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核軍縮:日本の成績表・2003
NPT(13+2)項目に関する評価

評価理由の説明

 

 CTBT早期発効

D

B 

 

 

 核爆発実験のモラトリアム

D

D

 

 

 CDでFMCTの5年以内の妥結をめざす作業プログラム

B

B 

 

 

 CDに核軍縮を扱う下部機関を設置する作業プログラム

C

D 

 

 

 不可逆性の原則

E

E

 

 

 保有核兵器の完全廃棄の明確な約束

E

E 

 

 

 ABM条約の維持強化とSTART過程の促進

E

― 

 

 

 米・ロ・IAEA三者構想の完成と履行

D

D

 

 

 「国際的安定」と「すべてにとって安全保障が減じない原則」

D

D

  

 

 核兵器の一方的削減

D

D

 

 

 透明性の増大

D

E

 

 

 非戦略核兵器の削減

D

D 

 

 

 作戦上の地位の低減

D

E 

 

 

 安全保障政策における核兵器の役割の縮小

E

E

 

 

f  全核兵器国が参加する核兵器廃絶過程

D

D 

 

 

10  余剰になった軍事用核分裂物質の国際管理と平和転用

D

C 

 

 

11  究極的目標としての全面かつ完全軍縮

E

C 

 

 

12  ICJ勧告を想起した核軍縮義務の履行に関する定期報告

D

D 

 

 

13  検証能力のさらなる開発

D

D 

 

 

+1  法的拘束力のある消極的安全保証

D

E

 

 

+2  非核地帯の設立

D

C 

 

 

全体平均 D D
評点の説明 「核兵器依存からの脱却」という日本にとって核心的課題にとり組んだ。あるいは、世界的な核軍縮に重要な貢献をした。
「重要課題」(「評価理由の説明」で下線を引いたもの)に意欲的にとり組んだ。
「課題」の一部にとり組んだ。
「課題」「重要課題」にとり組まなかったか、とり組みが極めて不充分であった。幸いにも、そのことが世界的な状況悪化の直接の要因にはならなかった。
「重要課題」にとり組まなかった。一部とり組んだとしても、被爆国として活かすべき貴重な機会を活かさなかった。
 

 
  
 

略語集
ABM条約   対弾道ミサイルシステム制限条約
ADW 化学、生物剤を破壊する能力
BC兵器 生物・化学兵器
CD ジュネーブ軍縮会議
CTBT  包括的核実験禁止条約
CTBTO 包括的核実験禁止条約機構(準備委員会)
FMCT 兵器用核分裂物質生産禁止条約
HDBT 堅固で地中深く埋設された標的
IAEA 国際原子力機関
ICBM 大陸間弾道弾
ICJ 国際司法裁判所
IMS 国際検証システム
KEDO  朝鮮半島エネルギー開発機構
MD ミサイル防衛
MOX  ウラン・プルトニウム混合酸化物
NATO 北大西洋条約機構
NCND政策 肯定も否定もしない政策
NSPD 国家安全保障大統領命令
NGO 非政府組織
NNSA (米エネルギー省))国家核安全保障管理局
NPR 核態勢見直し
NPT   核不拡散条約
NSA   消極的安全保証
OPCW  化学兵器禁止条約機構
PAROS   大気圏外での軍備競争の防止
QDR 4年期国防見直し
RNEP 強力地中貫通型核兵器
SSMP 備蓄兵器管理プログラム
START 戦略兵器削減条約(交渉)
TMD  戦域ミサイル
UNIDIR 国連軍縮研究所
WMD 量破壊兵器


 

以下の見出しの次に来る太字の部分は、NPT最終文書の引用である。また、課題は太字斜体とし、とくに重要な項目(「重要課題」)に下線を引いた。

 

1)CTBT早期発効

1.包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効を達成するために、遅滞なく、無条件に、憲法上の過程にしたがって、署名し批准することの重要性と緊急性。

 

課題1 2002NPT再検討準備委員会や国連総会などにおいて早期発効の要求を日本はくり返し行うこと。また、他国の同種の提案があれば支持すること。

課題2 CTBT発効の見通しが立たないなかで、各国の政治的関心の低下が懸念される。日本政府は国際的関心の維持・強化に努力すること。

課題3 CTBTを否定するブッシュ政権を批判し、日本の市民に説明し、日本の世論を背景にブッシュ政権に強くCTBT批准を要求すること。

課題4 米国以外の未批准の発効要件国12か国の一つ一つについて、各国に適した方法による系統的で継続的な批准促進の活動を行うこと。

課題5 CTBTO準備委員会への技術協力を強化するとともに、その維持について積極的なとり組みを行うこと。

 

評価:B

 

[課題の設定]

課題1(早期発効要求)

 今回の評価の対象としている期間(2002年2月17日〜2003年2月16日以下、対象期間)に、CTBT署名国数は165から166に、批准国は89から97に増加した。署名国の増加が微増であることは、すでに大多数が署名を済ませたこの段階では理解できることである。批准国が一年間で8か国に留まったことは、問題への国際的関心の持続の問題として、動向を注視する必要がある。

 もっとも重要なことは、CTBTの発効要件となっている原子力技術を持つ44か国のうち13か国が未批准であるという状況が、過去2年間、何の前進もないことであろう。その意味では早期発効に向かって具体的な前進がゼロの状況が続いている。

 13か国のうち、インド、パキスタン、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の3か国は署名もまだである。署名はしたが、未批准の国は、アルジェリア、中国、コロンビア、コンゴ民主共和国、エジプト、インドネシア、イラン、イスラエル、米国、ベトナム、の10か国である。核兵器国で未批准は米国と中国である。

 日本政府は、2001年国連決議案提出に際して、最初「CTBT早期発効」という文言すら撤回した案を作り、後にそれでも米国が賛成しないということが分かってから、「CTBT早期発効」という文言を復活させるという失望すべき外交姿勢を見せた。2001年当時の目標であった2003年発効は、もはや目標たり得ない国際情勢であるが、少なくとも「早期発効」を日本政府は揺るぎなく主張し続けるべきである。具体的には、2005年NPT再検討会議第1回準備委員会(02年4月8日〜19日)(以下、「02NPT準備委員会」と略記)、CTBT発効促進会議関連の国際会議、国連総会などの機会において日本政府は「早期発効」を強く打ち出すべきである。

課題2(関心の維持・強化)

 対象期間は、CTBT成立から5年が経過した時期に当たる。5年経っても発効への見通しが立たない中で、各国の政治的関心が低下することが懸念された。日本政府は、CTBT発効を推進する国として、問題を絶えず顕在化させ、国際的な関心を維持・強化する任務を果たすべきである。


課題3(米国批判と市民への説明)

 米国は最強の核兵器国である。その米国において、1999年10月に上院がCTBT批准を否決し、2001年1月に政権の座に着いたブッシュ政権が、CTBTを衰弱死させる方針を表明した。米国は、この成績表の対象期間にも事態をさらに悪化させた。02NPT準備委員会に提出された米国の公式な「情報文書」(4月11日)に、「ブッシュ政権はCTBTの批准を追求する計画はない」と明記したのである。2000年に合意したはずの13項目のこの第一項に、米国は面と向かって不履行を明言したことになる。
 さらに、この背後には、第2項で述べるように、米国の「核態勢見直し(NPR)」(01.12.31、一説に02.1.8)という、極めて深刻な政策的背景が存在することも明らかになった。

 米国が批准を否定したことは、CTBT発効にとって、とりわけ重大な障害である。とくに未署名の3カ国にとっては、最大の核大国である米国が批准を拒否していることが、CTBTの信頼性を否定する有力な根拠となるからである。
 また、日本と米国の二国間の関係にとっても、米政策は深刻な合意違反である。なぜなら、1996年「日米安全保障共同宣言」は、「CTBT交渉の促進」を唱い「軍備管理及び軍縮等の問題についての政策調整及び協力を行う」と唱っていた。さらに、2000年3月には、CTBTの早期発効を「当座の最優先課題」とする「日米軍備管理・軍縮・不拡散・検証委員会」を設立し、両政府は同委員会の発足にあたって、「本日は歴史的な日である」とまで高揚した感情を込めた共同発表を行っていたのである。

 このような状況下で、日本は厳しく米国に抗議しなければならないだろう。また、正常な日米関係を維持するためにも、日本の市民に対して米国に厳重に抗議していることを明らかにし、市民への説明責任を果たさなければならない。


課題4(米国以外への要求)

 米国のCTBTに対する政策を変更させるためには、米国の核兵器政策そのものに対する論理的批判が欠かせないが、同時に国際世論によって米国政府を包囲する努力も必要である。そのための一法は、CTBTの普遍性を高める(加盟国を増やす)ことである。とくに、米国以外の12の発効要件国への働きかけが重要である。
 2000年の国連総会決議(2000.11.20 55/33R)「核兵器完全廃棄への道程」(以下、「道程決議」)で、日本がオーストラリアと共同で「2003年より前の早期に条約が発効するという見通しを持って、早期に署名し、批准すること」という期限設定の決議を提案したとき、賛成投票をした国の中には、米国以外の発効要件国12か国中のアルジェリア、コロンビア、インドネシア、イラン、ベトナムの5か国が含まれていた。つまり、これらの国は、行政府のレベルでは2003年までの批准という目標に同意していたのである。したがって、国によっては、批准期限を設けて交渉課題とすることも考えられる。
 この例に示されるように、個々の政府に応じた批准促進の働きかけをねばり強く行うことが求められる。

 

課題5(CTBTOへの協力)

 署名国が資金を拠出して設立したCTBTO準備委員会(1996.11.19)の主要な任務は、発効時に国際検証システム(IMS)が整備されているよう準備することである。日本はIMSに10の観測所を持つことを求められており、その認証を得る努力をするのはもちろんであるが、日本が進んでいる分野において、他国への技術協力が求められる。また、CTBTへの米国の協力が得られない場合、米国の資金拠出が滞ることも予想される。日本は準備委員会に対して、技術協力にとどまらず、CTBTOの維持について積極的なとり組みをするべきである。

 

[評価]

 対象期間において、課題1、2に関しては、それなりの意欲をもったとり組みが行われた。

 02NPT準備委員会において、天野之弥大使は一般演説で「我が国はCTBTの早期発効を強く要請し、国際社会はこの目標を再確認すべきであると考える」(02.4.8)と強調した。また、作業文書においても、CTBTに前進がないことで、「NPT体制が否定的な影響を受ける」と憂慮し、日本が発効促進に努力していることを例を挙げて熱意を示した。「早期発効」の政策方針が、一応明確になったことの現れとして評価できる。

 日本政府の積極姿勢は、オーストラリアとオランダに働きかけて、国連本部において「CTBTフレンズ外相会議」(02.9.14)を共同呼びかけしたことにも現れている。その会議で18か国外相の「CTBTに関する共同声明」が発せられた。声明の内容は特に目新しいものではないが、フランス、ロシア、イギリスという核兵器国外相を含め、CTBTの意義と政治的関心の持続の重要性を訴えたのは、時宜を得た試みであった。課題2に掲げたように、各国の政治的関心の低下が懸念される時期であるので、日本政府の試みとしてはヒットであったと評価してよいであろう。

 本成績表の各所で議論されるように、02年国連総会における日本の「道程決議」(A/RES/57/78)は、全体としては極めて失望すべき内容であったが、CTBT早期発効に関しては、前年と同様「早期発効を達成することに重要性および緊急性」という文言を盛り込んだ。

 しかし、課題3の米国に対する要求に関しては、日本政府は相変わらず厳しさをもっていない。とくに、前述の天野演説においても「作業文書」においても、米国に対する要求はない。単に「特に発効要件国が、CTBTを早期に署名・批准することを強く求める」と書き、最強の核兵器国・米国が批准しないこと、それどころかCTBTを否定していることの悪影響に、まったく言及していない。固有名詞を出さなくても、その趣旨は十分に表明できるはずである。

 ピースデポや評価委員会との対話の場において、外務省は、米国との個別交渉の場で明確な主張を伝えていると説明した。たとえば、前述した2000年3月設立の「日米軍備管理・軍縮・不拡散・検証委員会」は、現在も開催されており、第4回会議(02.8.26)では、ボルトン国務次官に対して、天野審議官がCTBTを重視する日本の立場を強く伝えたと言う。しかし、CTBT発効は、世論の強い要求のもとに政府が推進している政策であり、しかも米国との間では最高政治レベルの合意をもって共同推進していた政策が、一方的に米国によって否定されたのであるから、政府は国民に見える形で米国に対して抗議することが必要である。それが、国民に対する説明責任を果たす形であろう。その上で、CTBTの将来についての二国間の交渉事が始まるのでなければならない。

 日本の米国に対する曖昧な態度は、せっかくの日本の「早期発効」のための外交努力も、他の多くの国やNGOに、素直に理解されない結果を招くと思われる。

 課題4の米国以外の12か国に対する働きかけについて、評価委員会は外務省から具体的な説明を聴くことができた。それによると、外務省は12か国を、比較的政治的障害が少ない国(インドネシア、ベトナム、コンゴ民主共和国、コロンビア、アルジェリア)、地域安全保障の困難で縛られている国(インド、パキスタン、イスラエル、エジプト、イラン、中国)、特別の国(北朝鮮)という風に分類をして、対策を立てていることを知ることができた。この分類が妥当かどうかについては疑問がある。(米国の影響を冷静に考慮すると、北朝鮮と中国は米国の脅威との関係で分類するのが妥当と思われる。)しかし、国ごとの事情を勘案しつつ、対策を系統的に立てる努力を見ることができた。また、ベトナム、イラン、中国への具体的取り組みについて説明があった。

 課題5に関しては、日本自身のIMS観測所の承認を目指した意欲的な努力が行われている。また、監視体制にかかわる海外技術者の研修や、器材の提供などの協力が行われた。発効要件国であることを意識して、コロンビアやアルジェリアを対象としている。

 総合して、米国に対する要求が弱く、国民への説明も不十分であるが、他の重要課題に意欲的に取り組んだと言える。評価をとする。

 

(2)核爆発実験のモラトリアム

2.CTBTが発効するまでの、核兵器の爆発実験またはその他のあらゆる核爆発の一時停止。

 

課題1 米国における核爆発実験再開への動きに対して、危機感を持って、米国に対する説得、国際世論喚起の努力を行うこと。

課題2 米国の「核態勢見直し(NPR)」によって、未臨界核実験が核爆発実験再開への準備の目的を持っていることが判明した今、日本政府は未臨界核実験反対の立場を明確にすること。

課題3 02NPT準備委員会、国連総会などにおいて、核爆発実験のモラトリアムを継続するよう日本自身が提案したり、他国の提案を支持すること。

 

評価:D

 

[課題の設定]

課題1(米国の動きへの対応)

 
今回の成績表の対象期間は、米国の地下核実験再開の動きが、重大な関心を惹きつけた時期であった。その危機的な状況は、時とともに悪化している。

 まず2002年3月に、米国のNPRの機密部分の内容が、米国各紙やNGOによって暴露された。特に<grobalsecurity.org>のウェブサイトに、抜粋が掲載されたことで大きな影響が生まれた。(ピースデポは全訳を小冊子にして出版した。)

 NPRには、核爆発実験再開の必要性について強いメッセージが込められていた。必要性は二つの側面から書かれていた。

 第一は、米国が現在保有している備蓄核兵器の信頼性と安全性を、地下核爆発実験なしに維持することが非常に困難になっているという記述である。たとえば、次のように書いている。

 「米国は、1992年以来、核実験を実施しておらず、実験モラトリアムの継続的な遵守を支持する。米国は、これ以上の核実験をしないで貯蔵兵器を維持するため、あらゆる努力をしているが、これは無期限の将来まで可能ではないかも知れない。経時変化や制作時の欠陥によって、貯蔵兵器に若干の問題が発生していることが、すでに確認されている。実験なしの環境において、能力に関する客観的判断をすることが、ますますより困難になってくるであろう。」

 第二の側面は、現在の核兵器は冷戦時代に開発されたものであり、冷戦後の要求には不十分である。新弾頭を含む新しい能力(後述する9e項参照)の開発が必要であり、それには実験再開が必要になる、というものである。たとえば、次のように書かれている。

 「国防省とNNSA(国家核安全保障管理局)は、…そうした弾頭を配備するために核実験を必要とするかどうかの調査も含め、更なる研究のための機会を特定するであろう。…こうした懸念に対処するために、…NNSAは、以下の方法によって、今後3年間にわたって実験準備態勢を向上するための提案をする。」

 米国の核爆発実験再開への階段は、「2003会計年度米国防認可法」(02.11.13)3142節によって、一歩さらに先へ進んだ。米議会が、エネルギー省に対して実験再開準備期間を6か月、12か月、18か月、24か月に短縮するための計画書の作成を命じたからである。2004年度エネルギー省予算に添えて1年以内に計画書を提出するための報告資料(予算概要を含む)を提出することが、これによって定められたのである。

 実験再開への圧力が高まっていることは、2003年1月のジークフリード・ヘッカー前ロスアラモス研究所長の専門誌へのインタビューにも現れた。彼は、「米国は、貯蔵核兵器の安全性と信頼性を証明するために、核実験の再開をする以外に選択肢が無くなっている。とくに、新しい核弾頭設計が今後行われるとすれば、なおさらである」(03.1.21、GovExec.Com)と述べている。核実験のモラトリアムを継続するかどうかの判断は、毎年、ロスアラモス研究所などの米国立核兵器研究所の所長らが大統領に勧告することになっている。それを考えると状況は危機的である。

 日本政府があくまでCTBTの早期発効を目指す意思があるのなら、これに逆行する動きに対して明確な反対を表明しなくてはならない。

 したがって、日本政府は危機感をもって、厳しく米国に対処するとともに、日本はもちろん、世界の世論に訴えて反対を貫くよう努めるべきである。



課題2(未臨界核実験反対)

 NPRはまた、核爆発実験再開の準備と未臨界核実験が密接に関係していることを明らかにした。これに関して、NPRには次の3点が書かれている。「」内は、NPRからの引用である。(ピースデポ『米国・核態勢見直し』)

1.「核実験準備態勢は、…核実験計画用人員が(未臨界実験に)参加することによって、主として維持されている。」
2.「地下核実験を実施するのに必要な技術や過程が、…すべて未臨界核実験において用いられている訳ではない。」
3.「今後3年間にわたって実験準備態勢を向上するための提案」として、「追加的な未臨界実験など追加的な実地実験や適切な忠実度をもった核実験関連の演習を実施する…。」

 このように、両者の関係が明確になった今、CTBTを推進し、核爆発実験のモラトリアムの継続を訴える日本は、未臨界核実験を容認する態度を改め、厳しく反対しなければならない。


課題3(国際社会への要求)

 現在、核実験再開に関して、もっとも危険視されるべき国は米国であるが、その他の核兵器国やインド、パキスタンなどの核実験のモラトリアム継続に関しても、国際社会の圧力を維持しなければならない。その意味で、02NPT準備委員会や国連総会などの国際会議において、日本政府はモラトリアム継続を訴え続けるべきである。

 

[評価]

 評価委員会やピースデポとの交渉において、日本政府・外務省は、暴露されたNPR文書の内容を、米国は公式に認めていなくとも、政策を検討するときの考慮の対象にしていると回答した。たとえば、第4回「日米軍備管理・軍縮・不拡散・検証委員会」(02.8.26)では、日本はボルトン国務次官に対してNPRへの懸念を表明したと言う。

 しかし、課題1に照らしてみたとき、日本政府の米国に対する要求は、極めて生ぬるいと言わざるをえない。したがって世論喚起においても、危機感が感じられない。たとえば、2002年の広島、長崎の平和記念式典における首相あいさつは、「CTBT早期発効の重要性を訴え」ながら、実験再開への危機感、あるいはより一般的であれ、米国の核政策の危険な動向には触れなかった。また、日本政府が主導したいわゆる「CTBTフレンズ外相会議」(02.9.14)でも、このような問題意識での訴えはなかった。

 また、課題2の未臨界核実験に関しては、NPRが未臨界実験について上記のような記述をしていることを、担当官は知らなかった。本成績表の対象期間において、米国は第17回「オーボエ9」(02.6.7)、第18回「マリオ」(02.8.29)、第19回「ロッコ」(02.9.26)と3回の未臨界核実験を行っているが、いずれもNPRの内容が暴露されてからのものである。しかし、日本政府は未臨界核実験反対の意思表示を一度も行っていない。

 未臨界核実験に反対すれば、米国にかえって核実験の再開をさせてしまうという議論が外務省の中にある。確かにクリントン政権の時代に、米議会の中にあるCTBT反対論者を説得する方法として、核爆発実験を中止しても、未臨界実験を含む備蓄兵器管理計画(SSMP)によって既存の核兵器の維持は可能であるという議論が強調された。その結果、CTBT批准を急がせるために、未臨界核実験などSSMPには反対しないという一部軍備管理論者の意見があった。

 しかし、NPRやCTBT批准拒否を見て分かるとおり、米国は日本との合意を無視し、米国内の政治力学で動く。したがって日本は、核兵器廃絶という日本自身の目標を中心に据えて発言し、本来の理由によって核実験禁止の要求を力説すべきである。問題は、日本自身に米国の核抑止力に依存するという政策があるために、それができないでいることであろう。

 米国の核爆発実験再開の動きは、日本の核政策の核心を問う課題を突きつけている。米国が「核爆発実験を再開しなければ、日本が求めている核の傘は実行できない」と言ったとき、日本は核爆発実験再開を黙認するのか、核兵器への依存を止めるのか。未臨界核実験について態度を鮮明にすることが、この問題への回答の第一歩であろう。しかし、対象期間において、日本政府のこの点に関する問題意識は、余りにも不鮮明であった。

 NPT再検討準備委員会や国連総会における「核実験モラトリアム継続」の要求(課題3)に関しては、日本政府は従来通りの政策を継続している。また、日本が積極的に動いて実現したいわゆるCTBTフレンズ外相会議(02.9.14)においても、危機感は乏しいものの、モラトリアムの継続の訴えを継続した。

 総合して、この時期に必要な米国の核爆発実験再開の動きへの敏感な対応が見られず、この項目についての評価はとする。

 

(3)CDでFMCTの5年以内の妥結をめざす作業プログラム

3.ジュネーブ軍縮会議(CD)において、1995年の専門コーディネーターの声明とそこに含まれる任務に従って、核兵器用およびその他の核爆発装置用の核分裂性物質の生産を禁止する、差別的でなく、多国間の、国際的かつ効果的に検証可能な、条約のための交渉を、核軍縮および核不拡散という両方の目的を考慮して、行うことの必要性。CDは、5年以内に妥結する見通しをもって、このような条約の交渉を即時に開始することを含んだ作業プログラムに合意することが求められる。

 

課題1 CDの正常化に日本が役割を果たすためには、FMCTと「大気圏外での軍備競争の防止」(PAROS)の両方について公正な外交的立場が重要である。日本はPAROSにも積極的な理解を示し、CDがFMCTについての作業プログラムに合意するよう役割を強めること。

課題2 日本政府は、「1年以内の交渉開始、5年以内の早期妥結」を内容とする国連総会決議の提案を続けること。

課題3 FMCT発効までの間に、進めておくことのできる技術的問題を特定するための専門家会議の召集をCDの枠外でも検討すること。

課題4 軍事用、商業用を問わず各国が保有するすべての核分裂物質の目録を作成する事業の実現を図ること。

 

評価:B

 

[課題の設定]

課題1(PAROS支持とCD正常化への貢献)

 日本政府は、兵器用核分裂物質生産禁止条約(FMCT)をCTBTと並ぶ重点項目に位置づけて、その推進を図ってきた。FMCTが実現することに対する現在の最大の障害は、交渉の場として指定されているCDが空転を続けていることであろう。したがって、CDの正常化がFMCTにとって重要課題となる。

 行き詰まりの原因は、核軍縮、FMCT、PAROS、法的拘束力のある核攻撃をしない安全保証(消極的安全保証)という4つの重要問題について、特別委員会、あるいは作業グループなどを設置するにあたって、特別委員会の目的・任務をめぐる意見の相違が解決できないことにある。この成績表の対象期間において、もっとも際立った対立は、PAROSを巡る米国と中国の対立であった。米国のミサイル防衛(MD)計画がその背景にあることは、言うまでもない。

 米国のMD計画が、中国の核報復能力を弱めるという懸念を作り出し、国際関係を不安定にしている。しかし、中国との関係を別にしても、MDがPAROSの重大性と緊急性を押し上げたことは、否定のできない事実である。米ブッシュ政権によって、対弾道ミサイル制限条約(ABM条約)が失効(02.6.13)させられたため、大量破壊兵器(WMD)を宇宙に配備することを禁止した1967年の宇宙条約以外の法的制約がまったくなくなった。宇宙にMD配備が可能になったのである。さらにブッシュ大統領は、04−05年のミサイル防衛初期配備を発表した(02.12.17)が、その際に次の改良計画として「宇宙配備の運動エネルギー迎撃ミサイル」の名を掲げた(国防省説明)。つまり、人類初の宇宙兵器配備が、数年先に起ころうとしているのである。したがって、宇宙兵器配備を禁止するPAROSの特別委員会に、条約交渉任務を与えるべきという主張は、それ自身極めて緊急性を増していることは否めない。

 米国は、FMCTを最優先課題とし(02.2.7、ジョン・ボルトン国務次官)、一方で「新しい宇宙条約の交渉という考えに反対する」(02.6.27、エリック・ジャビッツ大使)立場をとっている。PAROSが客観的に重要になっているときに、日本が米国と同じように、FMCTだけを強調することは、CDにおける日本の公正さへの疑いを強めるであろう。

 日本政府は、中国がFMCTを妨害するためにPAROSにこだわっているという考えに囚われずに、PAROSの緊急性とFMCTの緊急性を同時に重視する立場に立つべきである。そのことによって、CDの正常化によりよく貢献できると考えられる。

 

課題2(交渉の目標期限)

 日本政府は、FMCT交渉の期限について、01年国連総会では、2000年よりも具体的な目標を掲げた決議案を提案し、圧倒的多数の支持を得た。その内容は、「(FMCTを)交渉するための特別委員会を、2002年会期内のできるだけ早期にCDに設置し、5年以内に交渉を妥結すること」(56/24N)というものである。日本政府はこの立場を堅持すべきである。

 以下に述べる課題3の作業が前進して条約の内容についての議論が深まれば、特別委員会における条約交渉が始まってから「5年以内」の妥結という目標を短縮できる可能性も出てくる。


課題3、4(CDの枠外作業と目録作成)

 FMCTの交渉がCDにおいて開始されるまで、交渉の促進に役立つような技術的準備を、CDの枠外で進行させることが必要になる。日本政府は01年にオーストラリア政府と共催で、政府関係者、専門家を集めたFMCTワークショップをジュネーブで開催した実績がある。そこでは、条約の基本義務、検証、条約機構などで意見交換が行われた。日本政府は、このような努力を継続すべきである。

 その際、被爆国の政府として、「核軍縮および核不拡散という両方の目的を考慮して」というCDの合意に積極的に留意すべきである。現在有り余る兵器用核物質を持っている米国やロシアに対しては、兵器用核分裂物質の「将来の生産禁止」だけでは、核軍縮に向かう義務が強化されない。「過去に生産された兵器用核物質」への対処について、日本は積極的に議論を起こすべきである。「1995年の専門コーディネーターの声明(注:いわゆる『シャノン報告』で、ピースデポの年鑑『核軍縮と非核自治体・2002』に全訳されている)とそこに含まれる任務に従って」というNPT合意の範囲の条約に、貯蔵核物質の規制を盛り込むことは困難であるかも知れないが、シャノン報告もFMCT交渉の過程で「過去の生産についての考慮」を「特別委員会で提起することを妨げるものではない」と述べている。

 将来にも過去にも関係する作業として、軍事用、商業用を問わず各国が保有するすべての核分裂物質の目録を作成することは、FMCT交渉の基礎とした役立つと思われる。このことは、兵器用核物質の管理がテロとの関係で強化されなければならないという現在的な必要性に合致する。国連軍縮本部がもっている大量破壊兵器に関するデータベースにこの項目を加えることが適当である。

 

[評価]

 CDの正常化について、いわゆるアモリム調停案(2000年8月、CD/1624、アモリムはブラジル大使の名前)が従来の軸であり、日本も登誠一郎軍縮大使がそれへの支持を訴えていた(2002.2.14)。今回の評価対象期間においても、さまざまな新たな努力があった。とりわけ、デンブリ(アルジェリア)、リント(ベルギー)、レイエス(コロンビア)、サランダー(スウェーデン)、ベガ(チリ)という5人の前議長が提案した調停案(02.8.29)は、大きなインパクトを持った。

 提案の内容は、課題1の設定のところで書いた4つの重要課題(核軍縮、FMCT、PAROS、消極的安全保証)について、それぞれ特別委員会を設置するが、FMCTについてのみシャノン報告に従った条約の交渉任務を持たせ、他の特別委員会についてはそれぞれ限定的な任務を持たせる、という内容であった。最大の争点であったPAROSに関しては、次のように書いた。

 「(特別委員会は)制限や先入観を排して、いかなる話題や提案についても、それを特定し検討する。それには、信頼醸成や透明性のための措置、一般原則、条約上の制約、大気圏外における軍備競争を防止する能力を持った体制の詳細な検討、などが含まれる。」

 このように、「5議長調停案」は米国にも中国にも配慮した内容であった。しかし、他のほとんどの国が受け入れる準備があったにもかかわらず、中国と米国の間の歩み寄りを決定づけることはできなかった。

 日本政府は、猪口邦子軍縮大使が02年最後のCD全体会議での演説で、「(5議長調停案に)特に勇気づけられた」と言及したように、基本的にこれを支持した。しかし、PAROSとFMCTへの公正な評価など、日本が独自の内容をもって役割を果たすような場面は見られなかった。ただ、米国と中国の両方に歩み寄りを等しく求める姿勢を窺うことができた。対象期間から少しはずれるが、2003年のCDの最初の演説で、猪口大使が中国と米国に名指しして譲歩を促したことに、それが現れている(03.2.20)。

 課題2に関して、日本政府は、02年の国連総会においても、01年と同趣旨で数字だけを変えた「1年以内の交渉開始と5年以内期限」を掲げたFMCT交渉を求める決議を提案し、圧倒的多数の支持を得た。その文言は、「(FMCTを)交渉するための特別委員会を、2003年会期内のできるだけ早期にCDに設置し、5年以内に交渉を妥結すること」(02.11.22、A/RES/57/78)というものである。CDが停滞する中で、国連総会においてFMCTの期限設定に積極的な姿勢を示し続けるたことは、有意義なことであった。

 課題3のCDの枠外でのFMCT関連の専門家会議に関しては、対象期間内の6月と9月にオランダが条約の中味を議論する非公式会議を開催した。日本は、この期間に行事を開催することはなかった。しかし、そのための準備が行われており、03年3月28日に、日本、オーストラリア、国連軍縮研究所(UNIDIR)が「多国間における軍備管理条約の検証促進」というテーマでワークショップをジュネーブで開催する予定が発表されている。ここでは、FMCTの検証問題に一つの焦点が当てられる。

 課題4の核分裂物質の目録作成について、日本政府の具体的とり組みはない。

 総合して、FMCTへの積極性は認められる。また、CDにおける調停能力の独自性が不十分であるが、米中の両方に歩み寄りを求めている点を評価して、とする。

 

(4)CDに核軍縮を扱う下部機関を設置する作業プログラム

4.CDにおいて核軍縮を扱う任務をもった適切な下部機関が設置されることの必要性。CDは、このような機関の即時設置を含んだ作業プログラムに合意することが求められる。

 

課題1 国連総会、CDなどで、繰り返しCDにおける核軍縮特別委員会の重要性を訴えること。また、特別委員会がより実効ある任務を付与されるよう被爆国の役割を果たすこと。

課題2 CDの行き詰まりを打開するのに貢献できるよう、被爆国の立場に立った自立的な外交姿勢を保ち、調停案を模索すること。特にPAROSへの積極姿勢を示すこと。

課題3 イラク、北朝鮮などの核開発問題、さらにはテロリストの核使用が国際的関心を呼んでいるとき、核軍縮促進の緊急性を同時に訴えること。核兵器の非人道性を知る被爆国として斬新な国際世論喚起に努めること。

 

評価:D

 

[課題の設定]

課題1、2(CD行き詰まり打開)

 01年の「道程決議」は、CDにおける核軍縮下部機関の設置を「02年会期内のできるだけ早期に」と、目標設定をして要求した。前項で述べたように、CDの行き詰まりが続いている中で、絶えず更新した期日目標を掲げることは意味のあることであり、日本政府はこの姿勢を継続すべきである。

 しかし同時に、設立される特別委員会が、核軍縮の促進に実効性のある任務を持つような努力を日本政府は行うべきである。CDの行き詰まりを打開するためのアモリム調整案(前出)では、核軍縮特別委員会の任務を、「核軍縮の目的を達成するための前進的、系統的努力のための実際的な措置に関して情報や意見を交換する」と書いており、核軍縮についての協議や交渉は前提とされていない。これに対しては、ニュージーランドなどの積極的な国から、この内容ではNPT合意の下部機関にならないという意見が上がっていた。日本は被爆国として、特別委員会が核軍縮促進に実効ある任務を付与されるよう働くべきである。

 前項で述べたように、CDの行き詰まりは続いており、核軍縮を扱う下部機関を設置する作業プログラムの合意のためには、この行き詰まりを克服しなければならない。ここにおいても、被爆国としての道義的立場を貫いた自立外交の伝統を確立することが重要である。その意味からも、前項で述べたように対立の焦点となっているPAROSについて、公正な観点からの積極性を持つべきである。

 

課題3(国際世論の喚起)

 CDの行き詰まりを乗りこえ、核軍縮の特別委員会が設置されるために、さらにその特別委員会が強い任務を授権されるためには、核軍縮の緊急性を訴える国際世論の高まりが重要な要素である。

 イラクの大量破壊兵器(WMD)開発、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核兵器開発、テロリストの核兵器使用の可能性などの問題で、国際世論の核兵器やその運搬手段に対する関心が高い。このような国際的懸念に対して、被爆国日本の政府は、核兵器の非人道性に根拠を据えて、核兵器廃絶こそ急務であることを訴えるべきである。そのためには、日本自身が、核兵器をはっきりと否定する「非核法」を制定するなど、自らの政策変更で世界にアピールすることが可能であるし、広島市、長崎市など自治体を先頭に立てて、新鮮な形で核兵器の非人道性と危険について国際世論に訴える道も考えられる。日本政府は、斬新な形での世界世論の喚起によって、CDの核軍縮特別委員会の重要性を訴えるべきである。

 

[評価]

  課題1に関しては、 02年の道程決議は、「核軍縮を扱うことを任務とする適切な補助機関を、2003年会期内のできるだけ早期にCDに設置すること」(A/RES/57/78)と要求し、従来の方針を堅持した。

 しかし、この補助機関が行うべき任務については、CDにおいてほとんど意見を述べていない。前項のFMCTを最優先課題とすることによって、日本政府は核軍縮特別委員会の中味について、ほとんど関心を払っていないかに見える。これは、日本政府の「ステップ・バイ・ステップ主義」の偏狭な姿勢と関係している。確かにFMCTは条約交渉の段階まで進む可能性があり、実現性のある次のステップに違いない。しかし、段階に違いはあっても、さまざまなステップを並行的に前進させるアプローチを日本政府はとるべきである。
 現に、前項で説明した新しい「5議長調停案」においては、核軍縮特別委員会の任務は「核軍縮の目的を達成するための前進的、系統的努力のための実際的な措置に関して情報や意見を交換する」というアモリム調停案の中味に加えて、「その際に、多国間の性格をもった将来の作業の可能性に向かう諸アプローチを検討する」という内容が掲げられている。新調停案は効を奏した訳ではないが、この内容は将来活かされる可能性のある、歓迎すべき前進である。前述したように、日本政府は新調停案を支持しているが、このような前進に積極的に貢献しているとは言えない。

 課題2のCDの行き詰まり打開については、前項に説明した通り、日本はPAROSへの積極的評価を示すことにおいても、調停の役割においても、自立的な貢献はなかった。

 課題1の両方に関連して、極めて残念であったのは、02年8月22日のCD会議で核軍縮の重要性を訴えたマレーシア代表が、被爆地長崎でCDの会議を開くことを提案した長崎市長の招待メッセージを伝えたのに対して、日本代表がその機会を十分に活かせなかったことである。マレーシア代表の後に発言した猪口大使は、日本政府は長崎や広島市民の切望に応えるために全力を尽くしていると言いながらも、核軍縮の緊急性を意欲をもって訴えることはしなかった。そして、日本政府はFMCTを最優先課題にしていると、矮小化した政策宣伝に留めてしまった(02.8.22)。

 この姿勢は、課題3にも通じている。イラク、北朝鮮、テロというWMDをめぐる緊迫した世界情勢の中で、日本外交の中に被爆国としてのメッセージを発するという姿勢はほとんど見られなかった。米国と同じように「ならずもの」への核拡散のみをクローズアップして、核兵器そのものの廃棄の緊急性をほとんど発言しなかった。

 総合して、項目4に関する努力は少なく評価はとする。

 

(5)不可逆性の原則

5.核軍縮、核およびその他の軍備管理と削減措置に適用されるべき、不可逆性の原則。

 

課題1 米ロのモスクワ条約が不可逆性の原則に則るように、日本政府は米ロ両国に要求すること。

課題2 日本は、「迅速対応戦力」「核実験再開」「新型核兵器」など米国のNPRに現れている不可逆性の原則無視に対して、厳重に抗議するとともに、原則順守を強く要請すること。

課題3 消極的安全保証の国際公約を無視するブッシュ政権に対して、公約順守を求めること。

課題4 米国のミサイル防衛(MD)は、不可逆的な核軍縮やその他の軍備管理の流れを逆流させる元凶となりつつある。日本政府は、米国のMD計画を批判するとともに、日本自身の国会決議に違反するMD日米共同技術研究を中止すべきである

課題5 戦術核の艦船・航空機への再搭載を防止する措置として、また、後退することのない国是であることを確立するために、日本は非核三原則の法制化を行うこと。

 

評価:E

 

[課題の設定]

課題1(モスクワ条約への要求)

 米国がABM条約の破棄を通告したのは01年12月13日(6か月後に発効)であったから、この成績表の対象期間の早い時期にABM条約が破棄され、米ロ間のSTART(戦略兵器削減交渉)過程が事実上終了することが予想された。また、この過程で米ロが新しい戦略的枠組みについて交渉を継続していたが、米国は条約によらない一方的な戦略核削減の方針を鮮明にしていた。その背後には、削減兵器を将来復活する「迅速対応戦力(responsive forces)」(後述)という概念が作られていることが、NPRによって明らかになっていた。これらはいずれも、不可逆性の原則を破る行為であった。したがって、日本政府は、この期間、米国に対してABM条約破棄の撤回とSTART過程維持を説得するとともに、米ロ両国に対して、核軍縮の不可逆性の原則の重視を訴えるべきであった。
 やがて、02年5月24日、米ロは「戦略攻撃力削減条約」(モスクワ条約)に署名した。しかし、同条約は検証手段を持たない極めて簡単な条約であり、STARTのように運搬手段の廃棄も義務づけていない。2012年までに戦略兵器を1700〜2200弾頭に削減する合意があるものの、懸念されている削減兵器の再配備について何の言及もない。したがって、この段階において日本政府はモスクワ条約の欠点を指摘し、米ロ両国の批准過程において、不可逆性問題が議論されるよう、両国に対して働きかけを行うべきである。

 

課題2(米国NPRへの抗議)

 2002年はじめに明らかになった米国のNPRは、米国が不可逆性の原則をまったく意に介していないことを明らかにした。

 まず第一に、NPRは削減した核弾頭の多くを活性状態のまま、「迅速対応戦力」として保持をするという方針を明らかにした。第二に、第2項目で詳述したように、核実験再開への準備の必要性を力説している。第三に従来の新型核兵器を開発しないという政策を覆し、核兵器に新しい能力(後述の9e項参照)を与える必要性を強調している。

 日本政府は、これらに対して厳重に抗議すべきである。

 

課題3(消極的安全保証に関する米国への要求)

 国連安保理決議(1995.4.11)において、すべての核兵器国は、NPT加盟の非核兵器国に対して核兵器による威嚇や攻撃を行わないと誓約した(消極的安全保証の誓約)。にもかかわらず、核兵器以外のWMDへの対抗兵器として核兵器を位置づけ、消極的安全保証の誓約を否定する考えが、ブッシュ政権下の米国から繰り返し出されている。これは非可逆性の原則への違反行為である。

 NPRでは7か国(ロシア、中国、北朝鮮、イラク、イラン、シリア、リビア)が核攻撃対象国として名指しされているが、このうちロシア、中国を除く5か国がNPT加盟非核国である。また、「国家安全保障戦略」(02.9)、それに基づく「大量破壊兵器と闘う国家戦略」(02.12)は、WMD使用への報復としての核攻撃のみならず、相手のWMDを破壊する先制攻撃としての核兵器使用すらありうることを示唆した。イラク攻撃との関連で、米国のこの姿勢は、新聞でもしばしば報道された。このような、米政策は非可逆的な核軍縮の流れを壊すのみならず、核兵器使用の「しきい」を低くする、極めて危険なものである。したがって日本政府は、消極的安全保証の誓約を順守するよう、米国に対して強く要求すべきである。

 

課題4(ミサイル防衛への批判)

 米国のミサイル防衛(MD)計画がCD行き詰まりの重要な要因となっていることは、すでに第3項、第4項で指摘した。また、新しい軍備競争を誘発することによって、核兵器に新たな軍事的価値を付与する作用を持つであろう。実際、米国のNPRの基礎となった「4年期国防見直し(QDR)」(01.9.30)は、MDを一要素とする国防能力の「新しい三本柱」を定義し、MDと核兵器を併用した考え方を打ち出している。このような考え方は、他国の核戦略に影響せざるをえない。

 一方、日米の戦域ミサイル防衛(TMD)の共同技術研究は、東アジアにおいて不可逆性を危険に陥れている。たとえ研究とはいえ、日米のMD志向は東アジアの緊張を高め、軍備競争の引き金を引いている。その結果、共同研究は中国の核兵器政策の強化のみならず、政策的逆行(無条件の第一(先制)不使用政策の変更、消極的安全保証政策の変更など)を引き起こす要因となりうる。

 また、ブッシュ政権のMD計画では日米共同技術研究の対象となっているシステムは、「海洋配備型中間飛行段階迎撃システム」と呼ばれるものであり、米国のMD計画全体の中で重要な位置を占めている。日米共同技術研究は、日米が一体となって東アジアのみならず世界の軍縮に逆行する役割を演じることを意味する。日本自身に関しても、この技術研究は「宇宙の開発・利用の基本に関する国会決議」(69.5.9)に違反しており、したがって、この項目の命じる「軍備管理に適用されるべき不可逆性の原則」に違反する。

 よって、日本政府は米国のMD計画に反対し、日米共同技術研究を中止すべきである。

 課題5(戦術核再搭載の防止)

 1991年、2年のブッシュ、ゴルバチョフ、エリツィン大統領が、「相互に調整された一方的措置」として、戦術核の廃棄と撤去を行った措置の不可逆性が、核軍縮を後退させないために重要である。日本に関しては、この措置を通じて、少なくとも平時において、艦船・航空機による核兵器の持ち込み疑惑から解放されるという直接の利点が生み出されている。この措置の不可逆性を現場から担保する方法として、非核三原則の法制化を行うことが適切である。

 

[評価]

 不可逆性の原則は、NPT2000年合意の中でも重要な内容を持った合意であるが、日本政府はその実現にほとんど意欲を示していない。

 米国のABM条約の破棄通告以来、事態を静観する姿勢を示すとともに、米ロが作戦配備の核兵器の大幅削減を考えていることに言及することで、日本政府は事態が好転しているという印象を市民に与えようと努めた。

 課題1に関しては、モスクワ条約が署名される以前に開催された02NPT準備委員会においては、作業文書で次のように楽観論を書いた。「米ロが、保有核兵器の削減を行おうとしていると先般発表したこと…を歓迎する。これは、昨年末のSTARTTの履行完了に続く、…核兵器廃棄に向けた前向きな一歩である。」(02.4)

 モスクワ条約が署名されてからの日本政府の発言も、不可逆性の保証に対する懸念表明も要求も行わなかった。署名の日に発表された外務報道官談話は、「国際的な軍備管理・軍縮・不拡散の動きを促進する」と条約への評価と期待を表明したのみであった(02.5.24)。同じように、国連総会第一委員会における猪口邦子大使の演説は「米ロ間の戦略的攻撃力削減条約の署名を高く評価する。そして、この条約が核軍縮努力に向けた重要な一歩として役立つべきものと期待する」(02.10.1)とモスクワ条約に触れるに留まった。

 課題2のNPRへの日本政府の反応の鈍さは、すでに核実験再開への動きに関連して詳しく述べたとおりである。

 課題3の消極的安全保証の誓約に関しては、最近になって『ワシントン・タイムズ』(03.1.31)がさらに重要な事実を暴露した。前述した「大量破壊兵器と闘う国家戦略」の基礎となっている機密文書「国家安全保障大統領命令17(NDPD17)」(02.5)が、次のように核兵器使用について記述していたというものである。

 「合衆国、海外の米軍、及び友好国・同盟国に対するWMD使用に対しては、核兵器の可能性も含めて、合衆国は圧倒的な力で反撃する権利を留保することを、改めて明確にする。」(NDPD17)

 日本政府は米国の消極的安全保証の誓約を無視するこれらの動きに対して反応していない。

 ミサイル防衛(課題4)に関しては、日本政府は逆に「不可逆性の原則」を崩壊させる方向に歩を進めている。日米安全保障協議委員会の共同発表において、日本は「弾道ミサイル防衛計画のすべての要素に関する急速な技術的進展を踏まえて、我が国の防衛の在り方についての検討の中で、この課題に主体的に取り組んでいくとの意思を表明」し、「日米共同技術研究を引き続き進めつつ、ミサイル防衛に関する協議及び協力を強化する必要性を認めた」(02.12.16)。実際には、石破防衛庁長官は「開発・配備まで視野に入れた検討」を記者に表明した。従来の政府見解、つまり、「開発段階への移行、配備段階への移行については別途判断する」(98.12.25、内閣官房長官談話)を超える発言ではない、と後に釈明しているが、防衛庁の積極姿勢が表面化したと考えられる。

 日米共同研究で日本が担当している改良型迎撃ミサイルは、国会決議が開発を禁止した、軍事目的の「宇宙に打ち上げられる物体及びその打ち上げ用ロケット」に明らかに該当する。日本は自ら不可逆性をうち破る道を進んでいる。

 また、追加(2)における東北アジア非核地帯構想を推進する意味からも、ミサイル防衛はその阻害要因となり得ることを考慮しておかなくてはならない。

 課題5の核兵器持ち込みの禁止を確保する努力についても、非核三原則の立法化どころか、福田康夫内閣官房長官が、「将来、非核三原則の見直しもありうる」と記者団に語って(02.6.3)大騒ぎになり、衆議院有事法制特別委員会でその問題について集中審議(02.6.10)が行われる事態を招いた。小泉純一郎首相が、「政策として非核三原則を選ぶ」ことを繰り返し確認したが、法制化への意欲にはほど遠い答弁に終始した。

 総合して、日本の努力はと厳しく評価せざるをえない。

 

(6)保有核兵器の完全廃棄の明確な約束

6.すべての締約国が第6条の下で誓約している核軍縮につながるよう、核兵器国は保有核兵器の完全廃棄を達成するという明確な約束をおこなうこと。

 

課題1 核兵器の半永久的存続を述べている米国のNPRに対して明確に批判し、その撤回を求めること。。

課題2 日本提案の「核兵器完全廃棄への道程」国連総会決議案に、「核兵器完全廃棄の明確な約束を実行するためのプランを、すべての核兵器保有国に求める」内容を入れること。

課題3 日本自身が、核兵器依存を完全廃止する実行プランを作成すること。

 

評価:E

 

[課題の設定]

課題1(米国のNPR批判)

 この「明確な約束」の項目は、2000年合意の宝とも言うべき項目である。

 しかし、核兵器保有国は「明確な約束」をした以後も、それに伴うべき具体的な態度の変更を示していない。すでに述べたようにジュネーブ軍縮会議(CD)の協議でも、核兵器国に新しい態度は見られなかった。とりわけ米国は、この約束と真っ向から対立する政策を進めているように見える。

 NPRは、半永久的とも言える長期にわたって核兵器保有の意思を明らかにした。まず「核兵器は、米国、同盟国、及び友好国の防衛能力において決定的な役割を演じる」と、核兵器の重要性を再確認した上で、2018年までに新型ICBM(大陸間弾道弾)の獲得、2029年までに新しい戦略原潜と新しい潜水艦発射弾道ミサイルの獲得、2040年までに新型戦略爆撃機の獲得、の必要性を説いている。つまり、21世紀半ばまで核兵器が決定的な役割を演じる、との考え方で兵器の更新を見据えているのである。

 「核兵器の完全廃棄の明確な約束」をした国にあるまじき計画と言えよう。日本政府は、このような米国を厳しく批判し、考えの変更を要求するべきである。

 

課題2(実行プラン作成の要求)

2000年秋の国連総会において、日本が「核兵器完全廃棄への道程」という新しいタイトルをつけた国連総会決議を提案し始めたのは、まさに「明確な約束」の実行プランを要求する意味合いがあり、その積極性が高く評価できた。日本政府は決議案のタイトルに恥じない中味を持って、核兵器国に「明確な約束」の履行を迫る具体的な工夫を重ねて行くことが求められる。

 決議に盛り組むべき内容に不可欠なものの一つは、核兵器国が「明確な約束」を行った以上、次のステップとして「完全廃棄への実行プラン」を核兵器国に要求することであろう。実行プランはそれぞれの核兵器国によって異なって構わないから、「道程決議」では「明確な約束の実行プランの作成と提出を求める」という内容を盛り込むべきである。

 

課題3(核兵器依存の完全廃止)

 保有核兵器の完全廃棄は、核保有国のみならず、北大西洋条約機構(NATO)諸国や日本、オーストラリア、韓国など核兵器依存国にも同様に影響がある。「核兵器の完全廃棄の明確な約束」が行われた以上、核兵器依存国も等しく、「核兵器依存の完全廃止の明確な約束」を行ったのである。したがってこれらの国は「明確な約束の実行プラン」を作成することが求められる。日本こそ率先して行うべきである。

 

[評価]

 課題1に関して、「明確な約束」と真っ向から対立する米国のNPRに対して、日本政府がまったく行動を起こさなかったことは、すでに述べた諸項目の場合と同じである。日本政府は、NPRに描かれている核兵器の将来についての米国の態度に、まったく無頓着であるように見える。また、外務省は、米ロの核削減が「明確な約束」実行の一つの証であるという解釈を評価委員やピースデポに示したことがある。しかしNPRは、この削減が核兵器の半永久的な保持につながる論理の下で行われたことを示している。その事実から、外務省は目を背けている。

 01年の日本の「道程決議」において、日本政府は「明確な約束」を後退させる意図ともとれる不可解な行動をとった。「明確な約束」とは、すでに行われた約束であり、それを前提として次のステップを提起する、というのが当然の論理構造であるべきである。そのために、2000年の道程決議では「明確な約束」を前文に置いて「歓迎」した。これは新アジェンダと同じ方法であった。

 ところが、01年「道程決議」では、これから実行されるべき諸課題の一つに「降格した」扱いで、「明確な約束」の引用を主文の中に置いたのである。新アジェンダ諸国からの強い反発を受けて、修正段階で「2000年NPT再検討会議で合意された」という修飾句を被せたが、置く場所は修正しなかった。新アジェンダ諸国が、2001道程決議に棄権をした重要な理由の一つはこの点にあった。そのような経過があるにもかかわらず、02年の道程決議においても日本政府は「明確な約束」を前年と同じ扱いにした。その理由は、フランスの賛成票を取り付けるための配慮であると伝えられている。

 また、NPRで米国の「明確な約束」違反の姿勢が明らかになった中では、道程決議の内容は、約束履行の緊急性をより明確に強調する工夫が求められた。しかし、02年道程決議には、そのような敏感さはまったく見られなかった。

 このように、課題2に関する日本政府の対象期間における実績は、「実行プラン」の要求どころか、「明確な約束」を重視する姿勢自体に疑問を抱かせる内容であった。

 課題3について、日本政府は「明確な約束」が、日本自身に関係する課題だという認識をもっている兆候がなく、したがって取り組みもなかった。

 この重要項目についての日本政府の努力の少なさは、被爆国として極めて残念であり、総合して評価をとする。

 

(7)ABM条約の維持強化とSTART過程の促進

7.戦略的安定の基礎として、また、戦略的攻撃兵器のさらなる削減の基盤として、条約の規定に従いつつABM条約を維持し強化しながら、STARTUを早期に発効させ完全に履行し、STARTVを可能な限り早期に妥結すること。

 

 対象期間の早い時期に、ABM条約が失効し、STARTU、STARTVが事実上無効となったので、この項目は評価対象から除外した。米国が、13項目合意の一つを真正面から踏みにじった結果である。日本政府が、ABM条約やSTART過程の維持に努力しなかったことは、02年の成績表のこの項目や、03年成績表の第5項目「不可逆性の原則」の評価に反映されている。

 

(8)米・ロ・IAEA三者構想の完成と履行

8.アメリカ合衆国、ロシア連邦および国際原子力機関(IAEA)の三者構想の完成と履行。

 

課題1 日本政府は、モスクワ条約下での三者構想を積極的に支持すること。

 

評価:D

 [課題の設定]

課題1(三者構想の支持)

 米ロが核兵器の削減に伴って余剰となった核分裂物質について、IAEAを加えた検証制度を確立して再び兵器目的に使用することを防止するために1996年に三者構想が立ち上げられた。この制度が確立すれば、他の核兵器国にも応用することが可能であり、NPT第6条の核兵器完全廃棄義務にとって重要な意味をもっている。

 START過程が事実上終止符を打ったが、新しいモスクワ条約のもとで三者構想が完成する必要がある。日本政府は、この過程を積極的に推進すべきである。

 

[評価]

 課題1に関して、日本の「道程決議」では、三者構想に言及していない。とくに反対しているわけではなくて、すべての核兵器国に対して同様の要求をしている第10項に含めて考えていると思われる。しかし、米ロ間の核兵器削減の過程がIAEAによって検証されて行くことが重要であり、モスクワ条約に検証条項がない状況では、いっそう意識的な努力が必要になっている。

 日本政府は、カナナスキス・G8サミットで合意された「G8グローバル・パートナーシップ」(02.6.27)で、核不拡散とテロ対策を主眼としたロシアの核物質の管理支援に力を注ごうとしているが、核兵器削減の不可逆性の確保を目的とした三者構想とは、別趣旨のものである。

 その意味で日本のとり組みは不十分であり、と評価する。

 

(9)「国際的安定」と「すべてにとって安全保障が減じない原則」

 

課題1 日本政府は、「国際的安定の促進」や「すべてにとって安全保障が減じない原則」を、13項目の実践を遅らせる理由に使わないこと、また使わせないこと。

 

評価:D

 

[課題の設定]

課題1(悪用の防止)

 第9項には6個の段階的措置が含まれているが、その全体にかかる枕詞として「国際的安定の促進」と「すべてにとって安全保障が減じない原則」が掲げられている。交渉過程では、核兵器国が「戦略的安定性」という枕詞をつけようとしたが、新アジェンダ諸国などがこの言葉が核兵器バランスを容認する意味を持つことを嫌って「国際的安定」という言葉を主張した。

 同様に、核抑止論や力の均衡論に立脚して、「安全保障が減じない原則」を核軍縮に抵抗する論拠に使う場面が起こりうる。たとえば、日本政府の中にも、「朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の脅威に対する抑止として、米国の核兵器の第一(先制)使用政策が必要である」という議論がある。これも、自国の安全保障が減じることを理由として核軍縮につながる措置に抵抗をする一例である。

 しかし、核兵器の削減、警戒態勢の緩和、核兵器への説明責任の強化、第一(先制)不使用など核兵器への依存の軽減、信頼の醸成、協定遵守の促進、などの措置は核軍縮を促進する環境を作り、結果的に「国際的安定」や「すべてにとって安全保障が減じない」状況の醸成を促進するという立場に立つべきである。

 [評価]

 外務省の市民団体との対話の中で、「より積極的な国連総会決議を日本が提出できるためには、地域の安全保障環境が好転しなければならない」という説明があった。保守的な国会議員を説得するために環境の成熟が必要だとの実際上の感想としては理解できる。しかし、被爆国としての日本は、核兵器を安全保障の道具に使ってはならない、核軍縮こそが安全保障環境を好転させるのだ、という確信がしっかりしているべきである。外務省からそのような言葉を聴くことができなかった。

 米国のNPRは、冷戦後の新しい脅威に対抗するために「核能力が持つユニークな特性」を強調する文書である。その意味で「米国にとって安全保障が減じない原則」を掲げて核軍縮に逆行したと言える。日本政府が、これに対して適切に対処しなかったことは、すでに述べた通りである。

 日本の努力をと評価する。

 

(9a)核兵器の一方的削減

9a.核兵器国による、保有核兵器の一方的な削減のさらなる努力。

 

課題1 米ロのモスクワ条約で削減される兵器を、一方的な措置で廃棄することを要求すること。

課題2 一方的削減による米ロの削減速度の向上、戦略兵器削減以外の課題、米ロ以外の核兵器保有国の一方的削減などについて、日本政府は主体的な考察を行い適宜発言すること。

 

評価:D

 

[課題の設定]

課題1(米ロの削減核弾頭の一方的廃棄)

 第5項「不可逆性の原則」で述べたように米ロ・モスクワ条約(02.5.24)は、作戦配備核弾頭を2012年までに1700〜2200発まで削減することに同意したものの、米国の場合、迅速対応戦力として多くの弾頭を貯蔵する方針が明らかになっている。ロシアも同様な措置で対抗する可能性がある。これだと、真の削減が行われたとは言えない。

 条約の批准過程で、両国がモスクワ条約に不可逆性の原則を付与するように要求することと平行して、米ロ両国、とりわけ貯蔵方針を打ち出している米国に対して、削減した弾頭の一方的廃棄を要求すべきである。

 

課題2(削減速度、米ロ以外の削減など)

 モスクワ条約による削減速度は、クリントン・エリツィン合意(ヘルシンキ、1997.3.21)におけるSTARTVの削減速度よりも遅い。STARTVでは2007年までに2000〜2500弾頭まで削減するとされていた。(この弾頭数は、モスクワ条約の数え方に従えば、同じ1700〜2200発となる。)したがって、一方的削減によって削減速度をモスクワ条約よりも速めることを、日本政府は要求すべきである。

 一方的に行うことができるのは戦略兵器の削減だけではない。非戦略核兵器はもっとも使われる可能性のある兵器であり、その一方的削減は、地域安全保障の文脈で重要である。これについては(9c)で扱うことにする。

 その他にも、警戒態勢の緩和や解除、とりわけモスクワ条約で廃棄される予定である核兵器の警戒態勢解除や早期引退などの措置は、米ロがそれぞれ一方的に実施することができる。

 英、仏、中国もそれぞれ一方的措置を進めて、核軍縮の促進に貢献すべきである。とりわけ中国は、唯一このような措置を発表していない核保有国であり、新たなとり組みをすべきである。

 これらの点について、日本政府は主体的な調査と考察を行い、適宜の意見表明を行うべきである。

 

[評価]

 課題1課題2ともモスクワ条約に関しては、すでに第5項目に関して述べたとおり、日本政府はモスクワ条約を歓迎するのみで、その不十分性の認識に立った要求を行っていない。とくに、削減速度がクリントン・エリツィンが合意していたものより後退していることについて触れようとしない。

 日本政府の努力についての評価はとする。

 

(9b)透明性の増大

9b.核兵器能力について、また、第6条にもとづく合意事項の履行について、核軍縮のさらなる前進を支えるための自発的な信頼醸成措置として、核兵器国が透明性を増大させること。

 

課題1 日本政府は、米国のNPRに書かれている新型核兵器の研究・開発や戦略兵器の将来計画について実態を明らかにするため、米国立核兵器研究所の透明性の向上を要請すること。

課題2 日本政府は、米国に対する透明性の要求と合わせて、中国の核軍備や核態勢の現状について、透明性を高めるよう要請すること。

課題3 日本政府は、全地球的、およびアジア太平洋地域における核兵器、関連核物質、運搬手段の目録づくりと、そのための報告制度の確立を推進すること。

課題4 米国に、NCND政策の撤回を求めること。

 

評価:E

 

[課題の設定]

課題1(NPRの検証)

 米国のNPRは第9e項に述べるような新型核兵器の必要性を強調している。また、第6項目で論じたように、長期にわたる戦略兵器の改良・維持を計画している。これらは、世界の核軍縮の努力に大きな打撃を与え、米国への不信の増大が、今後の軍縮の進展に大きなマイナスの効果を生む深刻な状況を作り出している。

 それを克服するために、日本政府は米国の核兵器研究所の透明性を増大するよう、米国に強く要請すべきである。

 課題2(中国への要求)

 中国の核軍備やその態勢についての公的な具体的情報が極めて乏しい。それが、日本における誇大とも言える中国の核兵器脅威論の一因となっているし、健全な東アジアの地域安全保障の議論の障害ともなっている。

 日本が米国の核抑止力に依存しているため、中国の核兵器の透明性を高めるよう求める日本の要求は説得力をもたない。一日も早く日本の政策の撤回をすべきであるが、一方でそのことを前提としつつ、中国の透明性の向上を日本政府は地道に要求し続けるべきである。これは課題1の米国核兵器研究所への透明性向上の要求と平行して行うべきである。年に一回のペースで開かれている「日中軍縮・不拡散協議」の継続的テーマの一つになりうる。

課題3(目録作り)

 核兵器や兵器用核物質に関する透明性の増大には、地球規模の課題と地域の課題がある。地球規模のもっとも基本となる課題は、核兵器、核兵器に使用可能な核物質、それらの運搬手段についての全目録について、関係各国に年次報告を義務づけることである。核兵器廃絶を達成するときに必要となるデータであるだけではなく、その過程における信頼醸成の基礎となる。NPT再検討会議とその準備委員会ごとに提出すべき報告文書にするのがよい。標準化された報告の様式を国連軍縮局で作成するのも一法である。

 東北アジアの平和のための信頼醸成と軍縮の促進にとって、この地域における核兵器の配備と運用状況について透明性を高めることが、極めて重要である。日本政府は、中国、ロシア太平洋地域、米太平洋地域の核兵器と運搬手段について透明性を高める努力をするべきである。この課題は、東北アジア非核地帯の設立をめざす事業の一環ともなる。



課題4(NCND政策の撤回要求)

 米国の「核兵器の存在を肯定も否定もしない政策(NCND政策)」は、透明性の向上に主要な障害となっている。現に、日本に寄港する艦船・航空機への核搭載の疑惑は、この政策のために払拭されないままである。米国政府のNCND政策の変更を求めることは、日本政府にとってこの項目に欠かせない課題である。

[評価]

 課題1のNPRに関しての米国核兵器研究所の透明性の向上は、世界の関心事であるが日本政府はほとんど関心を示さなかった。

 中国への核兵器の透明性の向上の必要性(課題2)について、外務省がしばしば私たちに語っていた。しかし、課題1におけるように米国に対する毅然とした政策を持たない現状では、日本の主張は説得力を持たないと思われる。02年9月24日、「日中軍縮・不拡散協議」が東京で開催され、天野之弥大使(軍備管理・科学審議官)を首席代表とする日本代表団と、劉結一外交部軍控司長を主席代表団とする中国代表団が東京で会談した。しかし、プレスリリースを読む限り、透明性向上についての協議には触れられていなし。触れられているのは、グローバル情勢、ミサイル防衛、地域情勢、CTBT、CDなどであった。

 課題3の目録作りについては、日本政府の関心を見ることができなかった。

 課題4に関しては、米国艦船搭載の核兵器問題について、日本政府の説明では自治体が市民を説得できない事例が、対象期間にも数多く発生した。米軍艦の寄港が増大している北海道では、3月市議会に函館(02.3.11)、苫小牧(02.3.12)、小樽(03.3.15)において核艦船寄港を規制する条例案が上程された。このうち、苫小牧市議会では「非核平和都市条例」が全会一致で採択された。この条例には、市長の義務として「国是である非核三原則の趣旨が損なわれるおそれがあると認める事由が生じた場合には、関係機関に付し協議を求めるとともに、必要と認めるときには、適切な措置を講じるよう要請する」ことが定められている。

 また、藤田雄山広島県知事は、有事法制に関連して米軍艦の「非核証明が必要になる可能性」について、記者会見で触れた(02.4.23)。 これらの例は、米国のNCND政策のもたらす不透明性が、現に日本の市民の不安を掻き立て続けている証左である。ましてや、米軍を警戒する中国や北朝鮮の反応を考えると、NCND政策が東アジアの緊張を増幅していることは間違いないであろう。にもかかわらず、日本政府は米国のNCND政策を改めるよう要請することはなかった。

 総合して、NPRで作られた深刻な状況に日本政府の努力が見られず、評価はとする。

 

(9c)非戦略核兵器の削減

9c.一方的な発議にもとづいて、また、核軍備削減と軍縮過程の重要な一部分として、非戦略核兵器をさらに削減すること。

 

課題1 日本政府は、地中貫通型兵器など新型非戦略核の研究・開発に反対するとともに、非戦略核兵器の削減と透明性拡大に核軍縮の一つの力点を置くこと。

課題2 日本政府は、NATOに配備された米国の核兵器について撤去を求める意見に賛意を表すこと。

課題3 日本政府は、米国に核巡航ミサイルの一方的削減を求め、中国に戦術核の一方的削減を求めること。

課題4 日本政府は、米国のNCND政策の撤回を求めること。

 

評価:D

 

[課題の設定]

課題1(非戦略核への力点)

 新しい戦略環境のなかで、米国においても、ロシアにおいても、非戦略核への依存の増加が懸念される。非戦略核はもっとも使用される可能性の高い兵器である。したがって、非戦略核に焦点を当てた核兵器の削減は重要な意味を持つ。特に米国が、NPRの中で地中貫通型核兵器(バンカー・バスター)や化学・生物剤破壊兵器といった新型戦術兵器の研究・開発を示唆している状況によって、事態はさらに深刻になっている。アフガン攻撃やイラク攻撃において、これらが実際に使用されることも懸念された。

 NATO配備の米国の戦術核爆弾、英国、フランスを含むNATOの戦略以下の(サブ・ストラテジック)核兵器、中央アジア非核地帯設立の障害となっているロシアの戦術核依存の強化、米国の核巡航ミサイル発射訓練の継続とNCND政策がもたらす核疑惑、などの問題も続いている。日本政府は、非戦略核兵器の削減に意識的に取り組むべきである。

 これまで非戦略核の削減は、すべて一方的なイニシャチブで行われてきており、条約による検証や報告が行われていない。とりわけ、1991年、2年のブッシュ、ゴルバチョフ、エリツィン大統領が行った戦術核廃棄・撤去・削減を、透明性と拘束力のある取り決めにすることが重要である。

 

課題2(NATO配備戦術核の撤去)

 とりわけ、米国がNATOに配備している核兵器は、核兵器国領土外の陸地に配備されている世界で唯一の核兵器であり、今後の戦術核兵器の(とりわけロシアの)領土外配備を誘う悪い先例となる。この撤去を求める国際世論が高まるべきである。

 

課題3、4(NCND政策の撤回要求)

 
日本政府にとっては、非戦略核の問題は東アジアの緊張緩和と安全保障のために、とくに重要なテーマである。有事に攻撃型原子力潜水艦に搭載され、日本に持ち込まれる可能性が高い核巡航ミサイルの削減を求めることが、東アジア地域の緊張緩和と非核化に貢献する道である。このようなとり組みをしながら、中国に対して非戦略核の削減を求めることが有効である。その際、透明性の問題として、米国のNCND政策の撤回が再び課題となる。

 

[評価]

 課題1課題2に関しては、対象期間において、一つの重要な前進があった。02年NPT準備委員会において提出した新アジェンダ連合文書(02.4.5)の中で「非戦略核兵器のさらなる削減は優先事項である」と強調した新アジェンダ連合が、秋の国連総会において従来の新アジェンダ決議とは別に、独立の決議「非戦略兵器の削減」(A/RES/57/58、02.11.22採択)を提出し、採択させたのである。細部の内容に工夫の余地があろうが、@非戦略核兵器の削減を優先事項とする、A核軍縮過程の不可欠な一部とする、B透明性と不可逆性をもって行う、という原則を打ち出したことを高く評価すべきであろう。

 しかし、米国の核抑止力に依存する米同盟国であるNATO諸国、日本などは、米国の説得のもとにすべて棄権投票をした。日本の外務省は、非戦略核の削減をテーマとすることに関心を示していながらも、新アジェンダの動きに積極的な支援を示さなかったばかりか、独自の具体的なとり組みもしていない。市民団体に従来示していたこの問題への関心表明を考えると、言行不一致との印象を拭えない。

 ただ、02年国連総会における日本の「道程決議」には、「一方的イニシャチブによる非戦術核兵器の一層の削減」という要求が継続して掲げられている。

 NPRとの関連においては、この項目に関しても日本政府は何ら行動しなかった。

 課題3、4は、日本にとって身近な課題であるが、日本政府のとり組みはゼロである。

 総合して、評価はとなる。

 

(9d)作戦上の地位の低減

9d.核兵器システムの作戦上の地位をさらに低めるような具体的な合意された諸措置。

 

課題1 ブッシュ政権による「先制攻撃戦略」、また、核・非核兵器の間の「しきい」を低くする考え方は、核兵器の作戦上の地位をより危険なものに変化させた。日本政府はこの変化を厳しく批判すべきである。

課題2 日本政府は、全戦略核兵器の「一触即発警戒態勢の解除」を主張すること。

 

評価:E

 

[課題の設定]

課題1(先制攻撃戦略への批判)

 米国防省の2002年国防報告(02.8.15)は、米国の敵に対して「あらゆる手段を行使すること」、「米国の防衛には予防的な措置と、ときには先制攻撃が必要」と明記し、ブッシュ政権の軍事路線として注目された。

 この路線は、より基本的な国家戦略文書によっても裏づけられることになった。米大統領府が発表した「国家安全保障戦略」(02.9)が、「テロとの戦争」における先制攻撃を明記したのである。メディアは、これを大きく報道した。その中には「必要ならば、先制攻撃によって自衛権を行使するため、単独行動をとることも辞さない」という記述がある。

 さらに、先制攻撃戦略は、続く「大量破壊兵器と闘う国家戦略」(02.12)においても繰り返し強調された。この内容は、前述した(14ページ)ように、「国家安全保障大統領命令17(NDPD17)」(02.5)に基礎を持つことも明らかになった。

 先制攻撃戦略は、一方で攻撃兵器の中における核兵器と非核兵器の「しきい」を低くしたNPRの考え方と結合して、この項の主題である「核兵器の作戦上の地位」を極めて危険なものに変質させた。

 NPRでは、まず第一に、「新しい三本柱」の攻撃力の柱において、核兵器と非核兵器の間の区分を取り払った。この状況について、世界的に著名な軍事アナリスト・ウィリアム・アーキン氏は、「危険は、半世紀以上前にパンドラの箱から解き放たれた核兵器が、その鍵のかかった箱から取り出されて、他のものと一緒くたに棚に並べられていることにある」(『ロサンゼルス・タイムズ』、03.1.26)と警告を発している。

 その上、通常兵器のように核兵器を使用する計画に耐え得るように、NPRは米軍が冷戦後に開発してきた「適応性計画(アダプティブ・プラニング)」のより一層の柔軟性の向上と迅速化の必要性を強調している。つまり、冷戦時代のように、巨大な全面核戦争から発想した核使用計画ではなく、不測事態に小回りの利く適応性計画が強調されているのである。

 日本政府は、米国の先制攻撃戦略がもたらしているこのような核兵器の作戦上の地位の危険な変化に警告を発し、厳しく批判すべきである。

課題2(警戒態勢解除の要求)

 ブッシュ大統領のABM脱退の演説(2001.12.13)は、冷戦時代の敵対関係がもはや消滅したことを繰り返し述べた。そのとき、彼は「かつて(米ソ)両国をして何千もの核兵器を互いに向けて一触即発の警戒態勢に置かせた敵対関係もまた、もはや存在しません」と述べた。これが、実際に警戒態勢の解除を行ったことを意味するとは、一般には考えられていない。しかし、少なくとも、警戒態勢の解除の論理的必然性を告白したことになるであろう。「一触即発の警戒態勢」の存続には、今日何の根拠もなく、いたずらに核ミサイルの偶発的発射の危険性を作り出していると言える。「核兵器が即使用される状態を保っている世界とは異常な世界である」という、常識から出発しなければならない。

 日本政府は、一触即発の警戒態勢の解除の要求をすべきである。


[評価]

 課題1に関して、米国の先制攻撃戦略は、イラク戦争に至る国際世論の形成や国際政治の動向、北朝鮮をめぐる国際情勢の進行に多大な影響を及ぼしていた。02年の早期から日本のメディアは「先制攻撃」の危険について多くを報道していた。

 したがって、日本政府がこのことに言及する機会はしばしば存在した。なかでも川口外務大臣がワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)で行った演説「共通の挑戦:米国と日本、現在の日本の見方」(02.9.16)は、テロや大量破壊兵器の問題にかなりの力点が置かれた演説であった。また、第156回国会外交演説の外交演説(03.1.31)は、テロをめぐる国際情勢を取りあげた。しかし、これらの演説の中に、先制攻撃の考え方や核攻撃の「しきい」の低下に関する考察や言及はまったく見られなかった。

 原口幸市国連大使が、国連安保理においてイラクの「査察の継続の有効性に疑問が生じている」と米英の先制的な武力行使を容認するに等しい演説をした(03.02.18)のは、この成績表の対象期間からわずかにはずれる時期であるが、日本政府の中に築かれていた先制攻撃論への容認の姿勢が集約されたものであると言えるであろう。

 このような姿勢は、核兵器の作戦上の地位にかつてない不安定さをもたらし、核戦争への危険を高めるものとして厳しく批判されるべきである。

 外務省は、課題2の警戒態勢の解除について関心を示し、具体的に提案できることはないか省内で研究をしていることを明らかにしていた。しかし、その後具体的な提案をするには至っていない。

 日本政府が米国の先制攻撃論のもたらす危険性にまったく無対応であったのみならず、それを容認する姿勢を示した。警戒態勢問題にも具体的なとり組みが見られなかった。評価をとする。

 

(9e)安全保障政策における核兵器の役割の縮小

9e.核兵器が使用される危険を最小限に押さえるとともに、核兵器の完全廃棄の過程を促進するために、安全保障政策における核兵器の役割を縮小すること。

 

課題1 米国がNPRにおいて核兵器に新しい役割を与え、それを実行に移そうとしていることに厳重に抗議すること。

課題2 2005年までに、日本自身の安全保障政策おける核兵器への依存を撤廃すること。そのための実行プランを作成すること。

課題3 一日も早く、検証制度を持った東北アジア非核地帯設立を目指す政治宣言を発すること。また、その中で北朝鮮に対して核兵器計画の完全な否定を求めること。

課題4 日本政府は進行中の「防衛計画の大綱」見直しにおいて、核抑止力への依存政策から脱却すること。

課題5 日本自身の「非核法」制定を目指すこと。

 

評価:E

 

[課題の設定]

課題1(NPR批判)

 NPRは、米国が核兵器の役割の縮小どころか、核兵器に冷戦後の新しい役割を与え、役割の拡大を図っていることを明らかにした。具体的には、冷戦時代に開発された核兵器の弱点を指摘し、次の4項目を掲げて「新たな能力が開発されなければならない」と指摘している。

 @堅固で地中深く埋設された標的(HDBT)を破壊する能力。(いわゆるバンカー・バスター)
 A移動標的を発見し攻撃できる能力。
 B化学、生物剤を破壊する能力(ADW)。
 C精度を向上し付随的影響を軽減できる能力。

 アフガン戦争やイラクの戦争危機と重ねるとき、これらの一つ一つは、冷戦後の世界で核兵器に新たな役割を与え、実際に使える兵器として位置づけ直していることが、よく理解できる。

 NPRに書かれたのみならず、その後の米国の国防予算措置の中でもこの新能力開発計画が、一歩一歩進んでいる。たとえば、バンカー・バスターは、「強力地中貫通型核兵器(RNEP)」(「03年度米国防認可法」、02.11.13)という名前で予算が付いた。国防長官がエネルギー長官と協議して必要性についての報告書を議会に提出して30日経ってからしか、予算を使ってはならないという条件が付いているが、事実上の開発のゴーサインである。

 日本政府は米国のこのようなあからさまな合意無視に対して厳重に抗議すべきである。

 

課題2(核兵器依存撤廃へ実行プラン)

 この項目は、核兵器保有国と同じくらいに日本のような核兵器依存国に関係がある。核兵器の完全廃棄には、核兵器依存国もその依存を軽減しなければならないからである。日本の場合、被爆国で核兵器の非人道性をもっとも強く訴えなければならない立場にありながら、核兵器に依存する安全保障政策をとっている。日本政府が米国の核抑止力への依存を続ける限り、核をめぐる日本の安全保障政策は、すべてが米国の許容範囲内においてしか実現できないことは、これまですでに実証されている。被爆国でありながら、日本政府が米国の掌の中でしか核兵器廃絶を唱えることができないとしたら、それは国民を欺く単なるパフォーマンスに過ぎないことになろう。したがって、2005年のNPT再検討会議までに、日本は核兵器に依存しない安全保障政策に転換する目標を立てるべきである。そして、そのための実行プランを立てるべきである。そのことによって、NPT第6条の実行に大きな貢献をすることができる。

 

課題3(東北アジア非核地帯へ政治宣言)

 日本政府が、核兵器への依存が必要だという論拠としている脅威は、検証制度をもった東北アジア非核地帯の設立によってほぼ全面的に解消する。一日も早く、政治宣言として非核地帯設立に向かう政策を表明すべきである。政治宣言をした段階で、すでに東北アジアの緊張緩和と信頼醸成にプラスの効果を生むと考えられる。

 また、日本自身が核兵器への依存を放棄することを明確にすることと平行して、北朝鮮に対しても、「外交カード」としても抑止力としても、核兵器を利用しないことを求めるべきである。

 

課題4(防衛大綱見直し)

 03年に提案することを目指して「防衛計画の大綱の見直し」の作業が行われている。この成績表の対象期間の間にも、見直しの中で構想されている統合運用の強化にかかわる諸問題が報道された。

 政府は、この機会を日本の核兵器依存政策を見直す機会として生かすべきである。日本の防衛における核兵器依存を明記した根本の政策文書は防衛計画の大綱である。防衛計画大綱に基づいて日米防衛協力ガイドラインにおいても米国の核抑止力への依存が書かれている。したがってまず防衛計画大綱の見直しにおいて核抑止力依存を削除することが、日本のNPT合意を実行するための具体的で重要な課題となる。

 より具体的には、次のような経緯を踏まえて考えるべきである。

 つまり、1976年の「前大綱」では、「また、核の脅威に対しては米国の核抑止力に依存するものとする」としていた。これに対して、1995年の「現大綱」では、「核兵器の脅威に対しては、核兵器のない世界を目指した現実的かつ着実な核軍縮の国際的努力の中で積極的な役割を果たしつつ、米国の核抑止力に依存するものとする」と、一定の前進をしたと評価できる。

 したがって、核保有国が核兵器の完全廃棄の「明確な約束」に合意したなかで行われる次の大綱見直しにおいては、たとえば次のような文章に改められるべきである。

 「核兵器の脅威に対しては、核保有国がNPT再検討会議で行った『保有核兵器の完全廃棄を達成するという明確な約束』が実行されるよう国際社会で積極的な役割を果たしつつ、速やかに米国の核抑止力から脱却するべきものとする。」

課題5(非核法の制定)

 さらに、日本自身の非核化を検証制度をもって実現するために「非核法」(非核三原則の法制化を含む)を制定するべきである。これによって、日本が「核兵器の役割の縮小」を完全に履行したという範を周辺諸国に対して垂れることができる。NPT体制全体への貢献となり、被爆国としての日本の道義的地位を強固にし、日本の発言力を強めるであろう。

 

[評価]

 米国のNPRに対する抗議を求める課題1に関しては、日本政府は行動を起こさなかった。

 課題2、3、4、5のすべてに関して、日本政府の中に、「核兵器の役割の縮小」は日本自身に課せられた課題であるという認識が、ほとんど存在しないのが現実である。

 核兵器依存国が、核兵器に依存しなくても自国の安全保障を保ちうるという方向に思考と政策を転換しない限り、核兵器の完全廃棄の道は生まれない。日本の防衛のために必要だからと言って米国の核を要求するならば、同じ論理によって、インドもパキスタンも、さらに新しいいくつかの国も核兵器を持とうとするであろう。また、北朝鮮への要求も功を奏しないであろう。

 自分が持つのと、他人に持たせて使わせるのと優劣はつけ難く、どちらも核兵器の完全廃棄の道の障害物である。この点は日本にとって極めて本質的な問題であり、政策変更の兆しを見せない政府に対して、猛省を促したい。

 総合して、被爆国日本の核兵器依存政策の継続を深刻に憂い、評価をとする。

 

(9f)全核兵器国が参加する核兵器廃絶過程

9f.すべての核兵器国を、適切な早い時期において、核兵器の完全廃棄につながる過程に組みこむこと。

 

課題1 日本政府は全核兵器保有国による核軍縮会議の早期開催について、検証制度の準備などの技術的会議を先行させる、非戦略核を優先させる、なども含めて、実現に努力すること。

 

評価:D

 

[課題の設定]

課題1(五か国会議の開催への努力)

 現在、米ロ2国間でしか存在していない核兵器削減交渉を核兵器保有五か国に拡大する必要がある。中国、イギリス、フランスは、米ロの保有核兵器の数が、彼らの数のレベルまで削減されてからしか、このような会議に参加しないことを示唆している。インド、パキスタンは、非同盟運動の立場として、CDにおける多国間協議が望ましいとしている。イスラエルの立場ははっきりしない。

 非戦略核の削減に限定した五か国会議、削減交渉以前に五か国で検証制度の準備会議をするなどの方法も考えられる。

 

[評価]

 2000年NPT再検討会議の13項目においてこの項目が含まれて以来、日本のいわゆる「道程決議」は、この内容を明確に含むようになった。02年道程決議においても、この立場は継続されている。

 しかし、課題1に書いたような、新しい提案を含む積極的なとり組みは、日本政府にはまだ見られない。

 課題に対するとり組みは見られないので、評価はとする。

 


(10)余剰になった軍事用核分裂物質の国際管理と平和転用

10.すべての核兵器国が、もはや軍事目的に必要でないと各核兵器国が認めた核分裂性物質を、そのような物質が永久に軍事プログラムの外に置かれることを保証するために、実際に可能な早期において、IAEAまたは関連する国際的検証の下に置くという制度。および、そのような物質を平和目的に移譲するという制度。

 

課題1 兵器用核分裂物質を検証可能な方法で軍事プログラムの外におく制度の実現に向けて、日本は積極的な協力をすること。その方法について、国内でも公開の議論を重ねること。

 

評価:C

 

[課題の設定]

課題1(協力と公開議論)

 NPT体制の下では、核分裂物質の「平和目的への委譲」という措置は、前進と受け取られる。しかし、多くのNGOの間には、これに対する強い異論がある。原子力発電が、核兵器技術を拡散させることも含め、未解決な深刻な問題を持っているからである。NPT再検討過程の諸会議におけるNGOの意見表明では、原子力依存を脱し、「持続可能なエネルギー」への転換を求める主張が継続して行われている。

 米ロとIAEAの三者イニシャチブについて第8項で述べた。削減された核兵器や余剰になった兵器用核分裂物質が、兵器に再利用されたり流出したりすることを防止するために、何らかの国際検証制度の下に置く必要がある。三者イニシャチブそれ自身もまだ未完成であるが、英国、フランスでも同様な措置を急ぐ必要がある。

 この過程を促進するために、日本を含む国々の技術的、財政的協力が必要になる。米ロ間では、燃料として原子炉で燃やし使用後再処理しない方法や、高レベル放射性廃棄物と混合してガラス固化体として貯蔵する方法などが合意されていた。米国は、02年1月、ガラス固体化方式からMOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料に加工して原子炉で燃やす方式に変更する決定をした。

 日本が、兵器用余剰核物質が再び核兵器に転用されないための国際的努力に協力すべきことはもちろんである。しかし、日本が協力する場合には、国際的な協力の次元の問題と、日本自身のプルトニウム・サイクルが関係する次元の問題を、はっきりと分ける必要がある。その上で、いずれの場合も不拡散と環境・安全性の両面からの、充分な公開の議論が必要であろう。

 

[評価]

 課題1に関連して、日ロ間では、99年5月の高村外務大臣の訪ロを契機に、解体核兵器から生じる余剰兵器プルトニウム処分の支援などを含む研究開発協力「軍縮と環境保護のための日露共同作業」が推進されてきている。2000年9月4日には、「軍縮・不拡散、核兵器廃棄支援分野における日露政府覚書」が東京で交わされた。これらを通じて、ロシアの高速炉BN600でMOX燃料を燃焼させてロシアにおける余剰兵器プルトニウム処分を促進する共同研究が始まった。日本の核燃料サイクル開発機構(核燃機構)とロシアの原子力科学研究所の共同研究である。02年4月14日、20キログラムの余剰プルトニウムの燃焼に成功したという報道があった(『朝日』、02.4.14)。それによると、この成功を受けて、核燃機構は34トンあるとされるロシアの余剰プルトニウムのうち15〜20トンを燃焼する計画に技術協力するという。

 前述したカナナスキス・G8サミットで合意された「G8グローバル・パートナーシップ」(02.6.27)が、ロシアの余剰プルトニウム処分を優先事項と位置づけたことによって、従来の日ロ協力も、G8での多国間協力の中に位置づけられようとしている。小泉首相が最近の訪ロ時に行った演説は、次のように述べている。

 「我が国の協力のもと、ロシアの科学者が開発した先進技術を用いて、先般、世界に先駆けて、原子爆弾2〜3個に相当する量(20キログラム)の兵器級プルトニウムを処分することに成功しました。また、我が国は、G8の余剰プルトニウム処分構想に対し、カナナスキス・サミットにおいて表明した資金貢献(2億ドル強)のうち、1億ドルを充てることにしています。私は、この資金貢献が、日ロ研究協力の、さらなる発展につながることを希望しています。」(03.1.11)

 このように、日本はロシアの解体核兵器から出たプルトニウムの処分に積極的な対応をしていると言える。しかし、この技術協力の方法が適切であるか否かに関して、研究者の間で論争があり、多くの未解決の問題が残されている。特に日本においては、論争の多い日本自身のMOX計画との関係について、透明性の高い議論が不可欠である。それらについて十分な公正な議論が尽くされているとは言えない。

 まず、国際問題として考えたとき、MOX原子炉の安全性と環境問題、使用済み燃料自身が作り出すプルトニウムの処理や管理問題、ガラス固化物を厳重管理する方式との優劣、輸送問題などがある。また、日本に引きつけて考えた場合、MOX燃焼方式は、杜撰な安全管理や経済性を度外視して進められている日本自身のプルサーマル計画との関係を問うことが不可避である。少なくとも兵器用プルトニウムのMOX処分方式の問題を、日本のMOX計画合理化の理屈にしてはならない。また、日本のプルトニウム過剰問題では、プルトニウムを取り出すための再処理をまず止めることが、問題を解決するすべての前提となるべきである。

 ロシアの余剰プルトニウムの軍事利用防止について、日本の積極的取り組みが認められる。しかし、日本のプルサーマル計画との関係を含め、その方法の是非について公開論議を欠いており、評価をとする。

 

(11)究極的目標としての全面かつ完全軍縮

11.軍縮過程における国の努力の究極的な目標は、効果的な国際的管理の下で全面かつ完全な軍縮であることの再確認。

 

課題1 日本政府は、東北アジア地域の軍縮に向けて積極的な努力を行うこと。特に大量破壊兵器やミサイルを含む地域の協調的安全保障の対話の道を探ること。たとえば、東北アジア非核地帯創設についての提案がその出発点となる。

 

評価:C

 

[課題の設定]

課題1(東北アジア地域の協調的安全保障)

 NPT第6条の解釈について、長い間、核軍縮を「全面かつ完全軍縮」条約に従属させる議論があった。その議論は、しばしば核兵器廃絶を遠い未来の課題に遠ざける意図をもって行われた。新アジェンダ諸国は、13項目の中で、核軍縮のための有効な措置について誠実な交渉を行う義務と、「全面かつ完全軍縮」条約に関して誠実な交渉を行う義務とは、関連するが別個独立の義務であることを明確にした。その背景には、国際司法裁判所(ICJ)の1996年の勧告的意見が、NPT6条の核軍縮義務について、明確な判断を下したという経過があった。

 ここで、核軍縮は優先されるべきものであるが、安全保障全体の一部であることの再確認が必要になる。とりわけ、他の大量破壊兵器に関して存在している条約体系−−つまり、化学兵器禁止条約と生物・毒素兵器禁止条約−−の信頼性が増し、強化されて行くことが、核兵器の廃絶にも大きく貢献する。
 東北アジアを考えたとき、北朝鮮が化学兵器禁止条約に参加していない状況の改善が望まれる。また、大量破壊兵器の運搬手段について、公平で冷静な議論が必要になる。たとえば、日本を母港にする米軍艦に500基の巡航ミサイル・トマホークの発射能力がありながら、北朝鮮のミサイル開発の中止を一方的に求めるのでは公平な議論にならない。

 東北アジアにおける核兵器以外の大量破壊兵器やミサイルについての協議は、この地域に検証制度をしっかりと備えた非核地帯を創設する呼びかけがなされるならば、その協議の中で取り扱う道が開けると期待できる。日本政府は、この問題に取り組むべきである。

 

[評価]

 課題1に関連して、日本政府は、北朝鮮の大量破壊兵器やミサイルの脅威、また中国の核の脅威を強調する態度を継続している。そして、ミサイル防衛やアメリカの核の傘といった軍事的対抗手段に訴えることによって脅威をはねのけようと国民に呼びかけている。9.11事件以後には、「テロ対策特措法」制定、自衛艦紛争地派遣による米軍支援という急速な軍事政策の展開によって、日本は東アジアの協調的安全保障に向かう環境をますます悪くした。

 しかし一方で、平壌宣言(02.9.17)は、東北アジア地域の協調的安全保障の前進にとって、画期的な意味を持っている。かつて日本が侵略し、植民地支配した隣国との正常な関係の回復無くしては、この地域の平和と安定は築き得ないからである。そんな中で、平壌宣言は、北朝鮮との間に「相互の信頼に基づく協力関係が構築されることの重要性を確認」し、「地域の信頼醸成を図るための枠組みを整備していくことが重要であるとの認識」を共有した。これは東北アジアの未来に新しいページを飾るものであり、大きな前進であったと言える。

 しかし残念ながら、それ以後の日朝関係はほとんど好転していない。後の+2項で説明するように、新たに生じた北朝鮮の核開発問題に対しても、平壌宣言にそった解決方法は探られていない。日本政府は東北アジア非核地帯を、いまこそ提案すべきだと考えられるが、日本政府の消極姿勢は変わろうとしていない。

 地域の協調的安全保障の枠組みそのもについての前進はないが、基礎としての平壌宣言の実現を重視し、総合して評価をとする。

 

(12)ICJ勧告を想起した核軍縮義務の履行に関する定期報告

12.強化されたNPT再検討過程の枠組みの中で、すべての締約国が、第6条、および、1995年の決定「核不拡散と核軍縮のための原則と目標」の第4節(c)の履行について、1996年7月8日の国際司法裁判所(ICJ)の勧告的意見を想起しつつ、定期報告をおこなうこと。

 

課題1 日本政府は、13項目の履行を含むNPTの核軍縮義務の履行に関する定期報告について、簡単な標準形式を提案すること。

課題2 日本政府は、NPT再検討準備委員会、NPT再検討会議を定期報告書の提出と説明の機会とするよう提案すること。

課題3 日本政府は、日本のNGOを含む専門家会議によって日本独自の定期報告形式と制度を作成し実行すること。

課題4 日本独自の形式及び国際的形式による定期報告は、国会に提出すること。

 

評価:D

 

[課題の設定]

課題1(標準形式作成の提案)

 これは、全締約国に課せられた義務である。とりわけ、核兵器保有国と日本を含む核兵器依存国にとっては重要な義務である。02年NPT準備委員会において、報告書の在り方が多くの国やNGOの関心を集めた。日本政府は、13項目の履行を中心に、最低限の要件を備えた簡単な標準形式を提案すべきである。核兵器国、核兵器依存国、その他の国によって、カバーすべき要件に違いを設けるのがよい。

課題2(NPT準備委員会ごとの報告)

 報告の頻度については、NPT再検討会議準備委員会を当初の目的通り実質的なものにするために、毎回の準備委員会と5年毎の再検討会議において、報告書の提出とその説明を、少なくとも核兵器保有国と核兵器依存国に義務づけることが望ましい。


課題3、4(日本独自の定期報告)

 日本の場合、被爆国としてとりわけ義務履行に忠実でなければならない。また、核兵器依存からの脱却については、日本独自の実行プランが考えられる。

 定期報告を媒介として世論と対話することによって、核兵器廃絶への関心を高めることができる。したがって、国際的な標準に従った報告とともに、日本独自の様式と制度が必要である。

 その様式と制度は、NGOを含む専門家協議を通じて作成するべきである。この成績表は、その試みの参考資料になるであろう。報告の内容は、当然、国会における定期的な審議の対象とすべきである。

 

[評価]

 課題1、2に関しては、02NPT準備委員会において、定期報告の在り方が関心を集めたものの意見の一致は得られなかった。カナダが報告の在り方について作業文書を提出し、リーダーシップを発揮した。議長がまとめた「事実概要」では、@詳細で包括的な内容をもった標準形式、A定期報告の在り方を協議する非公式会議によって形式の同意を追求、B細目は個々の国に委ねる、という三つの立場が並記されている。この過程で、日本政府による積極的な介入はなかった。

 日本政府自身、02NPT準備委員会において「定期報告」を提出した(NPT/CONF.2005/PC.1/14)。しかし、その内容は、上記の課題に示されるような問題意識をもった報告にはなっていない。13項目のそれぞれについての実績を報告せず、CTBTやFMCTへの取り組みなど、宣伝したい項目を書くのみとなっている。たとえば、「核の傘」依存状況など一言も触れていない。また、過去一年の努力を報告する方法ではなく、全般的な過去の取り組みを語る方法をとっている。このような恣意的な定期報告にならないためにも、標準形式を定めることが求められる。

 日本独自の取り組みに関する課題3、4について、外務省は関心を示しているが、実行されなかった。

 総合して、対象期間における努力はと評価する。

 

(13)検証能力のさらなる開発

13.核兵器のない世界を達成し維持するための核軍縮協定の遵守を保証するために必要な、検証能力のさらなる開発。

 

課題1 日本政府は、検証の重要性を認識するとともに、核兵器の開発、維持、管理に使われている資源を、「核兵器のない世界」の検証システムの開発に振り向けるという考え方を奨励すること。

課題2 日本政府は、東アジアにおける地域的検証制度について、研究・開発に取り組むべきである。

課題3 日本政府は、「核兵器のない世界」を維持するのに必要な検証に関する諸課題を洗い出し、対策事項を提案する専門家組織を日本に設立することを検討すること。

 

評価:D

 

[課題の設定]

課題1(資源の振り分け)

 核兵器のない世界に必要な検証のための個々の方法論や技術はすでに存在していると言われる。問題は、それを有効に組織する政治的合意と財政的な裏づけである。すでにCTBTに関しては、地球規模の信頼すべき検証システムが完成されつつある。しかし、それを維持する財政システムが不安である。

 核兵器拡散に対抗するために費やされている軍事費や、核兵器の開発、維持、管理のために使われている物的、人的資源は、検証システムの建設のために費やした方が、より効率的に安全保障に貢献することを知るべきである。日本政府は、このような考え方を主唱し、普及に努めるべきである。

 

課題2(東アジア地域の取り組み)

 また、地域的な協調関係の発展が、検証システムを有効に組織する前提となる。その意味で、日本政府は「東北アジア非核地帯」の設立を視野に入れ、地域的な検証制度について研究・開発に取り組むべきである。

 

課題3(洗い出し専門家組織の設立)

 「核兵器のない世界」を維持するための課題を洗い出し、国際的に問題提起をする専門家組織を発足させることは、被爆国日本にふさわしい事業である。この際、化学兵器禁止条約機構(OPCW)、CTBTO、IAEAなど活動が基礎となる。NGOが作成した「モデル核兵器禁止条約」も重要である。

 

[評価]

 日本政府は、一般的に検証問題の重要性を認識し、日本がこの分野で可能な貢献をしたいという意図を示している。FMCTやCTBTにおける一定の実績もあることは、すでに関連項目で説明をした。02年12月9−10日に、東京においてIAEAの追加議定書の普及に向けて国際会議を開催したのはこのような関心の現れと言える。

 しかし、課題1にあるような「資源の振り向け」という重要な考え方は、日本政府の中にまだ存在していない。この成績表でしばしば触れた米国のNPRに登場する核兵器計画やミサイル防衛計画には膨大な予算が投入されている。このような現状について日本政府の懸念表明や、その費用を核兵器のない世界の維持や、過去の被害者の補償に充てるべきだという提案は行われていない。

 課題2に関して、地域の緊張に軍事的対案が優先されていることは、第12項目に関連して述べた通りである。検証制度の地域的発展について、具体的なとり組みは極めて弱い。

 課題3に関して、日本政府による検討はまだない。

 総合して、評価はである。

 

追加(1)法的拘束力のある消極的安全保証(NSA)

2節 本(再検討)会議は、核兵器の完全廃棄が、核兵器の使用または威嚇を防止する唯一の絶対的な保証であることを再確認する。会議は、5核兵器国による、NPT締約国である非核兵器国への法的拘束力を持った安全の保証が、核不拡散体制を強化することに同意する。会議は、準備委員会に対して、この問題についての勧告を2005年再検討会議に提出することを要請する。

 

課題1 日本政府は、法的拘束力のあるNSAの必要性について自国の政策を明確にすること。日本の国連総会決議の中にそれを盛り込むこと。そのうえで再検討準備委員会が、明確に法的拘束力のあるNSAを達成する方途について合意できるように、積極的に行動すること。

課題2 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)のBC兵器に対して米国の核兵器使用を求めるという不当な考え方を撤回し、非核地帯設立などNSAに基づいた地域安全保障の構築を進めること。

 

評価:E

 

[課題の設定]<