【声明】核抑止依存のリスクを直視し、核抑止からの脱却を
2025.08.01
ピースデポ代表 鈴木達治郎
2025年8月1日
7月に行われた参議院選挙で最も注目を浴びた発言の一つが、7月3日に配信されたさや候補(東京選挙区で2位当選)の「核武装が最も安上がりであり、最も安全を強化する策の一つ」であった。この発言に対し、日本被団協(2024年ノーベル平和賞受賞)の田中照巳代表は「論外で言語道断」と批判した。また、7月27,28日の共同通信報道によると、日米拡大核抑止協議にて、台湾有事を想定したシナリオ演習において、中国の核威嚇に対抗して、日本の自衛隊幹部が慎重な米政府の対応に対し、「米国も同様に核威嚇で対応すべき」とした、と言われている。
これら2つの発言・行動に共通しているのは、「核兵器に対抗するには核兵器が必要」という『核抑止』という考えである。しかし、この考え方には大きな落とし穴がある。核抑止は常に機能するとは限らず、相手が核兵器で先制してくるリスクはゼロにはならない。さらに、こちらが核兵器で先制攻撃した場合、その後の展開は読めず、超大国同士の核戦争にエスカレーションするおそれもある。さらに、核抑止強化により緊張感が高まっていき、「意図せざる核使用」すなわち「誤解・ミスコミュニケーションによる核使用」のリスクも高まってしまう。核使用を防ぐどころか、結果的に核使用リスクを高めることにつながるのだ。ましてや、さや候補のいう「核兵器保有」まで日本が決断したとすれば、非核三原則の見直し、原子力基本法の改正など、国内法制度の見直しはもちろん、核不拡散条約(NPT)の脱退による国際経済制裁、周辺諸国との関係悪化など、これまで継続してきた日本の非核政策を根底から塗り替える暴論である。とても許容できるものではない。
「核抑止」や『拡大核抑止』と呼ばれる「核の傘」の実態は、実はこの軍事演習で明らかになったように、「核威嚇政策」であり、決して防衛的な政策ではないのである。さらに、核抑止が壊れた場合、日本や韓国の在米軍事基地がターゲットになりうる。このような「核の傘」「核抑止」のリスクを認識し、一刻も早く核抑止に依存しない安全保障政策に転換すべきだ。