インド原子力省と国防研究開発機関との共同声明と一問一答

1998年5月17日 ニューデリー



 1998年5月11〜13日にポカラン実験場で行った五つの核装置の実験は、原子力省(DAE)と国防研究開発機関(DRDO)との多年のパイオニア・ワークの成果である。

 DAEは原子力科学技術の各分野にわたって先駆的な研究開発を進めてきた。発電用原子炉、燃料再処理工場、および燃料サイクルにかかわる他の諸活動について設計し、建設する包括的な自力の能力を発展させた。DAEはまた研究炉の開発と建設を行い、工業と農業における原子力平和利用を強力に推進してきた。バーバー原子力研究センター(BARC)はわが国における多様な専門分野にまたがる大規模な研究機関の一つであり、広範な領域で新しい技術システムをつくり出す能力を有する。今回の五つの核実験に用いられた核分裂性物質は完全に国産であり、DAEの諸組織が有する技術に基づいて自力で生産された。

 DRDOは軍の新型兵器システムの研究開発に従事する大きな機関の一つであり、一連の防衛技術の最前線に位置している。DRDOは、技術を生産部門に移転する部局と協同して、防衛システムの設計開発および実証にかかわる多数のプロジェクトを有する。爆発物と爆発関連技術、およびシステム工学とシステム統合に関するDRDOの経験と専門知識こそが、今回実験された五つの装置の重要部分をなしている。

 種々の核爆発物――例えば核分裂、ブーストつき核分裂、熱核、および低イールド(イールド=発生エネルギー量)――の設計と開発は、BARCの25年を超える研究開発によってなされた。BARCはまた、部品の保存可能期間の長期化や、イールド対重量比の最適化など、新しい構想を作りだした。また核分裂性物質を適切な形に仕上げることもBARCによって行われた。1974年5月の平和目的の核爆発(訳注:インドは当時からそう主張している)は、核装置に対するインドの能力を早い時期に、かつ成功裡に実験して見せたものである。

 DRDO所属の研究所の一つは、確証済み設計の兵器化を担当した。すなわち新型起爆装置の設計と試験と製造、頑丈な高電圧点火システム、インターフェース工学、システム工学、軍事用仕様に適するシステム統合などである。他の三つの研究所が、空気力学、発火装置、信管、安全インターロック、試験飛行などで貢献した。またDRDOは一連の試験を行い、必要な操作上の余裕を達成した。さらにDRDOは、DAEとともに核実験を実施するための現地工事を担当した。

 DRDOとDAEは、インドが核の脅威を消去する能力をもつという国家的使命のもとに、それぞれの技術力を効果的に効率よく調整し力を合わせてきた。

 5月11日の三つの核実験は、約12キロトンのイールドをもつ核分裂装置、約43キロトンの熱核装置、およびキロトン未満の装置を用いたものであった。これらの装置はすべて同時に爆発された。5月11日の熱核装置のイールドに関しては、爆発の閉じ込めの問題や、近くのいくつかの村の建物や構造物への被害を最小限に止めることから決められた、厳しい規準に合うように計画されたことを指摘しておきたい。

 5月13日に、さらに二つのキロトン未満の核実験が行われた。これらもまた同時に爆発された。それぞれのイールドは0.2から0.6キロトンの範囲内にある。

 5月11日の核実験は、13日と同様、完全に閉じ込められ、大気中への放射能の放出はなかった。

 これら装置のイールドの測定値は事前の設計値と一致した。DAEが開発した複雑なソフトウェアを用いて装置の設計とイールドの予測がなされた。

 5月11〜13日の核実験によって、いろいろな使用目的と運搬手段に合わせて、さまざまなイールドをもつ核兵器を設計できるわれわれの能力を確認する上での貴重なデータが取得できた。今回の核実験によって、新しい設計をコンピュータによってシミュレートする能力が大いに高められたし、将来必要とあれば、未臨界実験の段階に進むこともできる。

 DAEとDRDOとは、今回の作業を見事に支援したインド陸軍とインド空軍に対して感謝したい。またDAEとDRDOとが核の脅威に対抗する能力を有することに信頼を寄せてきた現政府と、これまでの政府に対しても感謝する。


<記者会見一問一答>

出席者:
R.チダムバラム博士(インド原子力委員長、原子力省長官)/A.P.J.アブダル・カラム博士(ラクシャ・マントリ科学顧問、国防研究開発機関長官)/アニル・カコドゥカール博士(バーバー原子力研究センター所長)/K.サンタナム博士(国防研究開発機関技術担当代表顧問)


◆熱核装置はどのくらい水爆に近いものか? 引き金の核分裂に使われた物質は何か?

チダムバラム 水爆とはその俗称である。水爆には核分裂による引き金があり、それと別に適切に配置する必要のある熱核反応物質がある。したがってそれは2段階からなる装置である。第2段がイールド(発生エネルギー量)の大部分を占める。その値はきわめて大きなものにできるが、われわれの場合は、まわりの住民に及ぶ恐れのある被害の点からイールドを制限せざるをえなかった。使用した物質名はいえない。

◆戦略指揮システムをもっているか?

カラム 指揮の意味を説明してほしい。われわれは協同して作業している。協同作業の頂点に兵器化がある。指揮・管制システムに関していえば、現在いくつかの形式をもっており、それに向かって進みつつある。

◆インドは核兵器をもっているか?

カラム 首相はインドは核兵器国であると言った。核不拡散条約(NPT)第9条を参照していただきたい。

◆シャクティ・1は熱核兵器ではなくブーストつき核分裂装置だと聞いているが?

チダムバラム 先にいったように、熱核兵器は2段階、つまり核分裂の引き金と第2段からできている。この装置は2段階でできていて、熱核兵器だった。

◆あなた方はいつ核実験を実施するよう告げられたか?

カラム 30日前である。

◆インドはいまや、未臨界実験、流体核実験、流体力学実験、そしてコンピュータによるシミュレーションに向かって進みつつあるのか?それにはアメリカの国立点火施設のものと同様のレーザー核融合技術も含まれるか?

チダムバラム イールドは臨界超過の程度による。超過が大きいほどイールドが大きい。k<1ならば臨界未満である。われわれはアメリカの慣性閉じ込め核融合計画のことは知っている。それはペレットにレーザー・ビームを当ててある種の現象をシミュレートする。われわれは、われわれのしたことをしたまでである。

(ニューヨーク・タイムズ、J.ブーンズ):

◆インドは運搬可能な兵器体系を現にもっているか?

カラム DRDOとDAEの共同プレス・レリーズを引用しよう。これは国家的使命である。首相はインドは核兵器国であるといった。

◆インドはさらに地下核実験をする必要があるか? それとも今回の一連の実験で目的を達したか?

チダムバラム 5月13日のプレスへの声明を読んでよろしいか。計画した一連の地下核実験は完了した。

◆パキスタンの核爆発はあるか?

カラム この記者会見に来る時点でわれわれは知らない。われわれがやったのはインドの安全保障のためである。

◆核兵器であって、ブーストつき核分裂でないことは確かか?

チダムバラム すでにいったように、熱核兵器は2段階になっていて、核分裂の引き金と第2段でできている。ブーストつき核分裂装置は水爆ではない。水爆は二つの部分からできていなければならない。

◆インドは原子力計画を平和利用と軍事利用に分離し、DRDOは軍事部門を担当すると聞いている。また、平和利用の原子炉を保障措置(訳注:国際原子力機関)のもとにおくつもりか?

カラム あなたのいわれることがわからない。われわれは協力して存在し、協力して運営している。たがいに他の仕事をひき継ぐ必要はない。

チダムバラム  その通り。

◆経済制裁はBARCやDRDOにも影響するか?

カラム 技術面でわれわれは長年制裁を受けてきた。スーパーコンピュータの導入を拒否されたときにもわれわれは前進して自前のものを作った。宇宙開発計画でも、極低温エンジンを拒否されたときも前進して自前で作り、来年には出来上がるはずである。誰もわれわれを技術的に困らせることはできない。挑戦することによってわれわれは力を発揮する。

チダムバラム つけ加えていえば、二十数年間われわれは技術管理の体制に直面してきた。そのことで仕事は遅れはしたかもしれないが、自己依存を増大させた。現在のインドの原子力計画はほとんど100%が国産である。

◆坑道の深さはどれほどか?

チダムバラム それはいえない。

◆一番近い村はどのくらい離れていたか?

チダムバラム 5km少しであってケトライ村である。爆発のイールドはそこから決められた。

カラム 水爆の規準はその村の位置に基づいて決められた。

◆そうすると、もっと大きな規模の実験もできたのか?

チダムバラム その通り。

◆インドはいま核兵器技術のどのあたりにいるのか?

カラム 5月11日の三つの核実験、つまり水爆と核分裂装置とキロトン未満装置、およびその後の二つのキロトン未満装置によって、われわれの核兵器技術は自分を信頼できる段階に達したことがはっきりと立証された。要求があれば、それを行うことになる。

◆同時爆発を行った理由は何か?

チダムバラム 二つの装置、すなわち熱核装置と核分裂装置とは1km離れていた。一方の爆発によって他方が被害を受けないようにする必要があり、衝撃波は何ミリ秒かで伝わる。それゆえ同時に爆発させた。それは比較的簡単なことで、一つのボタンで三つの装置を爆発させた。われわれは地震測定を行い、加速度計のデータもとった。

◆水爆のエネルギーのうちどのくらいが熱核反応によるものか? 実験および兵器化のコストは?

カラム コストについてはそれほどの巨額ではない。関係省庁の予算で、多少とも通常の活動に割り当てられたものから引き当てられた。

チダムバラム エネルギーの割合に関しては総計で45キロトンだったが、核分裂の引き金は核分裂装置のエネルギーと同等である。

◆これらの核弾頭はプリスビとアグニ(ミサイル)に取りつけ可能なものか?

カラム われわれのもつミサイルは、どんな種類の弾頭も、つまり通常弾頭でも核弾頭でもその重量、大きさ、および周辺環境条件に従って運搬可能である。ミサイルは運搬手段にすぎず、花だって運ぶことができる。

◆弾頭の小型化を計画しているか?

カラム すでにいったとおり、兵器化は、大きさ、重さ、性能特性、および環境条件にかかわるものである。

◆サンデルジ将軍とK.サブラマニアンはインドは100個の弾頭を必要とするといっているが、同意するか? 生産はいつから開始するか?

カラム 数については専門家によって違う。私はノーコメントである。

◆アメリカは核装置を備蓄している。インドの場合の必要数の限度は?

カラム 私は核兵器の拡散問題を研究してきた。アメリカは何万個かの弾頭をもっている。核弾頭は政治目的および商業目的で用いられる。われわれの地域においては、商業上の関心から拡散する事態を見てきた。われわれの開発はそのようなものではない。われわれの場合はわが国の安全保障のためである。

◆アメリカの監視システムはインドによって意図的にだまされたのか、それとも偶然か?

カラム ノーコメント。われわれはこの仕事を求められたとおりにやった。

◆インドはパキスタンの爆弾の大きさや爆発力を測定する技術をもっているか?

チダムバラム 爆発前のことか後のことか? もちろんわれわれは遠隔地震計を使って彼らの実験を検知する手段をもっている。しかし彼らの計画については何も知らない。私はパキスタンを訪ねたこともない。われわれの実験では、記録された波形は、同時爆発のゆえに混乱した。事実、アメリカにある国際データ・センター(IDC)はインドの実験を地震と記録した。

◆アグニ計画をさらに進める予定は?

カラム 必要なら必要な数だけ製造できる。到達距離を伸ばす必要があればそうできる。

◆さらに核実験をする必要はあるか?

チダムバラム プレスのための声明を見ていただきたい。

◆何個の地震計が使用されたか?また三つの実験とバックグラウンドの雑音を区別できるインドの能力はどんなものか?

カラム 発表できない。

チダムバラム 地震信号を記録するときにはバックグラウンドの雑音や人為的な雑音が存在する。それに検出限界がある。包括的核実験禁止条約(CTBT)では1キロトンとされている。われわれは地震波形と爆発波形を区別するソフトウェアをもっているが、強度ないしイールドについてはファクタ2程度の誤差がありえよう。

◆1995年に準備されたサイトと同じサイトが今回使われた疑いがあるが事実か?

チダムバラム 当時メディアの無責任な報道の反響には応えないといったがその答は変わらない。

◆サイトはまったく新しく用意されたものか?

チダムバラム ノーコメント。

◆1974年以降、なぜ24年もかかったのか?

 ノーコメント。

◆5つの実験からデータを収集したが、今後の開発はCTBTの枠内でやりうるか?

チダムバラム いい質問だかノーコメント。

◆実験はなぜいつも5月に行われるのか?

 とくに理由はない。

◆1974年と1998年の実験の共通点は?次回は?

チダムバラム 今回は一つの里程標である。適当な折りにお伝えする。

◆アグニミサイルに関して何か予定されている変更はないか?固体液体燃料を全部液体燃料に変更するとか?到達距離を伸ばすには形状はどうなるか?

カラム 到達距離は変更できる。

◆科学者たちはいつから準備していたか?

チダムバラム 1974年以来われわれは知識をもっている。技術と知識はずっと改良され続け、洗練されてきた。

◆インドは検知されないよう特別に実験を準備してきたのか?

チダムバラム それは違う。

◆しかしCIAは検知できなかったではないか?

チダムバラム CIAに質問するべきだ。



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