<第3議案>  

 

2005年度事業計画(案)

 

§1. 基本方針

 

(1)被爆60年・NPT再検討会議に向けた集中的取り組み

 2005年がやってきた。ヒロシマ・ナガサキの被爆から60年の節目の年であり、5月にはNPT再検討会議が開かれる。核廃絶の市民の主張をいっそう高くして訴え、具体的な進路変更を実現するためのきわめて重要な年である。広島・長崎両市を含め世界の108カ国609都市が加盟する平和市長会議は「2020ビジョン」を発表、市民と手をつなぎながら、核兵器廃絶を2020年までに実現するためのプログラムを提唱している。国家レベルでも新アジェンダ連合(NAC)が核軍縮に向けた国際社会の団結の呼びかけを活発化している。世界のNGOはこれらの動きに呼応してさまざまな活動を展開している。

 ピースデポはこのような国際的な動きに呼応する日本の市民の動きを創り出すために、核軍縮の分野での蓄積を最大限に活かしてこのプロセスに貢献していく。

 

(2)北東アジア地域安全保障への取り組み

 朝鮮民主主義人民共和国の核問題を巡る緊迫した国際政治の展開、拉致事件を契機とした日本国内の排外主義的・差別的風潮の拡大、2004年のミサイル防衛の導入本格化、「国民保護法制」や「米軍支援法制」などの有事法制成立。そして「防衛計画大綱」の見直し、「中期防衛力整備計画」の改訂、さらには憲法改正の議論・・・これらの現実政治・外交プロセスと切り結び、「北東アジア地域の<共通の安全保障>」へと向う実践的な段階的プロセスを市民の側から対置していくための強力な取り組みが求められている。トヨタ財団助成研究のまとめや庭野平和財団の活動助成を活用する。

 

(3)中期ビジョンのフォローアップ

 2004年度後半、懸案であったスタッフ3人体制の復元が実現し、2002年に最初に策定されて以来改訂を重ねた「改訂中期ビジョン」実現のための基礎が作られた。2005年を、2004年度末の財政状況を踏まえて再改した「改訂中期ビジョン2005−2008」の初年度と位置づけ、中期計画の達成状況をたえず点検し改善策を模索、実行していく。そのために、新規事業の立ち上げよりも継続事業の量的・質的拡充に力点を置く。

 

(4)アウトリーチ強化による平和運動の層の拡大への貢献

 日本の平和運動が直面する共通の課題は、いかにして世代的にも社会分野的にも平和運動を支える層を拡大してゆくかにある。ピースデポはすでに執筆・翻訳協力やボランティア活動・インターンという形で接点を形成しているが、2005年は、NPT再検討会議や東北アジア地域安全保障への取り組みやアウトリーチ活動をとおして、「調査・情報活動」という独自の役割分野を堅持しながら、次世代を含む新しい層との出会いの拡大に意識的に取り組んでいく。

 

(5)モニター創刊10周年と「ひとつの力」キャンペーン(仮称)

 2005年7月をもって、「核兵器核実験モニター」が創刊10周年を迎える。会員・読者各位の物心両面からの援助があってはじめて迎えることの出来る、記念すべき節目である。10年間に培われた人と人のつながり=人的ネットワークこそがピースデポの財産であるとの思いが強い。

ピースデポの中期ビジョンは、ピースデポの平和運動における役割を、持続的に、信頼性を維持して果たすために、その社会的・経営的基盤を確立するための中期計画である。一つ一つは小さくても、会員・読者・支持者のかけがえのない「ひとつの力」が集まることによってこのビジョンの実現に向けて大きな力が生まれてくるだろう。この人的ネットワークを活かし、拡充し、双方向コミュニケーションを強化するとともに、ピースデポの活動への会員・読者・支持者の参画の機会を拡大する一連の活動を「ひとつの力」キャンペーン(仮称)と名づけて取り組み、次に述べる改訂中期ビジョン実現の一助とする。

 

§2.改訂中期ビジョン

 

 2005年事業計画と予算は、中期ビジョン委員会(委員長:田巻理事、委員:高原、湯浅、横山各理事)による「中期ビジョン2005中間報告」(2002年11月2日)を、組織現状に照らして点検、再検討して改訂した「改訂中期ビジョン」に数値的な時点修正を加えた「改訂中期ビジョン2005−2008」(添付資料)に基づいて作成されている。その骨子は、次のとおりである:

○2004年度の収支決算は、約21万円の収支赤字となり、その結果として約470万円の次期繰り越しが可能となった。これを起点として、次の重点施策を通して、3年間で、経常黒字財政への転換を実現する。

■「核兵器・核実験モニター」、イアブック「核軍縮・平和・自治体」を主軸に、会員数増加を含めて、3年間で対2003年度比約300万円の正味収益増を生み出す事業に育てる。

■ボランティア、インターン、臨時スタッフの拡充による活動の強化、企業・個人寄付金、活動助成金の拡大による組織強化によって、3年間で約100万円の正味収益増を実現する。

 

§3.事業プログラム

 

(1)2005年NPT再検討会議に向けた取り組み

 2005年NPT再検討会議を核兵器廃絶のための歴史的な機会として活かそうという、自治体(平和市長会議)のイニシアティブや国際的なNGO呼びかけに応えて、日本国内でもNGOの動きが始まっている。ピースデポとしては、このような動きを、情報、リソース面から強力に支援し、核廃絶に向け、日本政府に核政策の転換を迫るような市民の主張を作り上げていくプロセスに積極的に参画していく。具体的には次のような活動を計画する:

@「2005年を核廃絶への転換の年に!2.19集会」(2月19日・東京)の開催。

 総会関連行事と位置づけ、実行委員会の一翼を担う。

ANPT再検討会議(2005年5月・ニューヨーク)への参加。

B新旧出版物(「核軍縮・日本の成績表」、イアブック「核軍縮・平和・自治体」、ツインブックレット、一般向けリーフレット)を市民活動の活性化のためのリソースとして発行・活用する。

 

(2)「北東アジア地域安全保障の枠組み」研究継続と成果のまとめと展開・普及

 トヨタ財団助成研究「市民社会が構想する北東アジア地域安全保障の枠組み」は予定どおり2004年10月末をもって終了したが、まとめの提言冊子(日)と普及版(日・英)のために一年の期限延長が認められた。また、庭野平和財団で活動助成を得た東北アジア非核地帯構想の普及活動は、今年度も内容を発展させながら継続される。今年度は次のような取り組みが行われる。

@トヨタ研究成果をまとめた提言冊子の発行(報告書と普及版)

   <構成> まとめ/非核兵器地帯/専守防衛地帯/ミサイル管理機構/ARFの活用

   <発行予定> 2005年5月

A同まとめのシンポジウムの準備

2006年10月の2日間、ソウルで大衆集会(100〜150人規模)と研究会(50人規模)を開催することを目指し、準備する。テーマ:東北アジアの共通の安全保障−市民社会の構想。

B日韓ツインブックレットの発行と活用

「東北アジア非核兵器地帯」など地域安全保障の具体的提案を日韓の市民社会に広げていく活動が2004年度から庭野平和財団の助成を得て続いている。今年度、日韓ツインブックレット「東北アジア非核兵器地帯」が完成する。それを活用すると共に、新しい普及活動に取り組む。

 

(3)核兵器・核実験モニターの月2回(1日、15日)発行

 ピースデポの基軸事業とし継続する。2003年度に構築した新体制と編集方針を継承する。すなわち、核兵器・核軍縮、アジア太平洋地域安全保障(日米安保、防衛計画大綱見直し、有事法制と自衛隊の海外活動など)を中心テーマとし、資料性を重視した編集とする。レイアウトなどを工夫し親しみやすい紙面づくりを心がける。

 その上で、「ひとつの力」キャンペーンを念頭において、将来ボランティアが取材に参加できるような写真インタビュー企画(著名人、国会議員、ユーなど)や文化的企画、「読者の声」欄、単独でも使えるようなフルカラーのビジュアル企画(年2回)、などの企画に取り組む。

 

(4)イアブック「核軍縮・平和・自治体」の編纂・発行・普及

 2004年に新版なったイアブックをさらに質の向上を図りつつ編集・発行・普及に努め、基幹的事業へと前進させる。核廃絶に加えて、米軍再編、「防衛計画大綱」見直しやミサイル防衛など具体的な政治課題に対して「共通の安全保障」、「自治体の平和力」をキーワードとしたアプローチによって、市民の政治参画をより強め、広げていくことに役立つ事実関係やデータを提供するものにする。より一層の普及を図るために、発売元契約によって商業出版のベースに乗せることを目指す。

 

(5)「核軍縮:日本の成績表−NPT(13+2)項目に関する評価」

 核廃絶キャンペーンを支援する活動の一つとして位置づけ、継続して取り組む。今年度は、「成績表」が被爆60周年の全国的な活動に役立つ資料となるよう、まとめの仕方と出版物の形を工夫する。各地での市民評価会議を開催するが、(1)に掲げた2月19日集会もその一つとなる。

 

(6)核軍縮議員ネットワーク(PNND)支援

 日本ネットワークの活動が活性化するようNGOとして支援する。なお、梅林代表が国際PNNDの東アジア・コーディネータに任命されている。2.19集会に対して日本ネットワークの協力が得られることが決定している。これまでの活動の一つの成果と考えられる。5月には、NPT再検討会議準備委員会に合わせて、PNNDニューヨーク会議が開催される予定である。これに向けて、日本の議員の参加を促進する活動に取り組む。「ひとつの力」キャンペーンとつながって、会員の協力が生かされる取り組みを工夫する。

 

(7)出版物の販売努力

 「核兵器撤廃への道」(かもがわ出版)、「ミサイル防衛―大いなる幻想」(高文研)は、いずれも2002年度に出版したピースデポの出版物である。その販売は2005年度も引き続き事業として重要な役割りを果たす。2005年度の現実的販売目標は、前者が30冊(ピースデポとして採算をとるための販売必要残部約600冊)、後者が100冊(同約220冊)である。後者は、米国のミサイル防衛実戦配備や日本の本格導入という事態を考えるための重要な文献であり、重点的に販売する。

               

(8)日本の情報公開法を活用した防衛・外交問題の調査

 従来どおり継続して取り組む。

 

(9)調査プロジェクト「米軍」

 2003年度に着手した米軍の世界的再編を調査・分析する「米軍海外基地動向調査プロジェクト」を本年も継続し、正確で迅速な情報提供によって市民や自治体の活動に貢献する。財政の許す範囲内で取り組む。

 

(10)日本の防衛政策に関する系統的調査

 2004年度立ち上げの予定であったが、持ち越されている。実行可能な切り口から早期に着手する。

  

(11)執筆、講演、出演、取材への協力

従来どおり継続して取り組む。

 

(12)海外活動への派遣

 ピースデポの継続事業となっている「将来を担う平和活動家/研究者」の海外派遣を今年度も継続する。そのための募金活動に取り組む。2005年は、5月のNPT再検討会議(ニューヨーク)が機会として考えられる。時期、場所の決定と人選を理事会に任せる。スタッフや理事の海外出張は、この派遣プロジェクトとは別枠である。

 

(13)公開講演会・セミナー等の開催

 基本方針(4)の趣旨にそって開催する。対象と目的が異なる次の二つのことに取り組む。

@核軍縮・平和問題の初心者向けワークショップなど:意識的な市民層とピースデポの出会いの機会を増やし、会員増のための一つの窓口となるような機能を果たす一方、平和運動の裾野拡大と次世代への継承に資する。

A平和フロンティア講座:地域安全保障に関係する時局のテーマについての斬新な公開講座を目指す。ピースデポ自身の調査研究活動の能力アップと諸分野の専門家や若手研究者との協力関係を深める場とする。一部は(2)の事業に関係する。梅林代表を座長として運営する。

 

(14)ウェブサイトの充実

 昨年に引き続き取り組む。ピースデポの特色を生かした既存資料のウェブ上での利用が容易になるよう改善を図る。タイムリーな内容の更新と、更新のタイムリーな公知につとめる。また、英語サイトの充実を今年度の課題とする。

 

(15)その他、必要な事項

@総会で提案、採択される事業

総会において会員から提案され、議論され、本会の2005年度事業として採択された事業に取り組む。

A必要に応じた緊急プロジェクト

年度途中で必要性の生じた緊急の取り組みを、理事会の承認を得て行う。人的、財政的な裏づけは、その都度工夫する。

 

§4.組織体制の整備

 

(1)中期ビジョン委員会の継続とフォローアップ委員会の設立

 中期ビジョン委員会は活動を継続する。現在の4人の理事と事務局長代行(次項参照)によって構成される(委員長:田巻一彦理事)。しかし随時委員の合意による変更、追加がありうる。

その上で、中期ビジョンとの関係で事業計画と予算の進捗を年間を通じてフォローし点検するための「フォローアップ委員会」(委員長:事務局長代行)を設立する。中期ビジョン委員会は、「フォローアップ委員会」からの諮問に応じて、必要であれば改定ビジョンの修正や新しい立案を理事会に答申する。

 

(2)理事会とスタッフの新体制

 2004年11月に常勤スタッフ3人体制が復元されたことを踏まえ、日常運営は事務局中心へと段階的に移行していく。常勤スタッフの中から選任した「事務局長代行」が組織運営を統括する。これに伴い、田巻理事は専務理事の職を解かれる。代表と理事から互選された3名程度の人事担当役員が、人事政策の点検と立案にあたる。

 

 
 


(3)会員、出版物読者の拡大:数値目標の設定

 「2004年度事業報告」で述べたように、新規会員が獲得できても、それを上回る退会者によって会員数が正味で減少するという構造がある。初期の入会者の高齢化などが背景にあると思われる。一方、職場や地域で平和運動に取り組む人々からは、ピースデポの情報は貴重だが、難しく、活用しきれないという声も聞かれ、この事情が会員数が伸び悩む背景の一つと考えられる。会費も他のNGOに比べ高額な部類である。このような困難を乗り越えて組織の拡大を図る必要がある。会員、出版物の固定読者の新規拡大は、中期ビジョンにとってもっとも重要な位置を占める。2005年度は、正会員20人の正味増(新規入会から退会者を指し引いた数字)、モニター読者30人の正味増(同)に加えて、「モニター」の団体大口購読者(年間会費10万円を想定)を3口新規獲得するという2004年度と同じ数値目標を設定し、達成のために継続して努力することとし、これを予算案に反映させてある。     

 

(4)支持層を拡大するための新方策の検討と実行――<ひとつの力>キャンペーン(仮称)

 (3)に示した目標を実現するためには、ピースデポの市民社会への一層の浸透が求められるが、これは、会員各位の創意、創造性やスキルによる援助があって初めて達成可能となる。次のような活動を通して、ピースデポの人的ネットワークを拡充・活性化する。とりわけ「モニター創刊10周年」の節目にあたる2005年をそのための跳躍台とする。

 〔会員・活動サポーターとのコミュニケーションの拡充〕

 事務局と会員との間の双方向的コミュニケーションを拡充することを通して、会員各位が自らの創造性や得意な仕事をとおしてピースデポの活動に参加する機会を拡大する。なすべきこと、なしうることは下記にとどまらない。会員各位の積極的な提案をお待ちしたい。会員とのコミュニケーションを深めるに当たっては、ピースデポの個人情報管理ポリシーを明確にする必要がある。

@メーリングリストやファックス同時通信体制の確立。(海外MLも整備する)

A返信ハガキ(受取人払い)による、会員との相互コミュニケーション機会の拡大と、会員の得意分野などを登録した「スキルバンク」の作成。

Bワークショップ、講座、モニターの企画(インタビュー、文化記事、ビジュアル・ページ)など共同運営する機会の拡大。

        C会費の自動引き落としシステムの検討

        Dウェブにアクセスした人の「登録システム」:名前、メールアドレス、関心事など。双方

向コミュニケーションによるアウトリーチ機会を拡大する。

 

 〔新しい制度の導入〕

@「トライアル会員」制度の創設:3ヶ月だけ、試行的にモニターを購読できる。

A「ピースデポ・サポーター」の新設:現行の会員制度とは別に、若い世代の参加拡大の受け皿とし「ピースデポ・サポーター」(年会費2000円程度)を募る。サポーターに登録した人は、「モニター」を毎号購読できる一方、ピースデポから要請があったときには、ボランティアとして積極的に活動に参加することが求められる。

 

 基本方針、§1(5)に書いたような趣旨で、上記の一連の活動及び関連する諸活動を「ひとつの力」キャンペーン(仮称)と名づけ、可能な項目を早くから順次実行してゆく。10月頃に「一人紹介」運動に取り組む。2005年7月の「モニター」創刊10周年記念号を「ひとつの力」キャンペーンの展開に生かすことを念頭において企画・編集する

 

(5)ニューズレターの発行

 本会の活動、運営状況を伝えるための会報として、年度内に日本語版2回、英語版1回を発行する。会員交流の場としての性格も加味する。

 

(6)ボランティアインターンなどの参加拡大

 中期ビジョンの柱の一つである。次代を担う人材育成の観点及び活動の活性化のためにボランティア、インターンの積極的参加を呼びかけていく。ここでも「ひとつの力」キャンペーンを生かす。

 

(7)企業・個人寄付金、独創的企画による助成金の開拓

 これも中期ビジョンの柱の一つである。理事を中心にした外部資金導入の努力を強化しなければならない。予算案には100万円の寄付金・助成金を計上してある。

 スタッフと理事有志を中心とした独創的企画の提案と助成獲得に努める。一例として、有事関連「国民保護計画」を念頭に置いた「地域における<人間の安全保障>と国民保護」の提案を考えている。

 一方、一般寄付金の拡充のため、「認定NPO」の資格取得に関して継続して研究する。