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| 核軍縮:日本の成績表2005 これまでの5年間をふり返る 中村桂子 ◆13+2項目 被爆60年の節目の年であり、NPT再検討会議を5月に控えた今年、「核軍縮:日本の成績表」プロジェクトは、最後の締めくくりとなる年を迎えた。3月25日に外務大臣に提出された「核軍縮:日本の成績表・2005−NPT(13+2)項目に関する評価」(以下、「成績表」)は、過去1年間を評価対象期間としていた昨年までと異なり、2000年NPT再検討会議以後5年間の日本政府の核軍縮努力を総合的に評価したものである。「成績表」冊子から、「成績表」および「総評と勧告」を抜粋して7〜8ページに掲載する1。 「市民の視点から日本政府の核軍縮努力を評価し、AからEの5段階で採点する」というこのユニークなとり組みは、2002年に始められた。そのきっかけは、2000年のNPT再検討会議で、核兵器国が保有核兵器を完全廃棄するという「明確な約束」に合意し、核軍縮義務を定めたNPT第6条履行のための13項目の実際的措置を含む最終文書が全会一致で採択されたことにある。その13項目に、NPT第7条から日本に関係が深い2項目(「法的拘束力のある消極的安全保証」と「非核地帯の設置」)をあわせたのが「13+2項目」である。 重要な点は、これらの項目が、核兵器国にとっての課題であるだけでなく、日本のように「核の傘」に依存していであるだけでなく、日本のように「核の傘」に依存している非核兵器国にも依存からの脱却という義務を課していることにある。2005年の次回NPT再検討会議に向け、日本政府が、この「13+2項目」の誓約をきちんと履行するという政治選択を行えるか否かは、まさに被爆国の政府としての真価を問うものであった。「成績表」は、「13+2」それぞれの項目について日本政府にとって現実的で実行可能な「日本の課題」を設定し、個々の課題について具体的な評価を行うという手法をとってきた。 ◆政府と市民の間で 「成績表」の評価を行ったのは、NGO活動家、専門家、被爆者ら10名からなる「評価委員会」2である。その基本姿勢は、批判のための批判に終わらず、評価するべきところはきちんと評価しながら、政府の核軍縮政策を正確なデータでもって検証することにある。つまり、単に「評価はEであった」で終わらせるのではなく、「なぜEという評点を付けたのか」という理由をファクト・ベースで詳細に示し、国の政策に対する市民の側からの具体的な代案を提示することによって、説得力のある議論を展開するというものである。 この姿勢は、日本政府にも真摯に受け止められてきた。「成績表」は、2002年いらい毎年、外務大臣に提出されており、その際には評価委員と外務省の担当官との間で評価に関する率直な意見交換が重ねられてきた。また、「成績表」は関係国会議員にも配布され、さらに、英語版はNPT再検討会議準備委員会の場で、日本の市民の声を伝える貴重な資料として各国の政府代表者やNGO代表者に手渡されてきた。5月のNPT再検討会議に向けても現在英語版が作成中である。 「成績表」はまた、日本の市民自身の核廃絶努力を振り返る「点検表」でもあり、市民が情報に基づいた正当な論争を通して政府の政策を正していく力をつけるための一つの「ツール」として活用されることを願って作られてきた。各地で開催される評価会議(最も多かった2003年は、全国8か所−広島、長崎、和歌山、大阪、東京、横浜、藤沢、函館−で開催された)に加え、2004年からはインターネット上で「原案」を公開し一般市民からの意見が広く募集されるなど、毎年の「成績表」を策定する段階には多くの市民の参加がある。また、「成績表」の完成後は、それをテキストとして活用した学習会等も度々開催されてきた。これらの機会を通じて、市民が政府の核軍縮政策決定プロセスに主体的に関与していく一つの道筋がつけられたこと、また、日本の核軍縮努力の現状に関する正確な理解が促進され、市民自身の「平和力」ともいうべき力が高まったことなどにも「成績表」プロジェクトの大きな意義があったと考える。 ◆日本政府の奮起を 2000年以降の過去5年間を総合した評点は、初年度と変わらず落第点の「D」であった。その総合的な評価については、「総評と勧告」に詳しく述べた通りであるが、重要な点を以下に繰り返したい。 ●核兵器廃絶への道筋が見えていない世界の現状を前に、いま何よりも求められているのは被爆国日本のリーダーシップである。「日本政府が変われば世界は変わる」という市民の期待は変わっておらず、日本政府の奮起が求められる。 ●問題の核心は、日本の安全保障に米国の核抑止力が必要だという考え方からの脱却にある。核兵器への依存政策が、核軍縮政策を歪め、被爆国としての日本の道義的立場を弱めている。 ●核兵器に依存せずとも、多国間の協調的安全保障の枠組みを具体的に構築していくことにより、日本の安全を確保することは可能である。まずは、政府が「東北アジア非核兵器地帯」設立への意思を表明することが求められる。 ●過去5年間の評価の中で、政治レベルでの「日本のトップ」の外交方針が軍縮担当者の努力を台無しにする政策を打ち出すということが度々あった。国会議員をはじめ、政治のトップによる核軍縮への確固たるリーダーシップが必要である。 ●現状では、少数の軍縮担当者に過重な役割が負わされている。軍縮専門の政府機関としての「軍縮庁」の設置が求められる。 ◆カーネギー報告書 日本政府の課題のなかで、もう一つ重要な点をあげておきたい。「13+2」項目の柱といえる第6番目「保有核兵器の完全廃棄の明確な約束」に関して、「成績表」は、2002年以来これまで一貫して、その「約束」を実行するためのプランの作成を課題として要求してきた。具体的には、日本政府が国連総会に毎年提出している「道程決議」において核兵器完全廃棄の約束を実行するためのプランの作成を核兵器国に要求すること、および、日本政府自身が核兵器依存を完全廃止する実行プランを作成すること、の2点である。 ここで注目すべきは、2005年3月に米シンクタンク「カーネギー国際平和財団」が出した報告書「普遍的な遵守」である3。同報告書は、核兵器または核分裂性物質の備蓄を持つすべての国に対して、核廃絶に向けた具体性のある実行プランである「ホワイト・ペーパー(白書)」を発行するよう求めており、この点において「成績表」が繰り返し訴えてきた要求にまさに合致するものである。「普遍的な遵守」から、該当部分を9ページに訳出した。米政府にも相当の発言力を持つ有力シンクタンクが、評価委員と同じ内容をもって核兵器国に勧告した意義は大きい。 注) 1.2005年版「成績表」の全文および02年、03年、04年版はピー スデポのホームページに掲載している。 http://www.peacedepot.org/theme/npt/list.html 冊子は、一部500円で販売中。ご注文はピースデポ事務局へ。 2.評価委員(50音順) 梅林宏道(世話人、ピースデポ代表) 黒澤満(大阪大学) 竹村泰子(元参議院議員) 田中煕巳(日本被団協) 土山秀夫(元長崎大学学長) 都留康子(東京学芸大学) 仁木三智子(日本YWCA) 平岡敬(元広島市長) 前田哲男(東京国際大学) 森瀧春子(核兵器廃絶をめざすヒロシマの会) 3.「普遍的な遵守」(Universal Compliance) http://www.carnegieendowment.org/publications/ index.cfm?fa=view&id=16593 |
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