■ ASEAN地域フォーラム



第6回ARF(ASEAN地域フォーラム):

信頼醸成から予防外交へ

ARFで北朝鮮包囲をめざす日本は信頼醸成ぬきの予防外交/まず北朝鮮の参加条件について留保を許す方式を提案せよ


 7月26日、シンガポールで第6回ARF(ASEAN地域フォーラム)が開催された。PCDSは、1994年の第1回会議以来、NGOの対抗会議を開催するなどARFに継続した働きかけを行い、その進展を監視してきた。第6回会議議長声明は、ARFが信頼醸成の段階から、紛争予防の段階に入りつつあることを確認した。具体的課題としては、南沙諸島、朝鮮半島情勢が重要となる。しかし、ARFにおける日本政府の対北朝鮮「予防外交」は、短絡的であり疑問を投げかけざるをえない。

指導力不在のARF
 ARFは、1994年、ASEAN(東南アジア諸国連合)が6カ国構成のときに出発した。したがって第6回で議長国が一巡して、ARFの第一ラウンドが終わったことになる。
 アジア太平洋地域の安全保障問題を、ASEANという途上国の連合が中心に座って協議するという、このユニークな国家間フォーラムは、ゆっくりとしたペースで運営され、少なくとも「定着する」という実績を上げてきた。
 しかし、今後の展開について力強いものが感じられなかったというのが、シンガポール会議からくる率直な印象であった。信頼醸成から予防外交の場へと、新しい段階を宣言する時期であったにもかかわらず、未来へ向かう姿勢はいかにも弱々しい。
 ARFは「信頼醸成措置の促進」から「予防外交機構の開発」、そして「紛争解決機構の開発」という3段階の発展をとげることをめざしている。ただし第3の紛争解決の段階については、強制力をもった地域機構を必要とすると考えられ、ARFがそのような機構を作り出すという合意には至らず、あいまいな状態に留まっている。
 ところが、予防外交に進むとすれば、単に協議するだけではなく、地域安全保障の場として安心のおける指導力が必要となる。小国連合が発揮する指導力は、軍事力や経済力ではなく、対話を有効たらしめる熱意と一貫性のある道義性に基づくものであろう。ASEANに、この事への自覚を促したい。
 もともと、人権問題に関して大きな矛盾をかかえるASEANであり、指導力発揮には時間がかかると予想された。しかし、冷戦時代の地域機構が、たえず大国の政治に利用されることが危惧されたのに対して、小国連合が主導権を持つことの利点があると考えられた。大国は、この点を意識しつつARFを育てる問題意識を持つべきである。

危惧される日本の北朝鮮外交
 にもかかわらず、今回、日本政府がARFに北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)のミサイル問題を持ち出したやり方は、悪い方向の先鞭をつけた。大国が、自国の外交の道具として、ARFを利用することにのみ専念した感が強いからである。
 朝鮮半島の問題がARFという多国間協議の場に持ち出されること自体は、むしろ勧められるべきことである。しかし、日本政府は、ARFがこの問題を協議するにふさわしい場となるように、努力をしてこなかった。つまり、北朝鮮が地域で唯一、いまだにARFに参加してないのである。その結果、北朝鮮がいない場で北朝鮮に関する議論をするという、信頼醸成のうえでもっとも悪い形で、日本政府はARFを利用したことになる。日本がASEAN諸国に絶大な影響力を持つ超経済大国であることを考えると、なおさら、公正を欠く外交姿勢であったと言わざるをえない。

北朝鮮のARF参加問題
 ARFへの参加は、北朝鮮が拒んでいるのであって、北朝鮮自身に問題があるという主張がある。果たしてそうであろうか。
 最近の状況だけを見ると判断を誤る。昨年のマニラ会議では、議長国フィリピンが北朝鮮に参加を促した。今回、米国のオルブライト国務長官は、北朝鮮が再度ARFへの参加を申し出るべきだと発言した。
 しかし、ふり返ってみると、95年、北朝鮮は参加の意思表示をしたが96年会議に招待されなかった。そして、まさにその会議で新規参加の条件が決定された。その条件の一つは、「新規加盟国は、加盟が許されるに先だって、過去のARFの決定や声明を全面的に容認し、尊重することに同意すべきである」というものであった。
 この条件は、北朝鮮不在のままで論じられてきたARFの合意事項に同意しなければ、北朝鮮の加盟は許されないことを意味する。「これを呑め。呑まなければ仲間にしてやらない」という形は、すべての当事国が出席するという地域安全保障機構の大前提に、ふさわしくない。

全当事国の参加こそ急務
 過去6回のARF議長声明を読み返してみると、今回、シンガポール会議で日本が推進したミサイル非難の内容が、北朝鮮に対してもっとも高い障壁を設けたと考えられる。問題なのは、「出席した各国大臣は、1998年8月のペイロード打ち上げや他のミサイル関連の活動が、朝鮮半島や地域の安定にとって深刻な結果をもたらすと、憂慮を表明した」(「議長声明」第12項)という部分である。現在の加盟ルールでは、北朝鮮がこの文章に同意しなければ、加盟できないことになる。
 日本政府は、北朝鮮不在の場で北朝鮮を包囲するような外交を行うことにARFを利用してはならない。今後日本政府は、北朝鮮がARFの過去の合意事項に一部留保することを許し、ARFの設立趣旨への賛同を基本条件とするような、北朝鮮の参加の道を提案すべきである。そして、ARFが、当事国すべてが参加する多国間安保協議の場となることに、まず一貫した努力を払うべきである。
 それが信頼醸成と予防外交の場としてのARFの権威をうち建てることにつながるであろう。
 PCDSは、第6回ARFに対していくつかの要求を行った。要望書を別に掲載して資料とする。(梅林宏道)



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