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核軍縮:日本の成績表・2002 評価理由の説明
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| 評点の説明 | A | 「核兵器依存からの脱却」という日本にとって核心的課題にとり組んだ。あるいは、世界的な核軍縮に重要な貢献をした。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| B | 「重要課題」(「評価理由の説明」で下線を引いたもの)に意欲的にとり組んだ。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| C | 「課題」の一部にとり組んだ。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| D | 「課題」「重要課題」にとり組まなかったか、とり組みが極めて不充分であった。幸いにも、そのことが世界的な状況悪化の直接の要因にはならなかった。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| E | 「重要課題」にとり組まなかった。一部とり組んだとしても、被爆国として活かすべき貴重な機会を活かさなかった。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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[課題の設定] 課題1(2003年期限要求) 今回の評価の対象としている期間(2000年5月20日〜2002年2月16日。以下、対象期間)に、CTBT署名国数は155から165に、批准国は61から89に増加した。着実に加盟国数が増加しているのは喜ばしい。しかし、CTBTの発効要件となっている原子力技術を持つ44か国のうち13か国が未批准であるという状況は、この間に何の前進もなかった。その意味では早期発効に向かって具体的な前進は、ゼロであったと言わなければならない。 13か国のうち、インド、パキスタン、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の3か国は署名もまだである。署名はしたが、未批准の国は、アルジェリア、中国、コロンビア、コンゴ(キンシャサ)、エジプト、インドネシア、イラン、イスラエル、米国、ベトナム、の10か国である。 日本政府は、CTBT早期発効を外交の重点項目の一つにしてきた。とりわけ、2000年の国連総会決議(2000.11.20 55/33R)「核兵器完全廃棄への道程」(以下、「道程決議」)では、オーストラリアと共同で「2003年より前の早期に条約が発効するという見通しを持って、早期に署名し、批准すること」という期限設定の決議を提案し、圧倒的多数の支持を得た。この決議への投票で、賛成投票をした国の中には、上記未批准13か国中のアルジェリア、コロンビア、インドネシア、イラン、米国、ベトナムが含まれていた。つまり、これら6か国は、行政府のレベルでは2003年までの批准という目標に同意していたのである。 したがって、米政府の政策変更で状況が困難さを増したとはいえ、少なくとも2001年においては、日本政府はこの積極的な方針を維持し、2001年国連総会決議に反映させるとともに、2001年11月の第2回CTBT発効促進会議でも、その立場をもって国際世論に訴えることが求められた。
課題2、3(米国への要求) 米国が未批准であることは、CTBT発効にとって、とりわけ重大な障害となっている。とくに未署名の3カ国にとっては、最大の核大国である米国が批准を拒否していることが、CTBTの信頼性を否定する有力な根拠となるからである。1999年10月に米上院がCTBT批准を否決したことは、CTBT発効に暗い影を投げかけていたが、対象期間にさらに事態は悪化した。2001年1月に政権の座に着いた米国のブッシュ新政権は、7月にはCTBTの批准問題を放置し、衰弱死させる方針を示唆した(フライシャー米大統領報道官、バウチャー米国務省報道官、7月9日)。しかし、批准に必要な三分の二には足りないものの、その時点で米上院では過半数がCTBTを支持しているという状況もあった(米NGO調べ)。 このような状況下で、米国の同盟国であり、CTBTの強力な推進国である、日本の対米外交の真価が問われた。日本が描いている、地球的な安全保障のビジョンのなかで、核軍縮のウエイトは極めて大きいはずである。国連演説で日本代表の一般演説が、絶えず「唯一の被爆国」に言及してきたことにそれは現れている。したがって、日本政府は、単に「米政権が変わったから変わった」というレベルの認識ではなく、日米安保関係の基本に関わる問題と認識し、主体的外交を展開することが問われた。また、その姿勢を国民に示す必要があった。
課題4(米国以外への要求) 米国のCTBTに対する政策を変更させるためには、米国の核兵器政策そのものに対する論理的批判が欠かせないが、同時に国際世論によって米国政府を包囲する努力も必要である。そのための一法は、CTBTの普遍性を高める(加盟国を増やす)ことである。とくに、米国以外の12の発効要件国への働きかけが重要である。個々の国によってCTBT批准問題に関して置かれている状況、打開策、日本との関係が異なる訳であるから、専門家やNGOの協力を得ながら、国別の系統的なとり組みが必要である。
課題5(CTBTOへの協力) CTBTが発効したときに、検証システムを含むCTBT機構(CTBTO)がすぐに機能できるように、準備を怠らないことも重要な課題である。現在、署名国が資金を拠出してCTBTO準備委員会が設立(1996年11月19日)、運営されている。CTBTへの米国の協力が得られない場合、米国の資金拠出が滞ることも予想される。したがって、日本は準備委員会に対して、技術協力はもちろんのこと、その維持について積極的なとり組みが必要になるだろう。
[評価] 課題1に関しては、日本は対象期間に大きく政策を後退させた。 2000年国連総会における日本決議が積極姿勢を示したとき、「究極的廃絶」のパラダイムから「明確な約束」のパラダイムへと、日本の核軍縮政策が前進したことを日本の市民は喜んだ。しかし、2001年8月10日に衆議院議員会館で開催されたNGOとの協議で、市民は政府がブッシュ政権の賛成(もしくは悪くても棄権)票を得るために、早くも2001年国連決議案の内容を薄めようとしていることを知った。多くの市民が、2003年期限の主張を維持することを外務省に訴えた。9月6日には、広島、長崎両市長連名の首相宛要請書が出された。同趣旨の意見書を採択した市議会もあった。 にもかかわらず、国連総会第一委員会に提出された日本の決議案(A/C.1/56/L.35)は、驚くほど後退した内容であった。2003年の期限はおろか、「早期発効」の主張すら取り下げて、米国の支持を取り付けようとしたのである。この姿勢は、日本政府のCTBT外交が、国民の声や、広島、長崎の願いや、国際的な世論を味方に付けて推進されるのではなく、ひたすら密室の取り引きで米国の支持を得ることを目指すものであることを示した。 この経過で忘れてはならないことは、小泉首相自身が、2001年8月6日、9日の広島、長崎の慰霊式典のあいさつの中で、2000年国連総会決議に言及し、世界に向かってCTBT早期発効のために頑張ると誓ったそのときには、外務官僚はすでに同決議からの後退の準備をしていたことである。これは「市民不在」「政治不在」の日本外交の基本姿勢に関わる問題であり、厳しく問われなければならない。 幸い、日本政府は第一委員会の投票の前に、「早期発効」を求める文言を復活させた修正決議案(A/C.1/56/L.35/Rev.1)を提出した。後に外務省の担当者が、「米国の反対投票に少しも驚かなかった。事前交渉によって分かっていた」とピースデポに説明をしたことから推察すれば、決議案(A/C.1/56/L.35)の文言をもってしても米国の支持は得られないことが明らかになった外務省は、余りにも評判の悪い「早期発効」の主張の削除を修正したと思われる。しかし、このときにも「2003年期限」は復活させなかった。それは、米国以外の核兵器国の支持を得るためであっただろう(フランス、イギリスは日本決議に賛成した)。 「2003年期限」が1年の経過のうちに現実性がより乏しくなったという判断は理解できる。しかし、1年前においても、インド、パキスタン、北朝鮮を含めなければならない2003年までの発効は極めて困難な見通しであった。にもかかわらず、日本が決議を提案したのは、国際的な圧力をかける意味で重要であった。また、「道程決議」で日本は新しい一歩を踏み出したばかりであり、それを象徴するのが「2003年期限」の提案であったことを考えると、この項目は、日本の核軍縮外交の鼎(かなえ)の軽重が問われる要点であった。結果的には、その扱い方は大きな失点となった。 これは課題2、3にも関連する。日本政府はCTBTに背を向ける米国に厳しく対処しているとは言えない。2002年1月9日に公表された、米国の「核態勢見直し(NPR)」は、明確にCTBT不支持を表明した。こういう場合には、日本政府はきっぱりとした抗議の意思表示を行うべきである。 機会あるごとに、米国に対して日本の立場説明は行われている(たとえば2002年1月20日、田中・パウエル会談)。しかし、TMD(戦域ミサイル防衛)の共同技術研究決定に際して「日米安保体制の信頼性の向上」(官房長官談話、1998.12.25)という理由を掲げた政府が、米国が一方的にCTBTへの不支持を表明したとき、なぜ「日米安保体制の信頼性を損なう」と明確に抗議しないのか、大いに問題とせざるをえない。 なぜなら、1996年「日米安全保障共同宣言」は、「CTBT交渉の促進」を唱い「軍備管理及び軍縮等の問題についての政策調整及び協力を行う」と唱っていた。さらに、2000年3月には、CTBTの早期発効を「当座の最優先課題」とする「日米軍備管理・軍縮・不拡散・検証委員会」を設立し、両政府は同委員会の発足にあたって、「本日は歴史的な日である」とまで高揚した共同発表を行っていたのである。日本が、厳しく米国に異議を唱えるべき具体的な最近の経過が存在しているのである。 また、課題3の第2回発効促進会議においても、日本は米国に婉曲にしか言及しなかった。通常は、個別の国を名指さない外交的伝統にもかかわらず、EUすら米国の態度を名を挙げて「遺憾」とし「心配だ」と述べ、「立場の見直し」を訴えた。スウェーデンは、「米国が、ただ一国、国連総会第一委員会でCTBTに関する手続き投票にすら反対し、条約を支持しないと述べたことを強く遺憾に思う」と述べた。しかし、日本は、「不幸にも、いくつかの大国の批准の躊躇が一部の理由となって早期発効の見通しが立っていない」という言葉が阿部信泰大使のスピーチの中に登場するだけである(2001.11.12)。第2回発効促進会議の最終宣言文は、「未批准の核兵器国」(中国と米国)に批准を促しているが、米国が公然とCTBTを支持しないと言っていることに対して言及をしていない。 一般的には、発効促進会議そのものに対して日本は積極的な関与をしてきたことがNGOも含めて外交筋では評価されている。しかし、対象期間に示した日本政府のCTBTに関する一連の態度からは、日本の核軍縮政策は米国の許す枠内で行われる表面的なパフォーマンスに過ぎないと日本の市民の目に映ってしまうであろう。猛省を促したい。 課題4に関しては、日本政府が批准促進外交をそれなりに行っていることは評価できる。第2回発効促進会議を前にして、2001年8月には、田中外務大臣名で、北朝鮮以外の12か国の外務大臣に対して署名、批准を求める手紙を出した。また、他にも機会をとらえた働きかけを各国に繰り返しているという説明が、外務省によって行われている。 しかし、2001年に中村敦夫参議院議員の質問主意書に対して出された政府回答からは、その促進外交活動の計画性、系統性は見えてこなかった。課題4に示したような、踏み込んだとり組みが必要である。 これに関連する重要なできごとの一例は、日本政府がインド、パキスタンへの経済制裁措置の「停止」を決定した(2001.10.26)ことである。この措置は、両国の核実験への抗議として始まったものである。ところが、9.11事件に対して行われた米国のアフガンへの軍事作戦において、パキスタンの協力を得るため、また南アジアの不安定化を防ぐために米国がとった措置に協調して、日本も「措置解除」を行った。しかし、印パ両国とも、核実験の停止について確約していないし、核兵器運搬ミサイルの開発が公然と行われている。せめて両国による核実験の停止確約を「措置解除」の前提条件とすべきであったし、日本のCTBT政策の一貫性が問われた。インドは、「解除」直後の11月5日に行われた国連総会第一委員会における投票で、日本決議に反対した米国と並ぶただ二つの国となった。 課題5の分野では、日本政府は繰り返し検証体制への協力、暫定技術事務局(PTS)への援助を表明しており、積極的な姿勢をもっていると評価することができる。 総合して、第1項目については日本政府が多くの精力を投入した課題であることを認めるが、マイナス面が大きく深刻であり、対象期間におけるおける評価はDとする。
[課題の設定] 課題1、2(国際社会への要求) 一般的に、CTBTが発効していなくても署名を済ませた国は、その条約の目的に違反する行動はとることができない(条約に関するウィーン条約)。5つの核保有国とイスラエルはすでにCTBTに署名しているので、その意味では一定の歯止めがある。しかし、CTBTには脱退規定がある以上、発効以前に状況が変われば核実験に踏みきることができるという議論もある。したがって、モラトリアムが継続されるか否かは、楽観を許さない問題である。 2001年7月の段階でCTBTを「衰弱死させる」方針を表明したブッシュ新政権も、選挙期間中からモラトリアムの継続を表明していた。しかし、米国で話題になっているミニニューク(1キロトン以下の小威力爆弾)の製作には、核爆発実験が必要だという議論があり、さらに、米国エネルギー省が、核実験の再開を決定してから実行するまでの期間を短縮させる予算措置を講じようとしていることも報道された。 また、米国のミサイル防衛が強行されると、ロシアはこれまでの軍備管理条約すべてを見直すという議論があったし、中国では核兵器の増強のために核実験への誘惑が増す可能性がある。インドとパキスタンは、モラトリアムを続けると言っていたが、もし、中国が核実験をすればインドに、そして次にはパキスタンに波及するだろう。 このような状況で、日本政府は危機感を持って第2回発効促進会議や国連総会において、核実験モラトリアムの確認をする必要がある。また、それ以上のモラトリアム継続の道を探る必要がある。
課題3(NIFへの態度) また、米国で建設中のNIF(国立点火施設)で計画されている実験は、極めて小規模とはいえ持続的核融合を発生させるものであり、CTBT違反である可能性がある。少なくともCTBTの精神には明らかに違反する。この実験は主として二次爆発(核融合が中心)段階の核兵器の研究に役立つ。これが容認されると、NIFのような設備を持たない中国が、核実験の権利を主張する根拠となる。NIF問題は、核実験のモラトリアムを直接破るのではないが、モラトリアムを不安定にする危険な問題をはらんでいる。 このようなときに、日本のガラス・メーカーHOYAの米国現地法人が、NIFに主要部品を納入していることが明らかになった。広島市長(2001.2)、長崎市長(2001.4)から抗議があり、2001年5月〜6月、国会でも数次にわたって議論が行われた。日本政府が、迅速な核兵器廃絶を望むならば、このような問題に、日本政府は敏感であらねばならない。
[評価] 日本政府は、CTBT発効については政策を後退させながらも、今のところ核実験のモラトリアムについては一貫した主張を維持している。 課題1に関しては、政府は2001年国連総会決議において、最初の案の段階からモラトリアム継続を盛り込んだ。第2回CTBT発効促進会議においても、阿部大使はモラトリアムの継続を強く訴えた。発効促進会議の宣言には、モラトリアムの継続が訴えられた。当然のことながら、これら日本の努力を評価したい。幸い、最近の米国の「核態勢見直し」(2002.1.9)においても、モラトリアムの継続が再確認された。 とはいえ、「核態勢見直し」が、核実験再開までに要する準備期間を、現在の2〜3年から相当短縮する方針を明らかにしたことは、モラトリアムをめぐる情勢が、楽観を許さないことを示している。日本政府はその情勢に見合った危機感をもって、新たな対策を模索すべきであるが、現在までのところ、日本政府の姿勢にそのような緊迫感は見られない。 また、日本の市民には「米国がモラトリアム継続を言っているから、日本政府も安心して言っているに過ぎない」という感じ方があるであろう。日本の政策への信頼性が失われていることを、日本政府は深刻に受けとめるべきである。 課題2に関しては、2001年10月のインド、パキスタンへの経済制裁解除の際に、核実験モラトリアムの継続について両国から約束を得た、という報道があった。それ以後のバジパイ首相訪日時の日印共同声明(2001.12.10)には、インドの「核実験モラトリアムの自発的継続」が記され、田中外相のパキスタン訪問時には、「パキスタンが先に核実験を再開することはない」(2001.11.26)というムシャラフ大統領の発言が記録されている。両国のモラトリアムに関しては、おおむね事態の悪化がくい止められている。 課題3に関しては、日本政府は、現地法人の関与に規制はできないとの説明に終始している。NIFへの懸念を表明したり、それへの民間協力(たとえばHOYA)を規制することについて、明確な考え方を示していない。この点に関するとり組みは不十分であると考える。 総合して、米「核態勢見直し」後の日本政府の危機感の不足は憂慮すべきであり、第2項目についての評価はDとする。
[課題の設定] 課題1(2005年期限要求) NPT最終文書が採択された以後も、2000年、2001年のCDは空転を続け、兵器用核分裂物質生産禁止条約(FMCT)についての作業プログラムは合意できなかった。行き詰まりの背景には2つのリンク論が存在した。第一は核軍縮交渉とFMCTの交渉とのリンク論で、二つの交渉をCDにおいて同時並行すべきであると主張する。すでにあり余る核分裂物質をもっている核保有国のはっきりとした核軍縮計画の提示がないなかで、兵器用核分裂物質の生産禁止のみを先行させることはできないという、インド、パキスタンや非同盟諸国の主張である。それに対して、核兵器保有国は核軍縮交渉の特別委員会には強く反対する。第二は、大気圏外での軍備競争の防止(PAROS)とFMCTとの間のリンク論である。この問題ではPAROSの緊急性を主張する中国と、ミサイル防衛問題に議論が集中することを避けようとする米国が、鋭く対立している。 日本政府は、FMCTをCTBTと並ぶ重点項目に位置づけて、その推進を図ってきた。2000年秋の国連総会では、日本はNPT最終文書よりも厳しく、「2005年より前の可能な限り早期の妥結」というFMCTに積極的な内容をもった決議を提案し、圧倒的多数の支持を得た。日本政府はこの立場を堅持すべきである。
課題2、3(CD正常化と枠外作業) 2005年期限のなかで成果を上げるためには、CDが正常化する条件を探ることが必要である。CDには、FMCTやPAROSの他に、次項に述べるように、NPT最終文書で「核軍縮を扱う下部機関」を設けることが合意されている。また、核兵器保有国が、非保有国に核兵器の使用や使用の威嚇を行わないという「消極的安全保証」を与えるための特別委員会も提案されており、1998年にはこのための特別委員会が一度は設立された。これら4つの特別委員会は、いずれも重要な課題を扱うものであり、積極的に推進したい国があるとすれば、内容を固定させずにやがて進化させることを前提にして、まず緩やかな形で並立させるべきであろう。日本は、そのような立場で自立的な外交をすることが望ましい。 それとともに、正常化したときに交渉の促進に役立つような技術的準備を、CDの枠外で進行させることが必要になる。とりわけ、軍事用、商業用を問わず各国が保有するすべての核分裂物質の目録を作成することは、FMCT交渉の基礎として役立つと思われる。国連軍縮本部がもっている大量破壊兵器に関するデータベースにこの項目を加えることが適当である。
[評価] 課題1に関して、2001年の国連総会決議において、日本政府は期限付きのFMCT交渉について、2000年よりも具体的な目標を掲げた決議案を提案し、圧倒的多数の支持を得た。その内容は、「(FMCTを)交渉するための特別委員会を、2002年会期内のできるだけ早期にCDに設置し、5年以内に交渉を妥結すること」というものである。 CTBTに関して、日本政府が理不尽に米国寄りの姿勢を示したため、米国の政策と矛盾しないFMCTに関する方針が堅持されたとしても、そのことへの評価が曇ることは避けられない。しかし、核軍縮の多国間プロセスが全体として停滞している状況を少しでも活性化する観点から考えると、積極的な姿勢の継続はやはり評価すべきであろう。 2002年になって、米国は単独行動主義ではなくて、多国間協議を重視しているとして、CDへの積極的な姿勢を示した。その際、まずFMCTから始めるべきと述べた(2002.1.24、ジョン・ボルトン国務次官)。しかし、CTBTなどに現れた米国の態度、ブッシュ大統領の「悪の枢軸国」年頭教書(2000.1.29)で緊張を煽る態度などの前では、多くの国は警戒心を解かないであろう。 したがって課題2に関して、日本政府のCD外交が米国追随ではなくて独自性が印象づけられることが、とりわけ必要である。残念ながら、その意味でCDにおける日本の独自イニシャチブが印象づけられる局面はなかった。しかし、2002年のCD第一会期に登軍縮大使が行ったCDの行き詰まり克服とFMCTに関する交渉を行う特別委員会設置を含むアモリム調停案(2000年8月、CD/1624、アモリムはブラジル大使の名前)への支持を訴えた演説(2002.2.14)は、その誠意と積極性において注目すべきものとなった。これを評価したい。 CDの枠外でのFMCT関連の専門家会議に関しては、一定のとり組みが行われた。具体的には、2001年5月14−15日、ジュネーブにおいて、日本とオーストラリアが約100か国の政府関係者や専門家が参加するFMCTワークショップを共催した。あるべき条約の基本義務、検証、条約機構などで意見交換が行われた。これに関しては、目的意識やリーダーシップが不足した、公開性が乏しかった、などの非公式な感想が聞かれたが、次の段階にどう生かされてゆくかがポイントであろう。 課題3について、日本政府の具体的とり組みの情報はない。 総合して、この項目に対する日本政府の積極性の持続を歓迎して、評価をBとする
[課題の設定] 課題1、2(CD行き詰まり打開) 前項で述べたように、CDの行き詰まりは続いており、核軍縮を扱う下部機関を設置する作業プログラムの合意は容易ではない状況が続いていた。CDでのこの問題に関する調停の基礎として、前述したアモリム調停案がある。しかし、この調停案では設置される下部機関は「核軍縮の目的を達成するための前進的、系統的努力のための実際的な措置に関して情報や意見を交換する」という任務に限定されており、核軍縮についての協議や交渉は前提とされていない。米国は、しぶしぶながらこの案に賛成しているが、ニュージーランドなどの積極的な国は、この内容ではNPT合意の下部機関にならないとして反対している。 このような状況のなかでは、日本が有効な役割を果たす前提として、被爆国としての道義的立場を貫いた自立外交の伝統を確立することが重要である。
課題3(国際世論の喚起) CDの行き詰まりを乗りこえ、核軍縮の特別委員会が設置されるためには、核軍縮の緊急性を訴える国際世論の高まりが求められた。そのために被爆国日本の政府が果たすべき役割は極めて大きかった。日本が、核兵器をはっきりと否定する「非核法」を制定するなど、自らの政策変更で世界にアピールすることが可能であったし、日本政府が広島市、長崎市など自治体を先頭に立てて、新鮮な形で核兵器の非人道性と危険について国際世論に訴える道も考えられた。また、国連ミレニアム総会で出されたアナン提案「核の危険を減らす国際会議」(「ミレニアム宣言」でも言及)を、その観点から活用する方法も考えられた。
[評価] 課題1に関しては、2000年の国連総会における日本決議に比較して、2001年の同決議は、CDにおける核軍縮下部機関の設置を「2002年会期内のできるだけ早期に」と、より具体的に目標設定を提案をした。それは前進であったと言えるであろう。 課題2のCDにおける日本の外交姿勢に関しては、前項で述べたとおり、2002年第一会期における登大使の熱意のこもった演説は、CDの行き詰まりを打開する観点で評価できるものであった。しかし、アモリム調停案を支持することは当面の選択でありえたとしても、被爆国の切なる心情をもっと訴えて、「苦渋の選択」であることを言うべきであろう。とりわけ、ニュージーランドが積極的な立場からアモリム提案が示した下部機関の性格では、NPT合意に合致しないと異論を唱えていた経過を考えると、このことが必要であった。 課題3が、事態の打開のためにもっとも重要な課題であるが、日本政府は残念ながらその意欲を示さなかった。 総合して、項目4に関する評価はCとする。
[課題の設定] 課題1(STARTへの要求) 不可逆性に関しては、まず核弾頭や兵器用核物質の量的な削減や管理に主たる関心が注がれる。1997年の米ロ・ヘルシンキ・サミットでは、第三次戦略兵器削減交渉(STARTV)においては、削減された核兵器の不可逆的措置を議題にすることが話し合われていた。この手掛かりが発展するよう日本政府はつとに注意を喚起し、努力を注ぐべきであった。
課題2(米国への要求) 今回のNPT合意の求めているものは、このような量的問題に留まらない。核爆発実験のモラトリアムや消極的安全保証の国連安保理決議(1995.4.11)など政治宣言や決議を含む、核兵器に関する軍備管理・軍縮の措置すべてにおいて、後退や破棄をしないという合意と解すべきである。 ブッシュ政権がミサイル防衛の強行に当たってABM条約を破棄する姿勢を示したり、STARTUの発効を無視したり、CTBTを支持しない動きをしていた。米国のこの態度は、世界のさまざまな国や分野で逆行を許すことにつながりかねない。したがって、米国と関係の深い国として、しかも被爆国として日本は、不可逆性の原則の順守を米国に強く要求する立場にあった。
課題3(TMD共同研究の中止) 日米の戦域ミサイル防衛(TMD)の共同研究は、二重の意味で不可逆性を危険に陥れている。一つは、たとえ研究とはいえ、日米のTMD志向は東アジアの緊張を高め、軍備競争の引き金を引いている。その結果、共同研究は中国の核兵器政策の逆行(無条件の第一(先制)不使用政策の変更、消極的安全保証政策の変更など)を引き起こす要因となる。また、共同研究の海軍戦域防衛(NTWD)はABM違反か否かについて米ロ間の合意のないシステムであった。ましてやブッシュ政権のミサイル防衛計画ではTMDとNMD(米国土ミサイル防衛)は一体化しており、全体としてABM条約違反とならざるを得ない。だからこそ、ブッシュ政権はABM一方的脱退の選択を示唆し続けていた。日米共同技術研究は、直接にABM条約の破棄の片棒を担ぐのみならず、ロシアの核兵器の逆行的な諸政策を誘導するおそれがある。 最近の日米防衛協議(2002.2.8)で示唆されているように、これがさらに開発段階へと移行すれば、東北アジア非核地帯の推進に対しても最大の障害となり得よう。
課題4(戦術核再搭載の防止) 1991年のブッシュ・ゴルバチョフの合意による「相互に調整された一方的措置」として、戦術核の廃棄と撤去を行った措置の不可逆性が、とりわけ重要である。日本に関しては、この措置を通じて、少なくとも平時において、艦船・航空機による核兵器の持ち込み疑惑から解放されるという直接の利点が生み出されている。この措置の不可逆性を現場から担保する方法として、非核三原則の法制化を行うことが適切である。
課題5(SSMPの自立的検討) また、保有核兵器の現状維持という説明の下に行われている米国の備蓄兵器管理プログラム(SSMP)は、現有核兵器の信頼性、安全性の維持という目的を超えており、新しい核兵器の開発につながるという、データに基づいた専門家の批判がある。NIFに関しても同様である。新しい核兵器の開発は、不可逆性の原則に反する。 しかし、日本政府は米国の説明以外の分析から目をそらしている。このことは、NIFへのHOYAの協力に対して真剣な検討を加えていない日本政府の姿勢につながっている。日本政府は、追随的ではない自立的な検討をSSMPに対して加える必要がある。
[評価] 対象期間における、米国の不可逆性の原則違反の行為は、目に余るものがあった。 (a)CTBT不支持(2001.7.9 フライシャー米大統領報道官、バウチャー米国務省報道官、2002.1.9 核態勢見直し) (b)ABM条約脱退通告(2001.12.13) (c)START過程の放棄(同上、2002.1.9 核態勢見直し) (d)核実験再開準備期間の短縮(2002.1.9 核態勢見直し) (e)削減弾頭の迅速対応戦力(レスポンシブ・フォース)への組み込み(2002.1.9 核態勢見直し) 課題1のSTARTに関しては、日本政府が何ら行動しないままに(c)が起こってしまった。そして、日本政府は米ロ間の戦略枠組みの話し合いを見守るという受動的態度に終始している。 課題2に関して、(a)〜(e)という米国による国際的政治誓約への重大な違反行為に対して、一日も早い核兵器廃絶を願う被爆国の政府らしい行動を何一つとらなかった。極めて不満足というべき無策であった。 このような状況であったから、課題3、4、5という、不可逆性を担保するために日本が取り組むべき具体的な課題に対しても、何の努力も見られなかった。 なお、課題には掲げなかったが、日本自身、守るべき特別の不可逆性の原則を持っていることを銘記すべきである。それは、非核三原則、宇宙の平和利用に関する国会決議などであり、これらから公然と逸脱することは、核軍縮に対する自殺行為になる。 総合して、Eと厳しく評価せざるをえない
[課題の設定] 課題1(実行プラン作成の要求) この項目は、核兵器廃絶への宝とも言うべき手掛かりである。 核兵器保有国は、「明確な約束」を実行することについて、NPT2000年最終文書に合意した後も、具体的な行動を起こそうとしなかった。逆に、2000年秋の米国の大統領選挙で、両陣営とも「明確な約束」に一言も言及しなかった。また、すでに述べたようにその年のジュネーブ軍縮会議(CD)の協議でも、核兵器国に新しい態度が見られなかった。そうした中で、2000年秋の国連総会において、新アジェンダ諸国が、NPT最終文書を再確認する決議を提案したり、日本が新しい決議を提案したことは、有意義なことであった。とくに日本政府提案の「核兵器完全廃棄への道程」決議は、まさに「明確な約束」の実行プランを意味するタイトルであり、その積極性は高く評価できる。 日本政府は、今後の道程決議で「明確な約束」を重視し、核兵器国にその履行を迫るための具体的な工夫を重ねて行くことが求められる。2000年決議のままでは、個別的な中間的措置の列記に終わっていて核兵器ゼロを目指す包括的な内容となっておらず、決議の名前に負けている。 取り組むべき一案は、核兵器国が「明確な約束」を行った以上、次のステップとして核兵器国に「完全廃棄への実行プラン」を要求することであろう。実行プランはそれぞれの核兵器国によって異なって構わないから、「道程決議」では「明確な約束」の実行プランの作成と提出を求める内容を盛り込むことが現実的である。
課題2(核兵器依存の完全廃止) 保有核兵器の完全廃棄は、核保有国のみならず、北大西洋条約機構(NATO)諸国や日本、オーストラリア、韓国など核兵器依存国にも同様に影響がある。「核兵器の完全廃棄の明確な約束」が行われた以上、核兵器依存国も等しく、「核兵器依存の完全廃止の明確な約束」を行ったのである。したがって「明確な約束の実行プラン」を作成することが求められる。日本こそ率先して行うべきである。
課題3(未臨界実験への反対) 核兵器を現在以上に増やさないことが「明確な約束」の最低限の義務であるが、速やかな実行を求める日本の立場からすれば、米国、ロシアが行っている未臨界実験の停止を求めるべきである。この実験が仮に「現有核兵器の信頼性と安全性の維持のため」だとしても、核兵器の延命手段であることに変わりがない。広島市、長崎市を始め、非核自治体の多くが未臨界実験に反対し抗議しているが、日本政府は容認している。日本政府は米国の核抑止力に依存する政策をとっているため、米国政府が必要だという未臨界実験に対して、異論を差し挟めないでいると考えられる。日本は、「明確な約束」を自ら実行するために、未臨界実験容認の政策を改めるべきである。
[評価] 2001年の日本の「道程決議」に関して日本政府は「明確な約束」を後退させる意図ともとれる不可解な行動をとった。「明確な約束」とは、すでに行われた約束であり、それを前提として次のステップを提起する、というのが当然の論理構造であるべきである。そのために、2000年の道程決議では「明確な約束」を前文に置いて「歓迎」した。これは新アジェンダと同じ方法であった。 ところが、2001年「道程決議」では、これから実行されるべき諸課題の一つに「降格した」扱いで、主文の中に置いたのである。新アジェンダ諸国からの強い反発を受けて、修正段階で「2000年NPT再検討会議で合意された」という修飾句を被せたが、置く場所は修正しなかった。新アジェンダ諸国が、2001道程決議に棄権をした重要な理由の一つはこの点にあった。 この日本政府の決議の構造の変更のもつ重要な意味に、日本政府がどの程度気づいていたのか、明かではない。草案作成段階でフランス政府の影響があったことが知られている。 いずれにしても、課題1に関する日本政府の対象期間における実績は、「実行プラン」の要求どころか、「明確な約束」の位置づけ自身に混乱を持ち込む過ちを犯したと言わなければならない。 また、外務省はピースデポに対して、米ロの核削減が、「明確な約束」実行の一つの証であるという解釈を示した。しかし、削減そのものは歓迎すべきであるが、米国の「核態勢見直し」(2002.1.9)は、この削減が核兵器の永久保持につながる論理の下で行われたことから、外務省は目を背けている。 課題2について、日本政府は「明確な約束」が、日本自身に関係する課題だという認識をもっているという兆候がなく、したがって取り組みもない。 課題3の未臨界実験に関しては、対象期間に米国で5回(オーボエ4、5、6、7、8)、米英共同で1回(ビト(Vito))、ロシアで少なくとも5回の実験が行われたが、日本政府の容認姿勢が継続している。単に容認だけではなく、2002年2月14日に行われた初めての米英共同未臨界実験「ビト」について、小泉首相が「別にコメントすべき問題ではない」と答えるなど、開き直った姿勢を示した。同時に、このことは、首相のこの問題への無関心を露呈した。「明確な約束」そのものに無理解であることを反映していると考えられる。 この重要な項目についての日本政府の施策は、被爆国に寄せられた期待を大きく裏切るものであった。総合してEと評価す
[課題の設定] 課題1、2(START過程の確保) 2001年5月1日の演説で、一方的な姿勢ではないにしろ、ブッシュ米大統領はABM条約の廃棄と世界的ミサイル防衛網の構築を宣言し、また同時に、START過程に言及することなく、核兵器の大幅削減を表明した。これによって、NPT合意のこの項目は危機的状況に立たされた。2001年6月の米ロのリュブリャナ(スロベニア)・サミットで、すべての交渉はこれからであるということが明らかになったが、会談後パウエル米国務長官はABM条約の一方的破棄もありうると語り、プーチン・ロ大統領はそれには核増強で対応すると答えるなど、ABM条約への根本的態度をめぐって重大局面が予想された。 また、米国のABM条約破棄がミサイル防衛配備と一体の政策であることが明白であった。すなわち、START過程を守るためには、米国のミサイル防衛の一方的推進は容認できない政策であった。 日本政府にとって、START過程重視は一貫した核軍縮政策の柱であった。一部では米国が推進しているから日本政府も言っているに過ぎないという冷ややかな見方もあった。その評価はともかく、その政策と整合するためにはABM体制の維持・強化という政策が当然にも要求された。2000年「道程決議」では、NPT最終文書のこの項目の文言がそのまま決議の一部をなしていた。 したがって、START過程が危機に瀕している状況のなかで、日本政府は、米国のABM脱退の動きを牽制し、それを阻止する努力を傾注するべきであった。START過程よりもいっそう核兵器廃棄に有効な過程が保証されない限り、日本政府は「ABM体制の維持・強化とSTART過程促進」を、国連決議において継続して要求することが、最低限の意思表示として必要であった。 一方では、背後にあるブッシュ政権のミサイル防衛計画を批判し、その一部を構成するおそれのあるTMD日米共同技術研究を核軍縮への悪影響を理由に、少なくとも一時中止の判断を示すのが有効な対応であった。
課題3(米ロ核削減の検証可能性、不可逆性) 核弾頭の大幅削減の方向性については、米ロが一致していたが、新たな問題が発生していた。気候変動問題に対処する京都議定書の一方的廃棄やCTBT不支持を表明するなど、多国間協議によって作られた国際的枠組みを軽視する米新政権の「一国行動主義(ユニラテラリズム)」が明確になってきたからである。米国がNPT(13+2)項目を無視する態度をとるようでは、核兵器廃絶への道程は、米国の恣意的な政策に翻弄されることになる危険が見えていた。 核弾頭の大幅削減そのものは歓迎するとしても、それは「核兵器の完全廃棄の明確な約束」とつながるものでなければならない。そのためには、条約体系に組み込まれ、検証による透明性と不可逆性が保証されるものでなくてはならないのである。
課題4(新宇宙条約) また、ブッシュ政権のミサイル防衛構想は宇宙への兵器配備という新たな次元の軍拡に道を開くものであることも明白になった。ブッシュ演説(2001.5.1)がブースト段階におけるミサイル迎撃の有効性をわざわざ言及したからである。21世紀の人類の平和を考えるとき、宇宙次元に兵器配備を拡張することは、極めて危険な行為であると考えられる。宇宙軍拡は、核兵器の廃絶に向かう世界世論に逆行する軍事的な覇権競争を誘発する。 1967年の宇宙条約を補い、宇宙戦争を防止する新たな条約によって、この動きを阻止しようとするNGOからの提案が、すでに出されていた。新宇宙条約はミサイル防衛に走るブッシュ政権の政策に有効な歯止めとなる。CDの行き詰まりを考えると、新条約のためにはCDの外での同志国家による努力も必要になる。日本政府は、この分野においても、積極的に行動すべきである。
[評価] 課題1に関して、START過程を救うための日本の真剣な取り組みが求められたが、日本は2001年「道程決議」提出期限の10月18日までに、米国の動向を先取りして、早くも軌道修正をおこなった。その時点は、米ロの核削減合意(ブッシュ・プーチン会談、2001.11.13/14)もなく、米の一方的ABM脱退通告(2001.12.13)も行われていない段階であった。2001年の「道程決議」は、STARTを過去のものとし、今後の課題からABMの名前もSTARTの名前も消滅させた。この姿勢は、国際社会に日本の核軍縮外交の対米従属を改めて見せつけた。少しでも日本の自主性を期待した日本の市民には、大きな失望を与えた。 このような状況であったから、課題2に応える日本政府の動きはまったくなかった。 2001年12月13日、米国がABM条約脱退の一方的な通告を条約加盟国(ロシア、カザフスタン、ベラルーシ、ウクライナ)に対して行ったことによって、項目7の国際環境は大きく変化した。米国は、正面切って、NPT合意を踏みにじったことになる。またブッシュ政権のABM脱退の米国憲法上の正当性をめぐって、米国内では論争が続いている。したがって、国際社会は二つの問題に直面している。一つは、米国のNPT合意違反、およびブッシュ大統領の政治姿勢を追及すること、もう一つは、これを機会に(ABM条約+START)体制よりも迅速な核軍縮過程の構築を目指すこと、である。 課題3は、この第二の問題と関連して重要性を増している。2002年初頭に発表された「核態勢見直し」は、条約なき削減の姿勢を明らかにするとともに、遠い未来まで核兵器依存を継続する姿勢を示している。日本政府は、「大幅削減」という言葉を強調するのみであって、主体的な検討を加えていない。ましてや、米ロ交渉に日本の要望を反映させる努力は見られず、「米ロの話し合いを見守る」姿勢を表明している。 課題4に関しては、「ミサイル防衛についての米政策を理解」という政府の公式見解には、宇宙戦争への危機感は見られない。そもそも、日米共同技術研究を始めたTMDが、「宇宙に打ち上げられる物体」は「平和目的に限る」とした国会決議(1969.5.9)に違反しているという指摘にも、日本政府は正当な関心を払っていない。わずかに、CDにおいて、日本政府がアモリム調停案を支持し、PAROS(大気圏外での軍備競争の防止)特別委員会の設置を促していることに希望を見出したい。ただし、アモリム調停案では、特別委員会は条約交渉の場とは位置づけられていない。 総合して、この重要課題に関する日本の消極姿勢は極めて残念であり、評価をEとする。
[課題の設定] 課題1(三者構想の支持) 米ロが核兵器の削減に伴って余剰となった核分裂物質について、IAEAを加えた検証制度を確立して再び兵器目的に使用することを防止するために1996年に三者構想が立ち上げられた。この制度が確立すれば、他の核兵器国にも応用することが可能であり、NPT第6条の核兵器完全廃棄義務にとって重要な意味をもっている。 また、START過程と関連していたこの構想が、STARTの将来が危ぶまれた対象期間においては、新たな関心をもって見守る必要があった。
[評価] 課題1に関して、日本の「道程決議」では、三者構想に言及した部分はない。とくに反対しているわけではなくて、すべての核兵器国に対して同様の要求をしている第10項に含めて考えていると思われる。しかし、前述のように、米ロ間のSTART過程が一方的削減過程に置き換わろうとしており、その意味では三者構想をきっちりと別枠で考える必要性が増加したと考えられる。 その意味で日本のとり組みは不十分であり、Dと評価する。
(9)「国際的安定」と「すべてにとって安全保障が減じない原則」
[課題の設定] 課題1(悪用の防止) 第9項には6個の段階的措置が含まれているが、その全体にかかる枕詞として「国際的安定の促進」と「すべてにとって安全保障が減じない原則」が掲げられている。交渉過程では、核兵器国が「戦略的安定性」という枕詞をつけようとしたが、新アジェンダ諸国などがこの言葉が核兵器バランスを容認する意味を持つことを嫌って「国際的安定」という言葉を主張した。 同様に、核抑止論や力の均衡論に立脚して、「安全保障が減じない原則」を核軍縮に抵抗する論拠に使う場面が起こりうる。たとえば、日本政府の中にも、「朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の脅威に対する抑止として、米国の核兵器の第一(先制)使用政策が必要である」という議論がある。これも、自国の安全保障が減じることを理由として核軍縮につながる措置に抵抗をする一例である。 しかし、核兵器の削減、警戒態勢の緩和、核兵器への説明責任の強化、第一(先制)不使用など核兵器への依存の軽減、信頼の醸成、協定遵守の促進、などの措置は核軍縮を促進する環境を作り、結果的に「国際的安定」や「すべてにとって安全保障が減じない」状況の醸成を促進するという立場に立つべきである。
[評価] 対象期間において、以下の(9a)項〜(9f)項に関連して、課題1が直接の争点となる局面はなかった。しかし、米国が自国の安全保障が損なわれるという理由で、第7項(ABM条約、START)に公然と違反し、STARTの替わりに条約によらない核兵器の一方的削減に切り替えたのは、以下の9a(一方的削減)、9b(透明性)の課題の実行にとって危険信号となった。日本政府が、これに対して適切に対処しなかったことは、第7項に関してすでに述べた通りである。 日本の努力をDと評価する。
[課題の設定] 課題1(米ロ核削減の検証可能性、不可逆性) 2001年5月1日のブッシュ演説以来、対象期間において、米ロ両国の戦略核兵器の一方的削減は一つの大きな関心事であった。一方的削減措置は、大いに歓迎すべきことであるが、一方的削減の検証可能性と不可逆性が追求されなければならない。その意味で、第7項目課題3がここにおいても改めて課題となる。
課題2(完全廃棄との関係、削減速度など) また、一方的削減が核兵器の永続化を目指すものであってはならない。米ロの大幅削減が予想されても、NPT第6条義務や「完全廃棄の明確な約束」を含むNPT合意をより迅速に達成するための提案であるかどうかの点について、十分に吟味する必要がある。 さらに、一方的削減の実行ペースに関心を注ぐ必要がある。クリントン・エリツィン合意(ヘルシンキ、1997.3.21)ではSTARTV(2000〜2500弾頭)の削減が、2007年までに可能とされていたことが一つの目安となる。 一方的に行うことができるのは戦略兵器の削減だけではない。非戦略核兵器はもっとも使われる可能性のある兵器であり、その一方的削減は、地域安全保障の文脈で重要である。これについては(9c)で扱うことにする。 その他にも、警戒態勢の緩和や解除、とりわけSTARTTやSTARTUで廃棄される予定であった核兵器の早期引退などの措置は、米ロがそれぞれ一方的に実施することができる。 英、仏、中国もそれぞれ一方的措置を進めて、核軍縮の促進に貢献すべきである。とりわけ中国は、唯一このような措置を発表していない核保有国であり、新たなとり組みをすべきである。 これらの点について、日本政府は主体的な調査と考察を行い、適宜の意見表明を行うべきである。
[評価] 課題1に関しては、すでに第5、7項目に関して評価を述べたとおり、日本政府の努力は極めて不十分であった。 課題2に関連して、米国の「核態勢見直し」発表後、日本政府が米ロの「大幅削減」をどのようにとらえているかを知る情報は乏しい。しかし、ピースデポに対する外務省の説明では、充分な検討がなされていないとしながらも、前述したように「大幅削減」を前進として強調する基本姿勢を継続している。 実際には、大幅削減とは言え、その目標弾頭数は1997年にクリントン・エリツィンが合意していた数と同じ(数え方が違うので一見300低いだけ)であり、しかもクリントン・エリツィンが「2007年まで」としていたものが、「2012年まで」とペース・ダウンさせている。 さらに戦略兵器の「新しい三本柱」を提案し、ミサイル防衛と核兵器の両方を基礎にした抑止論を唱えるのみならず、退役させた核兵器の保存(迅速対応戦力=レスポンシブ・フォース)という考えを打ち出した。これでは見せかけの核削減であって、真の核廃棄とは言えない。信頼の篤い米国の専門NGOであるNRDC(天然資源保護評議会)は「偽物の核の役割縮小」「核兵器は永遠に?」と述べて、「核態勢見直し」の内容を厳しく批判している。 日本政府は、国民に誤った印象を与えないよう、客観的評価をもっと急ぐべきである。 日本政府の努力についての評価はDとする。
[課題の設定] 課題1(目録づくり) 核兵器や兵器用核物質に関する透明性の増大には、地球規模の課題と地域の課題がある。地球規模のもっとも基本となる課題は、核兵器、核兵器に使用可能な核物質、それらの運搬手段についての全目録について、関係各国に年次報告を義務づけることである。核兵器廃絶を達成するときに必要となるデータであるだけではなく、その過程における信頼醸成の基礎となる。NPT再検討会議とその準備委員会ごとに提出すべき報告文書にするのがよい。標準化された報告の様式を国連軍縮局で作成するのも一法である。 東北アジアの平和のための信頼醸成と軍縮の促進にとって、この地域における核兵器の配備と運用状況について透明性を高めることが、極めて重要である。日本政府は、中国、ロシア太平洋地域、米太平洋地域の核兵器と運搬手段について透明性を高める努力をするべきである。この課題は、東北アジア非核地帯の設立をめざす事業の一環ともなる。
課題2(NCND政策の撤回要求) 米国の「核兵器の存在を肯定も否定もしない政策(NCND政策)」は、透明性の向上に主要な障害となっている。現に、日本に寄港する艦船・航空機への核搭載の疑惑は、この政策のために払拭されないままである。米国政府のNCND政策の変更を求めることは、日本政府にとってこの項目に関する具体的な課題である。
[評価] 課題1に示すような日本政府のとり組み、ないしとり組みの方向性は見られない。基本的なことなので、ぜひ将来のとり組みを促したい。 課題2に関しては、米国艦船搭載の核兵器問題について、日本政府の説明では自治体が市民を説得できない事例が、対象期間にも数多く発生した。空母キティホークの小樽寄港(2000.10.13)、第7艦隊旗艦ブルーリッジの苫小牧への寄港断念(2001.2.7)、イージス巡洋艦ビンセンスの姫路寄港(2001.8.28)などに代表される事例がある。米国のNCND政策のもたらす不透明性が、現に日本の市民の不安を掻き立て続けている証左である。ましてや、米軍を警戒する中国や北朝鮮の反応を考えると、東アジアの緊張を増幅していることは間違いないであろう。にもかかわらず、日本政府は問題の元凶となっている米国のNCND政策を改めるよう要請することはなかった。 総合して、日本政府の努力に対する評価はDである。
[課題の設定] 課題1(非戦略核への力点) 新しい戦略環境のなかで、米国においても、ロシアにおいても、非戦略核への依存の増加が懸念される。戦術核はもっとも使用される可能性の高い兵器である。したがって、非戦略核に焦点を当てた核兵器の削減は重要な意味を持つ。 NATO配備の米国の戦術核爆弾、英国、フランスを含むNATOの戦略以下の(サブ・ストラテジック)核兵器、2001年1月に問題になったがロシアが否定したカリニングラードへのロシア戦術核再配備、中央アジア非核地帯設立の障害となっているロシアの戦術核依存の強化、米国の核巡航ミサイル発射訓練の継続とNCND政策がもたらす核疑惑、などの問題がある。日本政府は、非戦略核兵器の削減に意識的に取り組むべきである。 これまで非戦略核の削減は、すべて一方的なイニシャチブで行われてきており、条約による検証や報告が行われていない。とりわけ、1991年のブッシュ・ゴルバチョフ・イニシャチブによる戦術核廃棄・撤去・削減を、透明性と拘束力のある取り決めにすることが重要である。STARTVの交渉においては戦術核問題が取り上げられる予定であると報道されたが、START過程が崩壊する可能性があるなかでは、戦術核のみの特別協定を探る道もある。
課題2(NATO配備戦術核の撤去) とりわけ、米国がNATOに配備している核兵器は、核兵器国領土外に配備されている世界で唯一の核兵器であり、今後の戦術核兵器の(とりわけロシアの)領土外配備を誘う悪い先例となる。この撤去を求める国際世論が高まるべきである。
課題3、4(NCND政策の撤回要求) 日本政府にとっては、戦術核の問題は東アジアの緊張緩和と安全保障のために、とくに重要なテーマである。有事に攻撃型原子力潜水艦に搭載され、日本に持ち込まれる可能性が高い核巡航ミサイルの削減を求めることが、東アジア地域の緊張緩和と非核化に貢献する道である。このようなとり組みをしながら、中国に対して戦術核の削減を求めることが有効である。その際、透明性の問題として、米国のNCND政策の撤回が再び課題となる。
[評価] 課題1に関しては、日本の外務省はこれをテーマとすることに関心を示しながらも、具体的なとり組みをしていない。 課題2に関しては、日本は立場表明をしていない。日本が被爆国として、グローバルな立場で発言をしていないことを示す一例である。 課題3、4は、日本にとって身近な課題であるが、日本政府のとり組みはゼロである。 総合して、評価はDとなる。
[課題の設定] 課題1(警戒態勢の解除要求) 交渉過程において、この項目でもっとも問題になったのは、現在も保たれている「一触即発の警戒態勢」である。2001年5月1日のブッシュ演説が、「ロシアは敵ではない」と述べて、冷戦時代からの様変わりを強調したことに照らし合わせると、このような警戒態勢の存続には何の根拠もないと考えられる。高い警戒態勢の維持は、いたずらに核ミサイルの偶発的発射の危険性を作り出している。「核兵器が即使用される状態を保っている世界とは異常な世界である」という、常識から出発しなければならない。 また、同じ冷戦時代の極度に警戒的な思考から、戦略核兵器の三本柱(大陸間弾道ミサイル、戦略潜水艦発射ミサイル、戦略爆撃機)の維持が行われている。英仏にならって、米ロ中も三本柱の発想を止め、「戦略核の柱」の削減を実施すべきである。
[評価] 日本政府は、課題1の警戒態勢の解除について関心を示している。外務省は、具体的に提案できることはないか省内で研究をしていることを明らかにした。しかし、具体的な提案をするには至っていない。 上述の5月1日に続いて、ブッシュ大統領のABM脱退の演説(2001.12.13)は、冷戦時代の敵対関係がもはや消滅したことを繰り返し述べた。そのとき、彼は「かつて(米ソ)両国をして何千もの核兵器を互いに向けて一触即発の警戒態勢に置かせた敵対関係もまた、もはや存在しません」と述べた。これが、実際に警戒態勢の解除を行ったことを意味するとは、一般には考えられていない。少なくとも、警戒態勢の解除の論理的必然性を告白したことになり、今後に注目する必要がある。 2002年初頭に発表された米国の核態勢見直しにおいて、「核兵器の作戦上の地位の低下」がどうなっているかについては、今後の情報に待たなければならない。 日本政府が警戒態勢問題に一定の関心を持ちながらも具体的なとり組みが見えないので、評価をDとする。
[課題の設定] 課題1(核兵器依存撤廃へ実行プラン) この項目は、核兵器保有国と同じくらいに日本のような核兵器依存国に関係がある。核兵器の完全廃棄には、核兵器依存国もその依存を軽減しなければならないからである。日本の場合、被爆国で核兵器の非人道性をもっとも強く訴えなければならない立場にありながら、核兵器に依存する安全保障政策をとっている。日本政府が米国の核抑止力への依存を続ける限り、核をめぐる日本の安全保障政策は、すべてが米国の許容範囲内においてしか実現できないことは、これまですでに実証されている。被爆国でありながら、日本政府が米国の掌の中でしか核兵器廃絶を唱えることができないとしたら、それは国民を欺く単なるパフォーマンスに過ぎないことになろう。したがって、2005年のNPT再検討会議までに、日本は核兵器に依存しない安全保障政策に転換する目標を立てるべきである。そして、そのための実行プランを立てるべきである。そのことによって、NPT第6条の実行に大きな貢献をすることができる。
課題2(東北アジア非核地帯へ政治宣言) 日本政府が、核兵器への依存が必要だとしている論拠は、東北アジア非核地帯の設立によってほぼ全面的に解消する。一日も早く、政治宣言として非核地帯設立に向かう政策を表明すべきである。政治宣言をした段階で、すでに東北アジアの緊張緩和と信頼醸成にプラスの効果を生むと考えられる。
課題3(防衛大綱見直し) 2001年8月、防衛計画の大綱の見直しが予定されていることが報道された。政府は、この機会を日本の核兵器依存政策を見直す機会として生かすべきである。日本の防衛における核兵器依存を明記した根本の政策文書は防衛計画の大綱である。防衛計画大綱に基づいて日米防衛協力ガイドラインにおいても米国の核抑止力への依存が書かれている。したがってまず防衛計画大綱の見直しにおいて核抑止力依存を削除することが、日本のNPT合意を実行するための具体的で重要な課題となる。 より具体的には、次のような経緯を踏まえて考えるべきである。 つまり、1976年の「前大綱」では、「また、核の脅威に対しては米国の核抑止力に依存するものとする」としていた。これに対して、1995年の「現大綱」では、「核兵器の脅威に対しては、核兵器のない世界を目指した現実的かつ着実な核軍縮の国際的努力の中で積極的な役割を果たしつつ、米国の核抑止力に依存するものとする」と、一定の前進をしたと評価できる。 したがって、核保有国が核兵器の完全廃棄の「明確な約束」に合意したなかで行われる次の大綱見直しにおいては、たとえば次のような文章に改められるべきである。 「核兵器の脅威に対しては、核保有国がNPT再検討会議で行った『保有核兵器の完全廃棄を達成するという明確な約束』が実行されるよう国際社会で積極的な役割を果たしつつ、速やかに米国の核抑止力から脱却するべきものとする。」
課題4(非核法の制定) さらに、日本自身の非核化を検証制度をもって実現するために「非核法」(非核三原則の法制化を含む)を制定するべきである。これによって、日本が「核兵器の役割の縮小」を完全に履行したという範を周辺諸国に対して垂れることができる。NPT体制全体への貢献となり、被爆国としての日本の道義的地位を強固にし、日本の発言力を強めるであろう。
[評価] 課題1、2、3、4のすべてに関して、日本政府の中に、「核兵器の役割の縮小」は日本自身に課せられた課題であるという認識が、ほとんど存在しないのが現実である。 核兵器依存国が、核兵器に依存しなくても自国の安全保障が保ちうるという方向に思考と政策を転換しない限り、核兵器の完全廃棄の道は生まれない。日本の防衛のために必要だからと言って米国の核を要求するならば、同じ論理によって、インドもパキスタンも、さらに新しいいくつかの国も核兵器を持とうとするであろう。 自分が持つのと、他人に持たせて使わせるのと優劣はつけ難く、どちらも核兵器の完全廃棄の道の障害物である。この点は日本にとって極めて本質的な問題であり、政策変更の兆しを見せない政府に対して、猛省を促したい。 総合して、被爆国日本の核兵器依存政策の継続を深刻に憂い、評価をEとする
[課題の設定] 課題1(五か国会議の開催への努力) 現在、米ロ2国間でしか存在していない核兵器削減交渉を核兵器保有五か国に拡大する必要がある。中国、イギリス、フランスは、米ロの保有核兵器の数が、彼らの数のレベルまで削減されてからしか、このような会議に参加しないことを示唆している。インド、パキスタンは、非同盟運動の立場として、CDにおける多国間協議が望ましいとしている。イスラエルの立場ははっきりしない。 非戦略核の削減に限定した五か国会議、削減交渉以前に五か国で検証制度の準備会議をするなどの方法も考えられる。
[評価] 日本は1999年までのいわゆる「究極的廃絶」国連決議においては、核保有五か国を巻き込んだ過程について、明確な文言を提案できなかった。日本政府の気持ちとしては明言したいながらも、米国の抵抗に会って後退してきたという経緯である。しかし、NPT13項目の合意によって、2000年「道程決議」からは、この内容を明確に含むようになった。2001年においても継続した。 しかし、課題1に書いたような、新しい提案を含む積極的なとり組みは、日本政府にはまだ見られない。さらに、できるだけ多国間会議を忌避しようとする米ブッシュ政権を前に、日本政府が今後どう振る舞うか注視する必要がある。 課題に対するとり組みは見られないので、評価はDとする。
[課題の設定] 課題1(協力と公開議論) NPT体制の下では、核分裂物質の「平和目的への委譲」という措置は、前進と受け取られる。しかし、NGOの多くの間には、これに対する強い異論がある。 米ロとIAEAの三者イニシャチブについて第8項で述べた。削減された核兵器や余剰になった兵器用核分裂物質が、兵器に再利用されたり流出したりすることを防止するために、何らかの国際検証制度の下に置く必要がある。三者イニシャチブそれ自身もまだ未完成であるが、英国、フランスでも同様な措置を急ぐ必要がある。 この過程を促進するために、日本を含む国々の技術的、財政的協力が必要になる。米ロ間では、燃料として原子炉で燃やし使用後再処理しない方法や、高レベル放射性廃棄物と混合して貯蔵する方法などが合意されているが、日本で協力する場合には充分な議論が必要であろう。
[評価] 課題1に関連して、日ロ間では、1999年5月の高村外務大臣の訪ロを契機に、解体核兵器から生じる余剰兵器プルトニウム処分の支援などを含む「軍縮と環境保護のための日露共同作業」が推進されてきている。研究開発協力である。2000年9月4日には、「軍縮・不拡散、核兵器廃棄支援分野における日露政府覚書」が東京で交わされた。これらを通じて、ロシアの高速炉BN600でMOX燃料を燃焼させてロシアにおける余剰兵器プルトニウム処分を促進することが表明されている。 これをどう評価するかに関して情報が乏しい。少なくとも注意すべきことは、兵器用プルトニウムのMOX処分の問題を、日本におけるMOX合理化の理屈にしてはならないという点である。日本のプルトニウム過剰問題では、プルトニウムを取り出すための再処理をまず止めることが、問題を解決するすべての前提となるべきである。 とり組みがあったが、公開論議が少ないため評価をDとする。
[課題の設定] 課題1(東北アジア非核地帯の提案) NPT第6条の解釈について、長い間、核軍縮を「全面かつ完全軍縮」条約に従属させる議論があった。その議論は、しばしば核兵器廃絶を遠い未来の課題に遠ざける意図をもって行われた。新アジェンダ諸国は、第6条に関する13項目の中で、核軍縮のための有効な措置について誠実な交渉を行う義務と、「全面かつ完全軍縮」条約に関して誠実な交渉を行う義務とは、関連するが別個独立の義務であることを明確にした。その背景には、国際司法裁判所(ICJ)の1996年の勧告的意見が、NPT6条の核軍縮義務について、明確な判断を下したという経過があった。 ここで、核軍縮は優先されるべきものであるが、安全保障全体の一部であることの再確認が必要になる。とりわけ、他の大量破壊兵器に関して存在している条約体系−−つまり、化学兵器禁止条約と生物・毒素兵器禁止条約−−の信頼性が増し、強化されて行くことが、核兵器の廃絶にも大きく貢献する。 東北アジアを考えたとき、北朝鮮が化学兵器禁止条約に参加していない状況の改善が望まれる。また、大量破壊兵器の運搬手段について、公平で冷静な議論が必要になる。たとえば、日本を母港にする軍艦に500基の巡航ミサイル・トマホークの発射能力がありながら、北朝鮮のミサイル開発の中止を一方的に求めるのでは公平な議論にならない。また、生物・毒素兵器禁止条約の検証を強化する議定書の合意が急がれているが、この強化過程への全加盟国による協力が必要である。 東北アジアにおける核兵器以外の大量破壊兵器やミサイルの問題についての協議は、この地域に非核地帯を創設する呼びかけがなされるならば、その協議の中で取り扱う道が開けると期待できる。
[評価] 課題1に関連して、日本政府は、北朝鮮の大量破壊兵器やミサイルの脅威、また中国の核の脅威を強調する態度を継続している。そして、ミサイル防衛やアメリカの核の傘といった軍事的対抗手段に訴えることによって脅威をはねのけようと国民に呼びかけている。 しかし、NPT合意のこの項目は、軍備管理、軍縮条約の強化による脅威の除去こそ重要であることを再確認している。この考えによれば、東北アジアにおいて、脅威と見なす国々を積極的に取り込んだ軍備管理、軍縮条約による地域安全保障を築く環境作りにこそ、日本政府は努力すべきなのである。 にもかかわらず、日本政府はほとんどこれに取り組んでいない。これは日本のアジア外交の大きな弱点と言わなければならない。それどころか、9.11事件以後の日本の「テロ対策特措法」制定、自衛艦紛争地派遣による米軍支援という急速な流れは、東アジアの協調的安全保障に向かう環境を著しく悪くした。 したがって、総合評価はEとする。
(12)ICJ勧告を想起した核軍縮義務の履行に関する定期報告
[課題の設定] 課題1(標準形式作成の提案) これは、全締約国に課せられた義務である。とりわけ、核兵器保有国と日本を含む核兵器依存国にとっては重要な義務である。本成績表が取りあげた13項目とは、この項目に書かれている通り、NPT第6条と「核不拡散と核軍縮のための原則と目標」の第4節(c)の履行のための実際的措置として合意されたものであるから、ここに述べられた定期報告の義務は、13項目の一つひとつに対して行われるべきである。このことを確実にするために、また、核兵器や核物質の種類と数の目録など必要なデータが報告の中に含まれるように、標準化した報告形式を作成することが望ましい。
課題2(NPT準備委員会ごとの報告) さらに、13項目合意の中では報告の頻度についての合意が含まれていないが、NPT再検討会議準備委員会を当初の目的通り実質的なものにするために、2002年再検討会議準備委員会から毎回のNPT会議において、報告書の提出とその説明を、少なくとも核兵器保有国と核兵器依存国に義務づけることが望ましい。
課題3、4(日本独自の定期報告) 日本の場合、被爆国としてとりわけ義務履行に忠実でなければならない。また、核兵器依存からの脱却については、日本独自の実行プランが考えられる。また、定期報告によって強い核兵器廃絶世論と対話することも求められる。したがって、国際的な標準に従った報告とともに、日本独自の様式と制度が必要である。 その様式と制度は、NGOを含む専門家協議を通じて作成することができる。この成績表は、その試みの参考資料になるであろう。報告の内容は、当然、国会における定期的な審議の対象とすべきである。
[評価] 課題1、2、3、4とも、NPT再検討会議を、核軍縮のリズムを作る機関として活用するため、具体的で有用なアイデアと考えられるが、現在までのところ日本政府のとり組みはゼロである。しかし、このような考え方に関心を示している兆しが見られる。今後に期待したい。 総合して、対象期間における努力はDと評価する。
[課題の設定] 課題1(資源の振り分け) 核兵器のない世界を想定した準備を始めることは、すばらしいことである。多くの場合、検証のための個々の方法論や技術はすでに存在していると言われる。問題は、それを有効に組織する政治的合意と財政的な裏づけである。すでにCTBTに関しては、地球規模の信頼すべき検証システムが完成されつつある。しかし、それを維持する財政システムが不安である。 核兵器拡散に対抗するために費やされている軍事費や、核兵器の開発、維持、管理のために使われている物的、人的資源は、検証システムの建設のために費やした方が、より効率的に安全保障に貢献することを知るべきである。
課題2(東アジア地域の取り組み) また、地域的な協調関係の発展が、検証システムを有効に組織する前提となる。その意味で、日本政府は「東北アジア非核地帯」の設立を視野に入れ、地域的な検証制度について研究・開発に取り組むべきである。
課題3(洗い出し専門家組織の設立) 「核兵器のない世界」を維持するための課題を洗い出し、対策が必要な事項を国際的に問題提起をする専門家組織を発足させることは、被爆国日本にふさわしい事業である。この際、化学兵器禁止条約機構(OPCW)、CTBTO、IAEAなどの経験と知識が基礎となる。また、NGOが作成したモデル核兵器禁止条約が参考になる。
[評価] 課題1に関しては、日本政府は、一般的に検証問題の重要性を認識し、日本がこの分野で可能な貢献をしたいという意図を示している。 しかし、資源の振り向けについての考え方は、日本政府の中にまだ存在していない。第5項目に関連して、米国の備蓄兵器管理プログラム(SSMP)に触れたが、ここには膨大な予算が投入され、核兵器関連予算は冷戦時代を超すと報告されている。このような現状について日本政府の懸念表明はない。 課題2に関して、地域の緊張に軍事的対案が優先されていることは、第12項目に関連して述べた通りである。検証制度の地域的発展について、具体的なとり組みは極めて弱い。 課題3に関して、日本政府による検討はまだない。 総合して、評価はDである
[課題の設定] 課題1(態度の明確化と積極性) 1995年のNPT無期限延長にあたり、米、ロ、英、仏の4カ国は、核兵器国と同盟した攻撃に対する場合を除いて、NPT締約国である非核兵器国に対して核兵器を使用しないと宣言している。中国は、いかなる場合も核兵器を使用する最初の国にならないと宣言している。国連安保理決議984「非核兵器国の安全保障に関する決議」(1995.4.11)は、これらの宣言の内容を再確認している。こうした、核兵器不使用の約束によって安全を保証することは、「消極的安全保証」(NSA)と呼ばれるが、法的拘束力がないのが現状である。 しかし、非核兵器国が核兵器を保有しないと誓約することによって、核兵器国から核攻撃を受けないという安全の保証が得られるのでなければ、非核兵器国はNPT加盟によって大きな不利益を被ることになる。すなわち、NSAは核不拡散体制の基盤とも言える重要な要件である。 NSAに法的拘束力を持たせるための交渉としては、1998年にCDに特別委員会が設けられたが、以後再設置されていない。前述のアモリム調停案(2000.8.24)では、「法的拘束力のある条約となることもありうる」というぼかした表現で、何らかのNSA制度の交渉を行う特別委員会をCDに設置することを提案している。NSA交渉を行う場としてCDが適切であるかどうかについては一部で保留意見もある。 日本政府の法的拘束力をもったNSAに関する態度は積極的ではなかった。2000年NPT再検討会議に提出した日本の作業文書には、この項目は入っていなかった。2000年「道程決議」においても、その要求は見られない。日本はせっかくのNPT合意を活かすために、再検討会議準備委員会に向かって態度を明確にし、積極的なとり組みを行うべきである。
課題2(BC兵器への核抑止論の撤回) 日本政府は、暗に、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の生物・化学兵器(BC兵器)に対する抑止力として米国の核兵器使用の選択肢を残す必要があるとの立場をとっている。この立場は、防衛計画大綱が、「核の脅威に対して米国の核抑止力」と規定していることを逸脱して、核以外の脅威に核抑止を拡大するものである。単に「大綱」逸脱であるだけではなくて、NPT合意第9e「安全保障政策における核兵器の役割の縮小」に違反する「拡大」である。 仮に日本にとって北朝鮮のBC兵器や弾道ミサイルの脅威が想定されるとしても、それらはBC兵器およびミサイルの禁止枠組みや、東北アジア非核地帯化交渉の中で解決すべき問題である。
[評価] 課題1に関しては、日本の「道程決議」は2001年においても、法的拘束力のあるNSAに触れていない。国連総会に提出されるパキスタンなど提案の同趣旨の決議に日本政府は賛成している。日本政府は、この課題について反対はしないが積極的ではないという態度をとり続けていると言えるであろう。この点は新アジェンダ諸国との重要な相違点の一つである。強く改善を促したい。 課題2に関しては、公然たる政策としては表明しないものの、「非核脅威に対しては核を使用しない」という明確な態度表明も行われていない。被爆国としてあってはならない「あいまいさ」を継続している。この課題は、第9e項とも関連するものであり、日本は根本的な政策転換を行うべきである。 総合した評価をDとする。
[課題の設定] 課題1(中央アジア非核地帯への支援) 日本政府は、一般論として非核地帯の設立を支持してきた。 とりわけ、2000年再検討会議を前にして、中央アジア非核地帯化(キルギス、カザフスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンの五か国が対象)の条約起草会議を札幌に招致する(第1回:1999.10.5-8、第2回:2000.4.3-6)など、日本は中央アジア非核地帯設立に向けて積極的な活動を行った。この努力の成果は実っていないが、これらの支援活動は高く評価されている。 9.11事件を契機とする米国のアフガン攻撃によって、中央アジアの軍事環境が大きく変化した。幸い、その後の国連決議においても、五か国の非核地帯設置の基本合意は維持されているが、問題は複雑さを増している。日本政府の継続した支援が求められる。
課題2(南半球非核地帯化への支持と協力) 非核地帯化の拡大について、現在行われている国際的な努力の一つは、南半球の四つの非核地帯を何らかの形で結び、南半球全体の非核地帯地位を獲得することである。ブラジルが提案国となって、南半球の多くの国が共同提案をした同趣旨の国連決議が、1996年以来、圧倒的多数の支持を得て採択されている。日本政府は最初棄権していたが、1998年以来、賛成票を投じてきた。米、英、仏が一貫して反対している。このアプローチは、核兵器のない世界を目指す魅力あるアプローチであり、日本政府は積極的に支持すべきである。
課題3(東北アジア非核地帯の推進) 日本自身が関係する東北アジア非核地帯化に関しては、日本政府は消極的な態度をとり続けている。しかし、国際的なNGOからはさまざまな具体的な提案がある。日本国内では、広島、長崎の平和宣言にたびたび訴えがあった。また、いくつかの主要政党が推進政策を採択している。 東北アジア非核地帯を日本が提案することは、この地域の緊張緩和と信頼醸成に大きく貢献すると考えられる。もちろん、世界の核軍縮への貢献も大きい。第9e項目、第11項目に関連して、すでに説明をした通りである。 とりうる具体的行動のなかには、北朝鮮を対話の場に誘引する上からも、日朝国交正常化の速やかな再開を追求すること、KEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)プロセスを停滞させている米政府に対して、米朝枠組み合意の厳守を求めること、などが含まれるべきである。
[評価] 課題1に関しては、急速な展開は望めないものの日本の支援体制は継続している。評価したい。 課題2に関しては、日本の支持の立場は2001年国連決議においても継続された。しかし、積極的な決議内容で注目すべき内容の一つは非核地帯条約加盟国が一堂に会する会議の開催を婉曲ながら支持していることであるが、日本政府はその開催の実現に向けて積極的な意思表示をしている訳ではない。 課題3の東北アジア非核地帯化について、日本の消極的姿勢は変わる兆しを見せていない。「実現に時間がかかるにしても、意思表示だけでも意味がある。なぜできないのか」というNGOの説得に対しても、「時期尚早」という以上の説明が与えられないでいる。 総合して、中央アジアでは評価すべき日本の努力がありながらも、肝心の日本自身に関してのマイナスが大きく評価をDとする。
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