| 核兵器廃絶−− 2005NPT市民連絡会議 |
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| NPT―私たちが立ち向かう試練 スージー・スナイダー(Susi Snyder 婦人国際平和自由連盟(WILPF)事務局長) 2005年2月19日 「核廃絶は市民の手から−被爆60年を転換の年に!2.19NPT市民集会」 基調講演 ![]() 本日はここにお招き頂き、感謝しています。約10年前に軍縮問題に取り組み始めた頃から、是非日本を訪れたいと思っていましたが、みなさまのお力で遂にこの夢がかなえられました。本当にありがとうございました。 私は、婦人国際平和自由連盟(WILPF)を代表しています。WILPFは、第1次世界大戦を阻止しようとする試みの中で、1915年に活動を開始しました。公正で、持続可能な平和を創り出そうとする私たちの努力は、以来拡大の一途を辿っています。私たちは、最初に原子爆弾が開発されていた頃から、全面的かつ普遍的な核軍縮のために努め、今日に至っています。私たちはまた、この環境破壊的かつ自殺的な人類滅亡の兵器が、私たちの将来の世代に残す負の遺産を憂慮しています。核兵器には多くの問題がありますが、その中の1つとして、何千年にもわたり、有害物質を残すことが挙げられます。ですから、仮に核兵器が2度と使われないとしても、核兵器の存在そのものが、私たちのコミュニティや環境に対する脅威となるのです。 WILPFには、リーチング・クリティカル・ウィル(RCW)と呼ばれる核軍縮に特化したプロジェクトがあります。このプロジェクトは、軍縮に関する決定を行なう場にNGOが量的にも質的にも参加の幅を広げることを狙いとして、1999年に始まりました。私たちは、軍縮条約を交渉する、世界にたった1つしかない機関である、ジュネーブ軍縮会議(CD)を監視し、また、国際平和・安全保障に関する国連総会第一委員会を監視し、特に核軍縮をめぐる諸問題を注視しています。本日私がここにいるのは、こうした理由によるものです。 私が頼まれたのは、核不拡散条約(NPT)再検討会議に向けた、国際NGOの挑戦および戦略について話をすることです。この会議は、1970年に発効したNPTの、第7回目の再検討会議にあたります。この条約はよく「軍縮の礎石」と言われますが、それには次のような理由があります。まず、締約国の数が、他のどの軍縮条約よりも多いということがあります(実際、インド、イスラエル、パキスタンと、新たに付け加わった北朝鮮を除けば、世界中の全ての国が参加しています)。またNPTは、核兵器国の側に対して法的拘束力のある核軍縮の取り組みを義務づけている、唯一の多国間条約でもあります。この点は、第6条に見ることができます。第6条は次のようになっています。 各締約国は、核軍拡競争の早期の停止及び核軍備の縮小に関する効果的な措置につき、並びに厳重かつ効果的な国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小に関する条約について、誠実に交渉を行なうことを約束する。 この条約を批准した188の政府は、5年毎に開かれる再検討会議で集まり、条約の履行状況を評価することになっています。もともと暫定的な条約ですから、発効後25年経過してから会議を召集し、条約を無期限に継続するか、または、ある決まった期間に限って延長するかを決めることになっていました。その後、1995年にこの会議が召集され、条約を無期限に延長することが決まったのです。 5年後の2000年に開催された再検討会議では、5つの核兵器国(中国、フランス、ロシア、イギリス、アメリカ)を含む全ての政府が、13項目の行動計画に合意し、世界中の核兵器を体系的かつ漸進的に縮小して行くことを決めました。 しかし、今はどうでしょうか。この合意文書ができてから、わずか5年しか経っていないにも関わらず、自ら行った約束を破り、13項目の行動計画を破棄すると脅している国が多くあります。こんなことは決して許してはなりません。私たちが本日ここにいるのも、そのためです。 私たちが、今日の核兵器をめぐる環境において直面している試練を、いくつか紹介させていただきます。 第1に、核軍縮と不拡散は、NPTというコインの両面であるにも関わらず、ひどく切り離されているという問題があります。この両者のつながりをもう1度復活させることが、来たるNPT再検討会議においては、極めて重要になります。というのも、非核兵器国が条約に署名すると合意したのは、核保有国が自国の核兵器を不可逆的な形で削減するという了解の上でのことだったからです。この切り離しは、NPTの究極目標である軍縮に対して深刻な意味合いをもっています。この点は、国連総会第一委員会での決議や、本再検討会議に向けた準備委員会での声明などに見られる、核兵器国の最近の政策文書で強調されています。 第2に、テロリズムが核軍縮の課題を覆い隠しているという問題があります。この点は特に、CDと国連総会において見られます。例えば、第58回総会において採択された決議A/RES/58/126は、総会第一委員会の改革という課題を、国際安全保障における核兵器の危険な役割ではなく、テロリズム対策に位置づけ、諸国家の焦点をうまい具合に軍縮からそらしています。そして、国連軍縮委員会は、またもや議題について合意に至ることができませんでした。この機関は、核軍縮について議論するよう任ぜられているのですが、イギリスは、検証メカニズムや小・軽火器の分野における成功事例を論じることを望んでおり、アメリカは、軍縮委員会の改革について議論するよう強く圧しています。これは、別の課題を巡って議論を行なうことで、軍縮義務についての議論を避けようとする核兵器国の傾向を、今一度証明するものだと言えるでしょう。 第3に、核兵器の垂直拡散という問題があります。垂直拡散という用語が言い表しているのは、諸国家が行なう備蓄核兵器の近代化や拡張のことです。核兵器国の文書を分析してみると、核兵器を近代化するために実際に支出をしていることが分かります。 例えばアメリカでは、新しい軍事能力を持つ、新しい構想に基づいた核兵器の研究・開発が進んでいます。これは、新しい政策上の役割に対応したものですが、その政策の中には、アメリカないしその同盟国に対する、核、化学、生物兵器の使用に対抗する先制攻撃の可能性も含まれています。新型核兵器の中には、いわゆる「ミニ・ニューク」(5キロトン以下の核爆弾)や他の「低威力」の核兵器が含まれます。さらには、核兵器にも通常兵器にも使える新しいミサイルと発射装置、従来型兵器の改造、リバモアとロスアラモス研究所の間で結ばれた契約に基づく、強力地中貫通型核兵器(RNEP、100〜300キロトン以上)の開発、核兵器の「より使いやすくする」ために行なわれる、標的を絞る技術の改善などがあります。 ロシアでは、2004年12月に大陸間弾道ミサイル(ICBM)トーポリMが再配備されました。ロシアは従来型のトーポリを改造して、操縦可能な弾頭を取りつけたと伝えられています。これで、ミサイル防衛を回避できると言うのです。ここ数か月の間に、この新しい弾頭の実験が行われたと伝えられています。2004年2月にユーリ・バルエフスキー参謀総長が明らかにしたところによれば、操縦可能な弾頭や、その他のミサイル実験を行なったのは、まさにアメリカの核拡散に対抗するためです。インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙の報道によれば、彼は記者会見で次のように言っています。「アメリカは軍事課題を解決する手段になる核兵器を開発しようとして、核兵器のしきいを下げている。もし私たちがこれに対抗しなかったらどうなることか(中略)私は対抗するのが当然だと思っており、今現にそうしているのだ。」 核兵器の水平拡散を防ぐメカニズムは多く整備されており、国から国への拡散も、国から非国家主体への拡散も考慮されています。しかし、核兵器の垂直拡散を防ぐ試みは、ほとんどありません。国連安全保障理事会は、非国家主体に大量破壊兵器(WMD)が拡散することを防ぐ国際法体制に不備があり、これに対処することが重要だと認識していますが、その位置づけからして、垂直拡散に対処することはできません。なぜなら、5つの核兵器国の全てが拒否権を持っているからです。したがって、この課題を自分たちに与えられた場、つまり、CDやNPT再検討会議で提起するかどうかは、非核兵器国にかかっているのです。 NPT再検討会議では、他の課題も登場するでしょう。NGOは、イランが大きな問題になり、朝鮮民主主義人民共和国の脱退が熱心に論じられるだろうと予想しています。また、NPT自体の改革も議題に載せられるでしょう。これについては、既にいくつかの提案が行なわれおり、カナダやドイツは作業文書も出しています。私たちNGOは、こうした文書を検証し、何を支持したいのか、きちんと見極めなければなりません。例えば、NPT違反を取り扱うのは、安全保障理事会でなければならないのでしょうか。それとも何か別のメカニズムを導入すべきなのでしょうか。NPTの当事国は、毎年会合をもって決定を下すべきなのでしょうか。今は考えるための材料にすぎませんが、今度の会議で何か決めることがあるかもしれません。 この点について考えをまとめるため、地球上では現在、NGOや政府によって様々な活動が行なわれています。1月には軍縮担当の外交官がバリに集まって再検討会議について話し合い、先週にはここ日本でも会合がありました。3月の終りにはフランスでも会合が予定されています。彼らは、自分たちの立場を形作るために、ジュネーブや世界中にある政治の中心地で多くの会合をもっているのです。NPTにやってくる各国の代表が、自分たちの政府からの命令を携えてくるということを忘れてはなりません。だから、もしNPTに強いインパクトを与えようと思うなら、「今」彼らと話をする以外ないのです。 本会議に向けて、NGOの会合も世界中で行なわれています。ブラジルのポルトアレグレで開かれている世界社会フォーラムでは、討論会「核軍縮に向けたグローバル・キャンペーン」に多くの女性、男性がかけつけました。オーストリアにある国際平和財団は、ハンス・ブリックス博士とともに、パネル・ディスカッション「軍備管理と軍縮―イラクの事例」、「国際統合と国連の発展」を企画しました。カナダのオンタリオでは、公開討論会「核軍縮とNPTの健全性」が2月21日に予定されています。スウェーデンの核軍縮ネットワークは、討論会「核軍縮を達成する―新たな挑戦と可能性」を2月25日〜27日にかけて主催することになっています。ノルウェーでは、2月28日にノーベル研究所で、「危機に瀕したNPT:何をなすべきか」と題するセミナーが開催されます。このセミナーには、カナダの前国連大使であり、中堅国家構想の議長でもあるダグラス・ロウチ上院議員と、ノルウェーの外務副大臣キム・トラビックが登場します。 さて、ビジョン2020キャンペーンのことを少しでも聞いたことのある人は多いのではないでしょうか。このキャンペーンは、場所によってちがった名前で呼ばれることがあります。例えば、「平和市長会議の軍縮プラン」と呼ぶ人もいれば、単に、「核兵器禁止のための緊急キャンペーン」と呼ぶ人もいます。いろいろちがった名前はありますが、キャンペーンの内容は同じです。政府が核兵器を禁止する条約の交渉を即座に始め、その交渉を2020年までに妥結することを要求しているのです。NPTは実際に核兵器が違法だと言っている訳ではありません。しかし、これこそ世界中の人々が過去60年に渡って求めているものであり、国連総会のまさに第1回目の決議の主題でもあったのです。だから、政府にこの点を忘れてもらっては困るのです。 アボリション2000は、世界中にある2000以上に及ぶ組織のネットワークですが、これが、昨年のNPT会議で、「アボリション・ナウ!(今こそ廃絶を!)キャンペーン」を始め、ビジョン2020をその一部としました。世界中の人々が、自分たちの市長に対し、伊藤市長や秋葉市長とともに核兵器の禁止を求めていくよう求めています。また、アボリション・ナウ!キャンペーンでは、NPT開会の前日に、ニューヨークのセントラル・パークで大規模デモと集会を行なう予定です。その他にも、世界中で様々な方法での取り組みが行なわれています。 その内のいくつかについて話をさせていただきます。 ドイツでは、150人以上の市長が、平和市長会議キャンペーンに参加しています。最近では、ミューニッヒ市長とムートランゲン市のセイフリード市長が参加しました。セイフリード市長は、地域における30人もの市長の支持を得て、平和市長会議への参加者を増やしました。また、かつてアメリカやソ連の核兵器が置かれていた地方の市長に対する手紙キャンペーンの結果、10人の市長が新規加入しています。 グリーンピース・オーストラリアは、オーストラリアの全市長に手紙を書くことで、平和市長会議キャンペーンを進めています。手紙には案内が入っており、キャンペーン加入の紹介をしたり、地方議会が、地方議会の全国組織に動議を提出して、平和市長会議キャンペーンを支持するように求めたりしています。また、全国的に電子メールを発信し、市長への訴えを行なうよう人々に求めています。 ベルギーにおける私たちの友人も、かなり活動的です。フランドル地方の市長が79人以上(これは、全市長の25%に当たります)平和市長会議キャンペーンに参加しています。オランダ語を話す、北ベルギーの市長も、ブリュッセルの市長も、このキャンペーンに参加しています。ベルギーにおける私たちの仲間組織である「母なる地球のために」(For Mother Earth)は、フランス語を話す、南ベルギーの市長も参加させるように努めています。 「母なる地球のために」は、キャンペーンへの参加を市長に求めることに加えて、国際平和行進も企画しています。これは、広島と長崎への原爆投下60周年を記念するもので、多くの参加者が見込まれています。「母なる地球のために」は、核兵器国およびNATO加盟国に対し、全世界で核兵器を禁止する条約に向けて努力することを求めています。約250キロに渡る平和行進は、7月26日の火曜日に、世界で最初に化学兵器が使用された平和都市イプレスから始まり、ブリュッセルにあるNATO本部を経由して、NATOの核秘密基地のあるクライネブローゲルで終わります。行進をする人は、道中にある町村や都市の長に訴えを行います。クライネブローゲルでは、広島が爆撃された記念日である8月6日から、長崎の爆撃された記念日である8月9日まで、平和キャンプが開催されます。 イギリスでは、最近ロンドンで開催された会合で、ロンドン、マンチェスター、リード、グラスゴーのそれぞれの市長が、核兵器禁止のための平和市長会議緊急キャンペーン」を支持しました。イギリスでは、20以上の町村や都市の長が、平和市長会議のメンバーであり、平和市長会議のイギリス作業部会を作っています。 アメリカでさえ、このキャンペーンへの支持が広がっています。今現在、54の都市が加盟しており、その数は増えつつあります。アボリション2000のコーディネーターは、この夏、広島、長崎の爆撃60周年記念の期間中に、全米において行なわれるデモの情報を管理しています。3月12日に始まる平和行進は、アメリカの核兵器施設の1つであるオークリッジ核施設から始まって、5月1日のニューヨーク・デモ、NPT再検討会議をもって終了します。 「カナダ平和同盟」は、2005年のNPT再検討会議に向けて、モントリオールとトロントからニューヨークにバスを送る準備をしています。カナダでは、12を超える都市がキャンペーンに加入しています。 ネパール、インド、パキスタンでも、このキャンペーンを支持する活動が進んでいます。例えば、キャンペーンの資料を現地の言葉に翻訳したり、啓蒙、教育のためのイベントが開催されたりしています。 「アボリション・ナウ!キャンペーン」を形成するもう一つの要素は、「計画への挑戦」と呼ばれています。これは、第6条の誓約に向けて誠実に行動しているということを示すため、軍縮に向けたナショナル・プランをNPTに持ってくるよう政府を奨励するものです。私たちは既に核兵器国に対して手紙を送り、この計画を提出するよう求めています。また、この計画は時間が経過とともに、また実施されるにともなって変更されていくべきだと認識しています。このアイデアは、インド政府が独自に出した軍縮に向けたナショナル・プランに着想を得たものです。もし全ての国家に対して核兵器の使用を禁止する国際条約(ないし協定)が本当にあれば、インド政府はこの計画を実際に実行に移したでしょう。 NPTそれ自体においても、いろいろなことが進んでいます。NGOは、同時進行のイベントを開催するよう持ちかけられています。例えば、パネル・ディスカッション、祝賀会、会合、座談会などです。リーチング・クリティカル・ウィルのウェブ・サイトには、最新のイベント・カレンダーがあります。 5月1日、ニューヨークのセントラル・パークで行なわれるデモについては既にふれました。このイベントは、2000人以上の人々を引き寄せた昨年のデモを引き継ぐもので、今年は20万人以上の参加を望んでいます。ニューヨークと全米のNGOが、2つの主要な平和・正義のネットワークである、アボリション2000と「平和と正義のための連合」(全米800以上の組織の連合)を通じて、このデモを成功させるべく共同で作業をしています。ニューヨークでは既に、多くのメディアの関心がデモに集まっています。1982年、ニューヨークで百万人以上の人々を通りに連れ出した時のエネルギーに、もう一度火をつけたいと思っています。 再検討会議では展示会も多くあります。アトミック・アートや被爆者の展示がその例です。私の所属団体は、日刊のニュースレターである「ニュース・イン・レビュー」を出版する予定です。みなさんも、記事、芸術作品、詩、情報などをどしどしお寄せ下さい。ただ残念ながら、英語に限らせていただきます。その他にも、政府代表による日毎のブリーフィングの企画や、同時進行イベントのスケジュール管理もします。 NGOには、公式の本会議でNPTの政府代表と話す機会もあります。この3時間のセッションは、今年は3部に分割されます。詳細分析、人々の声、質疑応答(対話)がこれにあたります。 詳細分析の部というのは、NGOの専門家が、検証措置から核分裂物質までに及ぶ課題について、自分たちの専門性を代表団に提供する場です。人々の声の部というのは、市長、被爆者、核の風下の人々、若者やその他の人たちが、代表団の心を揺り動かし、核軍縮がいかに緊急で、幅広い支持を得たものであるかを想起させる場です。質疑応答の時間は、代表団とNGOが様々な提案について議論し、そのうちのいくつかを敷衍する場です。それぞれの部には別々のまとめ役がいて、今声明文の草案を作っているところです。このプロセスにどうやって直接関わるかについては、休憩時間中、誰にでも喜んでお話させていただきます。 今こそ、政府に圧力をかけるべき時です。政府に対し、軍縮に向けた13項目の行動計画を再度確認させる必要があります。また、核兵器を常時禁止する条約の交渉を始めさせることも必要です。この会議で政府が前進し、核軍拡競争に後退しないように確実を期さねばなりません。もう核兵器を終りにする時代が来ています。私たちの将来が、これにかかっているのです。 |