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【輪郭を現した「体系」】
“有事法制”の名で示される戦時法体系が、2002年4月17日国会に上程され、その輪郭を明らかにした。それは次の三法案のからなっている。
@「武力攻撃事態法案」 (正式名称「武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案」)
A「安全保障会議法の一部を改正する法律案」
B「自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案」
@は「武力攻撃事態」という新たな活動形態の定義および対処措置の基本を定め、自衛隊の武力行使、部隊展開などの態勢確立、首相の権限強化を規定する。それと併せ今後二年間のうちに実施される有事法制の全体像を予告する“基本法”ないし“プログラム法”の性格も持つ。
Aでは武力攻撃事態発生のさいにおける内閣の権限と構成を強化し、下部組織として「事態対処専門委員会」の設置が定められた。“戦争権限法”ないし“戦時内閣法”的な色彩を強く表わす改正だ。
Bは部隊行動を平時法の外に置くための“自衛隊特例法”の制定で、現行20関係法に「適用除外」と「特例」が設けられる。これにより武力攻撃発生以前の段階から「展開予定地域内において陣地その他の防御施設構築」が可能になった。違反者(命令拒否者)に対し懲役刑(6月以下)などの罰則が新設されたのも特徴である。
今回提出分は以上三法案だが、同時に、有事法はそれのみにとどまるのではなく、今後2年間の追加整備でさらに大きな“有事法制体系”の一部になっていく全体の枠組みも、「武力攻撃事態法案」第23条に記された以下の条文に照らして明らかにされた。
「政府は、事態対処法制の整備を総合的かつ計画的に実施しなければならない。
2 前項の事態対処法制の整備は、その緊急性にかんがみ、この法律の施行の日から二年以内を目標として実施するものとする」
ここに“第2次以降分”の有事法制が予告された。加えて、「補則」の形で置かれた第24条「その他の緊急事態対処のための措置」には、「武力攻撃事態以外の国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす緊急事態への対処を迅速かつ的確に実施するために必要な施策を講ずるものとする」と、武力攻撃事態とはべつの有事規定もある。これは“テロ・不審船”への自衛隊関与を指すと判断される。従って今回提出された関連3法は“第1次有事法制”にすぎず、多くの個別法があとに続く。「国家総動員法」(1940年)が約100、「三矢研究」の非常事態措置諸法令(1963年)が77〜87件の個別法を有していた事実を想起すべきだ。
いくつかの重要な点を指摘しておこう。
@に登場した「武力攻撃事態」という新概念の多義性と恣意性については前便でのべた。これが新ガイドラインの「周辺事態」における対米支援に連動していくのは明らかである。周辺事態には「インド洋、中東は含まれない」とされる。また「テロ対策特別措置法」は、「9.11事件」対応の米軍支援に限定される。本法によりその空隙が埋められ全地域における米地域戦争への参加が可能になる。アメリカがイラク攻撃に踏み切れば、政府は「我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保」を名目に「武力攻撃が予測される事態」を発動するだろう。インド洋派遣自衛艦(現在第2次、任務期間5月19日まで)に半年間の期間延長がなされたあと、法案成立、そして第4次派遣艦隊(8月頃)を機に“イージス艦派遣”を実施、そのままインド洋にとどまる布陣が濃厚である。その意味で本法は即戦力となる。
Aは一種の“大本営設置法”と表現できる。そこに設置される「事態対処専門委員会」(委員長・官房長官)に注目すべきだ。専門委には制服メンバーを含みうる。「委員は、関係行政機関のうちから内閣総理大臣が任命する」からだ。この新組織は安全保障会議が決める「武力攻撃事態への対処に関する基本的な方針」に必要な「調査及び分析」を委任される。制服がインナー・キャビネットである安全保障会議に加われば、文字どおりそれは戦時内閣である。同時に新ガイドラインに記載された「包括的メカニズム」としても機能するだろう。
Bに列挙された20の法律からの「適用除外」、「特例」措置の中に「港湾法の特例」も入っている。「あらかじめ、その旨を港湾管理者に通知」することで、防御施設構築などのため「港湾区域内の工事の許可」、「臨港地区内における行為」などが港湾管理者の権限から外されることになる。地方自治体による港湾管理原則を揺るがす重大事である。今回の特例では岸壁や港湾施設そのものの使用にまで踏み込んでいないが、第2次以降拡大されるおそれもあり、またそれは米軍特例法に援用されるのも確実だ。このままでは神戸や苫小牧の非核条例も危ない。国会審議に細部が明らかになることを期待しよう。(2002.5.6執筆)
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