核軍縮:日本の成績表 非核地帯 日米安保 核兵器・核軍縮
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■ 核軍縮:日本の成績表


緊急要請

 2004年10月4日に、小泉首相の私的諮問機関「安全保障と防衛力に関する懇談会」は、「未来への安全保障・防衛力ビジョン」との副題を持つ報告書を発表しました。この報告には、日本の安保政策における核兵器の役割を拡大する勧告が含まれていました。「核軍縮:日本の成績表」評価委員会は、以下のように11月22日に緊急要請を行いました。





町村信孝 外務大臣様
大野功統 防衛庁長官様

 冠略、失礼いたします。
 「安全保障と防衛力に関する懇談会」報告書を読み、また「報告書」を勧告として「防衛計画の大綱」改訂が12月早々にも閣議決定されようとしている情勢に鑑み、緊急の要請を致します。
 私たちは、日本の核軍縮政策に強い関心を寄せ、とりわけ核不拡散条約(NPT)に関係する日本政府の施策をフォローして参りました。その観点から日本の安全保障政策における核兵器依存に関する問題の一点に絞って、貴職の真剣なる検討を促したいと願う次第です。

 言うまでもなく、「現大綱」(1995年)に述べられている次の一文が、日本国が米国の「核の傘」に依存する安全保障政策をとる政策の基本となっております。
 「核兵器の脅威に対しては、核兵器のない世界を目指した現実的かつ着実な核軍縮の国際的努力の中で積極的な役割を果たしつつ、米国の核抑止力に依存するものとする。」
 因みに、それ以前の「元大綱」(1976年)は、単に「核の脅威に対しては米国の核抑止力に依存するものとする」と書いており、その意味で、現大綱は核軍縮についてより積極的な姿勢を示したものであります。核兵器廃絶の一日も早い実現を願う日本国民の考えに一歩近づいたと言えるでありましょう。
 しかるに「防衛懇」報告書は、核兵器依存政策について次のような認識を示しています。

 「日本周辺の国際環境は、すでに述べたとおり、依然として不安定性に満ちており、核兵器などの大量破壊兵器による紛争の可能性も完全には否定できない。弾道ミサイルによる脅威も存在する。その意味で、今後とも日米同盟の信頼性を相互に高めつつ、抑止力の維持を図る必要がある。とりわけ核兵器などの大量破壊兵器については、引き続き、米国による拡大抑止が必要不可欠である。」(「報告書」7ページ)
 つまり、報告書は、米国の「核の傘」の役割を核兵器のみならず「大量破壊兵器」全般に拡大することを内容としております。この考え方は、現在の国際合意に明文的に違反するものであります。
 そこで、私たちは次のことを要請します。

 1.日本政府は、米国の日本への核抑止力を「大量破壊兵器」全般に拡大する「防衛懇」の考えを採択しないことを要請します。

 冷戦終結以来、核兵器の役割をできるだけ少なく限定することによって核軍縮を促進する「最小限抑止」の考え方が、抑止論者の中にも強まりました。私たちは、必ずしも「最小限抑止」の考えに賛同するものではありませんが、ここで指摘したいのは、その議論において、化学兵器や生物兵器といった核兵器以外の大量破壊兵器の問題が、忘れられていたわけではないということです。それを知った上で、米科学アカデミー報告(1991年)もオーストラリア政府のキャンベラ委員会報告(1996年)も、核兵器を核攻撃に対する対抗手段としてのみ限定して位置づけたのです。 核兵器のみが持つ比類ない破壊力がもたらす政治的不安定を早期に解消して行くことが、国際社会における重要な課題なのです。
 だからこそ、NPT体制においても、化学兵器・生物兵器を云々しないで、核兵器国が非核兵器国に対して核兵器を使用しないという「法的拘束力のある消極的安全保証」に向かうことがNPT体制を強化するという認識に立ったのです。日本政府自身も含めて合意した2000年NPT再検討会議の最終文書は、次のように書いています。
 「5つの核兵器国による、NPT締約国である非核兵器国への法的拘束力を持った安全の保証が、核不拡散体制を強化することに同意する。会議は、準備委員会に対して、この問題についての勧告を2005年再検討会議に提出することを要請する」
 また、同じ最終文書で、次のように、核兵器の役割を現状よりも拡大しないことに日本政府も合意しました。
 「核兵器が使用される危険を最小限に押さえるとともに、核兵器の完全廃棄の過程を促進するために、安全保障政策における核兵器の役割を縮小すること。」
 日本政府が、「防衛懇」報告に従うならば、来年5月のNPT再検討会議を目前にして、日本政府自らが国際合意を踏みにじることとなります。そうならないことを私たちは強く要請します。

 2.日本の安全保障政策における核兵器への依存を解消するようさらに一歩前進することを要請します。

 核兵器の非人道性をどの国よりも熟知している日本が、核兵器に依存する安全保障政策をとっていることほど、誤ったメッセージを国際社会に与えるものはありません。
 前述しましたように、1995年における大綱改定においては、核軍縮に向けて一歩前進する文言が採択されました。私たちは、今回の改訂において、「核の傘」政策から、厳しい検証制度を備えた「東北アジア非核地帯」政策へと方向転換することを提案します。
 2000年NPT再検討会議において、すべての核保有国が、「保有核兵器の完全廃棄を達成するという明確な約束」を改めて行ったことはご存知の通りです。この合意を踏まえれば、新しい大綱は、たとえば次のように書くことができるでしょう。
 「核兵器の脅威に対しては、核保有国がNPT再検討会議で行った『保有核兵器の完全廃棄を達成するという明確な約束』が実行されるよう国際社会で積極的な役割を果たしつつ、速やかに東北アジア非核地帯の確立に向かう努力を開始し、米国の核抑止力への依存の解消を目指すべきものとする。」

 以上、緊急に要請します。

2004年11月22日

 「核軍縮:日本の成績表」評価委員会

  梅林宏道(世話人、ピースデポ代表)
  黒沢 満(大阪大学)
  竹村泰子(元参議院議員)
  田中熙巳(日本被団協事務局長)
  土山秀夫(元長崎大学学長)
  都留康子(東京学芸大学)
  仁木三智子(日本YWCA)
  平岡 敬(元広島市長)
  前田哲男(東京国際大学)
  森瀧春子(核兵器廃絶をめざすヒロシマの会)


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