核軍縮:日本の成績表 非核地帯 日米安保 核兵器・核軍縮
ASEAN地域フォーラム 有事法制 核軍縮・議員ネットワーク 「テーマ別」の目次

■有事法制
第1便【有事法制の定義】
第1便(その2)【有事法制研究の沿革】

第2便【有事法制の本質:3つのキーワード】
第3便【法案要綱への視点】
第3便(その2)【有事法制議論の第2戦線を考えよう】
第4便【輪郭を現した「体系」】

第5便【6月地方議会が重要】

第6便【海外軍事行動への展開】
第7便【国会関与と文民統制】
 

有事法制・マエダ便 〜第3便〜

前田哲男

【法案要綱への視点】

2002.4.12(法案の閣議決定前に書かれた文章です。)

3つのポイント

 有事法制がようやくその全体像を明らかにした。正確には、この第3便執筆中なお閣議決定に至っていないので「法律案要綱」の分析段階であるが、そこでもはっきりと反時代的ないくつかの特徴――戦事法という“絶滅したはずの狼”が21世紀日本にふたたび甦りつつある決定的な証しを目撃することができる。それは、
 @歴史的観点に立てば、長らく死語だと考えられてきた明治憲法下の徳目―国家総動員、産業報国、義勇奉公などの概念を、用語こそ一新したとはいえ復活再生させる“国家統治システムの国権優位への転換”の企図であり、
 A冷戦期から振り返ると、“ソ連の脅威”に触発され、防衛庁研究グループにより1977年開始された「有事法制研究」以来、連綿とつづいた自民党国防タカ派の宿願が、90年代の“テポドン”“不審船”“9.11事件”に便乗して到達した“普通の国家”への道のりであり、そして、
 B日米同盟の流れに即すなら、新ガイドラインでアジア・太平洋の周辺事態に方向づけられ、ブッシュ大統領の“テロとの戦い”に呼応した「テロ対策特別措置法」によりインド洋で事実上行使されるに至った“海外派兵=集団的自衛権獲得”という安保青天井のゴールである。自衛隊が、旧日本軍とちがって日米安保という“へその緒”により米軍と異体同心である事実に照らすとき、新法がそのまま「海外派兵法」、「アメリカの戦争支援法」となるのも自明の帰結である。

本質は対米支援の基盤確立

 とりわけBの対米要因が法案制定の時期を決定したといえるだろう。現在実施中の「インド洋対米支援作戦」のような自衛隊の海外任務が日米軍事協力の一般的形態となれば、そしてそれがアメリカのイラク攻撃や北朝鮮攻撃に追随・拡大していくシナリオを描くと、日本国内に従来とことなる軍事支援基盤の確立が求められるのは必然の成り行きとなる。有事法制とは、前便で見たとおり、外に延びる兵站線を支えるための国内における法的基盤整備、つまり集団的自衛権と表裏一体をなす軍事インフラ構築の前提条件なのである。けっして“備えあれば憂いなし”などという精神訓話の次元ではない。

改憲なき憲法停止

 そのことは当然のことだが、憲法冒頭に「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し」と刻み込まれたこの国のかたちが、“法のテロリズム”によって、ニューヨークのツインタワービルと同様、崩落消滅することを意味せずにおかない。憲法は改正されるより先に停止される。下位法の突き上げによって、外形は無傷のように見えてもアフガニスタンの仏像と同様、恥辱のあまり崩れ落ちてしまうのである。小泉内閣成立後一年、初めて断行された“聖域なき構造改革”とは、利権政治の打破でも不況打開策でもなく、有事法制定という“改憲なき憲法停止状況”への突進であった。

武力攻撃事態法案

 新法の正式名称は「武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律」だという。政府は略称に“平和安全法案”を用いるらしい。しかしここではあくまで“有事法案”ないし法案の本体をとって“武力攻撃事態法案”と呼ぶことにしよう。なぜなら新法は“我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律”であるより、武力攻撃事態=アメリカの地域戦争に国外において加担することのほうに重心がかかっているからである。もし“平和安全法案”であるなら、憲法にそくした安全保障政策を行うこと、または“平和基本法”をつくれば十分だろう。あるいはまた、安保条約や自衛隊をかりに合憲だと認めたとした場合でも、適用区域は日本国内より一歩も外に出ないのは条文上明瞭である(「第2戦線を考えよう」を参照)

外の軍事行動と内の軍事基盤

 “要綱”にある“武力攻撃事態”の定義(用語の意義)を読んですぐに気づくのは、その二枚舌と二枚看板的な性格である。定義は1として「武力攻撃 我が国に対する外部からの武力攻撃をいう」としている。しかし同時に2に「武力攻撃事態」を掲げて「武力攻撃事 態武力攻撃(武力攻撃のおそれのある場合を含む)が発生した事態又は事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態をいう」と、1の事態とことなる武力攻撃事態なる概念を導入した。これは新たな自衛隊と安保協力の発動条件である。1では「我が国に対する外部からの武力攻撃」という客観的状態が必要で、かつ対応は国土限定であるのに対し、2の場合「武力攻撃のおそれ」や「予測される事態」まで含んでいる。そこでは、政府が発動の時期と地域を任意に設定できることになる。ここに新法の意図が隠されているのである。それはこの定義を「周辺事態法」第1条、目的と重ね合わせればすぐに現れることだ。そこには「この法律は、そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国周辺の地域における我が国の平和および安全に重要な影響を与える事態に対して我が国が実施する措置」と書かれている。つまり“武力攻撃事態法案”は「周辺事態法」と合わせ鏡のように一体なのであり、この“定義”を蝶つがいにして二つの法律は、一方は外の軍事行動=集団的自衛権を映し出し、もう一方は内の軍事基盤=国内戦時体制確立を映す関係にあるといえる。

問われる基本的人権と自治意識

 有事法が姿をあらわす時、最初に葬られるのは、人と自治である。個人や企業に対する従事命令、保管命令、地方公共団体の協力義務などは、まだ全体像をあらわしていない。しかし今回の「第1次有事法」を手始めに国家統治システム中央集権化が急速に進むだろう。基地新設を含む安保特例法の拡大も第2次以降必ずくる。基本的人権を私たちがどれだけ確立したか、自治意識が地域にどれほど根付いたか。法案審議を通じそれが試される。


【有事法制議論の第2戦線を考えよう】

 

 
   



 ページの先頭に戻る

 ▲目次へ


核軍縮:日本の成績表 非核地帯 日米安保 核兵器・核軍縮
ASEAN地域フォーラム 有事法制 核軍縮・議員ネットワーク 「テーマ別」の目次

特定非営利活動法人
ピースデポ
〒223-0051 横浜市港北区箕輪町3-3-1-102
TEL:045-563-5101 FAX:045-563-9907
Email:
office@peacedepot.org