■ 事業

2002年2月24日、第3回ピースデポ総会が開催され、以下の事項が承認および採択されました。



2002年度事業計画

§1 基本方針

(1)中期ビジョン委員会の設置

 昨年度の事業計画で、ピースデポは三つの中期的な夢(「中期目標」)を掲げた。そのうちの一つ「フルタイム・スタッフ3人体制」は、昨年度の事業報告にある通り、夢のみならず現実の必要性から2001年中に実現した。もう一つの「ワンフロアの事務所」は、後述するように変形した形で今年度の事業計画のなかで実現しようとしている。三つ目の夢である「専務理事など」に関しては、昨年度の事業計画に述べられたような経過を踏まえて、新しいアプローチが求められている。

 原点に遡って考えるならば、三つ目の夢の目指したものは、ピースデポが若いNGO平和活動家・研究者が意欲的な活動に挑戦できるような魅力ある職場となるために、最低限の安定した経営体制を確保しようということであった。そこで、三人スタッフ体制と必要な事務所スペースを確保できる見通しを踏まえて、現実的な新しい事業の発展計画案を策定することを今年度の課題とする。案を策定するために、理事会に中期ビジョン委員会を設置する。

 ◆中期ビジョン委員会の役割:現在、『核兵器・核実験モニター』を軸にピースデポの事業が行われている。準備段階からの活動と多くの会員の協力を得て、2001年度末に630万円の繰越金を残すことができた。これを原資として投資し、新しい事業を立ち上げ、発展させ、数年後のピースデポの経営を安定化させることを目指す。ビジョン委員会は、そのための新事業、移行プロセスなどを策定し、理事会に提案する。また、2003年度においても、実行過程を点検し、必要な改善策を提案する。2003年度の事業計画や予算に反映させるため、2002年10月中に何らかの中間報告を出す。

 ◆構成:田巻理事(候補)を委員長とし、湯浅一郎理事(候補)、川崎哲(スタッフ、事務局長)ほか委員長の委託する数名で構成する。任期は2年とする。

 なお、新しい事業として話題になっているものを<第3議案の付>として添付したが、会員からの積極的な提案を期待する。

 

(2)2002年度基本方針

 スタッフ3人体制を迎えて、事業プログラム面でも組織・財政面でも、ピースデポは意欲的に新しい挑戦を行うべき年である。その意味で2002年度は、ビジョン委員会の活動の充実を図ることを基本方針の第一とする。

 いっぽう、他の事業プログラム面においては、米国ブッシュ政権がABM条約脱退を通告し、ミサイル防衛・核・通常兵器を一体化した新三本柱の核態勢見直し(NPR)を発表したことによって、NPT(核不拡散条約)体制が大きな波乱含みとなった。ピースデポが昨年に開始した「核軍縮:日本の成績表−−NPT(13+2)項目に関する評価」が極めて重要な意味を持つようになる。これは、日本の核兵器政策の転換を求める世論形成につながる。このとり組みを第二の基本方針にすえる。

 また、日本の有事法制、憲法改悪の動き、沖縄基地(とりわけ普天間代替施設)の動向など、重要な情勢を絶えず注視しつつ、本会の果たすべき役割を考える。

 総会参加者から提案される事業プログラムを採択することを昨年から開始したが、今年度もまた、そのための枠組みを設ける。

 

§2 事業プログラム

 定款によると、ピースデポの事業は、次の6つのカテゴリーに分類される。@調査、研究、教育、A学習会、研究会、シンポジウム、講演会、B定期刊行物、冊子、単行本など出版、C情報収集、整理、情報提供、D教材作成、Eその他。将来の便宜のために、以下の事業プログラムごとに、関係するカテゴリー番号を記す。

A.新プログラム

(1)「核軍縮:日本の成績表−−NPT(13+2)項目に関する評価」(カテゴリー@、A、B)  

 2000年NPT再検討会議における13項目合意、それに端を発した日本政府の新決議「核兵器全面廃棄への道程」によって作られた新しい肯定的状況を、日本の真の政策転換へと導くために、情報に基づいた日本の政策評価を行う。すでに昨年度の事業報告にあるとおり、10人よりなる評価委員会を発足させ、評価基準を論じる冊子の素案を作成した。評価委員同士の意見交換にリスト・サーブを開設した。この基礎の上に2001年度は、第一回目の成績表を付けることになる。関連したとり組みは次の通りである。

 a.2002年成績表冊子の作成

 b.同案の段階で首都圏、広島、長崎などでの評価集会を開催

 c.成績表の政府・議員への提出、メディアへの発表

 d.英文化して国際的に発信(とくに2002年再検討準備委員会に持参)

 e.2003年のための調査の継続

(2)核軍縮議員ネットワーク(PNND)支援(カテゴリー@、C)

 MPI(中堅国家構想)が始めた国際的議員ネットワークの日本ネットワーク(2001年末現在、超党派のコア・グループを形成する途中)を支援する。PNND議員への日本語による情報提供をモニター誌と有機的に結ぶことによって、財政と人的負担の許す範囲で行う。議員ネットワークで、財政的裏づけをしっかりさせるよう追求する。なお、梅林(前期代表)が、PNNDの東アジア・コーディネーターに任命されている。

(3)「核兵器・核実験モニター」電子速報版の発行(カテゴリーB)

 新会員獲得の一法として、電子メディアによるモニター発行に挑戦する。基本はモニターの内容の電子版だが、図表がない代わりにその他の速報情報がある。あるいは、PDFファイルで提供する方法もある。有料配布なので、アクセスの問題、転送防止など技術的検討が必要である。

(4)2冊の単行本の出版(カテゴリーB)

a.「安全の幻想:ミサイル防衛(仮)」(翻訳本)
"A Maginot Line in the Sky -- International Perspectives on Ballistic Missile Defense," edited by David Krieger and Carah Ong (Nuclear Age Peace Foundation, 2001)

 昨年の海外派遣プロジェクトでイギリスに派遣された黒崎輝さん(会員)が翻訳を引き受けて下さった。高文研が「ピースデポの本」として出版することを承諾した。原本出版元であるNAPFは、訳本の初版本の権利をすべてピースデポに与えることを了解した。

 リチャード・フォーク、デイビッド・クリーガー、ユージン・キャロル、アラ・ヤロシンスカヤ、ディンリ・シェン、梅林宏道、李三星、アチン・バナイク、ダグラス・ロウチ、ジョセフ・ロートブラット、ユルゲン・シェフランなどが執筆している。情報をアップデートする工夫を加える。

b.「核兵器撤廃(仮)」
 昨年の総会で提案のあった核兵器問題についての標準テキストとなるべき本について、助言者であり会員である杉江栄一さんが書き下ろして下さった。京都の「かもがわ出版」が「ピースデポの本」として出版することを承諾した。

(5)イアブック「核軍縮と非核自治体・2002」発行と執筆者の制度化(カテゴリーB)

 今年度も基本的には従来のスタイルでイアブック「核軍縮と非核自治体・2002」を発行する。その際、これからも続くであろうこの事業の内容の充実と編集業務の効率化をめざして、分野別に執筆者を想定して、年間を通じて問題意識をもっていただくような制度の確立を追求する。

(6)原子力空母母港問題調査プロジェクトのワーキングペーパー発行(カテゴリーA、B、C)

 原子力空母母港問題調査プロジェクトは「NEPAの会」と共同で継続中であり、プロジェクトは継続される。それを前提として、今年度は「空母母港史」、「有害廃棄物汚染」について中間的まとめのワーキングペーパーの発行を目指す。

(7)事務所会議室活用計画の模索と試行(カテゴリーC、E)

 事務所機能をグリューネに集約したあとの現在の事務所空間は、図書・資料室と30人位収容できる小会議室になる。スタッフの負担を余り増やさない工夫をしながら、部屋の活用計画を模索し、試行する。(a)小規模の「平和問題古書リサイクル・コーナー」を作り、寄付された古書をセルフサービスで販売する、(b)小回りの利くセミナーや講座を開催する、などが考えられる。

 

B.継続プログラム

(1)「核兵器・核実験モニター」の月2回(1日、15日)発行(カテゴリーB)

 引き続き、ピースデポの基軸事業である。これまでの編集方針を継続する。つまり、核兵器・核軍縮、アジア太平洋地域安全保障(在日米軍、新ガイドライン関連を含む)を中心テーマとし、資料性を重視した編集とする。

(2)東アジアにおける協調的安全保障に資する調査・啓発活動(カテゴリー@)

 次のテーマについて、調査・啓発を継続し、活動の成果は、ベースラインとして『核兵器・核実験モニター』やイアブック「核軍縮と非核自治体」に反映される。また、他の執筆・講演活動に反映される。

a.新ガイドライン・周辺事態法のフォローアップ、有事法制化の動き

b.東北アジア非核地帯に関する国際情勢や市民の動き

c.TMDを含むミサイル防衛計画

(3)日本の情報公開法を活用した防衛・外交問題の調査(カテゴリー@)

(4)調査プロジェクト「米軍」(カテゴリー@)

 米国の情報公開制度を活用した、アジア・太平洋における米軍に関する調査。

(5)執筆、講演、出演、取材への協力(カテゴリー@、A)

 ピースデポの活動を基礎にした執筆、講演、出演、取材への協力を行うもので、機会あるごとに行われてきている。

(6)海外活動への派遣(カテゴリー@、C)

 継続的プロジェクトとして、「将来を担う平和活動家/研究者」を海外活動のために派遣する。そのための募金活動にとり組む。2002年には、NPT再検討会議準備委員会(4月、ニューヨーク)への派遣、IPRA(国際平和研究協会)総会(7月、ソウル)、海外ではないがそれに準じる場所として沖縄への調査活動のための派遣、などが考えられる。NPT再検討会議準備委員会へのスタッフ派遣を含めて、今年は2名の派遣枠を設けることを提案する。さらに情報を収集して、具体策を決めることを理事会に委ねる。

(7)公開講演会の開催(カテゴリー@、A)

 昨年度は、総会時に講演会を1回開催したに留まったが、今年度は総会記念事業として2月に開催するものの他、あと1回の開催を目指す。テーマは、時局の平和に関するテーマで、幅広い市民が関心をもつものを選ぶ。テーマについての啓発を目的とすることはもちろんであるが、意識的な市民層とピースデポとの出会いの機会を増やし、会員増への一つの窓口を維持することが、もう一つの大切な目的である。

(8)ウェブサイトの充実(カテゴリーC)

 昨年度に基本的なリフォームを終えたが、アップデートと資料の充実をはかる。とくに、日本政府の国連決議、新アジェンダの決議や声明、在日米軍の情報公開入手資料など、ピースデポならではの特色を作る。

 

C.関心を継続し、発展の機会を模索するプログラム

(1)「戦争防止地球行動」(GAIN)のフォローアップ(カテゴリーC)

(2)各地でのセミナー開催(核軍縮、安全保障)(カテゴリーA)

(3)子どものための「平和読本」(カテゴリーD)

(4)展示用ポスター、平和運動グッズの収集、整理(カテゴリーC、D)

(5)政党の平和政策データベース(カテゴリーC)

(6)日本への核兵器持ち込み国内議論のデータベース(カテゴリー@)

 

D.その他、必要な事業

(1)総会で提案、採択される事業

 総会において会員から提案され、議論され、本会の2002年度事業として採択された事業にとり組む。昨年に引きつづいて、総会が創造的な会議となるために作られた枠である。

(2)必要に応じた緊急プロジェクト

 昨年度の「少女・14歳の原爆体験記」の出版や、9.11事件とそれ以後の事態へのとり組みの例のように、年度途中で必要性の生じた緊急のとり組みを、理事会の承認を得て行う。人的、財政的な裏付けは、その都度工夫する。

 

§3 組織体制の整備

 先に述べた「中期ビジョン委員会の設置」以外の提案を以下に記す。

(1)理事の拡充

 懸案であった女性理事の拡充を実現したい。2人増やし理事を12人体制(定款で許された最大数)とする。男性9,女性3の分布となる。

(2)ワンフロアの事務所

 12人理事体制を考えると、現在の会議室では理事会を開催するのも困難である。また、「2000年キャンペーン」のような時限的キャンペーンに協力するスペースも現状では出てこない。事務所問題を緊急課題として検討した結果、日吉グリューネの隣室を借りて通し部屋に改造するのが、もっとも経済的であるとの結論に達した。現在、ピースデポの事務所は22.7平米の事務所と16.2平米の会議室(プラス押入など)である(家賃合計7万円)が、拡充によって32.4平米の事務所と22.7平米の会議室・図書室を確保できる(同14万円、敷金などなし)。

 財政的には月額7万円の増加となるが、やむを得ぬ投資と考える。それにそって財政計画を立てることとしたい。

(3)会員、地域ポスト、定期刊行物固定読者の拡大

 これまで「組織基盤の強化」に向けた多様なとり組みの一つとして、@会員拡大、A地域ポストの拡大、B『モニター』、イアブック「核軍縮と非核自治体」など定期刊行物の固定読者の拡大、に取り組んできた。必ずしも目覚ましい成果を収めることができていないが、今後とも必要な努力であることに変わりはない。工夫を重ねながら、努力を継続することを提案する。固定読者を獲得する方法として、自治体、図書館、公民館、労組などの常備図書にするために、各地の会員の方々の協力を要請したい。

(4)ニューズレターの発行

 本会の活動、運営状況を伝えるための会報として、年度内に日本語版を2回、英語版を2回発行する。

(5)「地域だより」の発行

 地域ポスト会議で昨年度の反省を踏まえた今後の発行方針を討論していただき、その決定によって今後の方針を定める。

(6)助成金、補助金の開拓

 活動助成、出版助成など分野別の助成金、補助金について調査、適時の応募をくり返す。とくに、海外の財団への申請に力を入れる。


新事業についてのさまざまなアイディア

■趣旨

2001年度末で、約630万円の繰越金が残った。この繰越金と、スタッフ3人体制になったチャンスを活かして、1つないし複数の新事業を構想したい。現在までに蓄積した繰越金を活用して、数年後にピースデポ全体の財政に貢献するような現実的なシナリオを立てたい。これまで理事会では、新事業の案として、「定期英文リリース:軍事基地と人権・環境」をはじめ、以下のようないくつかの事業の可能性について議論してきた。以下にその内容を紹介し、総会での会員からの意見や提案を歓迎する。それを参考にして、2002年度内に中期ビジョン委員会で事業計画として具体化させる。

 

(1) 定期英文リリース:軍事基地と人権・環境

   1.(内容)日本のメディア(地方紙を含む)に報道された在日米軍および自衛隊基地に関する記事を、「人権・環境」といったグローバルな課題の観点からまとめ上げ、英文に翻訳してメーリングリストにリリースする。記事の内容は、米兵の犯罪、基地の汚染、普天間問題等々。NORTHEAST ASIA PEACE AND SECURITY NETWORK DAILY REPORT

   2。(意義)既存のマスメディアが報じた情報を、マスメディアのレベルの正確さと客観性を持って、系統的かつ継続的にリリースすることは、日本の状況を「一般の人々が知りうる範囲で」伝える作業となる。一方で、ピースデポならではの視点と見識に基づく分析をベースとした編集をすることも重要である。

   3.(テーマ)その他重要なテーマとして、憲法問題についてのアジアに向けた情報発信がある。しかし、テーマ設定については、財源や当方の力量を考慮する必要がある。

   4.(人的体制)
  @ プロジェクトリーダー(編集長、和文原稿作成、翻訳チェックなど):田巻
  A 翻訳担当:中村
 B 必要であれば専門的な翻訳校正者をパートタイマーとして1名雇う。

     5.(財政)
¨         収入:助成金収入を基本とする。英文版は海外の読者を想定しており、対価の徴収が実質的に不可能だからである。しかし、副産物の和文版も、有償販売の対象となる価値を持つ形にまとめ、販売収入も得る。

      ¨         支出:編集と翻訳の基礎作業は既存資源でまかなえるので、新規支出は印刷・通信費とパートタイマー賃金で年間100万円程度を見込む。助成金申請の際は、新規支出だけでなく、作業にあたる現スタッフへの人件費も含めた助成を追求する。

(2) 年鑑冊子「核軍縮と非核自治体」の改訂による出版拡大

 「非核自治体」冊子は、1998年の発刊以来すでに4冊を数えた。一年間の動向をまとめたレファレンス・ブックとして活用されている。毎年約1,000部の販売実績である。出版社の編集者と相談して、必要な改訂(図表、カラー、体裁など)をはかり、一般の書籍流通ルートに乗る出版物とする。例えば、3,000部販売することが可能かどうか検討する。

3) 市民セミナー開催による会員拡大

 会員拡大の基本は、新しい市民層と顔の見える出会いを作り出すことである。広く平和問題について関心ある市民に開かれたセミナーを定期的に開催する。出会った人たちとの関係のフォローアップの体制などが十分に検討される必要がある。

(4) 「速報会員」の開拓

 ホームページ上に「速報のページ」を設け、『核兵器・核実験モニター』の下版前に、個々の原稿が書き上がった段階でアップする。また、報道向けのリリース文なども適宜アップする。新記事や新リリースが「速報のページ」にアップされたら、その時点でアップされたという連絡をメーリングリストなどで広報する。あらかじめ登録していた「速報会員」が、「速報のページ」にパスワードでアクセスできる仕組みを作る(技術的には、本年度事業『核兵器・核実験モニター』電子速報版と同じ)。「速報会員」には、通常の会費よりも高い会費を設定する。一刻も早く情報を入手したい、主にジャーナリストや議員を念頭に置く。

(5) 市民向け教材の作成と販売

 核軍縮、在日米軍など、ピースデポが蓄積してきた分野で、関心ある高校生が理解できるレベルのブックレットや視聴覚教材を作成し、販売する。

  


2002年度収支予算


2001年度事業報告

§1 概観

■組織面:3人スタッフ体制の実現

 2001年度総会において、ピースデポは、今後数年のうちに実現したい「組織面における3つの中期目標」を掲げた。新しい専務理事(等)の確保、フルタイム・スタッフ3人体制、ワンフロアの事務所の3つである。このうち、8月にフルタイム3人体制が実現したことが、2001年度の最大の前進であった。事務所の安定的維持に不可欠であり、事業拡大に欠かすことのできない第一歩が実現した。

 「組織基盤の強化」としては、出版事業の固定読者拡大を掲げたが、成功しなかった。

 年度半ばには事務局長が3カ月の病気休暇をとるという難局もあったが、臨時スタッフの雇用、残るスタッフとボランティアのカバーによって乗り越えた。一年を通して、ピースデポの運営は、ボランティアやパートタイマーの献身的な活動と、会員や支援者からの貴重な寄付金によって支えられた。

■プログラム面:米国ミサイル防衛、9.11

 事業プログラム面においては、年度当初、本会は次のような中心テーマを確認した。それは米国の新政権の国防政策(とりわけミサイル防衛政策)と東アジア政策(日、中(台湾を含む)、朝鮮半島)、日本における憲法改悪の動き、沖縄基地の動向などである。これらを注視した中で2001年度のピースデポの諸活動は行われたが、中でも、2001年12月13日の米国の対弾道ミサイルシステム制限条約(ABM条約)脱退通告へと至る米国のミサイル防衛の動向に関する調査と情報発信に大きな力を注いだ。それと並行して、2000年核不拡散条約(NPT)再検討会議で合意された13項目の成果をフォローする活動にも力を注いだ。

 2001年9月11日に発生した米国同時多発テロ事件とそれに続く米英の対アフガニスタン軍事行動は、予想を超えたできごとであった。本会は、それまでの蓄積の上に新たな情報収集を加えつつ、国連の動向を把握すること、推移を全体として把握することなどを行い、『核兵器・核実験モニター』を活用して発信した。

 これらの活動の成果は、事態を憂慮する市民やジャーナリスト等に活用され、テロを防止し軍事力によらない安全保障体制を構築するための議論に貢献した。

 

§2 組織面における3つの中期目標

 2001年度に掲げた「組織面における3つの中期目標」の進捗状況は、以下の通りである。

 @専務理事(または準専務理事、または適切な呼称の理事)

 専務理事等サーチ委員会を設置し、田巻、横山、川崎の3人の理事が委員に就任した。しかし、委員会は結論を出せなかった。2002年度に課題を引き継ぐことになる。

 Aフルタイム・スタッフ3人体制

 新スタッフとして中村桂子さんを採用した。採用は、公募方式で行われた。中村は、2001年8月21日から勤務を開始した。これによって、フルタイム・スタッフ3人体制(川崎哲、秋山祐子、中村桂子)が実現した。中村は、研究職としては日米安保や在日米軍基地などを含む東アジアの地域安全保障をテーマとすることを目標にしながら、2001年度は主に『核兵器・核実験モニター』上で「横須賀空母母港史」連載の執筆(梅林と共著)を行うとともに、「沖縄日誌」を担当した。事務職としては、会計を担当している。

 採用までの経過は、2001年5月より「研究・事務職スタッフ」の公募を開始し、7月に選考を行った。20人から文書で問い合わせがあり、16人から正式の応募があった。書類選考の上、5人を選び、3人の面接委員(理事)が面接した。結果として、中村さんの採用を決定した。予想外に多くの、しかも個性あふれる方々から応募を得たことは、今後の本会の発展の可能性に明るい展望を示した。

 スタッフ増員による人件費増加は、当初予算に組まれていなかったが、人員増の必要性が逼迫したので理事会の合議を経て新規採用を決定した。

 Bワンフロアの事務所

 約40平米のワンフロアの事務所があれば事業の効率化に資するとの考えから、調査を行った。その結果、現状の事務所の隣室を活用することで、格安で広い事務スペースを確保できるという結論に至った。2002年度の課題とする。

 

§3 事業プログラム

 以下、第2回総会で採択された2001年度事業計画の項目に沿って、報告する。

(1)調査、研究、教育活動

@新・日本国連決議に関する調査・啓発活動

 2000年核不拡散条約(NPT)再検討会議の最終文書に盛り込まれた合意事項を、日本政府がどのように履行していくかを中心に据えて、調査・啓発を継続している。

 2001年7月7日には公開セミナー「核兵器廃絶:2005年に向けて−−NPT13項目措置を検証する」をカンダパンセにて開催した。黒澤満(大阪大学)、田中義具(元軍縮大使)の各氏らをパネリストに招いた。セミナーでは、NPT合意に関する日本の成績表を作成することを発表した。採点基準文書を作成し、9月21日までに4版を重ねた。12月20日までに、「核軍縮:日本の成績表−−NPT(13+2)項目に関する評価」評価委員会を設立した。評価委員は、次の各氏である(50音順)。

 梅林宏道(ピースデポ)、黒澤満(大阪大学)、竹村泰子(元参議院議員)、田中巳(日本被団協)、土山秀夫(元長崎大学学長)、都留康子(東京学芸大学)、平岡敬(元広島市長)、仁木三智子(日本YWCA)、前田哲男(東京国際大学)、森瀧春子(ヒロシマの会)。

 この調査に関連して、財団法人トヨタ財団から、「2000年度市民活動助成」として、「国際的核軍縮過程への日本市民からの発信的関与−−核不拡散条約(NPT)再検討会議後の新しい国際情勢に対応して」のテーマで1年間(2001年4月〜2002年3月)100万円の助成を受けた。前年度の同規模助成への継続助成である。この助成金が、本調査活動に寄与している。

 

A東アジアにおける協調的安全保障に資する調査・啓発活動

(a)新ガイドライン・周辺事態法のフォローアップ

(b)東北アジア非核地帯に関する調査・啓発活動

(c)TMDを含むミサイル防衛計画に関する調査・啓発活動

 いずれも継続中である。成果は、『核兵器・核実験モニター』に適宜反映してきた。TMD調査のプロジェクト・リーダーを探すには至らなかった。

 

B日本の情報公開法を活用した防衛・外交問題の調査

 海上自衛隊の護衛艦の航海日誌、外務省の対米CTBT外交、NPT再検討会議の評価、など有益な情報の蓄積が始まっている。また、公開拒否に関して、不服申し立てを行っている。多くの調査を継続中である。

 

Cその他の調査活動の継続

(a)調査プロジェクト「米軍」

(b)原子力空母母港問題調査プロジェクト

 常時継続し、データを蓄積している。

 

D核兵器持ち込み問題に関する国内資料の整理

 未着手にとどまった。

 

E執筆、講演、出演、取材への協力

 常時行われている。収入面では、ほぼ予算どおり進行した。

 2001年4月5日〜9月26日までの実績として、新聞記者来所取材4社13件。うち核問題5件、米軍・安保・沖縄4件、9.11事件2件、情報公開法1件。通年統計はないが、これを下回らないペースで継続している。取材協力がまとまった形になった例は多数あるが、主だったものには、2001年版「イミダス」への核兵器データの掲載、2001年12月2日『東京新聞』サンデー版、カラー大図解「広がる自衛隊の海外活動」などがある。

F海外活動への派遣

 会員からのカンパを得て、5月4−6日に英国リーズで開催された「宇宙の軍備と核に反対するグローバル・ネットワーク」に会員の黒崎輝さんを派遣した。その後黒崎さんは、ミサイル防衛、テロと国際法などの分野で積極的に調査・啓発活動の一端を担っている。

 この派遣にかかる収支は、寄付金収入358,390円、渡航費・宿泊費・会議登録費などの支出226,235円で、差額132,155円が残った。累計で、370,780円が今後の海外派遣に活用できる。

G「戦争防止地球行動」(GAIN)のフォローアップ

 GAINの責任者の一人メンドロビッツ博士が来日し、GAINの日本の窓口設置について強い要望があった。梅林も含めて、日本の関係者が話し合ったが、それぞれが多忙で結論が出なかった。しばらくは、インターネットなどを通じて情報をアップデートするにとどまりそうである。

 

(2)学習会、研究会、シンポジウム、講演会

@東北アジア非核地帯会議の開催

 1月30−31日、ソウルでの韓国カトリック大学主催の「東北アジアにおける平和と非核地帯のための会議」開催に、原水禁と一緒に協力した。成果として、「東北アジア非核地帯推進国際ネットワーク・準備委員会」が発足した。フォローアップ会議が10月に予定されたが、米国の情勢などから延期となった。

A公開講演会の開催

 2月17日に大石芳野講演会「21世紀と広島・長崎の記憶」をワークピア横浜で開催した。9月に2回目を開催する計画を立てたが、実現しなかった。

B各地セミナー

 7月7日に東京でNPTセミナーを開催した(前述)。10月21日に京都ポスト有地淑羽さんが「ピースデポ関西読書会」を主催した。

(3)定期刊行物、冊子、単行本

@『核兵器・核実験モニター』の月2回(1日、15日)発行

 本会の機軸事業として、コンスタントに発行されている。

 定期発送部数は下記のように増加した。

  2001年1月1・15日号 780 →12月15日号 852 (72増加)

 12月15日号の印刷部数は900。

A「核軍縮と非核自治体・2001」の発行
 

 7月30日に発行。1,000冊製本のうち、年度内に628冊販売した。

 2000年版は、同じく1,000冊製作し、2000年度内に900冊、2001年9月までに1,000冊を完売している。2000年度は地方セミナーを重ねて販売したが、2001年度は出張回数が少なかったことが一因とみられる。

 過去のデータから、比較的熱心とみられる非核自治体に手紙や電話で購入を促したが、約30件とり組んで2冊程度の成果であった。

B『核兵器・核実験モニター』合本Uの製作

 第51号(97.8.15)〜105号(99.12.15)の合本を1月に発行した。150冊製本し、72冊販売した。現状では、収支93,972円の赤字であり、在庫の販売が課題となる。

C「検証『核抑止論』」の発行

 出版元の高文研と1,000冊責任販売の契約であるが、2001年12月末までに計900冊購入した。うち、53冊の在庫がある。結果、2002年度に153冊以上販売する必要が残った。しかし、とりあえず財政的には黒字が確実である。

 

(4)情報収集、情報整理、情報提供

@核兵器・核軍縮に関する継続的調査

 十分にとり組まれてきた。

Aホームページの本格的整備

 10月にリニューアルした。改善すべき点は多いものの、第一歩は踏み出した。定期更新の方針の概要も決まったが、実行できていない。

 

B情報サービス、関連書籍などの販売

 とくに問題なく行われた。

 

C政党の平和政策

 情報の収集は、必要に応じて行われてきたが、包括的ではない。特徴的な核政策の情報については、「核軍縮と非核自治体・2001」に収めた。

 

(5)教材の作成

@子どものための「平和読本」の準備向け読本

A展示用ポスター、平和運動グッズの整理

 それぞれ未着手である。

 

(6)その他必要な事業

@総会で提案・採択される事業

 2001年2月17日の第2回総会で以下の提案が採択された。

 (a)「ピースデポ地域だより」を年4回を目標に地域ポストが中心になって作成する。

 (b)以下の3つについて実施可能な体制を検討すること。

   1.核軍縮読本(仮称)の作成

   2.政党への核政策アンケート

   3.企業会員の開発

 これらの実施状況は以下の通りであった。

 

 (a)地域だより

   2001年度内に3回発行した。「地域で会員拡大などのとり組みをする際に、分  かりやすいものがあった方がよい」との当初目的との関係で、メディアの効用につい  て、検証が必要である。

 (b)−1.読本「核兵器撤廃(仮)」

会員の杉江栄一さんが原稿を書き下ろしてくださり、出版を2002年事業計画案に盛り込める段階にまで進んだ。

    −2.政党への核政策アンケート

具体的な検討はできなかったが、「政党の平和政策」調査の一環で、各政党の窓口は把握している。

    −3.企業会員の開発

        具体的な検討はできなかった。

A必要に応じた緊急プロジェクト

(a)「少女14歳の原爆体験記」の発行

 会員の橋爪文さんの本を、7月20日に「ピースデポの本」として緊急に高文研から出版することになった。本会としては責任販売契約はなく、収益も見込まない事業であるが、有意義な出版であった。多くのメディアに紹介された。9月8日に鎌倉で出版記念パーティが開催された。

(b)9.11事件とそれ以後の事態に関連する調査・情報提供

 9.11事件とそれ以後の事態を受けて、核軍縮問題や在日米軍問題での調査の蓄積と海外NGOとの連絡関係に基づき、新たな情報収集も加えながら、調査活動を行った。独自メディアは出さず、『核兵器・核実験モニター』誌上で情報提供をした。「米国同時多発テロ年表」(米国/日本/在日米軍/世界、01.9.11-01.12.31)や、テロと国際法・国連に関する問題点紹介など。事態を憂慮する市民やジャーナリストに活用された。

 

§4 組織体制の整備

(1)会員、地域ポストの拡大

 会員数は、次のような推移を示している。

 

2000年1月19日現在

 会員  419名
 購読者 224名

 会員61名増、購読者5名増

2000年12月21日現在

 会員  480名(正個147、正団7、賛助146、割引177、賛特2、不明1。正会員率32%
 購読者 229名(うち誌代切れ93名)−−00.12.05現在

 会員61名増、購読者14名増

2001年12月31日現在

 会員  541名(正個184、正団7、賛助197、割引151、賛特2。正会員率35%)
 購読者 243名(うち誌代切れ93名)−−00.12.20現在

 前年とほぼ同数、約60名の伸びであった。予算立案時は、35名の伸びとして計算していたので、それは上回った。

 入会のルートであるが、統計的数値はないものの、ダイレクトメールとホームページ・オンライン入会は、それぞれ入会者数の2割程度かそれ以下とみられる。入会者数の半数以上は、その他の出会いによるものであって、直接的には来所者が入会するケースが多い。すでに活動圏にいる人ではない意識的市民層と顔の見える出会いを作ることが重要であることが、あらためて確認できる結果である。

 

(2)出版事業の固定読者の拡大

 書籍販売収入は、予算の約6割と伸び悩んだ。上述のとおり、「核軍縮と非核自治体・2001」については、過去のデータから、比較的熱心とみられる非核自治体に手紙や電話で購入を促したが、約40件とり組んで3冊程度の成果であった。個別の手紙や電話による依頼には限界があると総括できる。

 いっぽう、各地域の図書館や公民館に備え付けてほしいとの要望を、連絡関係のある3つほどの自治体に出したが、自治体から各施設に案内通知が回ることがあっても、その通知を受けた各施設が実際に購入するかどうかは現場の判断で、良い結果につながらなかった。地元で各施設に要請を出す市民がいないと、これ以上は動かないということも、もう一つの総括点と言える。

 労組の常備図書にするための働きかけはできなかった。

 全体として、重点プロジェクトであるにもかかわらず、実施に関する中間点検がなかったことが、システム上の反省点となる。

 

(3)専務理事等サーチ委員会

 先述のとおり設置したが、結果は出なかった。

 

(4)ニューズレターの発行

 日本語版『会報』:4月1日に第8号、10月15日に第9号、計2回発行した。

 英語版Newsletter:1号も発行できなかった。

 

(5)助成金、補助金

 横浜市事務所借上費助成は、2回目も得られた。01.4〜02.3まで20万円。

 財団法人トヨタ財団より2年続けて100万円の助成金を得た。

 そのほか、海外1財団申請中、国内3財団不採択であった。       (以上)



2001年度収支決算

貸借対照表


 



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