核軍縮:日本の成績表 非核地帯 日米安保 核兵器・核軍縮
ASEAN地域フォーラム 有事法制 核軍縮・議員ネットワーク 「テーマ別」の目次

■有事法制
第1便【有事法制の定義】
第1便(その2)【有事法制研究の沿革】

第2便【有事法制の本質:3つのキーワード】
第3便【法案要綱への視点】
第3便(その2)【有事法制議論の第2戦線を考えよう】
第4便【輪郭を現した「体系」】

第5便【6月地方議会が重要】
第6便【海外軍事行動への展開】
第7便【国会関与と文民統制】
第8便【継続審議、今後の課題】
 

有事法制・マエダ便 〜第6便〜

前田哲男

海外軍事行動への展開】

「予測される事態」

 もう一度確認しておこう。今回上程された三法案の核心となるのは、「武力攻撃事態」とは何か、という新概念の定義にかかっている。この言葉が、「武力攻撃=我が国に対する外部からの武力攻撃をいう」(第2条1)に続けて、それとは区別された定義――「事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態」(第2条2)として掲げられた以上、そこに異なる意味が与えられていることは明白である。時間的には「武力攻撃」発生以前の段階、地理的にはより拡大された状態であると受け止めるのが自然だろう。そして改正自衛隊法案に新設された「防御施設構築の措置」(第77条の2)、「展開予定地域内における武器の使用」(第92条の3)など自衛隊の新たな行動、および「武力攻撃事態法案」に規定された「国の責務」(第4条)、「地方公共団体の責務」(第5条)、「指定公共機関の責務」(第6条)など義務のすべてが、この武力攻撃事態に直結しリンクしつつ設定されている構造も条文上ゆるぎない。つまり「武力攻撃事態」の認定が、イコール首相の戦争権限掌握を意味し、ついで地域と職場を“国家総動員”に狩り立てるマジックワードなのであり、そこに法案の本質がある。

 そのような重大な意味を持たされていながら、しかし、「武力攻撃が予測されるに至った事態」とはどんな情勢であるのか、いまだもって明確にされない。野党の追及を受けて示された政府統一見解(5月14日)によっても、

(2)「事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態」とはどのような事態であるかについては、事態の現実の状況に即して個別具体的に判断されるものであるため、仮定の事例において、限られた与件に基づいて論ずることは適切でないと考える。
と、それがいつから始まりどこまで拡大できるのかの説明は拒否された。武力攻撃事態認定のフリーハンドをあくまで手中に収めておく決意が見える。もっとも「その上であえて申し上げれば」と述べながら、「予備役の招集や軍の要員の禁足、非常呼集」などを例示しているが、今日こうした古典的な戦争準備など進行するはずもないから、結局のところ政府が「武力攻撃が予測されるに至った事態」と判断すれば、発動を妨げる条件は何もない。

周辺事態との「併存」

 事実、国会答弁の中から、「武力攻撃事態」と、周辺事態法に規定された「周辺事態における米軍に対する支援」が「併存する可能性がある」(中谷防衛庁長官)ことが明らかになり、また公海上の自衛隊艦船や民間船舶への攻撃について、「我が国への武力行使にあたるという場合も排除できない」(福田官房長官)という状況想定も示された。となれば、国外におけるそれらの事柄が「予測される事態」こそ、本法案の狙いどころと見なければならない。

 “周辺事態と併存”し、“公海上にも適用可能”とすると、武力攻撃事態が自衛隊の行動範囲を海外派兵=集団的自衛権容認に向けて開かれていく意図を秘めていることに疑問の余地はない。改正自衛隊法案によれば、「予測される事態」に連動する形で「防衛出動待機命令」の新たな行動形態が設けられ、その状態において「展開予定地域内における防御施設構築」ができるようになる。これまでの国会論議では「防御施設構築」は、おもに国内における行動(立木の移動や家屋の変形)として取り上げられているが、予測事態⇒待機命令⇒展開予定地域進出⇒防御施設構築⇒武器使用という法案の枠組みを把握した上で、政府答弁の「周辺事態との併存」、「公海上での適用」をそこに当てはめてみると、むしろ海外軍事行動への事前展開という構図の実現性がよりつよく読みとれる。情勢のリアリティから考えても、起こり得る可能性はこちらにあるといっていいだろう。

対イラク攻撃で適用?

 アメリカがイラクに対し武力攻撃に踏み切るのは時間の問題だとされる。その場合、日本に支援要請がくるのもまちがいない。とすれば法案成立後、予測事態から武器使用までの流れはペルシャ湾において実施されると判断すべきだ。なぜなら、対イラク軍事攻撃は沖縄や横須賀からの米軍出動を前提としなければなしえず(つまりイラクは日本を敵対国とみなすことになる)、ペルシャ湾には多数の日本タンカーが航行している(つまり公海上の日本船に危険が発生する)ので、首相が「武力攻撃が予測されるに至った」と認定するのを妨げられないからである。その結果、護衛艦隊が“日本船舶保護”の名目をもってペルシャ湾“展開予定地域”に派遣され、“防御施設構築”という戦闘準備を行い、情勢によって「その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用できる」という形の――“擬似個別的自衛権”の装いをまとった――対米戦争協力の形態が容易に予測される。北朝鮮に対するアメリカの軍事攻撃が発動されれば、それはさらに大規模のものとなるだろう。

 「地方公共団体の責務」や「国民の協力」は、そのような“予測事態”とリンクしているのである。今後の質疑で、ペルシャ湾事態や朝鮮事態との関連について追求してほしい。(2002.6.9)


 

 
   


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