「核不拡散・核軍縮に関する緊急行動会議」についてのNGO国際レター



高村正彦外務大臣様

 5月に行われたインド、パキスタンの核実験のあと、当時の外務大臣であった小渕恵三総理大臣は、核不拡散と核軍縮のためにとるべき緊急行動について話し合う国際会議を開くことを提案しました。小渕提案は一連の「核不拡散・核軍縮に関する緊急行動会議」という形で実現するにいたりました。日本国際問題研究所と広島平和研究所の共催で、第1回会議が8月末に東京で開催されます。世界各地の非政府組織(NGO)で、核軍縮のために活動してきた私たちは、この重要なイニシャチブを心から歓迎し、感謝いたします。
 疑いもなく、人類はいま、核軍縮のために緊急に、かつ断固とした姿勢で行動すべきときです。日本政府の主催する過去の会議の多くは、政府高官や専門家に討論の機会を与えるだけで、日本政府の方針を打ち出すものではありませんでした。それは何がしかの役割を果たしたでありましょうが、私たちの直面する事態の緊急性を考えるとき、「緊急行動会議」は、これまでの会議と違ったものでなければならないと、私たちは信じています。とくに、日本政府は断固としたリーダーシップを発揮して、人類は核兵器のない世界に向かう明確な方向をもたないまま21世紀に入るかもしれないという、今や一般化しつつある危険な考え方を打ち破り、変える努力をすべきであります。
 このような非核の未来への熱望を心に抱きつつ、私たちは過去の日本の核軍縮政策の弱点について率直に指摘しなければなりません。
 私たちは、日本の市民の抱いている強い反核感情と日本政府代表が国際的な軍縮交渉や討論において示す消極的な姿勢とのあいだに、大きなギャップがあることに印象づけられてきました。もっとも際立った例は、核兵器の使用や使用の威嚇の合法性に関する国際司法裁判所(ICJ)の法廷において行われた広島市長と長崎市長の証言を、日本政府が支援しなかったことです。両市長の証言は、1996年7月8日に出されたICJの歴史的な勧告的意見に貴重な貢献をしました。
 米国の核の傘を要求する日本の政策は、核軍縮を求める日本政府の立場をきわめて弱く、偽善的なものにさえしています。なぜなら、自国の安全保障に核の傘が必要であるという考えに立つならば、日本はインドのような国が同じような目的のために核兵器をもつことを認めざるをえなくなるからです。
 この危機的な状況において、戦争における原爆投下によって壊滅的な被害を受けた唯一の国として、日本は人類に対して特別の責任をもっています。したがって、日本はこの問題について大胆なリーダーシップをとり、来たるべき「緊急行動会議」で、次のような措置をとることを私たちは求めます。
(1)日本は、核兵器が安全保障に役立つという誤った考えを、完全に放棄すべきです。日本は核の傘から出て、日本と朝鮮半島を含む東北アジア非核地帯の設立の努力を開始すべきです。その際、日本は、周辺の核保有国から消極的安全保障をえることができるはずです。
(2)日本は、98年6月9日に核兵器廃絶のために共同行動をとる決意を表明した8カ国の「新アジェンダ連合」への支持を表明すべきです。日本は、同好の国やNGOとともに、いっそう強力な連合を形成し、核軍縮への世界的な努力を開始することも可能でしょう。
(3)日本は、「緊急行動会議」が次のことを決議するようリーダーシップを発揮すべきです。つまり、核兵器国が核兵器の早期撤廃を明確に約束するよう促し、世界的に核兵器を禁止する条約にいたるような交渉をただちに開始するよう決議することです。
 広範な構成員からなるNGOの代表として、私たちは核兵器のない世界の実現のために、貴下とともに働く機会があることをお待ちしています。

1998年8月末日   署名者一同



署名者 (アルファベット順。組織・肩書は所属を表すのみ。98年8月12日現在。)

安斎育郎:立命館大学教授(日本)コリン・アーチャー:国際平和ビューロー(IPB)事務局長(スイス)プラフル・ビドワイ:インド核軍縮運動(MIND)(インド)オレク・ボドロフ:グリーン・ワールドNGO議長(ロシア)ケイト・デュース:クライストチャーチ軍縮安全保障センター(ニュージーランド)ジョー・アン・フラー: ピース・アクション(アメリカ)舟越耿一:長崎ピースバス代表(日本)ロバート・グリーン:イギリス世界法廷プロジェクト(イギリス)ニッキー・ハーガー:太平洋軍備撤廃運動(PCDS)(ニュージーランド)服部学:平和資料協同組合(ピースデポ)代表(日本)池田眞規:反核法律家協会・事務局長(日本)伊東壮:日本原水爆被害者団体協議会(被団協)代表委員(日本)キャロル・ジャーンコウ:サンディエゴ平和資料センター(米国)ピーター・ジョーンズ:戦争抵抗者国際委員会・副議長(オーストラリア)ジャクリーン・カバッソウ:西部諸州法律財団・所長(アメリカ)鎌田定夫:長崎平和研究所・所長(日本)キム・ヨンハン:太平洋軍備撤廃運動(PCDS)韓国ファシリテーター(韓国)ディビッド・ナイト:核軍縮運動(CND)議長(イギリス)リー・サムスン:韓国カトリック大学教授(韓国)リュー・ミン:上海社会科学アカデミー・アジア太平洋研究所(中国)ニック・マクレラン:太平洋問題資料センター(PCRC)(フィジー/オーストラリア)アブドゥル・ナイヤー:カイディ・アザム大学物理学部教授(パキスタン)西田勝:非核自治体全国草の根ネットワーク世話人(日本)大庭里美:プルトニウム・アクション・ヒロシマ(日本)小川岩雄:核軍縮研究会、核物理学者(日本)アナンド・パトワルダン:インド反核運動(インド)アレクサンダー・ピカエフ:ロシア科学アカデミー世界経済・国際関係研究所(ロシア)ロペティ・セニトゥリ:太平洋問題資料センター(PCRC)所長(フィジー)庄野直美:核兵器廃絶を考える会・世話人代表(日本)ローランド・G・シンブラン:非核フィリピン連合・全国議長(フィリピン)ロセナ・トゥバナバウ-サラブラ:太平洋問題資料センター(PCRC)非軍事化担当副所長(フィジー)梅林宏道:太平洋軍備撤廃運動(PCDS)国際コーディネーター(日本)コラソン・バルデス-ファブロス:非核フィリピン連合全国事務局長(フィリピン)リズ・ウェストモーランド:イギリス非核自治体(イギリス)パティ・ウィリス:太平洋軍備撤廃運動(PCDS)資料コーディネーター(カナダ)スティーブン・ヤング:英米安全保障情報評議会・上級研究員(アメリカ)



ページの先頭に戻る


特定非営利活動法人
ピースデポ
〒223-0051 横浜市港北区箕輪町3-3-1-102
TEL:045-563-5101 FAX:045-563-9907
Email:
office@peacedepot.org