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■ モデル「東北アジア非核兵器地帯条約」(案)(2004.7.3)    ▲条約案に関する注記


(以下の案は、今後、多くの専門家や関心のある市民が議論してゆくためのたたき台となることを希望して作成された。梅林宏道)


前文
 この条約の締約国は、
 東北アジアは、核兵器が実際に使用された世界で唯一の地域であることを想起し、
 また、二つの都市の破壊と数10万人の市民の被爆によってもたらされた、約60年を経た現在にも続く人間的、社会的な形容しがたい苦難に思いを致し、
 日本と朝鮮半島には、今なお多くの被爆者が不安に包まれて生きていることに思いを致し、
 現在の核兵器は、当時よりもはるかに強力な破壊力を持ち、人類の築いた文明を破壊しうる唯一の兵器であることを認識し、
 また、核兵器の先制使用を含め、実際に核兵器が使用されるという新たな軍事的脅威が生まれつつあることを危惧し、
 朝鮮半島においては「朝鮮半島の非核化に関する南北共同宣言」が1992年2月に発効し、日本においては、今日国是とされる非核三原則が1967年以来確立していることを想起し、
したがって、この地域に関係国の自発的合意に基づいて非核兵器地帯を設立することは、歴史的経緯から極めて自然な希求であるという認識を共有し、
 一方、過去の一時期においてこの地域で行われた侵略戦争と植民地支配から発生したさまざまな困難を直視し、
 同時に未来に向かってそれらを克服するために積み重ねられてきた地域内諸国家の歴代の政府による努力を想起し、
 それらの中における最良のものを継承しつつ、その基礎の上に地域諸国家の友好と平和的協力をさらにいっそう発展させることの重要性を痛感し、
 非核兵器地帯の設立が、そのような地域的な協調的安全保障を築くために優先されるべき第一歩であると固く信じ、
 その設立が、1997年に発効した「化学兵器の開発、生産、貯蔵及び使用の禁止並びに廃棄に関する条約」、また1972年に発効した「細菌兵器及び毒素兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約」を初めとする、すでに存在する国際的軍縮・軍備管理条約への普遍的な加盟と遵守を、この地域において促進するであろうことを希求し、
 その設立が、1970年発効の「核兵器の不拡散に関する条約」第6条に規定され、1996年7月8日に出された国際司法裁判所の「核兵器の使用と威嚇に関する合法性」に関する勧告的意見によって再確認された核軍縮に関する義務の履行の促進に貢献するであろうことを信じ、
 さらに、その設立は、その他多くの国際条約や国際機関の決議に具現されてきた、一日も早い核兵器の全面的禁止と完全廃棄を求める世界の人民の熱望を実現するための一つの追加的な貢献となることを確信し、
 次のとおり協定した。


第1条 用語の定義
 この条約及びその議定書の適用上、
(a) 「東北アジア非核兵器地帯」とは、日本、大韓民国及び朝鮮民主主義人民共和国の領域で形成される地域を意味する。
(b) 「領域」とは、領土、内水、領海、これらの海底及び地下、並びにこれらの上空を意味する。
(c) 「地帯内国家」とは、日本、大韓民国及び朝鮮民主主義人民共和国を意味する。
(d) 「近隣核兵器国」とは、NPT条約上の核兵器国のうち中華人民共和国、アメリカ合衆国及びロシア連邦を意味する。
(e) 「締約国」とは、「地帯内国家」と「近隣核兵器国」とを合わせた六か国のうち、本条約の規定にしたがって批准書を寄託した国家を意味する。
(f) 「核爆発装置」とは、その使用目的を問わず、核エネルギーを放出することのできる、あらゆる核兵器またはその他の爆発装置を意味する。その中には、組み立てられていない形及び部分的に組み立てられた形における核兵器または爆発装置は含まれるが、それらの輸送または運搬手段がそれらと分離可能であり、かつそれらの不可分の一部をなしていない場合は、含まれない。
(g) 「放射性物質」とは、国際原子力機関(IAEA)の勧告するクリアランス・レベルまたはイグゼンプション・レベルを超える放射性核種を含む物質を意味する。
(h) 「放射性廃棄物」とは、IAEAの勧告するクリアランス・レベルを超える濃度または放射能をもった放射性核種を含む物質、あるいはそれで汚染された物質であり、いかなる利用価値も予想されない物質を意味する。
(i) 「核物質」とは、IAEA憲章第20条において定義され、IAEAによって折に触れて修正された、あらゆる原料物質、あるいは特殊核分裂性物質を意味する。
(j) 「核施設」とは、発電用原子炉、研究用原子炉、臨界施設、再処理施設、核燃料加工施設、使用済み燃料貯蔵施設、核燃料廃棄物貯蔵施設、その他すべての相当量の核物質、照射された核物質、放射性物質、または放射性廃棄物が存在する施設を意味する。

第2条 条約の適用
1. 別段の規定がない限り、この条約及び議定書は「東北アジア非核兵器地帯」に適用される。
2. 領土に関する争いがある場合、この条約のいかなる規定も、領有権の解釈に関する現状を変更するものではない。
3. この条約のいかなる規定も、海洋の自由に関する国際法上の国家の権利または権利の行使を害するものではなく、どのような形においても影響を与えるものではない。
4. 地帯内国家の領域内にある近隣核兵器国の管理下にある軍事施設もまた「東北アジア非核地帯」の一部として条約の適用を受ける。

第3条 核爆発装置に関する基本的義務
1.地帯内国家の義務
 地帯内国家は、次のことを約束する。
(a) 東北アジア非核兵器地帯の内であるか外であるかを問わず、核爆発装置の研究、開発、実験、製作、生産、受領、保有、貯蔵、配備、使用を行わない。
(b) 他の国家、あるいは国家以外の集団や個人が、地帯内国家の領域内において、本条1項(a)記載の行為を行うことを禁止する。
(c) 自国の安全保障政策のすべての側面において、核兵器、またはその他の核爆発装置に依存することを完全に排除する。
(d) 1945年の原子爆弾投下が都市や市民に与えた被害の実相を、現在及び将来の世代に伝達することを含め、核軍縮の緊急性に関する教育の世界的普及に努力する。
2.近隣核兵器国の義務
 近隣核兵器国は、次のことを約束する。
(a) 東北アジア非核兵器地帯に対して核爆発装置を使用しない。また使用の威嚇を行わない。
(b) 地帯内国家に対する本条1項の諸義務を尊重し、その履行の妨げとなるいかなる行為にも寄与しない。
(c) 近隣核兵器国が、核爆発装置を搭載する船舶または航空機を地帯内国家に寄港、着陸、領空通過、または無害通航権または通過通行権に含まれない方法によって地帯内国家の領海を一時通過させる場合には、当該地帯内国家に事前通告し、許可を求めて協議を行う。協議の結果許可するか否かは、当該地帯内国家の主権的権利に基づく判断に委ねられる。

第4条 原子力の非軍事的利用
1. 本条約のいかなる規定も、締約国が原子力を非軍事的に利用する権利を害しない。
2. 地帯内国家は、核不拡散条約(NPT)第3条に定められた保障措置の下においてのみ、原子力の非軍事的利用を行うものとする。
3. IAEAとの間に包括的保障措置協定及び追加議定書を締結していない地帯内国家は、本条約発効後18か月以内にこれらを締結しなければならない。
4. 地帯内国家は、それぞれの国家の安定的で持続的なエネルギーの確保について、地帯内国家間の誠意を持った協力を発展させなければならない。

第5条 放射性物質の海洋投棄と空中放出
 地帯内国家は、次のことを行わないことを約束する。
(a) 東北アジア非核兵器地帯のいかなる場所であれ、放射性物質または放射性廃棄物を、海洋に投棄すること、また空中に放出すること。
(b) 東北アジア非核兵器地帯のいかなる場所であれ、他の国家、あるいは国家以外の集団や個人が、放射性物質または放射性廃棄物を、海洋に投棄、または空中に放出することを許可すること。

第6条 核施設への武力攻撃の禁止
 締約国は、東北アジア非核兵器地帯内に存在する核施設に対して、いかなる方法であれ、武力攻撃を目的とする行動をとらないこと、そのような行動を支援しないこと、また奨励しないことを約束する。

第7条 東北アジア非核兵器地帯委員会の設立
 本条約の履行を確保するために東北アジア非核兵器地帯条約委員会(以下、「委員会」と言う)を設立する。
(a) 委員会はすべての締約国によって構成される。各締約国は、外務大臣又はその代理によって代表され、代表代理及び随員を伴う。
(b) 委員会の任務は、本条約の履行を監視し、その諸条項の遵守を確保することにある。また、そのことと関係して、必要な場合、本条約の前文に述べられた事項に関して協議を行う。
(c) 委員会は、いずれかの締約国の要請によるか、あるいは第8条によって設立される執行委員会の要請により開催される。
(d) 委員会は、すべての締約国の出席をもって成立し、コンセンサスによって合意を形成する。コンセンサスが達成できない場合は、1か国を除くすべての締約国の合意によって決定することができる。
(e) 委員会は、各会合の冒頭に議長及びその他の必要な役員を選出する。議長は、締約国の内、三つの地帯内国家から選出される。彼らの任期は、その次の会議で議長及びその他の役員が新たに選出されるまでとする。
(f) 委員会は、本部の所在地、委員会及び下部機関の財政、並びに運営に必要なその他の事項に関する規則及び手続きを決定する。

第8条 執行委員会の設立
1.委員会の下部機関として執行委員会を設立する。
(a) 執行委員会はすべての締約国によって構成される。各締約国は、高官一人をもってその代表とし、代表は、代表代理と随員を伴うことができる。
(b) 執行委員会は、その任務の効率的な遂行に必要とされるときに開催する。
(c) 執行委員会の議長には、構成員の内、委員会の議長を代表する者が就任する。締約国から執行委員会議長に宛てられたすべての提出物または通報は、他の執行委員会構成員に配布される。
(d) 執行委員会は、すべての締約国の出席をもって成立し、全会一致によって合意を形成する。全会一致が成立しない場合は、1か国を除くすべての締約国の合意によって決定することができる。
2.執行委員会の任務は次の通りとする。
(a) 第9条に掲げる本条約遵守を検証する管理制度の適切な運用を確保すること。
(b) 第9条2項(b)に掲げる「説明の要請」あるいは「事実調査団に関する要請」があった場合、それについて検討しかつ決定すること。
(c) 本条約の「管理制度に関する付属書」にしたがって、事実調査団を設置すること。
(d) 事実調査団の調査結果について検討しかつ決定して、委員会に報告すること。
(e) 適切かつ必要な場合に、委員会に対して委員会会合の招集を要請すること。
(f) 委員会からしかるべく授権を得た後、委員会のために、IAEAその他の国際機関との間で協定を締結すること。
(g) 委員会の委任するその他の任務を遂行すること。

第9条 管理制度の確立
1.本条約に基づく締約国の義務遵守を検証するために管理制度を確立する。
2.管理制度は、以下のものからなる。
(a) 第4条3項に規定するIAEAの保障措置制度
(b) 本条約の「管理制度に関する付属書」に規定された諸制度。それには、本条約の履行に影響すると考えられる事態に関する情報の報告と情報交換、本条約の遵守に関する疑念が生じたときにおける説明の要請、本条約の遵守に関する疑念が生じた事態を究明しかつ解決するための事実調査団に関する要請、執行委員会が違反を認定したときの改善措置、その他必要な事項が規定される。

第10条 署名、批准、寄託及び発効
1. 本条約は、中華人民共和国、アメリカ合衆国、ロシア連邦、日本、大韓民国及び朝鮮民主主義人民共和国による署名のために開放される。
2. 本条約は、署名国の憲法上の手続きにしたがって批准されなければならない。批准書はここに寄託国として指定される●●に寄託される。
3. 本条約は、すべての地帯内国家と少なくとも二つの近隣核兵器国が批准書を寄託した日に発効する。

第11条 留保の禁止
 本条約には留保を付してはならない。

第12条 条約の改正
1. すべての締約国は、「管理制度に関する付属書」を含む本条約及びその議定書の改正を提案することができる。改正案は、執行委員会に提出され、執行委員会は改正案を討議するための委員会の会合を招集するよう速やかに委員会に要請するものとする。改正のための委員会はすべての締約国の出席をもって成立し、改正案の採択は、コンセンサスの決定によって行われる。
2. 採択された改正は、寄託国が締約国の5か国以上の受託書を受領した日から30日で発効する。

第13条 再検討会議
 本条約の発効後10年に、本条約の運用を検討するため委員会の会合を開催する。委員会を構成する締約国すべてのコンセンサスがあれば、その後同一の目的を持った再検討会議を随時開催することができる。

第14条 紛争の解決
 本条約の規定に起因するいかなる紛争も、紛争当事国である締約国の合意する平和的手段によって解決するものとする。紛争当事国が交渉、仲介、審査、調停などの平和的手段によって1か月以内に解決に達することができない場合には、いずれの紛争当事国も、他の紛争当事国の事前の同意を得て、当該紛争を仲裁裁判または国際司法裁判所に付託するものとする。

第15条 有効期間
 本条約は無期限に効力を有する。





東北アジア非核兵器地帯条約に対するモデル議定書(案)

 本議定書締約国は、
 核兵器の全面的禁止と完全廃棄の達成に向けた努力に貢献し、それによって東北アジアを含む国際の平和と安全を確保することを希望し、●年●月●日に○○において署名された東北アジア非核兵器地帯条約に留意して、
 次のとおり協定した。

第1条 東北アジア非核兵器地帯条約の尊重
 議定書締約国は、東北アジア非核兵器地帯条約(以下「条約」という)を尊重し、条約締約国による条約への違反または議定書締約国による本議定書への違反となるいかなる行為にも寄与しないことを約束する。

第2条 核兵器の不使用
 議定書締約国は、東北アジア非核兵器地帯に対して核兵器、またはその他の核爆発装置を使用しない、また使用の威嚇を行わないことを約束する。

第3条 寄港と通過
議定書締約国が、核爆発装置を搭載する船舶または航空機を地帯内国家に寄港、着陸、領空通過、または無害通行権または通過通行権に含まれない方法によって地帯内国家の領海を一時通過させる場合には、当該地帯内国家に事前通告し、許可を求めて協議を行う。協議の結果許可するか否かは、当該地帯内国家の主権的権利に基づく判断に委ねられる。

第4条 署名、批准、発効
1. 本議定書は、フランス共和国とグレートブリテン・北アイルランド連合王国による署名のために開放される。
2. 本議定書は批准されなければならない。批准書は条約寄託国に寄託される。
3. 本議定書は、各議定書締約国が批准書を寄託した日に発効する。


■モデル「東北アジア非核兵器地帯条約」(案)に関する注記(2004.7.3)


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