核兵器に関する世界の文民指導者の声明

1998年2月2日 ワシントンD.C.



 冷戦の終焉は、国際政治や安全保障の分野に深遠な変化をもたらした。イデオロギー的な対立にかわって、人間の取り組みのあらゆる分野で地球大の関係が発展しつつある。断絶的な状況がある一方で、平和的な対話も行われている。鋭い敵対関係もあるが、暴力や流血事態ではなくて、平和的解決を図る相当な努力も行われている。

 とくに重要なのは、核兵器の壊滅的な脅威のない世界の実現という長年求めてきた展望が、突然、手のとどくものとなったことである。人類の歴史の中で画期的な時期が訪れているのである。この崇高な目標の実現する奇跡に近い機会が生じている。しかし、この機会は壊れやすいものでもある。核拡散の可能性は、いつまでも阻止しておけるものではない。学者や政治家らが、この問題に緊急に着目し最善の努力をすることが求められる。

 核保有国、それに事実上の核保有国の指導者らは、1970年の核不拡散条約(NPT)に記されており、また、その無期限延長を定めた1995年の文書によって明確にされ再確認された核軍縮の約束を果たさなければならない。そのためには、彼らは、核兵器を体系的かつ前進的に削減し、その重要性をなくしていく作業を開始し、また、彼らの目標が、最終的に核兵器を廃絶することにあると明確に宣言しなければならない。

 多くの国々の軍部の多くの指導者たちが、核兵器のない世界の方が、すべての国々の安全がより保障されることになると警告を発してきた。核兵器のない世界という目標に向けてただちにとるべき、そして実行可能な措置が、「核兵器廃絶のためのキャンベラ委員会報告書」を初めとする注目すべき多くの研究によって列挙されている。われわれ以下に署名したものは、これらの提案のなかでも、次の措置を全面的に支持するものである。


1. 核兵器の臨戦態勢を解き、核兵器をその運搬手段からはずして、各国の安全な貯蔵の下に置く。

2. 核兵器用の核分裂物質の生産を中止する。

3. 包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効するまでの間、核実験を停止する。

4. START?の批准に関係なく、米口の間で核兵器のさらなる大幅削減に向けた交渉を直ちに開始する。

5. 他の核保有宣言国、また宣言していない核保有国は、米ロの核兵器保有量が自分たちのレベルに近づいたとき、国際的な査察、証明、保障措置の制度の枠内で、比例関係に基づいた削減過程に参加することを明確に約束する。

6. 核廃絶という遠いかもしれないが最終的な目標に向けた措置の実施、達成、執行の計画を作成する。


 以上6つの措置は、ただちにとられるべきものである。

 以下の追加的措置は、現在妥当で実施可能なものか判断するために注意深く検討すべきものである。


◆自国の主権の及ぶ領土以外のところに配備されている核兵器を自国に持ち帰る。

◆核兵器の「第一不使用」を約束する。

◆大型の長距離弾道弾の生産と保有を禁止する。

◆核兵器の生産に必要なすべての物質について計量し、国際的な保障措置の下に置く。


 世界は、核戦争の脅威の下で、あるいは、核抑止がもたらす心配でもろい平和のもとで、永遠に生き続けることを運命づけられてはいない。このような脅威は許容できないものであり、このような平和は平和の名に値しない。核兵器の圧倒的な破壊力そのものが、その廃絶を道徳的義務とする。これが、われわれに与えられた使命である。さあ、始めよう。


署名者一覧

アルゼンチン ラウル・アルフォンシン(元大統領)
オーストラリア マルコム・フレーザー(元首相)/ゴフ・ホイットラム(元首相)/キム・C・ビーズリー(元副首相)/リチャード・バトラー(国連大使)/ギャリス・エバンス(元外相)
バングラデシュ A.D.M.S.チュウドリー(元副首相)/ムハンマド・ユーナス(グラミーン銀行支配人)
ブラジル ジョセ・サルネイ(元首相)/セルソL.N.アモリン(元外相)
ブルガリア ニコライ・ドブレフ(元内務相)/ニコライ・カモフ(外務委員長)/ディミトゥラ・パブロフ(国防相)
カナダ ピエール・トルドー(元首相)/ダグラス・ロウチ(元軍縮大使)
チリ ホワン・ソマビア(国連大使)
中国 銭家棟(元国連大使)/陳継峰(中国平和軍縮人民協会)
コロンビア ミサエル・パストラナ・ボレロ(元大統領、97年8月死去)
コスタリカ ホセ・フィゲレス(大統領)/オスカル・アリアス(元大統領)/ロドリゴ・カラソ(元大統領)/レベカ・グリンスパン・マユフィス(第二副大統領)/ロドリゴ・オレアムノ・B(第一副大統領)
キプロス ジョージ・バシリウ(元大統領)
エジプト エスマット・アブドゥル・メギド(元外相)
フィンランド カレビ・ソルサ(元首相)
フランス ミシェル・ロカール(元首相)/ジャック・アタリ(元大統領特別顧問)
グルジア エドアルド・A・シェワルナゼ(大統領)
ドイツ ヘルムート・シュミット(元首相)/ハンス・モドロフ(元首相)/エゴン・バール(元特別相)/アンゲリカ・ベール(国防報道官)/アルフレッド・ドレガー(連邦議員)/ハンス・コシュニク(元EU行政官)/マルクス・メッケル(元東独外相)/バルター・ロンベルク(元東独蔵相)/ローター・シュペート(元州知事)/ハンス・ヨヘン・ボーゲル(元法務相)
ハンガリー エルビン・ラスロー(ブタベスト・クラブ)
イスラエル ヤエル・ダヤン(国会議員)
日本 羽田孜(元首相)/細川護煕(元首相)/宮沢喜一(元首相)/村山富市(元首相)/竹下登(元首相)/土井たか子(元衆議院議長)/後藤田正晴(元副首相)/平岡敬(広島市長)/伊藤一長(長崎市長)/河野洋平(元副首相)/鯨岡兵輔(元衆議院副議長)/大江健三郎(ノーベル文学賞受賞者)
キルギス アスカル・アカエフ(大統領)/ムラトベック・S・イマナリエフ(外相)/ローザ・オトゥンバエバ(元外相)
レバノン サリム・エル・ホス(元首相)
マレーシア イスマイル・ラザリ(国連総会議長)
メキシコ ミゲル・デ・ラ・マドリッド(元大統領)
モンゴル ポンサルマーギン・オチルバト(元大統領)/ジャルボ・チョインホル(米国大使)
ナミビア サム・ヌヨマ(大統領)
ナウル ラグモト・ハリス(元大統領)/ルーベン・クン(元大統領)/デビッド・ピーター(元国会議長)
オランダ ルドルフス・ルベルス(元首相)/アンドリース・ファン・アフト(元首相)/E・コルトハウス・アウテシュ(元スペイン大使)/J・ファン・ハウエリンゲン(元副国防相)/J.G.クラユベルド・バウテルス(元国防相)/D.J.H.クラウシンガ(元国防相)/J・ドゥ・ラウテル(元国防相)/J.C.テルラウ(元副首相)
ニュージーランド デビッド・ロンギ(元首相)/ジェフリー・パーマー(元首相)
北アイルランド メイリード・マクワイア(ノーベル平和賞受賞者)
パキスタン サドラディン・アガ・ハン(元国連難民高等弁務官)/マフブブ・ウル・ハク(元蔵相)
パナマ リカルド・デ・ラ・エスペリーリャ(元大統領)
フィリピン コラソン・アキノ(元大統領)
ポルトガル マリア・デ・ローデス・ビンタシウゴ(元首相)
韓国 申鉉 (元首相)
ロシア エゴール・ガイダル(元首相)/ミハイル・ゴルバチョフ(元ソ連大統領)/ゲオルギ・アルバトフ(米国カナダ研究所)/アレクサンドル・ベススメルトヌイフ(元ソ連外相)/ビタリ・ゴルダンスキー(パグウォッシュ委員会)/ローランド・ティメルバエフ(ロシア政治研究センター)/ユーブゲニイ・ベリコフ(国家安全保障会議委員)/アレクサンドル・N.ヤコブレフ(ロシア公共テレビ議長)
南アフリカ F.W.デクラーク(元大統領)/デズモンド・ツツ(主教)
スペイン エンリケ・バロン・クレスポ(欧州議会)/フェルナンド・モラン・ロペス(元外相)
スリランカ A.T.アリヤラトナ(サルボダヤ運動)/アヌーラ・バンダラナイケ(元教育相)/ジャヤンタ・ダナパーラ(元米国大使)
スリナム I.M.ジュワラペルサド(国会議長)
スウェーデン ヨーラン・ペーション(首相)/イングバル・カールソン(元首相)/マイブリット・テオリーン(欧州議会)
タンザニア アル・ハッサン・ムビニ(元大統領)/ジュリアス・ニエレレ(元大統領)/サリム・アハメド・サリム(元首相)/ジョセフ・ワリオバ(元首相)
タイ アナンド・パニャラチュン(元首相)
ウガンダ ミルトン・オボテ(元大統領)/ポール・カワンガ・セモゲレレ(元副首相)/ナファリ・アケナ・アドコ(元国家安全保障相)/エマニュエル・オテング(元法相)
英国 ジェームズ・キャラハン(元首相)/デニス・ヒーリー(元国防相)/ジョン・エドマンズ(元軍備管理軍縮局長)/ベティ・ウィリアムズ(ノーベル平和賞受賞者)
米国 ジミー・カーター(元大統領)
ジンバブエ ロバート・ムガベ(大統領)
 



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