第3回「脱軍備・平和基礎講座」報告

公開日:2021.08.02

「日本の平和・市民運動」講師:藤原修 東京経済大学教授

2021年7月24日(土)14時から16時まで藤原修さん(東京経済大学教授)による第3回「脱軍備・平和基礎講座」がオンラインで実施された。受講登録者は28名(通し参加28名、単発参加者0名)で、当日のズーム生配信に参加したのは22名であった。

第3回のテーマは「日本の平和・市民運動」であった。講師の藤原さんは、平和運動が成立する条件から話を始め、19世紀の英国や米国で初めて影響力を持つようになった平和運動がどのように日本に伝わり、明治期のキリスト者・内村鑑三や社会主義者・幸徳秋水らによって実践されたかを紹介した。つぎに戦後日本の平和運動に話を移し、『きけわだつみのこえ』の出版(1949年)に象徴される学生運動、戦後に解放された女性による平和運動、第五福竜丸事件(1954年)を機に広がりを見せた原水爆禁止運動、教科書問題(1982年)と中曽根首相の靖国神社参拝(1985年)により広がった日本の加害にも目を向けた平和運動について紹介があった。また、1980年代には全国レベルの労組や革新系の団体による平和運動は退潮し、横須賀や呉など各地の基地問題の運動に見られるように、各地域の市民団体が行う平和運動が一定の影響力を持つようになった。最後に、梅林宏道ピースデポ特別顧問が進めた、専門的な調査に基づいた正確な情報を市民に提供し、それを政策提言につなげるような新しいスタイルの平和運動についても言及があった。

質疑応答では、3人の参加者から質問があった。(1)日本に被害者はいなかったのになぜベトナム反戦運動は盛り上がったのか、(2)非暴力で紛争を解決しようとすると法の支配が重要となるが、イスラム世界の法の考え方にはどう対処すればよいのか、(3)現状に問題があるために反対をしているが、一般の人々からは「何でも反対しているだけ」に見えてしまうことにどう対処すればよいのか、などの質問があった。最後の質問に対して、藤原さんは、現状に反対した結果どのようなより良い未来があるのか、そのビジョンを示すことが大切で、これは現在の平和運動にとっても重要な課題であると鋭く指摘した。

(渡辺洋介)