<添付資料1>
研究団体:ピースデポ北東アジア安保フォーラム
研究題目:市民社会が構想する北東アジア安全保障の枠組み
研究活動経過報告書(2002年11月−2003年10月)
2003年11月28日 代表者 梅林宏道
概観
朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核兵器開発問題と関連して、本研究テーマに関係する国際情勢は、この期間、目が離せないほど緊迫した。本研究は多くの内外の研究者と緊密に情報交換を維持しながら、変化の多い情勢に順応しつつ、初期の計画内容を着実に実行することができている。
以下では、当研究プロジェクトの柱となる以下の4つの研究テーマに沿いながら、それに追加すべき項目を加えて活動経過を報告する。4つの研究テーマとは、次のものである。
(1) 北東アジア非核地帯
(2) 北東アジア専守防衛地帯
(3) 北東アジア・ミサイル制限機構
(4) ASEAN地域フォーラム(ARF)の活用
全体として
●「北東アジア安保フォーラム」構想会議−2002年12月7日
プロジェクト始動における立ち上げ研究会として、研究代表者および各テーマのテーマ・コーディネーターがプロジェクトの概要、具体的な研究内容等を提案する「北東アジア安保フォーラム」構想会議を東京で開催した。市民活動、専門学術分野で活躍する十数名が参加し、プロジェクトの内容や進め方について意見交換を行った。
● 刊行物の発行
本研究では、研究の過程で市民の意識啓発と参加促進を進める努力を進める計画を立てた。その一環として、ピースデポが月2回発行している情報誌「核兵器・核実験モニター」の紙面に研究の問題意識、調査結果、分析などのダイジェスト記事を、ほぼ毎号掲載した。200号(2003年12月1、15日合併号)の発行を機に、この試みはいっそう充実される。その他に、英文ブリーフィング・ペーパーの作成(2003年4月)、「軍縮問題資料」(2003年9月)、「世界」(2003年9月)、「私の視点(朝日新聞)」(2003年4月)、「Point of View(ヘラルド朝日)」(2003年6月)など新聞、雑誌への執筆にも精力的に取り組んだ。刊行物ではないが、韓国における国際会議(2002年11月)、国内の諸会議などでの講演などにおいても、研究の趣旨や成果の発表を行った。
テーマ@ 北東アジア非核兵器地帯(テーマ・コーディネーター:梅林宏道)
● 「北東アジア非核地帯」公開セミナー−2003年3月7日
「北東アジア非核地帯」に関する公開セミナーを東京で開催した。研究活動としてテーマ内容の研究を深化させるとともに、関心ある市民の着想や意見を得るため、また啓発を兼ねて公開とした。元外交官、前東海大学教授の金子熊夫氏が「条約の骨子についての試案」について、梅林宏道(本研究代表者)が「北朝鮮をめぐる状況報告」について講演を行った。ピースデポ、核兵器廃絶市民連絡会、ピースボート、北東アジアの非核地帯化をめざす全国ネットワークが共催した。
● ジュネーブ・ワークショップ「北朝鮮のNPT脱退危機における東北アジア−−戦争ではなく非核地帯を!」−2003年4月30日
北朝鮮情勢が緊迫し、4月28日〜5月9日の核不拡散条約(NPT)再検討会議準備委員会が本研究にとって重要な機会となったので、急きょ会議開催中に、ジュネーブ国連内で会議を開催することとした。韓国のNGO「韓半島平和市民ネットワーク」との共催とした。梅林宏道、チョン・ウクシク氏(本研究参加者、韓半島平和市民ネットワーク代表)、ティモシー・サベジ氏(慶南大学極東問題研究所客員研究員)をパネリストに、さらにナイジェル・チェンバレン氏(英米安全保障情報評議会研究員)、櫛渕万里氏(ピースボート共同代表)をコメンテーターに迎え、北朝鮮のNPT脱退宣言をめぐる動きや北朝鮮、韓国、日本、米国など関係諸国の安全保障問題、北東アジア非核地帯の重要性について議論を行った。韓国の外交官、各国の外交関係者、世界の主要なNGO代表など多数の参加があった。日韓のNGOが共催で、NPT再検討会議準備委員会と隣接した場で研究会を開催することは初めてであり、大きな注目を集めた。
このワークショップの記録は小冊子にまとめられる。冊子は、2003年11月22日〜24日に長崎で開催された「第二回核兵器廃絶―地球市民集会ナガサキ」においても配布される予定である。
● 韓国で研究参加者と研究会議:2003年10月20日〜23日
梅林宏道、中村桂子(本研究参加者)が韓国ソウルを訪問し、研究参加者の一人である「韓半島平和市民ネットワーク」代表チョン・ウクシク氏をはじめ、韓国の平和・軍縮問題の専門家らと情報を共有し、今後の研究の進め方について検討する会合を持った。重要な会議なので協力的な韓国語通訳者を同伴した。もう一人の研究参加者であるリー・サムソン教授(韓国ハリム大学)は急病で参加できなかった。核問題アナリスト・カン・チュンミン博士と専門的な意見交換ができたことは、大きな収穫であった。2004年4月のニューヨーク、7月の上海の研究会に向けた具体的なプロセスが検討された。
テーマA 北東アジア専守防衛地帯(テーマ・コーディネーター:田巻一彦、協力:湯浅一郎)
● 研究会
以下の通り、これまでに計6回の研究会を横浜で行った。第2回から第4回までの研究会では、国連の専守防衛研究報告書「 Study on Defensive Security Concepts and Policies」( 1993年)を中心に、「概念の整理」について議論を重ねた。研究会は数名から10名の規模で行われた。
Ø 第1回「国会論議などにみる<専守防衛政策>の形成過程」
講師:前田哲男氏(研究参加者)−2003年1月26日
Ø 第2−4回「概念整理」−2003年3月8日、4月13日、6月15日
Ø 第5回「自衛権」講師:孫占坤氏(ソン・センコン、明治学院大学)、高原孝生(研究参加者、明治学院大学平和研究所所長)も参加−2003年6月28日
Ø 第6回「ニュージーランドの国防政策文書を読む」−2003年10月5日
● 公開セミナー「軍事によらない安全保障は可能だ−ニュージーランドはなぜ戦闘機を全廃したのか−前国防副長官ディック・ジェントルズ氏を囲んで」
2003年10月、ニュージーランドから前国防副長官ディック・ジェントルズ氏を招聘した。ジェントルズ氏は、ニュージーランドの上級国防政策専門家として、ジェット戦闘機の全廃を含む国防軍の長期再編計画の採択へとつながった防衛政策の見直しを先導した人物である。10月11日の東京での公開セミナーでは、ジェントルズ氏は「ニュージーランド国防政策の転換―日本への教訓は?」と題する講演を行い、ニュージーランドと日本の国防政策における概念の違いなどを明確にした。この公開セミナーには、ジェントルズ氏のほかに、前田哲男氏(研究参加者、東京国際大学)、鈴木伶子氏(日本キリスト教協議会議長)、田巻一彦氏(研究参加者、ピースデポ副代表)がパネリストとして参加、北東アジア専守防衛地帯に関して発言、後半では、梅林宏道氏を座長とした全員でのパネル討論が行われた。約90人が参加、活発な議論がもたれた。
東京に続いて、10月13日に広島、14日に呉でジェントルズ氏の講演会が開催された。
● 専門研究会:ディック・ジェントルズ氏−10月12日
ジェントルズ氏を招き、横浜で本研究の研究参加者を中心とした研究会を開催した。研究参加者から高原孝生明治学院大学平和研究所長、梅林宏道、田巻一彦、湯浅一郎、中村桂子が参加、それに前日11日の公開セミナーの内容をより深め、東北アジア専守防衛地帯への教訓を集中的に議論した。
●ジェントルズ氏による議員、専門家へのブリーフィング−10月16日
2名の国会議員(民主党の広中和歌子議員、社民党の田英夫議員)と国会図書館の外交政策課の職員に対し、ニュージーランドの国防政策の考え方、日本への教訓などについて別々にブリーフィングを行った。
テーマB 地域的なミサイル制限機構(テーマ・コーディネーター:黒崎輝)
● 地域のミサイルに関する現状分析−2003年3月〜10月
ミサイル制限機構研究の基礎作業として、ピースデポの情報誌「核兵器・核実験モニター」上で、北東アジアの国・地域(日本、韓国、北朝鮮、中国、台湾、ロシア、前進配備米軍)のミサイル能力に関するワーキング・データベースを作成した。
● 研究会「北東アジアのミサイルの現状と制限機構」−2003年9月20日
北東アジアにおけるミサイルの現状についてテーマ・コーディネーターが説明をし、ミサイル管理・規制手段の可能性について試案を提出した。研究参加者から梅林宏道、中村桂子が参加し、他の参加者と議論した。
● 韓国で研究参加者と研究会議:2003年10月20日〜23日
前述したこの梅林宏道、中村桂子(本研究参加者)の訪韓は、ミサイル問題に関する専門家で研究参加者の一人である「韓半島平和市民ネットワーク」代表のチョン・ウクシク氏との意見交換を目的の一つの柱とした。とくに、2004年7月に上海での「ミサイルと非核地帯」をテーマとした研究会に対する問題意識とその持ち方について話し合われた。
テーマC アセアン地域フォーラム(ARF)の活用(テーマ・コーディネーター:梅林宏道)
● 公開セミナー「アセアン地域フォーラム(ARF)と北東アジア」−2003年6月6日
当プロジェクトの研究参加者の一人であり、ARF問題で実績のあるNGO・太平洋軍備撤廃運動(PCDS)のパティ・ウィリス氏をカナダから招聘し、東京で一般向けの公開セミナーを開催した。ウィリス氏は、「ARFの現状と可能性・北東アジア非核地帯に関連して」という題で、ARFの発展と現状、ARFを北東アジアの平和促進の場とするための提案などについて講演した。同じく研究参加者の筑波大学の首藤もと子教授が「アセアンの政治から見た北東アジア・北朝鮮」と題する講演を行った。この公開セミナーは、ピースデポ、核兵器廃絶市民連絡会、ピースボート、北東アジアの非核地帯化をめざす全国ネットワークの共催で行われ、研究と啓発を兼ねて行われた。
● 専門研究会:パティ・ウィリス氏、首藤もと子氏−2003年6月7日
前日の公開セミナーの議論を受け、当プロジェクトの研究参加者を中心とした研究会を横浜で開催した。ウィリス氏がまとめた「ARFと北東アジアの安全保障−バックグラウンド・レポート」などの資料をもとに、より深い議論が行われた。また、この研究会のフォローアップとして、6月18日に出された第10回ARF議長声明の分析が、ウィリス、首藤、梅林によって行われた。(以上)