<第3議案>
2006年度事業計画案
§1.基本方針
(1)核廃絶世論形成に向けた取り組みの強化
被爆60年の2005年に開催されたNPT再検討会議および世界サミットにおいて実質的合意が達成されなかった現実を受け、核廃絶に向けた国際世論を盛り上げていく重要性があらためて認識されている。広島・長崎を含め世界114カ国・地域1253都市が加盟する平和市長会議は、「2020ビジョン」の実現に向けた精力的な活動を継続しており、これに呼応する各国のNGOの動きは一層活発なものとなっている。日本国内においても、広島、長崎、首都圏のNGOを中心とした、地域レベルから国内世論を喚起するとり組みが動き出している。ピースデポはこれら国際・国内の動きに対し、情報の蓄積や既存のネットワークを最大限に活かしつつ、リソース面、コーディネーション面において独自の貢献を強化する。
(2)北東アジア地域安全保障へのとり組み
朝鮮民主主義人民共和国の核問題をめぐる6か国協議の進展、日米・韓米同盟強化へと向かう米軍再編の動き、憲法改悪へと向かう日本に懸念を強める近隣アジア諸国といった政治的背景のなかで、北東アジアにおける地域安全保障の確立に向けたビジョンの共有と、実現への具体的なイニシアティブが喫緊の課題となっている。その中心的役割を担う日韓市民社会の動きを強化し、協調的安全保障の枠組みを生み出す基盤を作るために、トヨタ財団研究助成プロジェクトの成果や庭野平和財団の活動助成等を活用する。
(3)財政健全化に向けた事業・組織体制の抜本的見直し
2005年度に表面化した財政状況の極端な悪化を受け、2006年度事業計画においては数年にわたった中期ビジョンを離れ、緊縮財政のなかでの事業・組織体制の抜本的な見直しを行う。2006年3月から事務所を常勤スタッフ1人体制に移行する。調査・研究・情報NGOとしてのピースデポに求められるクオリティをできるだけ維持しつつ、財政的観点から新規・継続事業ともに運営のあり方を厳しく点検し、改善する。そのために、事務所活動の重点化・効率化を図り、必要なときには事務所外に適宜協力を求める道を探求する。2005年度の反省を踏まえ、財政状況に関する日常的なチェック機能を強化するために「運営委員会」を設立し、見直しと改善を継続的に進めていく。このようにして、事業・組織の両面において計画したことを「実現していく力」をつけていく。さらに、ピースデポの将来像について検討を行う「将来計画委員会」を発足させ、具体的な議論・提案を行っていくこととする。
(4)人的ネットワークの活用
ピースデポ最大の財産がこれまでの活動を通じて築き上げられた貴重な人的ネットワークであることに異論の余地はない。とりわけ、2006年度における組織体制の縮小という現実を前に、会員との協働体制は一層かけがえのないものとなる。2005年度に種がまかれた「ひとつの力」キャンペーンの流れを引き継ぎ、今年度は年初から計画的に展開する。また、「コミュニケーション・データベース」および「スキルバンク」を拡充するとともに最大限活用し、運営の安定化へと繋がるよう努力する。
§2.事業プログラム
(1)核廃絶世論形成に向けた取り組みの強化
国内・国外での自治体・NGOのイニシアティブを情報・リソース面から支援し、核廃絶に向けて日本政府に核政策の転換を迫るような市民の主張を創りあげていくプロセスに積極的に参画していく。並行して、「核兵器・核実験モニター」「イアブック」を始めとしたピースデポのさまざまな発行物を普及・活用する機会を模索していく。8月の広島・長崎を始め、6月のバンクーバーでの国際平和フォーラムや、10月に長崎で開催される「第3回核兵器廃絶−地球市民集会ナガサキ」はその重要な機会である。
(2)「北東アジア地域安全保障の枠組み」研究成果の活用と展開
トヨタ財団助成研究「市民社会が構想する北東アジア地域安全保障の枠組み」は2005年10月末をもって3年間のプロジェクトを終了した。秋をめどに報告集会をかねた日韓NGO主催の会議を何らかの形で開催するために助成金を得ることを目指す。また、2005年10月に発行したプロジェクトのまとめの提言冊子(報告書と普及版)を普及・活用する機会を模索する。
庭野平和財団で活動助成を得た北東アジア非核地帯構想の普及活動は、今年度も継続される予定である。その一環として、6月にバンクーバーで開催される「世界平和フォーラム」においてPCDS(太平洋軍備撤廃運動)と共催でワークショップを開催する。
(3)核兵器・核実験モニターの発行
ピースデポの基軸事業として継続する。後述する「ブックレット」事業等を拡大するため、発行回数を年間20号から18号に減らせる。これまでに引き続き、内容面での充実とともにレイアウトなどの工夫による親しみやすい紙面作りを心がける。2005年度の「スキルバンク」の活用を念頭に、より多くのボランティア執筆者・翻訳者などの発掘を目指す。また、人的ネットワークの活用を念頭に、2005年度に開始した連載エッセイ、インタビュー企画などの取り組みを継続する。
(4)イアブック「核軍縮・平和」の発行と販路の拡大
2005年版に引き続き、発売元契約による商業出版のベースに乗せる。タイムリーな宣伝・広報を心がけるとともに、販売の対象となるグループ・個人を類型化し、それぞれに分担を決めて、直接販売における新たな販路の開拓を行い、基幹事業に発展させる努力をする。ボランティアの協力を得ながら、さらなる質の向上を図り、編集・レイアウト等の工夫を重ねていく。
(5)「ピースデポ・ブックレット」の作成
モニターに掲載した記事・資料を再編集し、トピックを扱う「ブックレット」としてタイムリーに出版する。読者のニーズをとらえる工夫、団体組織などへのバルク販売を含む販路の開拓等を模索しながら2006年度は年2回の発行をめざす。作成には、スキルバンク等を活用し、デザイン・内容の両面でボランティアの協力を得られるよう努力する。
(6)ピースデポ研究員の公募
常勤スタッフ1人体制の不備を補うとともに、今後の研究活動を担う次世代の研究者・活動家を育成していく必要性から、安全保障、平和研究分野に関心があり、将来研究分野の仕事を目指している研究歴のある人材を公募することとし、適切な人材が見つかれば採用する。
(7)核軍縮議員ネットワーク(PNND)支援
引き続き、日本ネットワークの活動が活性化するようNGOとして努力する。
(8)日本の安全保障政策についての独自調査
以下の3つを中心的なプロジェクトとし、継続して取り組む。テーマとして、ミサイル防衛への取り組み、原子力空母に関する調査・分析を含む。助成金獲得の可能性について随時検討する。
・日本の情報公開法を活用した防衛・外交問題の調査
・調査プロジェクト「米軍」
・日本の安全保障政策に関する系統的調査
(9)執筆、講演、出演、取材への協力
従来通り継続して取り組むが、ピースデポのスタッフと理事が、できる限り講演の機会をもてるよう努力し、「イアブック」などの販売ルートの開拓にもつなげていく。雑誌への企画持ち込み等、これまで築いてきた出版社との関係を活かす形で実現可能な計画に取り組む。
(10)海外活動への派遣
「将来を担う平和活動家/研究者」の海外派遣を継続する。そのための募金活動に取り組む。6月の世界平和フォーラム(バンクーバー)などが派遣の機会として考えられる。時期、場所の決定と人選を理事会に任せる。スタッフや理事の海外出張は、この派遣プロジェクトとは別枠である。
(11)公開講演会・セミナー等の開催
昨年に引き続き、目的と対象が異なる2つの形態のワークショップ(@核軍縮・平和問題の初心者向けワークショップ、A平和フロンティア講座)を開催する。前者には学生をターゲットにしたアウトリーチ活動の観点から、関心ある若い層との出会いやボランティアの発掘といった意義があり、後者には研究NGOとしてのピースデポの活動にとって好適な人材の発掘と交流の場としての意義がある。助成金獲得の可能性についても随時検討する。
(12)ウェブサイトの充実
引き続き取り組む。ピースデポの特色ある既存資料のウェブ上での利用に便利なように改善を図る。英文ウェブの充実をはかる。ボランティアでのウェブマスターを募る。
(13)その他、必要な事項
@総会で提案、採択される事業
総会において会員から提案され、議論され、本会の2006年度事業として採択された事業に取り組む。
A必要に応じた緊急プロジェクト
年度途中で必要性の生じた緊急の取り組みを、理事会の承認を得て行う。人的、財政的な裏づけは、その都度工夫する。
§3.組織体制の整備
(1)スタッフ新体制
緊縮財政に伴い、2006年3月から常勤スタッフを2人体制(実質的には2.4人)から1人体制(実質的には1.2人)へと移行する。会計業務の補助のためにパートタイム(基本として週1回)を依頼する。常勤スタッフは、一部の研究活動を除き、事務局長として全体的な事務統括、渉外活動の強化、資金調達など、運営・財政面での組織力の強化に集中的に取り組むこととする。人員削減に伴うさまざまな困難を乗り越え、07年度以降の財政健全化に向けた基盤作りを行うために、昨年来の「ひとつの力キャンペーン」でまかれた種とこれまで築いてきた人的ネットワークを活かして、基本方針(3)で述べたようなメリハリのある事務局運営を行う。
(2)運営委員会と将来計画委員会の設立
事業計画と予算の進捗について年間を通じてフォローし点検する作業を行うために、担当理事を委員長とする「運営委員会」を設立し、適宜の計画見直しを行っていく。事務局長他が参加する。
また、組織体制の将来的なビジョンに関する検討を行うために、「将来計画委員会」を設立する。担当理事が委員長を務め、委員長が他の委員を推薦する。
(3)会員、モニター購読者の拡大:数値目標の設定
「ひとつの力」キャンペーンを通じ、これまで積み重ねてきた会員・購読者拡大に向けた努力の第1回の集大成となるような取り組みを実施する。2006年3月早期に「一人紹介キャンペーン」を打ち出し、新規会員・購読者の正味40名増を目指した呼びかけを行う。それに先立ち、ピースデポの理念や活動を紹介したカラーパンフレットを作成し、会員が活用できるようにする。
(4)イアブック、ブックレットの販路分析と拡大
また、会員、購読者とは別に、イアブック、ブックレットなどのバルク購入の可能性のある団体組織や個人について、丁寧な分析とフォローを行い、出版物の販売促進努力を強化する。
(5)人的ネットワークの拡充・活性化に向けた施策
会員・活動サポーターとのコミュニケーションの拡充を図るため、同時通信体制を確立し、最大限活用していく。読者カードを継続・活用する。海外リストのアップデートも行う。「コミュニケーション・データベース」、「スキルバンク」への登録をモニターやホームページを通じて常時呼びかけ、さらなる拡充を図るとともに、登録者の参画の機会を意識的に拡大していく。
学生ボランティア、インターン募集の告知を広める。ワークショップ開催のほか、会員の大学教員を通じて、また、学生の利用するサイトや学校へのインターン受け入れ先としての登録などを利用して関心ある学生層へのアプローチを強化する。
(6)ニューズレターの発行
本会の活動、運営状況を伝えるための会報として、年度内に日本語版2回、英語版1回を発行する。会員交流の場としての性格も加味する。
(7)独創的企画による助成金の開拓
2006年においては、助成金の獲得に向けた努力を最優先課題の一つとして取り組む。その能力を高め、財政健全化に向けた有効な打開策とする。企業・個人寄付金の獲得も念頭に置き、理事・協力者からの情報の収集に努めつつ、具体的なアプローチの可能性があれば適宜検討・実行する。
――以上。