核兵器・核実験モニター バックナンバー

【日誌】核・ミサイル/沖縄(16年2月21日~3月5日)

公開日:2017.07.24

DPRK=朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)//ICBM=大陸間弾道弾IS=「イスラム国」/OEWG=公開作業部会/THAAD=高高度防衛ミサイル/PFOS=パーフルオロクタンスルホン酸


●2月21日 シリアのダマスカスなど2都市のアサド政権支配地域で連続爆発。民間人含む424人以上が死傷。ISが犯行声明。
●2月21日 DPRKが4度目の核実験前に米国に平和協定交渉を提案していたと米国務省カービー報道官が認める。
●2月22日付 自公両党、野党が国会に提出した安保法の改正案および廃止法案をいずれも審議拒否の方針。
●2月22日 長崎原爆投下時に国指定地域外にいた被爆体験者161人(内9人死亡)が県と市に被爆者手帳の交付申請却下処分取消を求めた訴訟で長崎地裁が10人の請求を認容。
●2月22日 国連核軍縮OEWG第1会期がジュネーブで開幕。26日まで。佐野軍縮大使、「核兵器禁止条約の交渉開始は時期尚早」と発言。(本号参照)
●2月22日 米ロ両政府、シリア内戦当事者のアサド政権と反体制派に27日からの停戦実施を呼びかける共同声明を発表。
●2月22日 中国が南沙諸島で高性能レーダーとみられる施設を建設と判明。米戦略国際問題研究所が衛星写真を公開。
●2月23日 DPRK軍最高司令部、核実験と衛星打上後の米韓の軍事的対抗措置を受け、先制攻撃をにおわせる「重大声明」を発表。
●2月23日 ケリー米国務長官と王毅・中国外相が米国務省で会談。国連安保理の対DPRK制裁で進展。南シナ海問題で対立鮮明。
●2月24日 原子力規制委、高浜原発1・2号機の安全対策が新規制基準を満たすとする審査書案を了承。40年超運転の原発で初。
●2月24日 3月末のワシントンDCでの核 セキュリティサミットに習中国国家主席が出席へ。米オバマ大統領が明らかに。
●2月25日 カリフォルニア州バンデンバーグ空軍基地での米韓拡大抑止机上演習で、米軍が核弾頭搭載可能なICBM「ミニットマン3」の発射実験を韓国軍に初公開。
●2月25日 米国が国連安保理の非公式会合で、対DPRK制裁強化のための新たな決議案を配布。
●2月25日 王中国外相がワシントンで講演、対DPRK追加制裁決議案の効果を強調。DPRK一般市民の生活が影響受ける内容であってはならないとも。
●2月26日付 日本政府、核セキュリティサミットに合わせた各国首脳会談で中国の南シナ海での動きに懸念表明の方針を固める。
●2月26日 関西電力、高浜原発4号機を再稼働。
●2月26日 国連安保理、米ロ主導のシリア一時停戦実施を支持し当事者に停戦条件順守求める決議を全会一致で採択。
●2月29日 福島第一原発の事故で、東京電力の勝俣元会長ら元幹部3人、業務上過失致死傷罪で東京地裁に強制起訴。
●2月29日 高浜原発4号機が再稼働4日目で緊急停止。変圧器周辺の異常で原子炉が自動停止と関電が発表。
●2月29日 日比が防衛装備品・技術移転協定を締結。海自の中古練習機の比への貸与を検討。中国の南シナ海進出で連携の狙い。
●3月2日 DPRKの4度目核実験と「衛星発射」を受け、国連安保理、制裁強化決議を全会一致で採択。
●3月3日付 海自が4月、南シナ海に臨む比スービック湾への15年ぶり潜水艦寄港を計画。南シナ海進出の中国けん制の狙いも。
●3月4日 DPRK、安保理制裁決議を「無条件に拒絶」し「断固たる対応措置」で対抗していくとする政府報道官声明を発表。(本号参照)
●3月4日 米国のTHAADの在韓米軍への配備を協議する米韓共同実務団が発足。
●3月5日 中国全人代が開幕。16年国防予算案は前年実績比7.6%増の約16.7兆円。6年ぶり1桁台の伸び率。経済減速を反映か。

沖縄

●2月21日付 県ワシントン事務所、外国代理人登録法(FARA)登録完了。辺野古基地建設阻止へ向け米連邦議員への働きかけ強化へ。
●2月21日 国会議事堂前で辺野古基地建設断念求め包囲行動。参加者28,000人。
●2月22日 安慶田副知事、嘉手納基地ロビンソン大佐へPFOS流出源調査を要請。
●2月23日 普天間基地返還は「25年以降」。
辺野古移設遅れで。ハリス司令官、米上院軍事委公聴会で証言。
●2月24日付 県内米軍基地からの一般廃棄物受入れ量23,064t(14年度)。渉外知事会通じ、基地内処理の働きかけへ。
●2月24日 県、演習場周辺の住宅防音工事補助を政府に要請へ。県外では補助制度・騒音調査を継続的に実施。
●2月25日 岸田外相、「米軍への基地内立入り要請可能」との認識示す。嘉手納基地周辺からのPFOS検出問題で。
●2月25日 琉球大学一般入試中に米軍機騒音。計14回、最大騒音値83.2dbを測定。
●2月26日 うるま市・川崎川でもPFOS検出。上流に米軍基地なし。県環境部、県内複数地域で水質調査実施の方針。
●2月27日 環境省、7月にも本島北部の亜熱帯照葉樹林一帯17,300haを国立公園に指定へ。米軍北部訓練場(約7,800ha)は含まず。
●2月29日 辺野古係争委不服訴訟、結審。判決期日は3月17日。双方へ和解勧告も。
●2月29日 辺野古代執行訴訟、結審。判決期日は4月13日。和解案は引続き協議へ。
●3月1日 米軍航空機事故想定し日米合同訓練。在沖米四軍・県警・うるま市消防部・第11管区海保などが参加。07年から実施。
●3月1日 町田公室長、基地負担固定化をけん制。全国19市区議会が辺野古推進意見書を採択したことを受け。県議会一般質問。
●3月2日 稲嶺名護市長、16年度施政方針で「新基地建設阻止」を改めて表明。
●3月3日 全国港湾労組、翁長知事と会談。辺野古新基地建設反対決議を報告。
●3月4日 辺野古代執行訴訟。安倍首相、和解案の受入れを表明。工事一時中断へ。県、係争委不服訴訟・抗告訴訟は取下げへ。
●3月4日 名護市・久志区、政府の直接交付金受取りを決定。辺野古移設反対は堅持。
●3月4日 軍転協、普天間飛行場の「5年以内運用停止」(19年2月まで)の着実な実施・オスプレイ配備見直しを政府へ再要請。
●3月5日 政府、辺野古代執行訴訟和解を受け米国と対応協議へ。県との再協議に応じつつ、知事へ是正指示措置をとる可能性も。

くわしく

【連載「いま語る」64】  
「核兵器廃絶は論理的に正しい」    豊田健主さん(長崎大学経済学部生/RECNAサポーター)

公開日:2017.07.24

 昨年夏、長崎、広島、東京の学生たち約30人が、長崎市で合宿し、核兵器について学習と議論を重ね、「若者宣言~被爆70年、核兵器のない世界に向けて~」を発表しました。RECNA(長崎大学核兵器廃絶研究センター)の学生サポーターとして、また、イベントを主催した「サマーキャンプ ナガサキ実行委員会」委員長として、この過程に関わってきました。
 核兵器の問題にここまで関心を持つようになったのは、大学の授業がきっかけです。長崎大学には、1つのテーマを分野横断的に学ぶ「モジュール」という一連の授業があるのですが、「核兵器のない世界を目指して」というモジュールを選択しました。
 授業を受ける前は、核兵器は圧倒的な力があるがゆえに安全を担保すると考えて、どちらかというと核兵器を擁護する側でした。それで、核廃絶論を論破するつもりで授業に臨んだんです。それが授業を受けてみて、逆に「ああ、なるほど」と、核兵器をなくすのは論理的に正しい合理的なことだと、納得しまして。核兵器は自分の今まで考えていた論理からしてもなくすほうがいい、なくさなきゃいけないという考えに転換しました。
 核兵器は他の兵器と違って放射能の問題もありますし、「核の冬」という世界的な気候変動を起こすなど、世界規模で影響を及ぼす。さらに、テロリストが所有したり略奪したりすれば全世界が共通してリスクを負う。もう安全保障どころの騒ぎではない。それから何より、米ソ冷戦時代の核軍拡の話などを聞くと、核抑止というもの自体、そもそも破たんしている。こうしたことを知って、自分は核兵器のほんの一面しか見ていなかったとつくづく思い、安全保障においてリスクしかなく、何のメリットもないものはなくす必要性があると考えました。
 そんなある日、たまたま授業の後に誘われてRECNAまでついていったんです。そこでRECNAサポーターという集まりのことを知りました。従来の核廃絶運動は感情が前面に出すぎている気がして苦手だったのですが、ロジカルに核兵器を語るRECNAの先生たちのもとで活動している団体だったら、感情も強いだろうけどロジカルな視点も多く持っているだろうという期待をもって、試しに1回ミーティングに参加したんです。そうしたらすごくみんなと打ち解けて、同じ普通の大学生どうしっていう感じで、いろんなことを話せて。その雰囲気が気に入って、入り浸るようになりました。
 大学2年の時から「予備自衛官補」をしています。もともと高校時代に防衛大学校に行くか一般大学に行くかを悩んだ時期がありました。3.11の時に自衛隊の皆さんの活躍を見て憧れを抱き、そのような、誰かを助けられる、守れるような人間になりたいという気持ちが強かったんです。でも、果たしてこれから先の人生をすべて、厳しいといわれる自衛隊に捧げるのはどうだろうと、踏ん切りがつきませんでした。長崎大入学後に、学生をやりながらでも自衛隊で訓練が受けられる予備自衛官補の制度を知って、じゃあやろうと。言わば消防団に入るのと同じようなイメージで、より多様な現場で働けるだろうという思いで、予備自衛官補になりました。
 自衛隊で活動することと核兵器をなくそうとすことが矛盾するかのように言われた経験ですか? それは沢山あります、はい(笑)。RECNAサポーターとして町に出て人と話したりするんですが、その時に「自衛官のくせに平和活動? ふう~ん」みたいなことをよく、言われます。僕にとっては、自衛隊は別に侵略するための軍隊ではなく、自国の防衛を担ったり災害の時に人を助けたりする側面が強くて。他の軍隊と違うのはまず、外国で人を殺したことがない。むしろ災害派遣などで人を救助した数が圧倒的に多い。そもそも平和を守るために自衛隊にいるので、自衛隊にいることと平和を願うこと、全然、矛盾してねぇよって毎回思ったりはしますね。
 被爆体験を直接聞ける最後の世代として、今の若者が伝え続けないといけないという責任は感じます。2013年のオスロでの「核兵器の非人道性」会議で核兵器の影響について学者たちが述べましたが、その裏づけとなる証拠が長崎や広島には数多くあります。物的証拠としては被爆遺構。被爆者の方々の体験も、核兵器が非常に無残な結果をもたらすという被害の実態を教える点でとても重要です。10年、20年先を考えると、いかにして次の世代に継承していくかがすごく大事なポイントだと思います。
 私たちの世代にも関心を持っている若者はいます。若者は関心がないとして最初から議論に入れないのではなく、私たちもちゃんと活動していきますので、共に協力してやっていきましょうと、『モニター』読者の方々には言いたいです。
(談。まとめ:荒井摂子)

くわしく

【核軍縮「公開作業部会」(OEWG)、ジュネーブで始まる】   ――第1会期での議論から

公開日:2017.07.24

 昨年の第70会期国連総会決議「多国間核軍縮交渉を前進させる」(70/33)に基づいて設置された「公開作業部会(OEWG)」の第1会期が、2月22日から26日にかけてジュネーブで開催された1。「核兵器のない世界の達成と維持のために締結される必要のある具体的で効果的な法的措置、法的条項および規範について、実質的に議論すること」を主要な任務とする協議の場である。
 議長に指名されたタニ・トングファクディ大使(タイ)は開会にあたって、「もっとも意味深いのは、どの道を選ぶかではない。選んだ道が核兵器の全面的廃絶という国際的な合意に向かっていることだ」という潘基文(パン・ギムン)国連事務総長の言葉を引きながら「この機を逃さないようにしよう」と呼びかけた2

動機と優先順位が問題―オーストリア

 昨年の国連総会で、決議「核兵器の禁止と廃棄のための人道上の誓約」(70/48)の採択を主導し、「多国間軍縮交渉」決議でも重要な役割を果たしたオーストリアは、2つの作業文書を携えて作業部会に臨んだ。「核兵器と安全保障:人道的視座」(AC.286/WP.4)と「『法的ギャップ』―NPT、そして核軍縮交渉の前進に関するさまざまなアプローチ」(A/AC.286/WP.5)、である。後者においてオーストリアは、NPT第6条と核兵器廃絶という目標の間に「法的ギャップがあることは間違いない」とした上で、自らが立つ「人道イニシャティブ」の立場からは、核兵器禁止の緊急性が強調される一方、核兵器国やその同盟国は安全保障上の要請との整合性から「ステップ・バイ・ステップ」プローチに固執している、と現状を整理した。そして、「提案されている諸アプローチは考えられているよりも補完的な関係にある。むしろ、『法的なギャップ』に関する議論の実質的な相違は、背後にある動機であり、優先順位だ」と結んだ。 

NGOから「禁止条約」の主張

 2つのNGO(第36条、婦人国際平和自由連盟(WILPF))が連名で提出した作業文書―「核兵器禁止のために法的ギャップを埋める」(A/AC.286/NGO.2)及び「核兵器を禁止する条約」(A/AC.286/NGO.3)は、人道イニシャティブの立場から「法的ギャップ」の深刻さを訴えた上で、禁止条約が緊急に必要だとして条約に盛り込まれるべき原則を述べ、「ステップ・バイ・ステップ」アプローチを厳しく批判した。

究極的な廃絶と安全保障のバランスが必要―核兵器依存国

 「核兵器依存」19か国(日本、韓国、オーストラリア、NATO諸国など)を代表して登壇したカナダは、次のように述べた。「核軍縮の実現には全ての核兵器を廃絶するという究極的目標と、一方的な廃棄によって国家と国際の安全保障が不安定化されるというリスクの間でのバランスが必要だ」。日本の佐野利男・軍縮会議日本代表部特命全権大使は、「核兵器国のいない場で禁止条約を議論することは望ましくない」と述べた(2月24日、「パネルⅠ」)。
 日本は、17か国と共同で作業文書「核兵器のない世界への漸進的アプローチ:ビルディングブロック・パラダイムに立ち返る」(A/AC.286/WP.9)を提出したが、全体として新味に欠けるものであった。私たちが外相あてに提出した要望―ベンチマークと時間軸の明示、北東アジア非核兵器地帯への言及、日本自身が核兵器依存から脱却する誓約3は、反映されなかった。
 序盤の議論は、各国が従来の立場を再表明する中で、NGOが奮闘したとの印象が残された4 。次号で詳報したい。(田巻一彦)


1 概要、暫定議題等は本誌前号(490-1号、16年3月1日)トップ記事「第Ⅲ部」(7~8ページ)。
2 議題、日程、演説草稿、提出文書等は国連ジュネーブ事務局のウェブサイト(http://www.unog.ch/)から “DISARMAMENT”のリンク・タグをたどって入手できる。
3 本誌前号のトップ記事「第Ⅱ部」(4~7ページ)。
4 前記2団体のほか、以下のNGOと専門家が意見表明した。平和首長会議、核軍縮・不拡散議員連盟、アンフォールド・ゼロ、国際反核法律家協会(以上「意見交換」)、ジョン・ボリー(国連軍縮研究所)、タリク・ラウフ(ストックホルム国際平和研究所)、グロ・ニステュエン(国際法政策研究所)、レベッカ・ジョンソン(アクロニム研究所)、ヘレン・ダーラム(赤十字国際委員会)、ベイザ・ユナル(チャタムハウス)、パベル・ポドヴィック(国連軍縮研究所)(以上「パネリスト」)、ワイルドファイア(作業文書)。
また、被団協(日本原水爆被害者団体協議会)の藤森俊希事務局次長らも参加し、被爆者の立場から核廃絶を訴えた。

くわしく

<資料>国連安保理決議2270(抜粋訳)

公開日:2017.07.24

【資料】
国連安保理決議2270(2016)
2016年3月2日、第7638回会合にて採択

 安全保障理事会は、
(略)
 DPRKの進行中の核及び弾道ミサイル関連活動が、地域内ならびに地域を超えたさらなる緊張の増加を生み出していることに重大な懸念を表明し、国際の平和と安全に対する明確な脅威が引きつづき存在していると決し、
 国際連合憲章第Ⅶ章の下で行動し、同第41条の下で措置を執り、

1. 理事会の関連決議に違反し、かつそれらを甚だしく無視して行われた、DPRKによる2016年1月6日の核実験を最も強い言葉で非難し、さらに、2016年2月7日に同国が、弾道ミサイル技術を用い、決議1718(2006年)、1874(2009年)、2087(2013年)及び2094(2013年)に著しく違反して行った発射を非難する。
2. DPRKが、二度と弾道ミサイル技術を用いた発射、核実験、あるいは他のいかなる挑発をもおこなってはならないこと、そして、あらゆる弾道ミサイル計画関連活動を凍結し、この文脈においてミサイル発射のモラトリアムに関する既存の誓約を再確立しなければならないこととした理事会の決定を再確認し、DPRKに対して、ただちにこれらの義務を全面的に遵守することを要求する。
3. DPRKが、すべての核兵器と現存する核計画を、完全で検証可能、かつ不可逆的な方法で廃棄し、関連するすべての活動をただちに中止しなければならないとの理事会の決定を再確認する。
4. DPRKが既存の他のすべての大量破壊兵器及び弾道ミサイル計画を、完全で検証可能、かつ不可逆的な方法で廃棄しなければならないとの理事会の決定を再確認する。
5. 全加盟国が、決議1718(2006年)第8節(c)にしたがい、自国国民による、もしくは自国領土からDPRKへの、または、DPRK国民による、もしくはDPRK領域からの、核兵器、弾道ミサイル、もしくは他の大量破壊兵器に関連する物品、材料、装置、物資及び技術の供給、製造、維持管理もしくは使用に関連する技術訓練、助言、役務もしくは援助のいかなる移転をも防止しなければならないことを再確認する。さらに、この禁止事項は、DPRKが、たとえ衛星発射体もしくは宇宙発射体の特質を持つものであろうとも、弾道ミサイル技術を用いた発射に関して、他の加盟国とのいかなる形態における技術協力にも関与することを禁止するものであることを強調する。
6. 決議1718(2006年)第8節(a)は、小火器及び軽兵器並びにそれら関連物資を含むあらゆる兵器とその関連物資のほか、それら兵器及び関連物資の供給、製造、維持管理もしくは使用に関連する金融取引、技術訓練、助言、役務提供もしくは援助にも適用されることを決定する。
7. 決議1874(2009年)によって拡大された決議1718(2006年)第8節(a)、同(b)及び同(c)によって課せられている義務は、所有権もしくは管理の移転の有無にかかわらず、DPRKに向けた、もしくはDPRKからの修理、点検、改修、試験、分解模倣及び売買のための輸送に関して適用されることを確認する。また、決議1718(2006年)第8節(e)に明示された諸措置は、本節記載の活動を遂行することを目的に渡航する、いかなる個人にも適用されることを強調する。
8. 決議1718(2006年)第8節(a)及び同(b)によって課されている措置は、加盟国が、当該物品がDPRKの軍の作戦能力の開発、または、DPRK以外の他の加盟国の軍の作戦能力の支援もしくは向上に貢献する輸出に直接的に寄与しうると判断した場合には、食料品と医薬品を除くいかなる物品にも適用することができることを決定する。さらにまた、本条項は、下記の場合における物品の供給、販売もしくは移転には適用されないことを決定する:
(a) 加盟国が、当該活動が、DPRKの個人または組織に収益をもたらすために利用されない、人道目的もしくは生活目的に限ったものであり、決議1718(2006年)、1874(2009年)、2087(2013年)、2094(2013年)もしくは本決議によって禁止されたいかなる活動にも関連しないと決定した場合であって、当該国家が制裁委員会に決定前に通知し、物品の他の目的への転用を防止する措置について同委員会に情報提供した場合、または、
(b) 制裁委員会が、特定の供給、販売もしくは移転が決議1718(2006年)、1874(2009年)、2087(2013年)、2094(2013年)もしくは本決議の目的に反しないと事案ごとの判断において決定した場合。
9. (略)
10. 決議1718(2006年)第8節(d)に明示された諸措置は、本決議付属文書Ⅰ及びⅡに列挙された個人及び組織、並びに、それら個人もしくは組織に代わって、またはそれら個人もしくは組織の指示のもとに活動する個人もしくは組織、並びに、それら個人もしくは組織が不正な方法を含めて所有もしくは管理する組織にも適用されることを決定する。
11. 決議1718(2006年)第8節(e)に明示された諸措置は、本決議付属文書Ⅰに列挙された個人及びそれら個人に代わってまたはその指示のもとに活動する個人にも適用されることを決定する。
12(略)
13. DPRKの外交官、政府代表、または政府の資格において活動しているそれ以外のDPRK国民が、特定された個人もしくは組織、または制裁回避を援助し、もしくは決議1718(2006年)、1874(2009年)、2087(2013年)、2094(2013年)および本決議の諸条項に違反している個人もしくは組織に代わって、もしくはそれらの指示のもとに活動していると、加盟国の一つが判断した場合には、当該加盟国は適用可能な国内法及び国際法に従い、当該個人をDPRKへ送還することを目的として域外に追放しなければならない。ただし、本節のいかなる規定もDPRK政府代表が国際連合業務を遂行するために国際連合本部もしくは他の国際連合施設に立ち入ることを妨げるものではない。さらに、本節の他の諸規定は、次の場合には特定された個人に適用されないことを決定する: a)当該個人の存在が司法手続きの遂行に必要なとき、 b)当該個人の存在が医療、安全、その他の人道目的のみのために必要なとき、 c)制裁委員会が、当該個人の域外追放が決議1718(2006年)、1874(2009年)、2087(2013年)、2094(2013年)もしくは本決議の目的に反すると、事案ごとの判断において決定したとき。
14. 当該国の国民ではない個人が、特定された個人もしくは組織に代わって、もしくはそれらの指示の下で活動し、制裁回避を援助し、または、決議1718(2006年)、1874(2009年)、2087(2013年)、2094(2013年)および本決議の諸条項に違反していると、加盟国の一つが判断した場合には、当該加盟国は適用可能な国内法及び国際法に従い、当該個人を当該個人が国籍を有する国へ送還することを目的として域外に追放しなければならない。ただし、当該個人の存在が、司法手続きの遂行に必要なとき、あるいは医療、安全、もしくは他の人道的目的に限って必要なとき、または、制裁委員会が、当該個人の域外追放が決議1718(2006年)、1874(2009年)、2087(2013年)、2094(2013年)もしくは本決議の目的に反すると事案ごとの判断において決定したときはこの限りでなく、また、本節のいかなる規定もDPRK政府代表が国際連合業務を遂行するために国際連合本部もしくは他の国際連合施設に立ち入ることを妨げるものではない。
15、16(略)
17. 全ての加盟国は、自国領域内で、またはDPRKの拡散上機微な核活動もしくは核兵器運搬手段の開発に寄与しうる分野を専門とする自国民によって、DPRK国民への専門的教育もしくは訓練が行われることを防止しなければならないことを決定する。そうした教育や訓練には、高等物理学、高等コンピューターシミュレーション及び関連するコンピューター科学、宇宙地理航法(geospatial navigation)、核工学、航空宇宙工学、航空工学及び関連分野に関するものが含まれる。
18. 全ての加盟国は、自国の空港、港湾及び自由貿易地域を含む自国領域内に存在し、もしくは自国領域内を通過する貨物で、DPRKを出発し、DPRKに向かい、DPRKもしくは同国民によって、または、DPRKもしくは同国民に代わって、もしくはその管理下にある個人もしくは組織によって、周旋もしくは援助されている貨物、あるいは、DPRKに籍を置く航空機または船舶によって輸送されている貨物を、決議1718(2006年)、1874(2009年)、2087(2013年)、2094(2013年)もしくは本決議に違反して運搬されている貨物が存在しないことを確実にするために、検査しなければならないことを決定する。また、加盟国に対して、これら検査を、当該加盟国が人道目的であると判断した貨物の運搬への影響を最小化するような方法で実施するよう、要請する。
19. 加盟国が、自国国民及び自国領域内にいる者が、当該加盟国に籍を持つ船舶もしくは航空機をDPRKに賃貸もしくは同国からチャーターすること、またはそれらの運航役務をDPRKに提供することを、禁止しなければならないことを決定する。さらに、同禁止は、当該加盟国が制裁回避、あるいは決議1718(2006年)、1874(2009年)、2087(2013年)、2094(2013年)もしくは本決議の諸条項への違反を援助したと判断した個人もしくは組織、それら個人もしくは組織に代わって、あるいは、それらの指示に従って活動しているいかなる個人または組織、あるいはそれら個人もしくは組織によって所有または管理された組織にも適用される。加盟国には、DPRKによって所有、運行もしくは乗組員を供給されているいかなる航空機、船舶の登録をも抹消することが要請される。さらに加盟国には他の加盟国が本節にしたがって登録を抹消したいかなる航空機、船舶をも再登録しないことが要請される。さらに、本条項は、以下の情報提供をともなって制裁委員会に事案ごとに事前通知された賃貸、チャーターもしくは運行役務の提供には、適用されないことを決定する: a)当該活動が、DPRKの個人又は組織に収益をもたらすことなく、生活目的に限って行われることを証明する情報。 b)当該活動が上記各決議への違反に寄与することがないように執られた措置に関する情報。
20~23(略)
24. DPRKが、全ての化学・生物兵器及び兵器関連プログラムを放棄し、「細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発,生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約」の加盟国としての義務に厳密に従って行動しなければならないことを決定する。さらにDPRKに対し「化学兵器の開発、生産、貯蔵及び使用の禁止並びに廃棄に関する条約」に加盟し、同条約の諸条項をただちに遵守するよう求める。
25、26(略)
27. 決議1718(2006年)第8節(a)及び同8(b)によって課せられている措置は、加盟国が、DPRKの核もしくは弾道ミサイル計画、または他の大量破壊兵器計画、決議1718(2006年)、1874(2009年)、2087(2013年)、2094(2013年)もしくは本決議によって禁止されている活動に寄与しうると判断し、または決議1718(2006年)、1874(2009年)、2087(2013年)によって課されている措置の回避に寄与すると判断した、全ての物品に適用されることを決定する。
28. 決議1874(2009年)第14ないし16節、および決議2087(2013年)第8節を再確認するとともに、これら各節は、その供給、販売、移転が決議1718(2006年)、1874(2009年)、2087(2013年)、2094(2013年)または本決議によって禁止されていることが、本決議の第18節にしたがって行われる検査を通じて確認されたすべての物品に対しても、適用されるべきことを決定する。
29. DPRKが、石炭、鉄及び鉄鉱石を、直接的にも間接的にも、自国領土から、または自国民によって、または自国に籍を置く船舶もしくは航空機を用いて、供給、販売、移転してはならないことを決定する。全ての加盟国は、自国民または自国に籍を置く船舶及び航空機が、DPRKの領土を出発地とするか否かにかかわらず、これら物資をDPRKから調達することを禁止しなければならない。本条項は、以下の場合には適用されない:
(a) 調達国が、信頼に足る情報に基づき、原産地がDPRKではなく、羅津(ラジン)港からの輸出のみのために、DPRK国内を通過して輸送されたと確認した石炭。ただし、加盟国が、制裁委員会に事前に通知し、当該取引が、核及び弾道ミサイル計画、あるいは決議1718(2006年)、1874(2009年)、2087(2013年)、2094(2013年)もしくは本決議で禁止された他の活動のための収益をDPRKにもたらすことに関係しない場合に限る。
(b)生活目的に限定され、DPRKの核及び弾道ミサイル計画、または決議1718(2006年)、1874(2009年)、2087(2013年)、2094(2013年)もしくは本決議で禁止された他の活動のための収益をDPRKにもたらすことに関係しない取引。
30. DPRKが、金、チタン鉱石、バナジウム鉱石、もしくは希土類鉱物を、直接的にも間接的にも、自国領土から、または自国民によって、または自国に籍を置く船舶もしくは航空機を用いて、供給、販売、移転してはならないことを決定する。さらに全ての加盟国は、自国民または自国に籍を持つ船舶及び航空機が、DPRKの領土を出発地とするか否かにかかわらず、これら物資をDPRKから調達することを禁止しなければならない。
31. 全ての加盟国が、航空用ガソリン、ナフサ系ジェット燃料、ケロシン系ジェット燃料、ケロシン系ロケット燃料などの航空燃料を、原産地が自国であるか否かを問わず、自国国民によって、または自国領土から、または自国に籍を置く船舶もしくは航空機を用いて、DPRKの領域に販売し供給することを防止しなければならないと決定する。ただし、制裁委員会が、分配及び使用に関する効果的な検証のため定められた取決めに従って、そうした物資のDPRKへの移転に必須の人道的必要性があることを、事前に例外的事案として検証し承認した場合を除く。さらにまた、本条項は、DPRK外の民間の旅客機が、DPRKへの往路及び復路においてのみ消費する航空燃料の販売もしくは供給については適用されない。
32. 決議1718(2006年)第8節(d)によって課せられている資産凍結は、DPRK政府もしくは朝鮮労働党の組織、これらに代わって、もしくはこれらの指示によって活動する個人もしくは組織、またはこれら組織が所有もしくは管理する組織によって、直接的もしくは間接的に所有、管理され、DPRKの核もしくは弾道ミサイル計画、または決議1718(2006年)、1874(2009年)、2087(2013年)、2094(2013年)もしくは本決議で禁止された他の活動に関連していると当該加盟国が判断した、在外の資金その他の金融資産及び経済的資産の全てに適用されることを決定する。(後略)
33~49(略)
50. 6か国協議への支持を再確認し、その再開を求め、2005年9月19日に中国、DPRK、日本、韓国、ロシア連邦及び米国によって発出された共同声明に記された、6か国協議の目標が平和的方法による朝鮮半島の検証可能な非核化であること、米国とDPRKが相互の主権を尊重し、平和的に共存すると約束したこと、そして6か国が経済協力の推進を約束したこと、及び他の関連する誓約を含む、諸誓約への支持を繰り返し表明する。
51、52(略)

付属文書Ⅰ 渡航禁止/資産凍結(個人)(略)
付属文書Ⅱ 資産凍結(組織)(略)
付属文書Ⅲ オーシャン・マリタイム・マネジメント(OMM)の船舶(略)
付属文書Ⅳ 嗜好品(略)

(訳:ピースデポ)

くわしく

【国連安保理がDPRK非難・制裁決議】  
「ヒト、モノ、カネ」の国際的流れを絶つのが狙い  「武力制裁と挑発」の併用は危険な選択

公開日:2017.07.24

3月2日、国連安保理は北朝鮮(DPRK)が今年1月6日に行った核実験と、2月7日の弾道ミサイル技術を用いた発射に対する非難制裁決議(2270)を全会一致で採択した。国連加盟国には、これまでになく広範かつ強力な制裁履行が求められる。DPRKは決議を「米国の捏造」と非難、核・ミサイル計画の続行を宣言した。「制裁決議」の直後に米韓は2つの大規模な合同軍事演習を開始、DPRKはミサイル発射で反応している。関係国に求められているのは、不測の事態を招きかねない「武力挑発と制裁」の併用ではなく、朝鮮半島の非核化のために平和的手段を尽くす決意と行動である。


衛星打上げの情報整理

 16年2月7日の衛星打上げに関連する事実の要点は次のとおりである:
①打上げには、「クァンミョンソン(光明星)」というロケット(3段式)が使われた。
②地球観測衛星は「クァンミョンソン(光明星)4号」と名づけられている。
③ロケットの3段目と衛星と思われる2つの物体が、高度約500㎞の太陽同期地球周回軌道に達した。このことは米統合宇宙作戦センター(JSPOC)も確認している。
④DPRKが国際海事機関(IMO)に事前通告した2段目ロケットの着水海域は、12年12月12日の打上げ時の着水海域と重なる1。これは、1段目、2段目の推進力が同等であることを示している。
⑤衛星と地上との通信が維持されている証拠はない。何らかのトラブルが起こった可能性がある。
 前回(12年12月12日)使用されたロケットは「銀河(ウナ)」と呼ばれた。「銀河」と「光明星」の推進力に大きな差はないと思われる。「銀河」は機体が大きく、移動式発射台が使えないこと、腐食性液体燃料を使うので発射直前まで燃料の注入ができないため、偵察衛星などで発射が察知されやすいことなどから、DPRKは大陸間弾道弾(ICBM)としての実用化をめざして、核弾頭の小型化とミサイルの高性能化を指向してきたとされている2
 2012年の打上げ時とのロケットの外形の画像による比較と、予告された着水水域、JSPOCが公開した到達高度が示すところによれば、今回の発射がミサイル実験ではなく、衛星打上げであることは間違いない。ICBMであれば、ミサイルは短時間で高度1000㎞に達する速度と軌道で飛ぶ必要があるとされる。「衛星打上げ」であった12年の「銀河」の到達高度も、今回と同じ約500㎞だった3
 確実なことは、DPRKには一定の体系性をもった「核とミサイル」の開発計画があり、それが少しずつ前進しているということだ。

安保理決議2270

 決議の抜粋訳を3ページの資料1に示す。決議は前文で、DPRKの核・ミサイル関連活動が、「国際の平和と安全に対する明確な脅威」であると断じた上で、同決議が「国連憲章第41条」に基づくものであることを明らかにする。「第41条」は安保理が決定し加盟国に要請できる「兵力の使用を伴わない措置」を規定している。06年10月14日に採択された最初の核実験非難決議(1718)以来、安保理の対DPRK決議は「第41条」に基づいてきた。次の段階は「第42条の下での措置」すなわち軍事行動を含む措置になる。憲章第7章は41条以前に安全保障理事会がとりうる行動として、当事国への「勧告」(第39条)と「暫定的措置」(第40条)を挙げている。今回の決議は、1718以来6度の決議で制裁を強化してきた結果を受けて発出されたものであるが、その間私たちが見てきたのはむしろ、6か国会議の休止を含む外交の不在だ。
 決議主文は、まず「核実験を最も強い言葉で非難」し、「弾道ミサイル技術を用いた発射を非難」する(主文第1節)。「弾道ミサイル技術を用いた発射」という表現は、09年6月13日に採択された「第2回核実験非難決議(1874)」で初めて導入された。DPRKは「核実験は自衛措置」、「宇宙開発は主権国家の普遍的権利」と正当化してきた。「核」はともかくとして、「宇宙開発」に関する主張には一定の根拠(1967年「宇宙条約」)がある。決議1874は「核実験」と「ミサイル発射」の間のこのような法的違いを飛び越えて、大国によって、DPRKにのみ適用される「禁止条項」として導入された。それがDPRKの反発をひときわ強いものとしている。
 「決議」はさらに全加盟国に、「核、ミサイル、他の大量破壊兵器」に関連するいかなる物品、材料、装置、技術援助、助言などをも、DPRKに提供してはならないと義務付け (第5節)て、DPRKに「過去20年以上の間で最も強力な制裁」(ジョン・ケリー米国務長官)を課する。第6節から48節は、制裁対象を、決議1718を基準にして様々な領域に拡大し、加盟国が履行すべき義務を詳しく規定している。制裁対象には以下が含まれる:
◆軍用物品または軍事転用可能な物品の移動の禁止。ただし、DPRKの個人、組織に収益をもたらさない、人道もしくは生活目的の物品は例外。(第8節)
◆核関連活動に関わっている個人、組織の渡航禁止と資産凍結(16個人、12組織)。(第10、11節及び別表2)
◆本決議違反を援助した在外DPRK外交官、政治家などの国外追放。(第13節)
◆本決議違反を援助したすべての個人の国外追放。(第14節)
◆自国領から、あるいは自国領を通過してDPRKに出入するすべての貨物の検査。(第18節)
◆加盟国国民による航空機、船舶、関連役務のDPRKへの提供の禁止。(第19節)
◆制裁措置を回避しようとの意図による、物品の供給、移動の監視と禁止。(第27節)
◆DPRKによる石炭及び鉄鉱石の輸出禁止、及び加盟国によるDPRKからの調達の禁止。(第29節)
◆DPRKからの金、チタン鉱石など鉱物資源の輸出禁止。(第30節)
◆DPRKへの航空燃料、ロケット燃料の輸出禁止。ただし、DPRKに出入する民間旅客機への燃料補給は例外。(第31節)
◆資産凍結対象のDPRK政府及び朝鮮労働党の組織への拡大。(第32節)
 このように「決議」は、世界中からDPRKやその関係組織に流入し往来する「ヒト、モノ、カネ」を断つことを狙うものだ。

ロシア、中国の抵抗―石炭禁輸とミサイル防衛

 ロシアが強く抵抗したのが「石炭禁輸」条項(第29節)であった。ロシアはDPRKへの最大の石炭供給国(年間500万トン)であり、石炭の多くは、DPRKの東海岸北部にある羅津(ラジン)港から中国南部や韓国などに向かって輸出されている。ロシアは自国のカサンと羅津を結ぶ鉄道に投資、路線はロシアの企業が運用している。羅津はロシアにとっては、近傍にある貴重な不凍港として対アジア海運のハブの役割を担っている4。最終的に「原産地がDPRKではない石炭で羅津のみから輸出されるもの」を例外とすることで、ロシアはこの条項に同意した。
 一方、中国は後見国として、DPRKの経済的破綻を回避するために、制裁に「生活目的」などの例外を導入することに腐心した。同時に、中国が懸念を抱いたのは、安保理での協議と並行して米韓の間で進んでいるMDシステム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備計画である。中国は、この計画がむしろ中国の弾道ミサイルに対する検知・監視能力の向上につながることを懸念している。王毅(ワン・イ)中国外相は、インタビューで、中国の懸念を次のように語った。「THAAD配備は、朝鮮半島における防衛ニーズを遥かに超えている。カバーする範囲はアジア大陸の深奥部まで及ぶ。よって、中国の戦略的利益に影響を与えざるをえない」。そして外相は、THAAD配備が地域の平和と安全に新しい複雑な要素を持ち込むものだと米国を牽制している5

DPRK、「米国が決議を『捏造』」と非難

 3月4日、DPRK政府と外務省は、安保理決議2270に対する抗議声明6を別々に発した。政府が発表した抗議声明は、安保理決議は米国が国連安保理を僭称し捏造したものだと断じ、「正統な主権国家を根拠のない口実のもとで、孤立させ窒息させる国際的犯罪」であり、「無条件に拒絶する」と述べた。そして、米国や追随者による軍事行動に対しては「強力で無慈悲な物理的対抗手段」をとり、「自衛的抑止力の強化」と「衛星保有国への道」を断固として進む、と宣言した。一方、外務省声明は「敵対的政策の放棄を拒否した米国は、朝鮮半島の非核化の全面的な失敗に責任を負うことになろう」と警告した。
 このような中、2つの米韓合同演習―「キー・リゾルブ」(3月7日~18日)と「フォウル・イーグル」(3月7日~4月30日)が始まった。後者は、1万7千人の米軍と30万人の韓国軍が参加する史上最大規模の演習であり、シナリオにはDPRKへの侵攻も含まれているとされる。DPRKは東海(日本海)に向けたミサイル発射で反応している(3月3日、10日)。このような軍事的圧力を伴う制裁が、不測の事態を招くリスクを誰も否定できない。関係国、とりわけ米国は、DPRKがこの間送りつづけている「敵対的行動の停止」や「朝鮮戦争の終結」などの要求と提案(本誌489号)を受け止め、「平和的方法による朝鮮半島の検証可能な非核化(決議第50節)のための具体的行動に向かうべきである。(田巻一彦)


1 「ノースコリア・テック」ウェブサイト、16年2月3日。www.northkoreatech.org/2016/02/03/
2 ジョン・シリング、「衛星、弾頭そしてロケット:北朝鮮の宇宙計画は本当にミサイル開発なのか?」、「38ノース」ウェブサイト、16年2月5日。http://38north.org/2016/02/schilling092815/
3 デビッド・ライト、「北朝鮮のロケット発射迫る―わかっていることは何か?」、「憂慮する科学者連盟」ウェブサイト、16年2月5日。http://allthingsnuclear.org/dwright/
4 「タス通信」(英語電子版)、16年3月3日。http://tass.ru/en/politics/
5 「新華」(英語電子版)、16年2月13日。www.xinhuanet.com/english/
6 朝鮮中央通信(KCNA)英語版サイトから日付で検索。www.kcna.co.jp/index-e.htm

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