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| ■有事法制 第1便【有事法制の定義】 第1便(その2)【有事法制研究の沿革】 第2便【有事法制の本質:3つのキーワード】 第3便【法案要綱への視点】 第3便(その2)【有事法制議論の“第2戦線”を考えよう】 第4便【輪郭を現した「体系」】 第5便【6月地方議会が重要】 第6便【海外軍事行動への展開】 第7便【国会関与と文民統制】 第8便【継続審議、今後の課題】 |
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有事法制・マエダ便 〜第3便〜(その2) 前田哲男 |
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【有事法制議論の“第2戦線”を考えよう】 2002.4.5(法案の閣議決定前に書かれた文章です。) とはいえ、一方において、こうした下剋上的な手法は今にはじまったことでなく、この憲法下半世紀以上にわたり実施されてきた“なし崩しと既成事実化”の積み上げによる戦後再軍備過程の常套手段だったという事実も無視できない。自衛隊法制定、日米安全保障条約締結とその改訂により、軍事力と軍事同盟をもってする自衛権行使を実現していく過程は、その都度憲法違反の批判を受けながら、しかし国会の多数で承認を得て“違憲合法的に”構築されてきた歴史的経緯も、否定しがたい負の遺産として残されている。冷戦後に国会で成立した法律だけを見ても、PKO協力法、自衛隊法改正、周辺事態法、テロ対策特別措置法、安保条約関連国内法(駐留軍用地特措法、ACSA=物品相互提供協定)など数多い。そして、これら矛盾にみちた法と現実のギャップが国民の間に、支持・定着といわずとも一定の支持を得ていることも理解されなければならない。国民大多数は、第9条への各種世論調査での共感に示されるとおり健全な護憲意識をもちながらも、その一方で“なし崩しと既成事実化”がつくりだした自民党政治の現実呪縛力に拘束されているのである。 それら“軍事力”と“有事法”が現実に存在し活動領域を拡大させる動きをしめしている現在、こうした現実を憲法規範に従わせる努力(自衛隊の縮小と編組、安保条約の終了)がなされるべきはいうまでもないとして、それとともに、さらに加えて自衛隊の行動領域拡大と日米軍事同盟が海外へ暴発していくのを防ぐため、現実的な対抗戦略も必要となるであろう。“建前と本音”の矛盾解消はただちには困難であることを自覚し、“憲法か無か”ではなく、ギャップがこれ以上広がり“憲法停止状況”の出現を阻止するための新たな論点提起がもとめられる。それには有事法制反対の論拠を、憲法のテキストからみちびかれる原則的・根底的な違憲=護憲反対論だけでなく、自衛力の行使を含む、国民生活をさまざまな脅威から守る役割が政府にあることをいったん認めた上で(むろんそれが自衛隊のみによりなされることを了承するものではないが)、そのあり方に批判を加え、矛盾を指摘しながら、自衛隊の行動地域・態様、武器使用などに明確な限界を設定させる反対論の確立が必要である。“有事法制論議の第2戦線”は、そのような考えを基礎としている。 現在提案されている“有事法案”は、自衛隊法および日米安保条約の上に成り立った自衛隊の行動態様・権限の法的枠組みから見てさえ、大きく逸脱しているのが明らかなのだから、これら――違憲だとしても現存する法律――を根拠に、ギャップ拡大阻止のレベルに立った反対論をつくりあげる努力がなされてしかるべきだろう。内閣権限の増大に対抗する国会の復権、中央政府の国権優越政策をチェックする地方からの自治権主張、個人の信条と良心の自由に立つ非協力・不服従の確保…いずれも憲法の基本原則に依拠しつつ、同時に、“有事法制違憲論”で対抗するより、きめ細かな議論が展開できる。国会における有事法制審議は、一国会一会期で完了するものではない。数年数会期にわたる立法作業となろう。その意味からも“第2戦線”が必要である。 原則1“有事”とは、国土と国民に対する直接の侵害行為を指す。 自衛隊法および日米安全保障条約は、以下の法律、条約に明記されるとおり、武力行使の発動条件を<直接侵略>、<外部からの武力攻撃>、<わが国を防衛する>、<日本国の施政の下にある領域>などと、日本に対する外部からの攻撃に限定している。現行法・条約に基づくかぎり、“日本有事”とは、これら日本国土に対する急迫不正の侵害行為という事態以外にあり得ない。したがって、この原則に立てば、新規立法はいうまでもなく、日本の領域以外に自衛隊活動を設定した「周辺事態法」、「テロ対策特別措置法」、「自衛隊法100条の8=在外邦人等の輸送」、「ACSA」など既存法も、有事法制の適用対象から除かれる。その結果、有事法制とは国土戦、国内戦を前提としたものとしてしか機能しないことが明らかになり、そのような客観情勢にない現状における非現実性、および必要論の真の意図を明らかにできる。以下参照条文。 ・自衛隊法第3条―自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる目的とし、必要に応じ公共の秩序の維持に当たるものとする。 ・自衛隊法第76条―内閣総理大臣は、外部からの武力攻撃(外部からの武力攻撃のおそれがある場合も含む)に際して、わが国を防衛する必要があると認める場合には、国会の承認を得て、自衛隊の全部または一部の出動を命ずることができる。 ・自衛隊法第88条―第76条第1項の規定により出動を命ぜられた自衛隊は、わが国を防衛するため、必要な武力を行使することができる。 ・安保条約第5条―各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、時刻の憲法上の基底及び手続きに従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。(傍線引用者) 原則2 有事法制の対象となる地域は、日本の国土に限定される。 “有事”とは、日本の国土と国民に対する直接の主権侵害行為である、とするならば。その対象地域が日本の国土に限定されるのはいうまでもないことになる。自衛隊は自衛=国土守備隊であり、国土外での活動は認められない。米軍との共同行動も、安保条約に「日本国の施政の下にある領域における」と明記される以上、国外における義務は有しない。そして“日本有事”が国内に限定されるならば、それらは警察力プラス、最大限でも自衛隊により対応可能であるから、“米軍の活動を円滑にする”有事法は必要ない。参照条文。 ・自衛隊法第 3条、同76条、88条、安保条約第5条。 ・「自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議」 1954年6月2日。参議院本会議。 ・「日米安全保障条約第5条の政府確定解釈」 1960年2月26日。岸信介首相。 原則3 自治体と個人に“非協力・不服従”の権利が保証される。 “有事”対処を日本国土に限定し、また自衛隊法や安保条約が“合法的”に成立したと承認したとしても、だから新設される有事法制の義務や支持に無条件で従わなければならない、とはならない。憲法第11条は基本的人権を「侵すことのできない永久の権利」と規定している。「意に反する苦役」の拒否(第18条)、「思想及び良心の自由」(第19条)、「表現の自由」「検閲の禁止(第21条)、「団結権」(第28条)、「財産権」(第29条)などは、個別法に優越する固有の権利として保障される。上記権利は、憲法前文や第9条から独立して機能、行使されるものであり、たとえ国土防衛のための自衛隊出動必要で、それが合憲であるとしても、無視されたり制限されるべき性質ものではない。国家有事といえども、憲法の「条規に反する法律は、効力を有しない」(第98条)のである。ならば、有事法を制定するにあたり、発動条件、対象地域を限定するとともに、国民の対応に関しても固有の権利を保障しておくことは当然の措置であろう。同様に、地方自治も尊重されなければならない。「非核平和条例」を制定した自治体や「非核平和決議」を採択した自治体、さらに今後予測される「有事法反対決議」を行う自治体に対し、協力義務を強制しない措置が講ぜられるのは、憲法第92条「地方自治の本旨」から当然のことである。 原則4 そのような“有事法案”を、国会に上程し、審議した上で、いざという時まで“塩づけ”=未採決状態のままにしておく。 テロや不審船は“有事”ではない。最大限“警察緊急事態”(警察法第71条、海上保安庁法第20条)に該当するにせよ、自衛隊の出動を要する“国防衛庁緊急事態”とは性格をことにする。日本のような周囲を海に囲まれた島国フ場合、“朝、目を覚ましたら、庭先に戦車が来ていた”などという事態は起こりえない。かりに起こり得るとしてもかなり長い予告時間がある。また地震や火山爆発とちがって予知や回避の努力もできる。さらに今日そのような“有事”を心配する人はいない。 それでも“治にいて乱を忘れず”や“備えあれば憂いなし”が大好きな人のために、まず、これまでの原則を取り入れた法案を作成し、中央と地方公聴会で有権者市民の意見を聴き、その上で国会の審議に移し、論点を十分に吟味したのち、毎国会、審議未了、継続審議の状態にしておく。いざという時がくれば直ちに採決すればよい。自衛隊の防衛出動、すなわち日本有事は、国会の事前承認が必要とされるので、けっして手遅れになることはないだろう。有事法制は、どうしてもそれが必要だというのなら、国会の場に“伝家の宝刀”の形で置いておくのがいちばんふさわしい。 原則5 国際社会に存在する不平等・不公正に対する日本の寄与は、日本国憲法前文に掲げられた原則に基づくこととし、そのために別組織による国際協力を行う。 「周辺事態法」や「テロ対策特別措置法」が、アメリカの地域戦争支援のための“自衛隊海外派兵法”=集団的自衛権行使に真のねらいを持っていたのと同様、政府の企図する有事法制も、表向きには“治にいて乱を忘れず”や“備えあれば憂いなし”など、内に向けて“国民の安全”をキャッチ・コピーとしながら、その実、アメリカの世界戦略、日米安保協力の海外展開という外に向かう潮流と対をなす“国内戦時体制確保法”であることは一目瞭然である。海外派兵=集団的自衛権と有事法制=憲法停止は同じコインの裏と表の関係にある。両者の結合が始まったのは、冷戦終結と湾岸戦争という国際社会の変動期においてであった。 以後、日本政府は“国際貢献”を安保再定義(96〜7年の新ガイドライン協議)と自衛隊海外派遣に読み替え、もっぱらアメリカの政策に協力し、軍事的寄与をもって冷戦後の世界に相対した。91年、湾岸戦争後のペルシャ湾に機雷除去に従事する掃海艇が派遣されたのを最初に、自衛隊の海外活動分野は「PKO協力」「国際緊急援助隊」「邦人救出」「周辺事態法」「テロ対策特別措置法」と際限なく拡大していった。こうした海外活動の受け皿として“国内軍事インフラ“=有事法制が必要になったのである。したがって、有事法制に対抗していくには“有事国家”でない日本の国家像、位置づけがもとめられる。たんに憲法違反を糾弾するのみでなく、憲法の指向する国際協力のあり方とはいかなるものかを具体的な構想によって提示しなければならない。 日本の再軍備が開始されたのは、1950年、朝鮮戦争を契機とする警察予備隊の創設であった。憲法と現実とのボタンの掛け違えはそこに始まっている。当時は占領下だったという言い訳もたつが、冷戦後の軍拡路線=有事国家への道にそのような弁解は許されない。有事法制を阻止するためには非有事国家の構想を明らかにしなければならないのである。 ・日本国民は、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。 ・われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。 この憲法前文のメッセージが、非有事国家の礎石である。そのために自衛隊の現状をどのように改革していくか、それこそが有事法制反対の根源に置くべき問題意識であろう。
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