重要性が強調されるべきであることはもちろんでありますが、その締結だけではCDにおける私たちの仕事は充分ではありません。日本は、カットオフ条約に続く次の適切な多国間の方策を特定する努力を、CDが続けるべきであると、強く確信しています。総裁の協議が、このような目的に向かって、私たちが前進することを可能にするような、具体的で建設的な機構や措置を生み出すことを、私たちは切に希望いたします。

 総裁、
 日本政府はカットオフ条約の交渉開始を歓迎します。私たちはまた、これが私たちの仕事の出発点にすぎないことを認識しています。カットオフ条約の本質に関わるような、決定的かつ根本的な問題について、CD参加国の代表の間で見解や立場が違っていることは、いまここにいらっしゃるどなたも、よくご存知のとおりです。条約の義務範囲(スコープ)は、そのような例の一つです。特別委員会の委託任務については、「核兵器およびその他の核爆発装置用の核分裂性物質の生産禁止」と「シャノン報告」に明確に定義されています。しかし、現存する核分裂物質の在庫の問題は、放置できないような重要な問題です。単に特別委員会の設置に同意を得たことよりも、この問題の扱いに成功するか否かに、CDの力量の有無が問われていると、私は確信します。
 この点に関して、日本代表団はアメリカ合衆国、ロシア連邦、そして国際原子力機関(IAEA)のイニシァティブに勇気づけられてきました。日本代表団は、最近のイギリスによる「戦略国防見直し」のイニシァティブ、とくに自国保有の核分裂性物質の量と種類を公表したことに対して歓迎し、感謝します。
 政治的課題とも言える義務範囲(スコープ)の問題に加え、交流過程では無数の解決すべき技術面の問題点があります。これに関連して、私は、有能な専門家の参加をえて5月10日と11日に開催された技術セミナーの成果について、CD参加国の記憶を喚起しておきたいと思います。議長のまとめ報告を入手ご希望の場合は、日本代表団にご請求ください。(訳:ピースデポ。協力:金場美幸)




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