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PCDSから
ARFへの手紙

ASEAN事務局長ロドルフォ・C.セベリノ・Jr.殿
ASEAN地域フォーラム参加国外務大臣殿

第9回ASEAN地域フォーラム(2002年7月31日、ブルネイ、バンダル・スリ・ブガワン)について

事務局長ならびに
外務大臣殿

 太平洋軍備撤廃運動(PCDS)を代表してお手紙を差し上げます。PCDSは、過去17年間にわたり、アジア太平洋地域の平和のために活動してきた調査、情報、支援のネットワークです。私たちはこの手紙を、東南アジア諸国連合(ASEAN)事務局長および2002年7月31日にブルネイのバンダル・スリ・ブガワンにおいて開かれる第9回ASEAN地域フォーラム(ARF)に参加予定のすべての国の外務大臣にお送りしています。

 2002年のARFは、9月11日および「対テロ戦争」の開始以来、はじめての会議です。これらの事件は、まさに、ARFの仕事に関係しています。「テロとの戦争」の名において、新たな軍事的緊張がARFの地理的範囲の中で起こってきています。前回のARFから一年の間に、世界最強の国によってARFをはじめとした多国間メカニズムが軽視されており、国際関係における危険な傾向がより顕著になってきています。「テロとの戦争」が、ARF発足以来人間の安全保障へ向けて獲得してきた成果、その壊れやすい成果を脅かす域内活動に対する便利な口実として利用されることがないことが、極めて重要であると私たちは考えます。軍事費や武器購入の増大、軍備管理と軍縮体制に内在する多国間主義と国際的規範の蔑視、国内での反対勢力や反体制派の抑圧、これらすべてを反テロの名のもとに行っている国をARFは強く非難しなければなりません。
 ARFが、この著しい変化をとげるアジア太平洋地域における唯一の安全保障問題に関する政治的協議組織であるため、私たちはARFの仕事に強い関心を持ちつづけています。前回のARF会議以降に起こったできごとをめぐる状況によって、ARF過程はとりわけ重要になりました。世界中で暴力的な紛争が起こり、強い影響力を持つ国による軍事的「解決」への依存が増加する時代において、ARFは非軍事的な安全保障組織を代表しています。この意味において、私たちは、第9回ARFが、その有効性の飛躍的向上のためにこの歴史的好機をつかみ、人間の安全保障を妨げるのではなく作り上げていく積極的な方法を切望している世界に向けて、非暴力の国際関係モデルの役割を果たすべきと考えます。このようなリーダーシップは、近年ASEANでの議論において主題であった、ASEANのイメージ強化とも合致するでしょう。(略)
 私たちは、ARFが地域安全保障問題において確固とした前進を得るために、以下の事項に関して貴職の注意を喚起し、今年のARFでの議論に含んでいただくことを望んでいます。

 私たちは、ARFのような多国間フォーラムは、相互信頼に基づいたときのみ前進することができると考えます。1994年の第27回ASEAN外相会議で表明されているように、ARFの目的は「アジア太平洋に、より予測可能かつ建設的な関係のパターンをもたらす」ことにほかなりません。この点で、一旦は支持していたCTBT、京都議定書、ICC(国際刑事裁判所)条約への拒否に例証される、米国による国際的な法的枠組みからの離脱の傾向は、ARFのまさに根幹をゆるがすものとして危険を告げています。この傾向を支えているのが、国際的な安全保障問題を解決する際の、法の支配ではなく軍事力への米国の依存です。したがって、私たちは、国際的な紛争の解決のためには、力の支配ではなく、法の支配の価値を再確認すること、そして信頼醸成から予防外交、そして紛争解決へというARFの進化が、法に統治された多国間主義に基づいていることを宣言するよう、ARFに対し強く要請します。

 私たちは、2001年のARFが、2000年に最初提出された「予防外交の概念と原則」文書を採択したことで勇気づけられました。しかし、それがこの問題に関する単なる現状の「スナップ・ショット」にすぎないと評されている事実は、参加国の内政問題について自由に議論することへのARFの抵抗を明確に示しており、地域の安定を促進するというARFの力量に疑問を呈しています。「メンバー国の内政不干渉」の原則へのARFの継続的な固執は、国内紛争や抗争が地域的な影響をもったことを防止する能力に対して深刻な束縛となっています。「すべてのメンバー国にとって快適な」ペースでいくという贅沢さは、この情勢にまったく適していません。私たちは、ARFにその発展の第3段階−紛争解決へのアプローチ−へと進んでいくよう要請します。

 2000年のASEAN会議で、ARF議長が、変化する安全保障環境のなかで、純粋な「内政」問題とは何か、に関して再定義が必要と提案しました。私たちはこのような再定義を支持し、1999年のASEAN会議において促進され、ARFのメンバーが他のメンバー国の内政事項に関して自由に意見を述べることができるとする「柔軟な関与」の原則を支持しつづけます。私たちは、ARFを含む今年度のASEAN会議において、この原則の採択が促進されるよう要求します。

 私たちは昨年、朝鮮半島の平和に関する私たちの楽観は弱まったと書きました。その理由は、米新政権が、2000年のARF議長声明において概説され、2001年の声明で繰り返され、北朝鮮のARFへの参加に象徴されるようなさまざまな将来に向けたイニシアティブの重要性を、十分に尊重しないだろうとの懸念があったからです。残念なことに、今年に入りブッシュ政権が北朝鮮を「悪の枢軸」の一部であると烙印を押したことで、私達の懸念はいっそう増大しました。私たちは、ARFに対し、朝鮮半島の安定を確実にするためのすべてのイニシアティブへの強い支持を再確認するよう要請します。同時に、対北朝鮮「強硬路線」政策が、現在進んでいる北朝鮮のARF参加など、2000年の重要な進展を害するものであると、米国を説得する能動的な策をARFが講じるよう要求します。
 
 2001年の議長声明は、「核軍縮における核保有国による系統的、革新的な努力の重要性」を強調し、「すべての国が核兵器完全廃棄の目標に向かって働くよう訴え」ました。私たちは、核兵器とその施設を近代化し、核使用のシナリオ(アジア太平洋の国に対する使用も含んでおり、そのような武器を国家の力の道具として正当化し続けることはARFにより明言されている目的に挑戦するものである)を発展させようとしている近年の米国の政策に懸念を抱いています。重ねて、私たちはARFが、地域安全保障に不可欠である大量破壊兵器の廃棄に向けた地球的運動への貢献の一端として、核軍縮と核不拡散に関する会期間(インターセッショナル)支援グループを召集することで、これらの目的への支持を強化するよう勧告します。
 さらに、重要な進展は、2000年NPT再検討会議の最終文書において、2005年の再検討会議に向けて履行されるべき13項目の具体的な措置が採択されたことでした。これらの措置は、核保有国に対してのみではなく、NATO諸国、日本、オーストラリア、大韓民国にも関係しています。私たちは、すべての国に対し、これらの措置の遵守を言葉に出して求めるようARFに要求します。とりわけ、包括的核実験禁止条約の早期発効に力が注がれるべきです。

 私たちは再度、ARFメンバーである核保有国すべてが、東南アジア非核地帯条約議定書に遅滞なく署名するよう、強く促すことをARFに対し要求します。核保有国がこの議定書を遵守することは、核軍縮に向けた意思の誠実さを具体的に証明し、インド・パキスタンをはじめとする核の熱望者に対して「誠実さ」の印しとなるでしょう。

 これに関連して、ARFが、この地域における安全保障環境の改善のために、SEANWFZの有用性を増大させるイニシアティブを検討するよう、私たちは再度勧告します。例えば、バングラディッシュとスリランカを包括するようなSEANWFZの西方への「拡大」の可能性に関して、これらの国との協議が奨励されるべきです。SEANWFZの「滲み出し」という考え方、すなわち近隣の核兵器国による戦術核兵器の使用または使用の威嚇を行わないという信用性を強化するために、非核地帯の外側でも境界線に近いところに配備されている核兵器を撤去することも検討されるべきです。SEANWFZの場合、こういった処置は、北側境界線に適用できるでしょう。

 東北アジア非核地帯を追求することは、ARFの任務と地理的範囲のなかにある予防外交の理想的な例となるのではないでしょうか。このような試みは信頼醸成努力を基盤に、またそれと軌を一にして発展していくに違いありません。NEANWFZの設立に向けたプロセス自体が、関係国の間の核をめぐる不信感を最小化し、核開発の競争的な拡大を防止する有効なメカニズムとなります。この意味で、原則的に、こういった努力はARFの「予防外交の概念と原理」と合致しています。
 とくに、この地域における非核兵器保有国−韓国、北朝鮮、日本−が中心となって構成される東北アジア非核地帯は、ARFのミッションにもあげられているこの地域の信頼醸成と予防外交に大いに貢献するでしょう。この取り決めは、この地域の核保有国−−中国、ロシア、米国−−による消極的安全の保証が与えられることにもなります。
 北朝鮮がARFに参加したことにより、この条約への潜在的な参加国がARFにすべて出席することになります。これが意味することは、ARFは今こそ、SEANWFZ設立に関連したASEANの専門的知識を有効活用し、こういった安全保障の選択肢に対する関係諸国による検討を促進するためのイニシアティブをとることができるということです。昨年、私たちは、この提案を詳細に検証したPCDSペーパー「現状報告:東北アジア非核地帯」(2001年4月)を皆さんにお送りしました。

 2001年の議長声明によれば、「ミサイル防衛システムの影響について」ARFで議論がもたれたとあります。これが2000年の議長声明と同じ表現であることから、私たちはARFがこの重要な問題を細部にわたり討議する段階に進んでいないことに懸念しています。2000年のARF議長が、報道記事のなかで、NMDとTMDは、ともに、アジアの信頼醸成にネガティブな影響を与える軍備増強であると認識し、また同時に、ARFの中にこれらの軍事兵器技術を好意的に見ているものはいないとの趣旨を伝えたことで、私たちは勇気づけられました。米国の新政権によるABM条約からの脱退計画と、2000年ARFの時に考えられていたものよりいっそう包括的な弾道ミサイルシステムの配備計画を考えると、可能な限りの強い言葉でこの不安定化をもたらす開発を明確に非難することは、ARFに課せられた義務であります。私たちが昨年書きましたように、この地域でのいくつかの国によるミサイル防衛システム開発への取り組みは、この地域内および世界中に新しい軍拡競争を引き起こし、核軍縮に向けた努力を傷つけるものであると私たちは考えます。

 戦略研究所の「軍事バランス:2001−2002」によると、2000年度のこの地域における軍事費の総額は、5パーセント以上も増加しました。2001年に、米議会調査局はその出版物「発展途上国への通常兵器取引:1993−2000」のなかで、発展途上国内での受け入れ上位10国のうち、6国がARFの参加国(インド、韓国、シンガポール、中国、北朝鮮、マレーシア)である、と報告しています。この増加は、アフリカの次に、世界の武力紛争の35パーセントを占める地域で起こっているのです。2000年に、この地域の5分の1の国の領内で、武力紛争が起こっています。私たちは、2001年のARFが小型武器の不法取引の問題を再び取り上げたことを評価しますが、このことは、地域での武器取引が栄え、軍事への資金の割り当てが過度であり続け、ゆえに地域の安全のよりよい保証となる社会的プログラムから限りある資源を転じている状況下では、より大きな問題の表面を引っかいたに過ぎないと考えます。軍事費の削減は、地域の安全保障構築に欠かせないものです。私たちは、重要な通常兵器の削減と軍事費の一般的削減の問題が、ARFの地域的安全保障の議題にあげられることを再度勧告します。

 私たちは、これまで8回出されたすべてのARF議長声明が、地域との関係で「人権」という言葉を使用していないことを残念に思います。私たちは、ARFに対し、この地域での人権および政治的権利の侵害について議論し調査する手続きを確立すること、そして、真の持続可能な人間の安全保障の重要な要素として、民主主義の発展の重要性を確認することを求めます。私たちは、地域的な人権メカニズムという考え方が1993年に提案されているのにもかかわらず、地域的なメカニズムへの必要な前身である、国内の人権委員会を設立したASEANメンバー国がほとんど存在しないことを懸念します。私たちは、ARFの安全保障の理解の中に、人権および政治的権利を含んだ「人間の安全保障」を包含することを奨励します。しかし、私たちは、国家の自己利益を支えるための政治的道具として、または人々の安全というもっとも真正なる意味での「人間の安全保障」と一致しないような行動を正当化するために、しばしば国家によって用いられている人権レトリックには賛成しないことを強調したいと思います。

 ARFがその揺籃期を過ぎ、第9回会議を迎えようとしている今、私たちはARFをいっそう本質的で適切な組織体にしていくための措置が講じられるべきであると信じます。そのため、私たちは一日行事であるARFを複数日にするよう勧告します。


 5月20日の完全独立直後から、東チモールはASEANメンバーとしての地位を確保するための外交活動を開始し、今年のARFにおいては議長の招待ゲストとなるであろうと私たちは理解しています。私たちは、ASEANが東チモールへの支援を継続し、またARFへの完全なる参加を促進していくよう要求します。

 前回のお手紙にもあるように、私たちはARFのような国際的機関へのNGOの参加が重要であることを提起します。8年間の後、地域内にまたがり、地域社会への強い関わりを持つ私たちのようなNGOは、ARF過程の枠外に置かれています。ARFにおいて、「予防外交」や「紛争解決アプローチ」の意義と範囲に関する合意といった基本的問題がほとんど進展を見せていない現状を考えると、ARFは、仕事への新しい考え方やエネルギーを得ていくなど、より広い基盤を持つ非政府的なインプットから利益を得るところが大きいでしょう。さらに、ARF#8議長声明は、ミサイル防衛、CTBT、NPTなどの地域に大きく関係する問題において弱々しく、これらの諸問題に対して要求されるような集中的かつ持続的な注意が、ARFにおいて事実上向けられていないことを証明しています。ある意味では、ARFにおけるこの欠点は、ARF過程への市民社会の参加の欠如と関連しているのではないでしょうか。

 ARFでは、トラックUにおいて非政府組織の参加がありますが、他の国際的機関にあるように、ARF過程への民衆的グループの参加方法を開拓するため、ARFに強い関心のあるコミュニティに根ざしたアジア太平洋地域のグループとの対話を開始することは、有益なことであると私たちは信じます。重ねまして、私たちはまず第一歩として、ARFとNGO間において、文書が公式に取り交わされること、また事務局の手によりNGO文書がARF参加国とARFのメディアに配布されることを勧告します。

 私たちは、貴職が私たちの要請に耳を傾けてくださることに感謝いたします。ASEAN地域フォーラム第9回会合が、生産的で内容のあるものとなることを祈念いたします。

2002年5月15日
PCDS国際コーディネーター
 梅林宏道
PCDS資料コーディネーター 
 パティ・ウィリス (訳:ピースデポ)


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