<添付資料1>
研究団体:ピースデポ北東アジア安保フォーラム
研究題目:市民社会が構想する北東アジア安全保障の枠組み
研究活動経過報告書(2003年11月−2004年10月)
2004年11月29日 代表者 梅林宏道
本研究は、当初の計画通り2004年10月末で終了したが、研究のまとめとなる提言冊子(日・英)の作成に追加的な時間を要することから、研究終了の1年延期を申請し、受理された。よって、本報告は2003年11月から2004年10月までの活動経過に関する中間報告となる。最終的な報告は、2005年11月までに提出する。
概観
この期間、日本の専守防衛政策を揺るがすような大きな出来事が続いた。初めて陸上部隊が「戦地」へと赴くことになった自衛隊イラク派遣開始、米国製ミサイル防衛システムの導入決定など、軍事的な「抑止」と「対処」という冷戦時代からの安保論に依拠する一連の動きは、日本の軍事大国化への地域的な懸念を増大させている。加えて、米ミサイル防衛構想の一環としての日本海への米イージス艦配備が開始された。このような情勢の中で、北東アジア地域における協調的安全保障の実現の重要性はかつてないほどに高まっており、本研究プロジェクトの取り組みは、まさに時宜を得たものとなっている。
以下、当研究プロジェクトの柱となる4つの研究テーマに沿いながら、それに追加すべき項目を加えて過去1年の活動経過を報告する。4つの研究テーマとは、次のものである。
(1) 北東アジア非核地帯
(2) 北東アジア専守防衛地帯
(3) 北東アジア・ミサイル制限機構
(4) ASEAN地域フォーラム(ARF)の活用
全体として
●研究プロジェクト会議−2003年12月6日
プロジェクト2年目を迎えるにあたり、研究の進捗および今後の進め方について検討する公開の会議を横浜で開催した。各テーマのテーマ・コーディネーターが、それぞれの研究の進捗状況を報告し、最終的なまとめの形態についての見通し及び2年目の具体的な研究計画について意見交換を行った。
●成果の発表(刊行物の発行、執筆、発表)
前年度に引き続き、研究の過程で市民の意識啓発と参加促進を進める努力を行った。ピースデポ発行の情報誌「核兵器・核実験モニター」(月2回発行)の紙面に研究の調査結果、分析などのダイジェスト記事をほぼ毎号掲載した。200号(2003年12月1日、15日合併号)の発行を機に紙面を刷新し、本研究の成果を一層盛り込んだ形で内容を充実させた(例:「核兵器・核実験モニター」219号(2004年10月1日号。添付))。その他に、英文ブリーフィング・ペーパーの作成(2004年4月、ピースデポと太平洋軍備撤廃運動との共同編集)、また、「論座」(2004年11月、梅林宏道(本研究代表者)のほか、本研究参加者のディンリ・シェン、カン・チュンミンも執筆)、「世界」(2004年増刊号)など新聞、雑誌への執筆にも精力的にとり組んだ。また、日本平和学会設立30周年記念出版「グローバル時代の平和学」に本研究の成果も含めて寄稿をした。
前回の中間報告で言及したとおり、2003年4月30日にジュネーブで開催したワークショップの記録を小冊子としてまとめた。この小冊子(ピースデポ・ぶっくれっと「戦争ではなく非核地帯を!03年4月30日・ジュネーブ国連ワークショップの記録」)は、2003年11月22日〜24日に長崎で開催された「第2回核兵器廃絶−地球市民集会ナガサキ」をはじめ、さまざまな機会において関心ある市民に配布された。
加えて、国内外の諸会議において、研究の趣旨や成果の発表を行った。なかでも、2004年10月8日−11日に広島で開催された国際シンポジウム「広島の挑戦−東北アジアにおける核兵器・ミサイル・ミサイル防衛・宇宙武装への対案」(以下、広島シンポジウム)は、本研究のテーマ全体に関する発表の機会となった。広島シンポジウムは、ピースデポ、拡散に反対する国際科学技術者ネットワーク(INESAP、独)、核時代平和財団(米)、(財)広島平和文化センター、平和市長会議、広島平和研究所との共催である。梅林宏道、田巻一彦(本研究参加者)、黒崎輝(立教大学、本研究参加者)の3名がパネリストとして参加、各国から参加した専門家と集中討論を行った。
●新共同研究者の参加
2004年10月、韓国の核問題アナリスト、カン・チュンミン(姜政敏)が、共同研究者として本研究プロジェクトに正式に加わった。カンは、北東アジア非核地帯に関連する検証問題のテーマ等について、本研究過程において実質的な貢献をしてきていた人物である。
テーマ@ 北東アジア非核兵器地帯(テーマ・コーディネーター:梅林宏道)
●北東アジア非核地帯・公開セミナー「海から非核地帯を考える」−2004年3月5日
北東アジア非核地帯をテーマにした公開セミナーを東京で開催した。本研究の参加者である東京学芸大学の都留康子が、北東アジア非核地帯に関連する海洋問題について、また、梅林宏道が、「モデル『北東アジア非核地帯条約』案の現状」について講演を行った。このセミナーは、朝鮮半島と日本を中心とした非核地帯を考える際に、国際海峡の無害通航、領海と国際海峡の問題、排他的経済水域の現状など、海洋問題への理解が必要であるという認識に基づき、実施されたものである。ピースデポ、核兵器廃絶市民連絡会、ピースボート、北東アジアの非核地帯化をめざす全国ネットワークが共催した。
●ニューヨーク・ワークショップ「モデル『東北アジア非核地帯条約』の提案−危機を越えて道を拓こう」−2004年4月28日
2003年のジュネーブ・ワークショップに引き続き、韓国のNGO「韓半島平和市民ネットワーク」との共催で、核不拡散条約(NPT)再検討会議第3回準備委員会開催中のニューヨーク国連内にてワークショップを開催した。パネリストとして、梅林宏道、チョン・ウクシク(韓半島平和市民ネットワーク代表、本研究参加者)、金子熊夫(元外交官、前東海大学教授)、ダニエル・ピンクストン(モントレー不拡散研究センター研究員)を迎えた。ワークショップでは、ジュネーブ・ワークショップでの成果を踏まえ、今後の具体的な議論のたたき台となるべく起草された「モデル『東北アジア非核地帯条約』」を提案した。これを受け、ロシアの外交官、各国の外交関係者、核政策法律家委員会(米)のジョン・バローズを始めとする世界の主要なNGO代表など多数の参加のもと、活発な議論が行われた。
会議に先立っては、梅林が起草した「モデル『東北アジア非核地帯条約』」の原案を英語、韓国語に翻訳し、各国の専門家に配布のうえ、意見を求めるなどの準備を重ねた。韓国においては、韓国の市民団体によりモデル条約について議論する会議が開催され、検討結果が報告された。ニューヨークで発表したモデル条約は、これらの諸意見を反映したものであった。
ニューヨークで討議されたモデル条約案の全文は、「核兵器・核実験モニター」209・10号(2004年5月15日号。添付)の付録として公開した。現在、一般に広く読まれるよう、ピースデポのホームページ(http://www.peacedepot.org)でも公開している。
●上海ワークショップ「東北アジアにおける非核地帯とミサイル管理」−2004年7月16日−18日
上海の復旦大学国際研究所との共催で、復旦大学アメリカ研究センターを会場に、北東アジア地域の核とミサイルの現状を論じ、モデル「東北アジア非核地帯条約」や地域ミサイル管理の枠組みの可能性について集中討論を行うワークショップを開催した。ワークショップには、中国からディンリ・シェン(復旦大学国際研究所、本研究参加者)、シュ・ウェイディ(人民解放軍国防大学戦略研究所)、リュウ・シェチェン(中国国際研究所)、シ・ユアンファ(復旦大学)、韓国からチョン・ウクシク(韓半島平和市民ネットワーク、本研究参加者)、カン・チュンミン(核問題アナリスト、本研究参加者)、ドイツからレギナ・ハーゲン(拡散に反対する国際科学技術者ネットワーク(INESAP))、ユルゲン・シェフラン(INESAP、共同執筆のペーパーをハーゲンが発表)、日本からは高原孝生(明治学院大学、本研究参加者)、黒崎輝(立教大学、本研究参加者)、梅林宏道、中村桂子(本研究参加者)の4か国12名が参加した。
ワークショップの終了後、梅林宏道が上海の新聞「東方早報」からインタビューを受けた。翌20日、「中国・ロシア・米国は外部から東北アジア非核地帯を支持すべきだ」との主張を大きく取り上げたインタビュー記事が同紙に掲載されたことは高く評価できる結果であった。
なお、このワークショップにおいて各参加者が発表した英文ペーパー(一部を除く)をピースデポのホームページ(http://www.peacedepot.org)に掲載し、広く一般に読まれるようにした。
●広島シンポジウムでの発表−2004年10月8日−11日
前述の通り、梅林宏道が参加し、「東北アジアにおける核・ミサイル軍縮」のセクションにおいて、モデル「東北アジア非核地帯条約」の提案を発表した。
テーマA 北東アジア専守防衛地帯(テーマ・コーディネーター:田巻一彦、協力:湯浅一郎)
●公開セミナー「『小さな』国の『大きな』挑戦〜モンゴルの一国非核地位に学ぶ〜」−2004年6月20日
北東アジア専守防衛地帯の実現に向けた過程を考えるとき、一つのモデルとなるのが、一国非核地位の国際的認知と周辺核保有国との法的拘束力のある協定の締結に向け努力を続けているモンゴルの取り組みである。この認識に基づき、モンゴル非核地位をテーマにした公開セミナーを東京で開催した。モンゴル人研究者であるハムスレン・ハグヴァスレン(早稲田大学)が、「モンゴル非核地位の背景と現在」と題する講演を行い、モンゴル非核地位の現状と今後の課題などを明確にした。これを受け、本テーマのコーディネーターである田巻一彦(ピースデポ副代表)が、日本の専守防衛政策を考える視点からコメントをし、参加者を含め活発な議論を行った。
●広島シンポジウムでの発表−2004年10月8日−11日
前述の通り、このシンポジウムには田巻一彦が参加し、「北東アジア地域安全保障の諸問題」のセッションにおいて、「地域安全保障への市民のイニシアティブ:日本の専守防衛政策をキーワードに」と題する発表を行った。
テーマB 地域的なミサイル制限機構(テーマ・コーディネーター:黒崎輝)
●ミサイル日本海配備決定を受けた情勢の調査・分析
梅林宏道(本研究代表者)が、米国ワシントンD.C.を訪問し、米国のミサイル防衛の日本海配備と北朝鮮政策に関する公文書調査および専門家との意見交換を行った(2004年10月25日〜31日)。
また、「核兵器・核実験モニター」の紙面上で、適宜調査・分析結果を発表した(例:201・2号(2004年1月15日)、218号(2004年9月15日号。添付)、219号(2004年10月1日号。添付))。
●ミサイル管理に関する既存の国際的な取り決めや条約の分析
昨年度、ミサイル制限機構研究の基礎作業として、「核兵器・核実験モニター」上で、北東アジアの国・地域のミサイル能力に関するワーキング・データベースを作成したが、これに引き続き、ミサイル管理に関する既存の国際的な取り決めや条約の分析を行い、紙面上で発表した。
●上海ワークショップ「東北アジアにおける非核地帯とミサイル管理」−2004年7月16日−18日
前述したこのワークショップにおいては、テーマ・コーディネーターの黒崎輝が、北東アジアのミサイル制限レジーム構築への具体的かつ段階的なプロセスを提示し、参加者の中で活発な意見交換が持たれた。
●広島シンポジウムでの発表−2004年10月8日−11日
前述の通り、このシンポジウムには黒崎輝が参加し、「北東アジアの核・ミサイル軍縮:見通しと可能性」のセッションにおいて、「北東アジアの地域的なミサイル制限」に関する発表を行った。
テーマC アセアン地域フォーラム(ARF)の活用(テーマ・コーディネーター:梅林宏道)
第11回ARF(7月2日開催)の分析を行い、結果を「核兵器・核実験モニター」212号(2004年6月15日号)で発表した。
本プロジェクトの研究参加者であり、ARF問題で実績のあるNGO・太平洋軍備撤廃運動(PCDS)のパティ・ウィリスは、「北朝鮮問題に関するARF議長声明の抜粋:1994年−2004年」「北東アジア地域安全保障の推進に向けたARF活用の可能性に関するブレイン・ストーム」と題する2つのレポートをアップデートした。それはARF活用の可能性について、具体的な検討材料となるものであり、これに基づいて考察を一層深めることができた。
−以上