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【6月地方議会が重要】
変化、あるいは逆転への予兆とみるべきであろうか、瀋陽事件と鈴木問題の余波によって、とにかく法案の5月中衆議院通過と会期内成立は断念された。すぐに国会の期限延長が検討され始めたので、いぜん危うい状態はつづく。しかし政府与党による当初の目算によれば24日参議院回付、6月中旬成立と見込まれていた審議日程から考えると、この時間的猶予は一つの天恵である。5月末から各地で大規模な労働者、市民の反対集会が持たれ、さらに6月に入ると地方議会の定例会も続々開催される時期とも重なる。ここに新たな勢いを結集しうれば、廃案、もしくは継続審議が視野に入ってくる。
活路ひらく「地方」
国会の力関係に立つかぎり議席数―“永田町の論理”だけで法案撤回を実現できないのは明らかである。しかし地方自治の立場に依拠した“地方が中央を包囲する”大きな戦略を構築できるなら、情勢は一変する。有事法案とは地域と職場を囲い込む“国家総動員法”であり、法案を審議する国会議員はすべて地域選出なのだから、地方対中央に活路を見出せば政府与党を苦境に追い込める。その意味で、地方議会から反対や法案撤回の決議が出始めたことは勇気づけられる動きだ。衆院有事法制特別委が23、24日に与党単独で予定し、結局中止された地方公聴会も、実情は自民党推薦の陳述者を得られなかったためだった。この背景にも法案に内在する国権優位と対米追随ぶりが次第に理解されはじめてきた事情を読み取ることができる。
三重県議会は5月17日、県レベルでは全国初の反対決議を採択した。「有事の概念がとめどなく拡大され、国の権限を肥大化させる」との理由からである。自民党県議団提出の“慎重審議”決議案を否決した上での採択であり意義は大きい。長野県と高知県知事も反対意思を表明している。東京都国立市、小金井市、京都府大山崎町、長野県喬木村、坂北村議会も「国民の自由と権利を守る立場」、「地方自治侵害」などをあげて「有事法制の制定に反対する意見書」を採択した。この流れが6月議会とともにいっそう加速されることを期待しよう。
低調な国会
それにしても国会論戦は、低調を極めるというしかない。「武力攻撃が予測されるに至った事態」などというあいまい漠然とした定義の下、自衛隊出動が時間的(防衛出動準備命令時点から展開予定地域に進出できる)、また地理的にも(周辺事態と併存する可能性を排除しない)集団的自衛権行使=海外派兵の公然化を明示されているというのに、本質を突いた議論を展開していく緊迫感が国会にはまったく見られない。予測事態の定義に関し例示を求めた野党要求に対し政府提出の統一見解は、「武力攻撃が予測されるに至った事態とはどのような事態であるかについては、事態の現実の状況に即して個別具体的に判断されるものであるため、仮定の事例において、限られた与件のみに基づいて論ずることは適切でないと考える」という木で鼻をくくったような回答であった。
なぜ直ちに、“予測される事態”にブッシュ政権が近く予定しているとされるイラク攻撃支援が含まれるのか否か、また“悪の枢軸”の一角と名指される北朝鮮に対する軍事攻撃が自衛隊出動に該当するか否か、これら仮定でない現実的な事例をあげて反問しないのだろう。そのような論点が示されてこそ“備えあれば憂いなし”などということわざ一つで日本を戦争に導く本法案の隠れもない実体があぶりだされてくる。“予測される事態”への自衛隊と在日米軍の対応が、「地方公共団体の責務」や「指定公共機関の責務」(民間協力)、「国民の協力」に直結し、業務従事命令や物資保管命令とつながる事実を見るなら、そこに焦点を当てるべきであるのに、野党の論争力不足が問題の本質を隠しているのである。
会期内成立が消えたとはいえ、国会が延長されれば状況はまた振り出しに戻る。
「不審船」事件を警戒
さらに次のようなことも予期しておかなくてはならないだろう。99年3月、周辺事態法案が国会で審議されていたとき、「能登沖不審船事件」が起こり、法案はあれよあれよという間もなく通過してしまった。当時官房長官だった野中広務氏の回想によれば、
「私は、世の中に明らかにしていませんが、官房長官在任中に北朝鮮の不審船事件に遭遇し、小渕総理の許可を得て史上初の海上警備行動を海上自衛隊に出した張本人です。けれども、あとから考えますと、なぜあの時に発覚したのか、未だに不思議でなりません。あの時はガイドライン法案が国会審議を混乱に陥れている時期でした。日本人はあの不審船で一挙にそういう問題から目を閉じてしまうことになりました」(『ダカーポ』02.3.6)。
奄美沖で起きた第2次不審船事件は、有事法案が上程される今国会の冒頭に発生している。“二度あることは三度ある”、そう警戒しておいたほうがよい。(5月26日)
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