<第1議案>

2004年度事業報告(案)

 

§1 概観

 

2004年は、日本の核兵器廃絶運動の始まりの契機となったビキニ水爆被災から50年の節目であり、国際社会が核廃絶へと舵を切るターニングポイントとなるべき被爆60周年=2005年を控えた基盤づくりの年としてきわめて重要な意味を持っていた。NGO主導で核廃絶に向けた新しい国際的な運動の波が沸き起りつつある一方、停滞する核軍縮交渉、進む米ミサイル防衛システム初期配備、そして憲法平和主義の根幹を揺さぶる「防衛大綱の見直し」等々、私たちは2004年もさまざまな危機に直面してきた。いかに「軍事力によらない安全保障体制」を具体的なプロセスで実現していくか、ピースデポの存在価値が問われた一年の活動を振り返る。

 

■組織面

 「改訂中期ビジョン」のシナリオに基づく財政健全化の実現に向け、ピースデポが2004年度の組織体制整備における急務として掲げたのは、新規採用による常勤スタッフ三人体制の復元であった。この目標は、最終的に2004年11月に実現し、常勤スタッフから選任された事務局長代行の就任と専務理事の解任による任務分担の整理・再編成を経て、事務局中心の新体制への一歩を踏み出した。しかし、事務局の機能改善・強化、とりわけ渉外・営業活動の面での体制強化には未だ多くの課題が残されている。

組織の安定的維持には欠かすことのできない会員および出版物固定読者の拡大を中心とした財政基盤の拡充は、会員数の伸び悩み、新規大口読者層の未獲得によって難航している。2003年末に「核兵器・核実験モニター」の誌面刷新、編集体制の強化が実現したが、この発展をピースデポの財政基盤の確立に結びつける明確な活路は見出せていない。

 

■事業面

 2004年度の事業面での中心テーマに挙げられていたのは、2005年への基盤づくりとしての核廃絶世論形成への貢献、および先行きの見えにくい北東アジアでの軍事力によらない安全保障体制の確立に向けた重点的取り組みの2点であった。これまでの蓄積を最大に活かしつつ、これらのテーマにピースデポはさまざまな角度から取り組み、成果をあげた。

その中心となったのは、プロジェクト後半期に入ったトヨタ財団助成研究「市民社会が構想する北東アジア安全保障の枠組み」である。国内外でのワークショップや公開セミナーの開催、「核兵器・核実験モニター」の誌面上や投稿、新版イアブックなどにおける研究成果の公表などに一層の力が注がれた。

中期ビジョンの柱の一つであり、2003年度から刊行体制の準備が進められていた新版イアブック「核軍縮・平和・自治体」の発行は8月に実現した。「核軍縮:日本の成績表」の取り組みが引き続き行われ、2005年に向けた核廃絶への国内世論形成の基盤作りに貢献した。宜野湾市の委託を受け、沖縄の米軍基地に関する調査活動等を行い、市長の訪米活動の調整に貢献した。一方、「庭野平和財団」の助成を受け、東北アジア非核地帯に関する「日韓ツイン・ブックレット」の作成を進めた。

 

 

§2 事業プログラム

 

A.新プログラム

 

(1)2005年NPT再検討会議に向けた取り組み

 2005年に向けたNGOの動きを情報・リソース面から支援する取り組みである。「核兵器・核実験モニター」やウェブ、メーリングリストなどの媒体を通じて、「平和市長会議」の提唱する緊急行動「2020ビジョン」とそれに関連する国内外の動きを伝えるなどの情報発信活動を行った。また、2005年の意味と国際的な核軍縮の流れを解説する一般向けの平易なリーフレットの作成に11月より着手している。

 上記に加え、ピースデポは各地の動きをまとめるコーディネーション機能を保ってきた。2004年、広島、長崎、首都圏の市民がゆるやかな連絡会議(「核兵器廃絶−2005NPT市民連絡会」)を結成し、3回のシンポジウム開催を含む全国的な取り組みを共同で行うこととした。この流れで3月には広島、10月には長崎で市民主催のシンポジウムが開催された。その集大成である「核廃絶は市民の手から−被爆60年を転換の年に!2.19NPT市民集会」(2005年2月19日、東京)の開催に向けた準備過程において、ピースデポは実行委員会参加団体として主要な役割を担っている。

 

(2)新版イアブック「核軍縮・平和・自治体」の編纂・発行・普及

 改訂中期ビジョンの柱の第2に挙げられた事業である。より充実した内容と編集体制の確立をめざし、2003年末に梅林代表を代表とする「刊行委員会」(2004年当時14名が参加)を設立した。田巻編集長を中心とした体制のもとで、新版イアブックの発行は8月に実現した。「核軍縮・平和・自治体」の新タイトルのもと、これまでの内容とクオリティを維持しつつ、「日米安保と自衛隊」のセクションを追加するなど、守備範囲を広く平和・安全保障問題に広げたものとなった。また、版型をA5版に変え、写真や図表を多用する等レイアウトを工夫した結果、より親しみやすい体裁に生まれ変わった。単価をこれまでの1500円(会員価格1000円)から1800円(同1500円)に引き上げた。

 1300部を発行し年度内での完売を目指していたが、2004年末時点での売上実数は1043部である。2002年度と同様に、非核宣言自治体協議会に330部を購入していただいた。このほかにも100部の大口販売があったが、基本的には「集会売り」などの地道な販売努力が売上の中心を占めた。書店の販売ルートに乗せるなど、販路拡大が緊急の課題であると再確認された。

 

(3)日本の防衛予算に関する系統的調査・分析

 常勤スタッフ3名体制の確立が当初予定より遅くなった影響で着手が立ち遅れた。新年度の事業となる。

 

B.継続プログラム

 

(1)研究プロジェクト「市民社会が構想する北東アジア地域安全保障の枠組み」の推進

 プロジェクトの第2年次にあたる2004年は、研究成果のまとめ・発表の段階を見据えながら、柱となる4つのテーマ(@北東アジア非核地帯、A北東アジア専守防衛地帯、B地域的なミサイル制限機構、Cアセアン地域フォーラム(ARF)の活用)について研究を深めた。国内外でワークショップ、公開セミナー等を開催し、研究成果は、随時「核兵器・核実験モニター」の記事や雑誌投稿、ブリーフィングペーパー発行などの形で報告・発表した。

 研究は当初の予定通り2004年10月末で終了したが、研究のまとめとなる日英の提言冊子の作成に追加的な時間を要することから、研究終了の1年延期を申請し、受理された。よって最終的な報告は2005年11月までの提出となる。

 以下は、それぞれのテーマにおける第2年次の活動経過の概要である。(添付資料1「研究活動経過報告書及び中間会計報告書」参照)

@     北東アジア非核地帯(テーマ・コーディネーター(TC):梅林宏道)

     公開セミナー「海から非核地帯を考える」(2004年3月5日、東京)

     ニューヨーク・ワークショップ「モデル『東北アジア非核地帯条約』」の提案−危機を越えて道を拓こう」(4月28日)。韓国のNGO「韓半島平和市民ネットワーク」との共催。

     上海ワークショップ「東北アジアにおける非核地帯とミサイル管理」(7月16日−18日)。復旦大学国際研究所(上海)との共催。(Bのテーマとも関連)

     国際シンポジウム「広島の挑戦−東北アジアにおける核兵器・ミサイル・ミサイル防衛・宇宙武装への対案」での研究成果発表。(A、Bのテーマとも関連)

     梅林代表が起草し、各国の専門家による討議を経て策定された「モデル条約」を、広く一般に読まれるよう、モニター、イアブック、ホームページ上で公開。

A     北東アジア専守防衛地帯(TC:田巻一彦)

     公開セミナー「『小さな』国の『大きな』挑戦−モンゴルの一国非核地位に学ぶ」(6月20日、東京)

B     地域的なミサイル制限機構(TC:黒崎輝)

     ミサイル日本海配備決定を受けた情勢の調査・分析

     ミサイル管理に関する既存の国際的な取り決めや条約の分析

C     アセアン地域フォーラム(ARF)の活用(TC:梅林宏道)

     第11回ARFの分析と発表。ARF活用の可能性などに関するレポートの作成。

 

(2)核兵器・核実験モニターの月2回(1日、15日)発行

 3回の合併号を含め、201・2号から224号まで、21回発行した。

2003年末に構築した新しい編集体制を継続し、内容の充実とともにレイアウトの工夫を重ねることによって、親しみやすい紙面づくりを心がけて編集した。しかし一方で、目標に掲げていた会員・読者の拡大と団体大口購読契約の獲得を通した財政基盤拡充は達成できなかった。

PDF版による電子配信は継続されている。2004年末現在で会員・購読者合わせて16人がこの形態でモニターを受領しているが、会員・読者の拡大に直接的に寄与しているという確証は得られていない。

1月に「核兵器・核実験モニター合本V」(2000年1月15日〜2002年12月

15日をカバー)を100部発行した。完売を目指していたが、2004年度の販売実数は45冊である。

 

(3)「核軍縮:日本の成績表−NPT(13+2)項目に関する評価」

 特定目的カンパや助成金が得られた2002、3年と異なり、厳しい財政状況に直面した2004年であったが、成績表キットをフォルダー形式から冊子形式に移行し、また各地での評価会議を縮小(広島、長崎で開催)する代わりにウェブ上で意見を公募するなどの措置をとることによって、プロジェクトの継続を可能にした。4月に完成した「成績表」は、外務大臣に提出され、また、英語版はニューヨークのNPT再検討会議準備委員会で各国の外交関係者、NGOに配布された。成績表キットは、日常的にも市民の学習会テキストとして利用されるなど、2005年に向けた世論の啓発に貢献するものとなった。

 

(4)核軍縮議員ネットワーク(PNND)支援

11月30日にPNND・日本の第2回総会・学習会が開催され、梅林代表が講師を務めた。また、ウェリントン会議(12月8日)への日本議員の参加をコーディネートした。

 

(5)出版物の販売努力

 2002年度に出版した「核兵器廃絶への道」(かもがわ出版)、「ミサイル防衛−大いなる幻想」(高文研)の販売促進が課題であった。2004年には現実的な販売目標を立てていたが、それにも及ばず伸び悩んだ。以下は2004年度の販売目標と販売実数との比較である。                 

             

販売目標   販売実数  (現時点でピースデポとして採算をとるために必要な販売部数)

「核兵器廃絶への道」   80冊     5冊      約600冊 

「ミサイル防衛」       300冊   102冊      約250冊

 

(6)日本の情報公開法を活用した防衛・外交問題の調査

 梅林代表を中心に継続した。

 

(7)調査プロジェクト「米軍」

 2003年度に着手した「米軍海外基地動向調査プロジェクト」を継続した。「核兵器・核実験モニター」に「米軍再編クロノロジー」を掲載し、ほぼリアルタイムの情報発信を行った。一方、宜野湾市および「結の風ネットワーク」の委託を受け、米軍再編の調査、訪米調査、市長訪米の諸調整を行った。

 

(8)執筆、講演、出演、取材への協力

多くの機会に実行された。

 

(9)海外活動への派遣

 4月から5月にかけてニューヨーク国連本部で開催されたNPT再検討会議準備委員会に、石田恭子さんを派遣した。その後、石田さんは、刊行委員としてイアブックの執筆を分担し、また、翻訳協力などを通じてピースデポの事業に恒常的に貢献している。

 

(10)公開講演会・セミナー等の開催

 総会記念行事「ビキニ水爆被災50周年研究集会」(2月21日、東京)のほか、前述したトヨタ・プロジェクト関連のセミナー、ワークショップを精力的に開催した。新しい取り組みとしては、アウトリーチ担当理事(§3(2)参照)の協力を得たスタッフと若手有志グループが中心となって、学生を対象とした核問題入門ワークショップを開催したことがあげられる(11月27日、横浜)。

 

(11)ウェッブサイトの充実

 2005年に向けた日本国内の動きを情報・リソース面から支援するために、ウェブに新しいセクションを設け、情報発信を行った。

技術面での進展としては、検索機能がついたことで「核兵器・核実験モニター」バックナンバーのキーワード検索が可能になった。

 

C.その他、必要な事項

 

(1)総会で提案、採択される事業

 2004年総会において、次の2点が提案・採択された。

 @長崎の地域ポストのイニシアティブで提案された。自治体向けの「核兵器・核実験モニター」やイアブックの拡販ツールを作成し、各地会員の協力を得ながら会員拡大、拡販に取り組む。この提案は実現しなかったが、新年度に継続して努力している。

 A2005総会をNPTプロセスに積極的に参画していくものとするよう関連イベントを東京で準備する提案が採択され、「2.19集会」を総会関連行事として開催するために努力した。

 

(2)必要に応じた緊急プロジェクト

 庭野平和財団から100万円の助成を受け、「東北アジア非核地帯構想などの日韓市民への普及活動」と題する当初1年間のプロジェクトを開始した。週2日のパートタイマーとして会員である薮玲子さんが実務を担うことになった。2005年2月の完成を目指し、韓国NGOとの協働で、東北アジア非核地帯構想をテーマにした日韓両語のツイン・ブックレットの作成を進めている。

 

 

§3 組織体制の整備

 

(1)  中期ビジョン委員会の継続

 メールを活用した意見交換や、随時のフェース・トゥ・フェースの会談という形で、改訂中期ビジョンの現状の具体的な実行策について検討した。

 

(2)理事会とスタッフの新体制

 前述した通り、新スタッフの採用によって念願であった常勤スタッフ三人体制が実現した。12月、常勤スタッフより選任された事務局長代行が就任し、それに伴い専務理事として非常勤で日常運営の統括を担ってきた田巻理事が専務理事職を解任された。これを受け、日常業務の担当における整理・再編成を行い、事務局中心体制への基盤整備の一歩を踏み出した。

 小笠原理事、田巻理事、道原理事が「アウトリーチ担当」に就任し、特に学生・若手へのアプローチ強化を狙った事業の展開についてスタッフとともに検討を重ねた。

 

(3)会員、出版物固定読者の拡大:数値目標の設定

 2003年度との比較による会員・購読者の推移は次の通りである。

 

 

2003年度末

2004年度末

  増減

会員総数

     538

     491

47

  正会員個人

      215

     201

14

  正会員団体

        8

       7

   1

   賛助会員

      194

     172

  △22

   割引会員

      118

     108

  △10

 賛助特別会員

        3

       3

   

モニター購読者

      209

     203

   6

 

 会員においては、新規入会者は入会者21名と、目標の20名増を超過達成したものの、68人の退会者により、結果的には47人の激減となった。また、モニター購読者は新規購読12名に対して購読中止18人であった。2004年度末の購読者203人の中には、「誌代切れ」77人が含まれている。退会の理由としては「年金生活」など財政的困難が示されるケースも多く、背景には、発足当時の「第一世代」の会員・購読者の高齢化があると考えられる。既存会員のフォローを強化するとともに、新規開拓の一層の強化が必要である。

 

(4)ニューズレターの発行

 日本語版を4月1日と11月1日の二回発行した。英語版の発行は出来なかった。

 

(5)ボランティア、インターンなどの活用

フルタイムの学生インターン1名を2月から3月までの約1ヵ月間受け入れた。翻訳業務などの研究補佐および事務一般に力をふるってくれた。また、2002年秋いらい定期的に来所しているインターンがセミナー関連事務や資料整理などで引き続き活躍してくれている。

 一方、月2回の発送作業には、2〜5名のボランティアが常時参加している。シニアの力に負うところが多い。また、これまでに引き続き原稿執筆・翻訳などにも多くのボランティアの協力を得ている。セミナー等のイベント開催の際には、随時相当数のボランティアが流動的に参加している。さらに、若手ボランティアグループの中からは、主体的にピースデポの事業を支援する活動を担っていきたいという動きが見られるようになった。

 

(6)企業・個人寄付金、活動の包括的助成をする助成金の開拓

 主要なものとして、以下の助成・寄付を得ることができた。

     庭野平和財団:100万円

     一般使途への大口寄付1件

・ (継続してトヨタ財団)