■ 短信:2001国連総会日本決議案



●10月31日

 本日、下記文書を外務省およびニューヨークの日本政府国連代表部にFAXで送付しました。現在進行形の日本決議修正にNGOの意見をインプットするためです。送った先は、外務省軍備管理軍縮課のファックス:03−3591−3613、日本政府国連代表部のファックス:1−212−751−1966、です。(梅林宏道、川崎哲)

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田中眞紀子 外務大臣様
宮本雄二 軍備管理・科学審議官
登誠一郎 軍縮大使様



提言:日本決議案の修正について


 10月18日に日本政府が国連総会第一委員会に提出した決議案「核兵器全面的廃絶への道程」(A/C.1/56/L.35)について、意見を申し述べます。現在、修正中との情報を得ていますので、緊急に私たちの考えを述べます。

1. 2000NPT再検討会議の教訓
 2000年NPT再検討会議で、日本の核軍縮外交は重大な岐路に立たされました。それは、これまで米国への最大限の配慮を重視してきた政策が、ほかでもなく米国によって否定されてしまったからです。交渉に当たった登誠一郎軍縮大使が、米国が裏切ったと言わんばかりに「二階に上がってはしごをはずされた」(「外交フォーラム」2000.9)と書いたことは、その間の事情を端的に物語っています。
 同会議で、日本はオーストラリアと共同で8項目提案を行いました。これは、米国が合意できることを念頭においた、きわめて控えめな提案でした。しかし、会議では実際には、核兵器国に対して毅然として強い内容の要求を掲げた新アジェンダ・グループが、米国を初めとする核兵器国との交渉を成立させました。最終文書に盛り込まれた軍縮関連の重要事項は、実質的には新アジェンダ・グループと5核兵器国との交渉によって形作られました。日本は核心部分で交渉の蚊帳の外にありました。結果として、最終合意は、日豪8項目提案を上回る水準で大きな前進を勝ち取り妥結しました。
 つまり、日本が長く提案してきた「究極的核廃絶」の文言は打破され、「保有核兵器の完全廃棄を達成するという明確な約束」が、新たな規範として合意されたのです。
NGOとして、外務省と対話を続けてきた私たちも、この日本の核軍縮外交の失敗の別の目撃者でした。私たちは、外務省の皆さんとの対話のたびに、新アジェンダ・グループのような対決的姿勢は実を結ばない、日本のような非対決的なアプローチこそが着実な前進を生むのだ、との説明を受けてきました。ところが、まさにその逆が現実となって現れたのです。
 日本の核軍縮外交は、このとき大きな教訓を得たと信じます。米国への気兼ね外交を根本的に見直す好機が訪れたのです。外務省の皆さんも、その認識を私たちと共有したに違いないと、私たちは信じたいと思います。

2.2000年日本決議の前進
 昨年の国連総会決議55/33Rは、そのような転機を迎えた日本の軍縮外交の新たなチャレンジを示すものとして、私たちは注目しました。
 NPT再検討会議合意の中で核軍縮にとって死活的なのは、第6条に関する13項目措置です。そして、その13項目措置の実行を迫るのに基礎となるとなるのは、核兵器国による「保有核兵器の完全廃棄を達成するという明確な約束」という合意事項です。これは、NPT再検討会議で、核兵器廃絶を願う非核兵器国と世界の市民が勝ち取った最大の成果であり、今後の核軍縮前進のための梃子となるものです。昨年の決議で、日本がこの「明確な約束」を、NPT再検討会議の成果を代表する言葉として前文最終節に書き記したのは、この意味でまさに正当なことでした。
 また、CTBTの発効に2003年という目標期限を設け、FMCTの合意目標を2005年と設定したことは、NPT合意よりも更に先へと核軍縮を進めるためのリーダーシップを日本が発揮し始めたこととして、私たちは歓迎しました。
 ただ、このとき、第一項での教訓を思い起こすとき、新日本決議が、米国の手のひらで動いているのではない日本外交の新局面を刻印するという期待が、他の諸国にはまだ生まれていないことを私たちは感じていました。日本のNGOとしては、このことに不安を抱きつつも、期待を込めて歓迎したのです。

3. 「明確な約束」は重要な礎石
 ところが、今年の決議は、「明確な約束」の位置を、昨年のように前文に置いて全体を支配する項目とするのではなくて、主文3の中の1項目に格下げしています。これを見たとき、私たちはことの重要性を直感しました。新アジェンダ諸国やNGOが、このことによって、どれだけ傷つき、日本政府への信頼を失うだろうか、と考えました。予想通り、私たちの敬愛する友人たちから、落胆と批判の声を多く聞きました。
 この「格下げ」は、日本政府が、「明確な約束」を核軍縮前進の基礎と位置づけるのではなくて、「これから約束を行うという将来の措置」と位置づけを変更していることを意味しています。決議は、その題名とは裏腹に、「核軍縮後退への道程」の烙印を押されてもしかたがありません。
 この問題は、NPT最終文書原文の中での「明確な約束」の配列の問題や、その文章解釈の問題ではありません。NPT再検討過程を、どのように核軍縮に貢献する内実を持つものにしていくかという政策構想の問題です。いくら2002年4月から再開されるNPT再検討過程の「円滑な開始」をうたったところで、それをどのように進めていくかという政策構想がなければ、また日本外交は失敗します。さらに、「明確な約束」の位置づけ変更の背景に米国の意向があるのだとしたら、これはまさに昨年の轍を踏むものです。米国は、多くの国を視野に入れつつ日本に要求をしているのであり、その意向に沿いすぎる日本は、また「はしご」をはずされる憂き目を見る可能性があります。

4. 疑問の残る全面完全軍縮への言及
 また、今年の決議が「究極目標としての全面完全軍縮」に言及したことについて、NGOの中には警戒感があります。なぜならば、確かにこの文言はNPT13項目合意の一つではありますが、13項目を選択的に採用した主文3の中に、なぜ今年になってこの項目のみを新たに採用しているのか判然としないからです。また、これが、「明確な約束」の格下げと対になって現れていることも、憂慮を強くする一因となります。
 かつて日本が主張してきた「究極的」の文言が、核兵器国にとって「限りなく遠い将来」を意味する言葉として利用されたこと、また、核兵器国がしばしば、核軍縮を完全全面軍縮とリンケージさせるという一見もっともらしい手法によって、核軍縮停滞の口実を巧妙に作ってきたことなどが、この警戒感の背景にあります。

5. 日本が国際的に信頼されてこそ米国も日本に耳を傾ける
 決議はさらに、個別的事項で次のような過ちをおかしています。
 第一に、CTBTの2003年発効期限要求をたった一年で退けたこと。そればかりか、「早期発効を要求する」ことすらも止めています。CTBT成立後の日本政府のCTBT促進外交を、私たちは一定程度評価してきました。しかし、今回ブッシュ政権が誕生するといともたやすくCTBT推進の旗を降ろすという有様を国際的に見せたことは、「日本は良いことをやっていても米国が変わればすぐに変わってしまう」ということを国際的に見せつけるものです。11月11日からのCTBT発効促進会議を前に、各国を落胆させるものです。
 第二に、ABM条約やSTARTへの言及を止めています。これは、ABM問題で米国に与するとの立場表明と受け取られます。START重視をうたってきたこれまでの日本の軍縮方針とも矛盾します。
 これらは、米政権の政策の実状を反映させた結果でしょう。しかし、繰り返しにな
りますが、日本政府は米国の政策の範囲内でしか核軍縮を求めない、というこれまで
作られてきた評判を書き換えることこそが、今必要なのです。それが、2000年N
PT会議での教訓です。

6.修正こそが信頼回復の道
 すでに、今回の決議案に対して、新アジェンダ諸国、非同盟諸国、さらには欧州諸国の間に「賛成票を投じない」との動きが出ています。仮に信頼されている主要非核兵器国が棄権すれば、それは、国際社会が被爆国日本を核軍縮の妨害者と認定することを意味します。このようなことを防ぐために、今からでもとれる措置はたくさんあります。私たちは、上述したような私たちの考え方にそって、日本政府が早急に決議案を修正することが、日本外交にとって最善の道であると信じます。

2001年10月31日
ピースデポ代表   梅林宏道
    事務局長   川崎 哲


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