核兵器・核実験モニター バックナンバー

【日誌】核・ミサイル/沖縄(16年10月21日~11月5日)

公開日:2017.04.14

DPRK=朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)/GSOMIA=軍事情報包括保護協定/PCA=常設仲裁裁判所/PKO=(国連)平和維持活動/SSBN=戦略原子力潜水艦

●10月21日 中比両政府、20日の首脳会談で共同声明。南シナ海問題は「関係国の平和的解決で合意」。PCA判決に触れず。
●10月21日 米海軍のミサイル駆逐艦が、中国の実効支配する西沙諸島付近を航行。「航行の自由作戦」の一環。
●10月22日 ドゥテルテ比大統領、訪中時の「米国とは別れた」発言につき「外交的結びつきを断つということではない」と釈明。
●10月23日付 韓DPRK外務次官が21・22日にクアラルンプールで元米6者協議担当大使らと協議。
●10月24日 ラッセル米国務次官補がヤサイ比外相とマニラで会談。「信頼関係を再確認した」とラッセル氏。
●10月24日 ドゥテルテ比大統領「軍事同盟は米とのみ、中国とはない」と明言。「米との合同軍事演習は今年で終了」とも。
●10月25日 安倍内閣、南スーダンPKOへの陸自派遣期限を5か月延長する閣議決定。
●10月25日 クラッパー米国家情報長官、DPRK非核化「見込みない」と語る。同国に核放棄求める政権トップの見方とずれ。
●10月26日付 国連総会第1委「核兵器禁止条約」決議案につき米政府が同盟国などに反対求める文書を送付と判明。(本号参照)
●10月26日 来日中のドゥテルテ比大統領が安倍首相と会談。南シナ海問題で「国際法に従った平和的解決が重要」との共同声明。
●10月27日付 韓国政府関係者、日本側の要請に応じ年内にも、歴史認識問題で延期されていたGSOMIAを締結の方針と明かす。
●10月27日 国連総会第1委、核兵器禁止条約交渉を17年開始する決議を賛成多数で採択、日本は反対。(本号参照)
●10月30日 米軍、SSBNペンシルバニアがグァムに寄港と発表。核抑止力誇示の狙いか。周辺では米軍と自衛隊が共同演習開始。
●10月31日 原発メーカー11社、仏原発重要設備での強度不足問題で、自社設備に強度不足の可能性なしと原子力規制委に報告。
●10月31日 政府関係者、日印原子力協力協定に署名の方針を固めたと明かす。
●11月1日 米韓6か国協議首席代表が協議。DPRKとの中途半端な対話よりも制裁と圧力の強化を、と確認。
●11月1日付 韓国政府、米海軍海上配備型Xバンドレーダーが韓国公海上でDPRKを1か月監視していたと明かす。
●11月2日 青森県三沢基地で空自と英空軍が初の共同訓練を実施。
●11月3日 経産省、福島原発賠償を新電力にも負担させる案を示す。原発を保有する電力会社が責任を負うとの政府原則と矛盾。
●11月5日付 10月にDPRK外務次官が米政府元当局者らと協議の際、核抑止の必要性と、米新政権との接触継続を確認と判明。
●11月5日 「脱原発を目指す首長会議」、脱原発方針と廃棄物総量の確定ない限り放射性廃棄物処分場建設の協議に応じない声明。
●11月5日 米政府高官、核兵器禁止交渉への日本の参加は日本の内政問題として容認の見方を示したと判明。(本号参照)

沖縄

●10月20日 午前3時30分ごろ嘉手納基地からF16 戦闘機6機が離陸。90db以上の騒音6回。19日未明には100db以上も。
●10月21日 北部訓練場ヘリパッド建設現場で抗議活動の市民に暴言を吐いた大阪府警機動隊員2名、戒告の懲戒処分に。
●10月21日 稲田防衛相、公明党ワーキングチームが検討する普天間移転「陸上案」に対し、「辺野古唯一」と強調。
●10月21日 下地宮古島市長、来年1月の市長選に向け3期目の出馬表明。
●10月22日付 警察庁、米軍関係犯罪対策要員として全国各県警に「特別出向」指示。来年1月中旬から3月末まで。
●10月22日 「国境なき記者団」、沖縄での報道の自由に懸念示す声明発表。ヘリパッド建設現場での新聞記者排除について。
●10月23日 キャンプハンセン所属海兵隊員を酒気帯び運転で逮捕。
●10月23日付 沖縄防衛局、北部訓練場「N1」ゲート前にレンタカー2台放置。代金約79万円。「工事用道路確保のため」。
●10月24日 名護市で九州地方知事会議。翁長知事、基地問題について理解求める。
●10月25日付 2015年1月以降、大浦湾からジュゴン姿消す。辺野古沿岸海域へのコンクリートブロック投下が影響か。
●10月25日 政府、復帰後の県内米軍機墜落を「29件」とする答弁書を閣議決定。県統計より18件減。「領海外の件数含まず」。
●10月25日 政府、米軍機運用に関する「航空法特例法」を一部改正。基地周辺での凧揚げ・レーザー照射に罰則。12月21日施行。
●10月26日 「辺野古基金」寄付額5億8997万円。前月比262万9901円増。
●10月27日 「土人」発言問題。自民県議「市民側の挑発に原因」と主張、「調査」を要求。県議会での抗議意見書可決、決裂。
●10月27日付 辺野古違法確認訴訟。国が最高裁に上告棄却を求める意見書を提出。
●10月28日 県議会、機動隊員による「土人」などの差別発言に抗議する抗議決議・意見書を与党・中立会派の賛成多数で可決。
●10月30日 キャンプ・フォスター所属米海軍兵を暴行容疑で逮捕。北谷町の歩道で男性の首絞める。2人に面識なし。
●10月31日 金武町議会、「土人」などの差別発言に抗議する意見書を可決。
●11月1日 防衛省、嘉手納弾薬庫を再編関連特定防衛施設に指定。沖縄市へ再編交付金。
●11月2日 北部訓練場ヘリパッド建設。沖縄森林管理署、立木伐採に同意。「G地区」から国頭村宇嘉川河口部へ訓練道を建設。
●11月5日 嘉手納基地での米軍飛行目視調査、過去最高の328回。昨年比180回増。F15離陸時に最大100.4db。10月18日実施。

くわしく

【連載「いま語る」68】「人間の内面と向きあい平和を築く」

公開日:2017.04.14

 長崎に原爆が投下されたとき、私は母親のお腹の中にいました。私の家族は爆心地となった浦上から山で2つ3つ隔てられた場所に住んでいました。投下の3日後に、母は浦上の自分の実家へ行き、入市被爆をしました。母方の祖母と叔母2人、叔母の夫が原爆の直後に亡くなりました。叔母の1人は遺体も見つからなかったそうです。とくに祖母が全身大やけどをして終戦の日に息を引き取るまで大変苦しんだという話は、一回り年上の姉からようやく最近になって聞きました。原爆の13年後には母方の伯父の息子、つまりいとこが、17歳で原爆症により骨と皮だけになって亡くなっています。彼が亡くなる数日前に見舞いに行ったのですが、話す力もなく、かわいそうに思ったことを覚えています。子どもの頃は原爆が大変な出来事だったとは考えていましたが、平和の視点から関心を持つということはありませんでした。
 司祭となり福岡で奉仕していた私は、2002年に補佐司教として長崎に赴任することになりました。ちょうどその頃、憲法「9条の会」が立ち上がり、宗教界からの呼びかけ人となった私は原爆と平和について深く考えるようになっていきました。広島・長崎での核兵器使用の大義名分に、戦争を早く終わらせ、100万人の米兵を救った、というものがあります。私は、そうであったとしても、使用すれば万、十万単位の人間を殺せるとわかっている武器をあえて使うということを正当化できないと考えます。人間のすることではありません。また、広島と長崎で違う種類の核爆弾を使用したことや、投下後にアメリカが被爆者の被害調査を行ったことから、これは実験だったと考えています。
 近年、日本では北朝鮮や中国を脅威に感じ、核武装論すら出てきています。若い人ではそれを当然に思う人も出てきています。アメリカで核兵器先行不使用論が出てきても、日本の政府筋は否定に回っていると報道されています。被爆国であり憲法9条を持つ日本政府・国民は核兵器廃絶に向けて発言するだけでなく、率先して行動に移していかなければなりません。相手が兵器を持っているから自分も兵器を持たなければならないという考えが人類をおかしくしているのです。誰かがそれを断ち切らなければなりません。日本は憲法9条を持っているので、戦争を仕掛けない。非核三原則を持っているので、核兵器を持たない、作らない。こうした立場の日本がこの考えを断ち切る役割を果たすことで、世界に影響を与える地位に就くことができます。
 ローマ教皇ヨハネ二十三世は、冷戦のまっただ中の1963年に公布した『地上の平和』という回勅の中で、「軍備の均衡が平和の条件であるという理解を、真の平和は相互の信頼の上にしか構築できないという原則に置き換える必要があります」と言っています。正義、英知、人間の尊厳のために軍備競争を止め、軍備を縮小し、核兵器を禁止し、軍備を全廃しなければならないと言っています。現実的には難しいとは思いますが、私も核兵器だけでなく、全ての軍備を全廃しなければならないと考えています。軍隊を持たない中米のコスタリカでは、軍事費に費やされるお金を学費や医療費に使っていると聞きます。これこそが平和な社会です。相互の信頼に基づくという意味では北東アジア非核兵器地帯もこの考え方に基づいているといえます。さらに進めてEUのような北東アジア連合を作り、その理念の中で核兵器を使わない、というのが理想です。
 平和主義の宗教者は現実を知らないとしばしば非難されますが、人間が現実を作るのです。人間が武器を持つか持たないかを決めるのです。人間は相手が武器を持ったら自分も武器を持たなければならないと考えます。武器を取って身を守り、人を殺して支配しようとします。人のものを奪って所有しようとします。国の為政者が支配欲や所有欲を持つと、国と国との争いになります。宗教者はこういった暴力、支配欲、所有欲といった人間の内面の問題に関わっていくことができると思います。キリストやブッダも人を殺してはならない、と言っているのに、戦争では人を殺してもよいことになっています。むしろ多く殺すことが武勲であるとされています。戦争になるとモラルが逆になってしまいます。私たちは戦争を起こさないように欲求をコントロールしていかなければなりません。人間には説明のつかない暴力の欲求があると思います。その暴力を起こさせるきっかけを作らせないように、私たちは小さい頃からの教育、環境づくりも考えていかなければいけないと思っています。
(談。まとめ:荒井摂子、山口大輔)

くわしく

【寄稿】 科学技術で拡大する「軍学協同」――9条問題と同質、市民からも議論を                     

公開日:2017.04.14

1.はじめに

 最近、大学をめぐるきな臭い動きが強まってきている。防衛省は、2015年度から「安全保障技術研究推進制度」1を作り、大学および民間の研究機関に研究費を供与し始めた。戦後ずっと軍事研究を拒否してきた学者も金につられて揺れ始めた。日本学術会議は、軍との関係について再検討を開始し、2017年春には新しいガイドラインを出そうとしている。
 これらの動きの起点は、2013年暮に安倍内閣が決めた「国家安全保障戦略」と「防衛計画大綱」2の中で、大学等との連携の充実等により「防衛にも応用可能な民生技術(デュアルユース技術)の積極的な活用に努める」(「大綱」)という方針を出したことにある。現時点では、日本の科学研究費に軍事が占める割合は極めて小さい。しかし、今が分かれ目である。歴史と現状を冷静に見て、判断したい。雑誌「科学」(岩波書店発行)の10月号は、「軍事研究と学術」を特集していて、参考になる。

2.日本の科学技術と軍事研究の歴史

 戦前の帝国大学は「国家の須要な学術研究」のために作られた。東京帝大工学部には、造兵学科が置かれた。昭和になってから、大阪帝大、九州帝大や名古屋帝大の理学部など理工系が増設された。大東亜戦争中は、陸海軍の主導の下に、学者たちは戦時研究に組み込まれた。その中で、朝永振一郎、小谷正雄らの理論物理学者も、海軍の強力電波兵器の開発に動員され、マイクロ波の発振機構の解明を研究した。
 戦後、原子核、航空機などの研究は占領軍によって禁止された。1949年に発足した日本学術会議3は1950年4月の総会で、過去の反省を基盤として、「戦争を目的とする科学の研究には絶対従わない決意の表明」を行った。しかし、同年に朝鮮戦争が勃発すると風向きが変わり、その後の総会では同様な声明は可決されなかった。1966年に開催された半導体国際会議などに極東米軍の資金が提供されたことが明るみになった。この会議を主催した日本物理学会は、1967年9月、会員請求による臨時総会を開いた。そうして今後「内外を問わず軍隊と援助その他一切の協力関係を持たない」という決議3を可決した。学術会議も、1967年10月、「軍事目的のための研究は行なわない」とする声明を改めて発表した。この背景には、ベトナム戦争下の当時の反戦運動があった。
 日本政府は、1967年以来、「武器輸出三原則」を堅持し、武器の輸出は事実上全面的に禁止された。いくつかの例外があったが、それらは殺傷能力のない装備に限られていた4。しかし、2011年の官房長官談話5、2013年の国家安全保障会議の設置、防衛大綱の決定をへて、輸出規制は大幅に緩められ、2014年4月には「防衛装備移転三原則」が閣議決定された。それでも、日本の防衛産業の規模は年額2兆円程度で、全工業生産額250兆円の0.8%に過ぎない。
 日本の科学研究費の総額は、年間約18兆円で、その内国防研究費は約1,700億円である。これは、米国の総額45兆円、国防6兆円に比べれば少ない6。米国では、国防研究費が民間、政府機関、大学にわたって支出され、産官学軍需産業複合体を支えている。日本の国防研究費は、ほとんど防衛省技術研究本部で使われている。「1.」で述べた安全保障技術研究推進費は、2016年度は6億円でしかない。来年度は110億円が概算要求されているが、米国のような状況にはほど遠い。しかし、研究費の供与はないが、防衛省と九大などの大学や研究機関との協力協定は、すでにいくつか結ばれている。また、米軍の資金もさまざまな形で流入している。

3.軍事研究の問題点

 学術会議の2015年秋の総会で大西隆会長は、防衛省や米国防総省等の競争的資金による研究公募に対する考え方など軍事と学術との関係について、過去の声明の見直しを含めた検討を行うことを問題提起した。これについては賛否両論があり、今年の6月に検討委員会が設置された。いくつかの論点を述べる。
 軍事研究の第1の問題点は、言うまでもなく、軍事目的のために科学技術を使うということである。直接の殺傷目的でなければ良いではないかという意見もある。しかし、多くの戦争が自衛のためとして戦われた。また、現代の戦争では情報収集や処理、通信、輸送など広い技術が使われ、それらは結局、殺傷行為につながっている。
 次に、軍事の常として、軍事研究では統制と機密保持が要請される。これは、学問の自由や公開の自由という科学研究の基盤となる権利を束縛する。上記の安全保障技術研究推進制度では、防衛装備庁が詳しい説明付きの研究課題を示している。応募して採択された研究は、進行状況を装備庁などのオフィサーが管理し、発表についても防衛省の確認が必要となる。自由はない。
 第3に、デュアルユースであるから、民生技術の開発にも役立つので、研究費の出どころは問わないという考えがある。元々、科学や技術は両刃の剣と言われ、直接軍事目的ではないとして研究していても、いつ軍事に悪用されるか分からないから絶えず注意しなければならないとされて来た。しかし、すでに述べた諸制度は、民生技術の軍事への転用を目標としている。例えば、九州大学と防衛省との間に、「爆薬の探知」をテーマとする協力協定が2013年6月に締結されている。これは、長年味覚や嗅覚についてT教授を中心になされ、空港での探知器などに応用が考えられていた研究に防衛省が着目したものである。2013年1月、九大の味覚・嗅覚センサー研究開発センターの開所式には、防衛技研の陸上装備研究所長が来賓祝辞を述べている。安保研究推進制度では、民生への転用を誘い文句としているが、それは研究終了後に許可を得て可能になるのである。

4.研究費の配分を決めるのは誰か

 国立大学の経常的運営経費は年率1%で減額が続き、研究者は競争的資金の獲得に追われている。しかし、大局的に見ると、経常費は年間1兆2,000億円(人件費を含む)ある。競争的資金は、文部省3,500億円、厚労省400億円、経産省100億円、環境省30億円で、防衛省はわずか6億円である。それでも応募する研究者がいるが、その件数は本年度は44件(うち大学23件)で、昨年度の107件(うち大学58件)に比べて半数以下である。学術会議の検討の様子を見て保留していること、また大学内外の批判を気にしていることがその理由だろう。
 学者は金に弱い。学術会議が発足のころ行った「研究の自由が一番あった時代はいつか」というアンケートに、大東亜戦争中を挙げた研究者が多かった。したがって、軍事研究への関わり方の議論を、学者だけに任せてはおけない。納税者である市民たちも加わるべきである。
 軍事費からの資金なしで戦後70年続いてきた日本の科学研究は、世界的には特異な例である。それは、憲法第9条と同質である。それを棄てて「普通の国」に向かうのか、維持して包括的軍縮へ向かうのか、選択の時である。


1 www.mod.go.jp/atla/funding.html
2 いずれも13年12月17日安全保障会議及び閣議決定。
3 www.scj.go.jp/ja/scj/
4 望月衣塑子『武器輸出と日本企業』(角川新書、2016年)、p.105。
5 「防衛装備品等の海外移転に関する基準」についての官房長官談話(11年12月27日)。
6 数字はデータがそろっている13年(平成25年版)「科学技術要覧」によった。www.mext.go.jp/b_menu/toukei/006/006b/koumoku.htm

くわしく

<資料3>スウェーデンによる「多国間核軍縮交渉を前進させる」決議の投票理由説明(抜粋訳)

公開日:2017.04.13

2016年10月27日
(前略)
 我が代表団は決議に賛成票を投じた。この件に関する我々の見解を十分かつ正確に伝えるためには、この投票行動をより広い文脈に置くことが重要だと考える。
 悪化する安全保障環境においては、核軍縮の進展がかつてなく重要かつ緊急に求められる。にもかかわらず、2015年NPT再検討会議の失敗やCTBTが未発効であるとの事実が象徴するように、近年は行き詰まりが続いている。核軍縮がかくも進展しないことに不満が広がっている。スウェーデン政府もこの失望を共有する。
 我々の基本的視点は、他の非常に多くの国々と同様、人道的視点だ。我々は、実効性ある核軍縮につながるような、違いを生み出す効果的な法的措置であればいかなるものも支持する。
 ある水準では、問題ははっきりしている。何より重要な目標は、核兵器の完全廃棄につながる核軍縮である。これはまた、本決議を我々が支持する主たる動機でもある。
 別の水準では、問題は極めて複雑だ。このプロセスが、完全な核軍縮という目標を達成するための最も効率のよい方法となるのか。現時点では我々にはそれが分からないのは事実だ。しかし事の重大さを考えれば、我々には試してみる責務があると考える―それがいかに大変なことかは承知の上で。
 我々は、既存の条約法には埋めるべき法的ギャップがあるとの意見には与しない。NPTは核軍縮と核不拡散におけるかけがえのない礎石であり続けている。禁止条約(a ban treaty)は、とりわけNPT第Ⅵ条の履行のための法的文書として、現行の法律や条約を―それらに取って代わるのではなく―補い強化しうる。交渉に参加し最終的には禁止条約に加盟する国々には、NPT遵守に全力を尽くすと共にその履行が確実に進むようにする、責任があり法的義務がある。
 本日の投票は、ますます危険度が増していると我々がみなす現状に対する、重要で明確な態度表明である。とはいえ、これはプロセスの始まりに過ぎない。このプロセスの主要部分は実際の交渉であり、その交渉の間に将来の条約の適用範囲が議論され合意されねばならない。そこでは軍縮のみならず、より広く安全保障上や防衛上の問題も考慮されねばならないだろう。
 スウェーデンはこれらの交渉に参加するし、他の大多数の国々もそうすることを切に願う。どのような条約であれその実効性―それが主要な基準となって条約が評価される―は、可能な限り広い支持が得られるかにかかっている。それを可能にするには、交渉は、核兵器国を含んだ包含性と橋を架ける精神に基づいて遂行すべきである。
 この道筋を追い求める一方で、我々は引き続き、他の取り組みに対しても同じように開かれた姿勢を保ち続ける。スウェーデンは禁止条約が法としての唯一の選択肢だとはみなしていないし、公開作業部会報告書が示唆したように提案は尽きない。その提案のいくつかは、これから我々が前進していく中でさらに探究する価値がある。

(訳:ピースデポ)
原文:   www.reachingcriticalwill.org/images/documents/Disarmament-fora/1com/1com16/eov/L41_Sweden.pdf

くわしく

<資料2>岸田文雄外務大臣記者会見より国連総会第1委員会関連部分(抜粋)

公開日:2017.04.13

2016年10月28日
(前略)
 「核兵器のない世界」を実現するためには、核兵器の非人道性に対する正確な認識と、厳しい安全保障環境に対する冷静な認識に基づき、核兵器国と非核兵器国の協力による具体的・実践的措置を積み重ねていくことが不可欠です。これは私(大臣)からも繰り返し申し上げてきた我が国の基本的立場であります。
 今般の国連総会第一委員会においても、このような立場を踏まえ、国際社会に対し、我が国の核兵器廃絶決議への支持を強く訴えてきて参りました。その結果、我が国の決議には、米国を含む、今集計中ですが、約110か国の国が共同提案国となりました。そして全体では167か国の圧倒的多数の支持を得て採択されました。この数字は共に昨年を上回っております。このことが我が国の決議こそ、NPTを柱とする国際的な軍縮・不拡散体制の下で、核兵器国と非核兵器国双方が共に目指すべき「核兵器のない世界」への現実的な道筋を示すものであることを表していると考えます。
 一方、核兵器禁止条約の交渉開始を求める決議、この決議案についても投票が行われたわけですが、我が国としましては慎重な検討を重ねた結果、反対票を投じました。反対の理由は、この決議案が、(1)具体的・実践的措置を積み重ね、「核兵器のない世界」を目指すという我が国の基本的立場に合致せず、(2)北朝鮮の核・ミサイル開発への深刻化などに直面している中、核兵器国と非核兵器国の間の対立を一層助長し、その亀裂を深めるものであるからであります。こうした評価は、この決議に対する各国の投票行動、例えば北朝鮮はこの決議に賛成をしています。そして核兵器国は全てこの決議に対しては賛成をしておりません。こうした投票行動にも、こうした評価は表れているのではないか、このように考えます。
 他方、その上で、この核兵器禁止条約の交渉開始を始める決議については、結果としまして賛成多数で採択されました。明年このような条約交渉が行われること、これは確実となりました。交渉への参加・不参加を含め、今後の対応ぶりについては、交渉のあり方の詳細に関する今後の議論も踏まえ、また、これまで連携してきた豪、独など中道諸国の動向も見極めつつ、政府全体で検討していくことになりますが、私(大臣)としては、現段階では、交渉に積極的に参加をし、唯一の被爆国として、そして核兵器国、非核兵器国の協力を重視する立場から、主張すべきことはしっかりと主張していきたいと考えております。

質疑応答

【記者】禁止条約交渉決議への日本の反対に対しては被爆者の反発も予想されるが、どう理解を得るのか。
 我が国の行動・立場は一貫しております。核兵器国と非核兵器国の協力を重視する立場に立ち、だからこそ、まずは我が国の決議に核兵器国も非核兵器国も、より多くの国に賛成してもらう、こういった努力を続けてきました。結果として昨年を上回る多くの国々から共同提案国にもなってもらいましたし、米国を含む多くの国に共同提案国になってもらいましたし、そして多くの国に賛成もしてもらいました。そして核兵器国と非核兵器国の協力を重視する立場だからこそ、核兵器禁止条約の交渉開始を内容とする決議には反対をしたということであります。そしてこの交渉が始まるのであるならば、核兵器国と非核兵器国の協力を重視する立場から主張すべきことは主張すべきであると私(大臣)は考えているというふうに申し上げました。このようにどの観点からも我が国の立場は一貫しているということは、是非しっかりと訴えていきたい、説明していきたい、このように思っています。
【記者】禁止条約決議と廃絶決議で日米の足並みがそろった形だが、日米間で連携はあったのか。
 日本とアメリカにおいて具体的なやり取りは、様々なやり取りは存在します。「核兵器のない世界」を目指すという共通の大きな目的は共有しているわけですので、意思疎通はしっかり図っておりました。
【記者】核廃絶決議案を米に賛成してもらう見返りに日本が禁止条約決議に反対したとの見方もあるが。
 そうした意思疎通は図ってきましたが、見返りとかですね、そういったご指摘は当たらないと考えます。
(略)
【記者】日本が掲げる段階的核軍縮の膠着状態があり不満があると言われているが、次に進展がありそうなステップとして何を検討しているか。
 CTBT、それからFMCTの早期交渉開始ですとか、あるいはNPTの運用検討会議の去年のありようを見ましても、この体制の強化、まだまだやらなければならない、やはりこうした核兵器国、非核兵器国、全体の中で気運を高めていかなければならないと思います。どこからというのではなくして、NPT、FMCTそしてCTBT、こうした様々な枠組みを通じて努力をしていかなければなりません。(後略)
出典:外務省ウェブサイト
www.mofa.go.jp/mofaj/press/kaiken/kaiken4_000417.html
(記者の質問は編集部による要旨)

くわしく

<資料1>決議「多国間核軍縮交渉を前進させる」(全訳)

公開日:2017.04.13

A/C.1/71/L.41
2016年10月14日

オーストリア、ブラジル、チリ、コスタリカ、コンゴ民主共和国、エクアドル、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、インドネシア、アイルランド、ジャマイカ、ケニア、リヒテンシュタイン、マラウィ、マルタ、メキシコ、ナミビア、ナウル、ニュージーランド、ナイジェリア、パラオ、パナマ、パラグアイ、ペルー、フィリピン、サモア、南アフリカ、スリランカ、スワジランド、タイ、ウルグアイ、ベネズエラ、ザンビア1:共同提出決議案

 総会は、
 核兵器のない世界の達成と維持のための多国間核軍縮交渉の前進に関する2012年12月3日の決議67/56、2013年12月5日の決議68/46、2014年12月2日の決議69/41、2015年12月7日の決議70/33を想起し、
 核兵器のいかなる使用によっても壊滅的な人道上の結末がもたらされることを深く憂慮し、
 核兵器の存在に関連するリスクについても深く憂慮し、
 とりわけ軍縮交渉の成功は世界の諸国民すべてにとって死活的な利益であり、すべての国家には軍縮交渉に参加する権利があると述べた、軍縮のための初の特別会期である国連総会第10特別会期の宣言※2を想起し、
 国連総会第10特別会期の最終文書※に明記された、ジュネーブ軍縮会議(CD)及び軍縮委員会(UNDC)の役割と機能を再確認し、
 世界の経済・社会開発ならびに国際の平和と安全に対する脅威への取り組みの責任は、世界の国々によって共有され、多国間で果たされなくてはならず、世界で最も普遍的で最も代表性のある機関として、国連は中心的な役割を果たさなくてはならない、と明記されている国連ミレニアム宣言※を想起し、
 多国間軍縮の前進を確実なものとするための加盟国の努力と、そうした努力に対する事務総長の支持を歓迎するとともに、この点と関連する事務総長による「核軍縮に関する5項目提案」を想起し、
 核不拡散・軍縮体制の礎をなす核不拡散条約(NPT)が、核戦争により全人類の上にもたらされる惨害および、その帰結として核戦争の危険を避けるためあらゆる努力をするとともに諸国民の安全を守る措置をとる必要があることを考慮して交渉されたことを想起し、
 NPT締約国の義務および、1995年NPT再検討・延長会議※、2000年NPT締約国再検討会議※、2010年NPT締約国再検討会議※の最終文書に反映された締約国の誓約をも想起し、
 各NPT再検討会議においてなされた様々な誓約をNPT締約国が完全かつ効果的に履行する重要性を強調し、
 多国間外交が、軍縮及び不拡散分野で持つ絶対的な有効性を再確認し、軍備規制及び軍縮交渉を進める上で必要不可欠な多国間主義を促進することを決意し、
 国連の枠組みにおける多国間核軍縮交渉が20年間、具体的な成果を出していないことを心に留めると共に、核軍縮のための効果的措置についての交渉に誠実に携わる義務を国家が負っていることをも心に留め、
 現在の国際環境のもとでは、軍縮・不拡散問題への政治的関心の増大、多国間軍縮の促進、核兵器のない世界の達成が、いっそう緊急なものとなっていることを認識し、
 2012年12月3日の決議67/39 にしたがって2013年 9 月26 日に開催された核軍縮に関する国連総会ハイレベル会合がこの分野での進展を求める国際社会の願望を強調したことを歓迎するとともに、この会合のフォローアップである2013年12月5日の決議68/32に留意し、
 決議67/56 に従って提出され決議68/46で参照された、核兵器のない世界の達成と維持に向けて多国間核軍縮交渉を前進させるための計画を立案する公開作業部会(OEWG)の作業報告※を歓迎するとともに、決議68/46 に従って提出された事務総長報告※の中に、加盟国がこの目的のためすでに実施しているものも含め、多国間核軍縮交渉を前進させる方策に関する加盟国の見解が含まれていることに感謝と共に留意し、
 さらに、軍縮と平和、安全保障の問題を取り扱う国連機構において多国間核軍縮交渉を前進させる方策に関する議論を引き続き豊富化してゆくために、すべての加盟国、国際機関、市民社会が行っている努力を歓迎し、
 核兵器を禁止する法的拘束力のある文書が包括的な核軍縮に向けて重要な貢献をなすことを念頭に置き、
 不可逆的で検証可能で透明性のある核兵器の破壊のための追加的措置が、実際的なものも法的拘束力のあるものも、核兵器のない世界の達成の維持に必要であることをも念頭に置き、
 包括性の重要性を強調し、核兵器なき世界の達成に向けた努力へのすべての加盟国の参加を歓迎し、
 優先順位の高い核軍縮・不拡散問題について実質的進展を確実にすることの重要性と緊急性を強調し、
 とりわけ軍縮に関する審議と勧告を行うという国連総会の機能及び権限に言及した国際連合憲章第11条に留意し、

1.総会により決議70/33のもとに設置され、2016年にジュネーブで会合を行った、多国間核軍縮交渉を前進させる公開作業部会が、包括的、包含的、双方向的、建設的な態様で体系的・実質的な議論を行ったことを満足と共に留意する。
2.決議70/33によって総会が設置した作業部会の報告書※を歓迎する。
3.作業部会の開催中に示された、多国間核軍縮交渉の前進に向けた国際機関と市民社会の参加と貢献の価値を認識する。
4.多国間核軍縮交渉を前進させることの普遍的な目的が、引き続き核兵器のない世界の達成と維持であることを再度強調するとともに、多国間核軍縮交渉の前進に向けては包括的、包含的、双方向的、建設的な方法で核兵器関連問題を扱うことが重要であることを強調する。
5.多国間核軍縮交渉の実質的進展を確実に図ることの緊急性を再確認する。
6.核兵器のない世界の達成と維持のために締結する必要のある具体的で効果的な法的措置、法的条項や規範を練り上げるためさらなる努力の追求が可能であり、またそうすべきであると勧告し、NPTとそこでの誓約の重要性を再確認し、そして上記措置、条項や規範の追求はNPTの3本柱を含む核軍縮・不拡散体制を補い強化するものでなければならないと考える。
7.各国が、公開作業部会の報告書で提起されているような、多国間核軍縮交渉の前進に寄与するであろう様々な諸措置の実施を適宜、検討することをも勧告する。諸措置には以下を含むが、それに限定されない。既存の核兵器に伴う危険性に関連した透明性措置、事故、過誤、無認可によるあるいは意図的な、核兵器爆発の危険性の低下及び除外のための諸措置、核爆発がもたらす多岐にわたる人道上の結末の複雑性、それらの相互関連性に対する認識や理解を促進させるための追加的措置、多国間核軍縮交渉の前進に貢献しうるその他の措置。
8.核兵器を禁止しそれらの全面的廃棄に導く法的拘束力のある文書を交渉するため、2017年に国連の会議を招集することを決定する。
9.すべての国連加盟国に対し、この会議に参加するよう奨励する。
10.会議は、当該会議が同意したのでない限りは総会手続規則に従い、2017年3月27日から31日まで、及び2017年6月15日から7月7日まで、国際機関と市民社会代表の参加と貢献のもと、ニューヨークで開催することを決定する。
11.併せて、会議ができるだけ早く運営に関する1日間の会合をニューヨークで持つことも決定する。
12.会議の参加国に対し、核兵器を禁止しそれらの全面的廃棄に導く法的拘束力のある文書をできるだけ早く締結するため最善の努力を尽くすよう呼びかける。
13.会議がそこでの交渉の進展について第72回国連総会に報告書を提出することを決定する。総会は交渉の進展状況について評価し、今後とるべき道を決める。
14.事務総長に対し、会議の開催に必要とされる支援を提供するよう、また、会議報告書を軍縮会議(CD)、国連軍縮委員会(UNDC)および決議68/32第6節で開催が見込まれている国連核軍縮ハイレベル国際会議に送付するよう求める。
15.第72会期の暫定議題として、「全面的かつ完全な軍縮」と題する項目の下に「多国間核軍縮交渉を前進させる」という小項目を含めることを決定する。
(訳:ピースデポ)

訳注
1 これに以下の国々が加わり、委員会投票時点での共同提案国は計57か国となった。アンゴラ、バハマ、ベリーズ、ブルンジ、カーボベルデ、ドミニカ共和国、エジプト、フィジー、グレナダ、ギニアビサウ、リベリア、リビア、マレーシア、マーシャル諸島共和国、モーリタニア、パプアニューギニア、セントルシア、セントビンセント及びグレナディーン諸島、サンマリノ、シエラレオネ、トリニダード・トバゴ、ツバル、ベトナム。
2 ※印には原文では参照すべき文書の名称などが注記されているが、省略した。

くわしく

国連総会第1委員会17年「禁止交渉開始」決議を採択、核兵器廃絶へ歴史的な一歩   日本の反対は「被爆国」への汚点

公開日:2017.04.13

10月27日(日本時間28日未明)、国連総会第1委員会は、核兵器禁止交渉の会議を2017年に開催するとする「多国間核軍縮交渉を前進させる」決議案(L.41)を123か国の賛成多数で採択した。国際社会は核兵器廃絶に向けて大きな一歩を踏み出した。各国の投票態度には、米国などからの激しい抵抗の影響が見て取れる。被爆国日本も米国に追随してか、この歴史的な決議に反対票を投じ、被爆者やNGOなどから強い反発を招いた。せめてもの望みは、日本が交渉に参加して、核保有国の条約参加に道を開くような先進的・建設的な提案をすることである。

各国の投票行動―米などの「圧力」が影響か

 L.41決議の採択により、約20年続いた核軍縮交渉の停滞を打ち破る歴史的な一歩が踏み出された。同決議の全訳を資料1として3~4ページに掲げる。共同提案国は直前まで増え続け、最終的に57か国に上った1。
 第1委員会での投票結果は、賛成123・反対38・棄権16・欠席16であった。核保有9か国は北朝鮮が賛成、米ロ英仏とイスラエルが反対、中印パが棄権した。核依存国では、NATO加盟28か国中オランダを除く27か国と、豪州、韓国、日本が反対に回った。
 決議採択には核保有国が激しく抵抗した。特に米国は、NATO加盟国と協力国に向け、決議への反対と交渉への不参加を呼びかける文書を送ったことが明るみになった2。メディアでも大きく報道されたが、文書は「核兵器が存在する限りNATOは核の同盟であり続け」、ゆえに「核兵器の即時禁止あるいは核抑止の非合法化の交渉は、NATOの抑止政策と同盟国が共有する安全保障上の利益と根本的に相いれない」と述べる。そして、OEWG報告書「別添Ⅱ」に掲載された個々の「禁止の要素」を引き合いに出して、禁止条約がいかにNATOの現行の体制に抵触するかを詳細に述べている。米国からの同様の説得はNATO以外の同盟国に対しても行われていたことが明らかになっている3ほか、非依存国にも決議に賛成しないよう働きかけていたことが知られている4。
 核禁止交渉参加と核同盟の一員であることとが両立しえないとの米国の主張については、これと異なる見解が示されていることに注目したい。オランダに拠点を置く平和NGO「PAX」は「NATOと核兵器禁止」と題する書面で、NATO加盟国は結成以来、独自の核政策を採用する権利を留保してきた、現に核兵器の国内通過を禁じている加盟国も複数存在するなどと、先の米文書への反論を展開している5。また、NATO加盟国で唯一、L.41決議に棄権したオランダは投票理由説明で「核同盟NATOの一員としての義務と禁止条約とが両立できるよう、早期の禁止交渉開始を支持する国とそうでない国の橋渡しを務める」と発言し、二者の両立の可能性を展望している6。
 米国からの圧力は、核依存国、また一部の非依存国の投票行動に多少の影響を与えたことがうかがえる。L.41決議への投票行動と8月のOEWG報告書へのそれを比較すると、決議に反対したNATO加盟国のうちアイスランド、ノルウェー、ポルトガルはOEWG報告書には棄権票を投じていた7。同様に、日本とセルビアもOEWGでは棄権したが、決議では反対に回った。また、OEWGでの賛成国のうちスーダンは決議では棄権している。さらには、OEWG報告書に17年禁止条約交渉開始に賛成の国々として記載されていたアフリカ諸国やCELAC(ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体)諸国などのうち、若干の国々が棄権ないし反対している。
 これらの投票行動がすべて米国など核保有国からの圧力の結果だと断定はできないが、少なくともその可能性は否定できない。

反対した日本―核の傘への信奉が前面に

 日本の今回の反対も、米国からの働きかけの影響を受けたものであることは想像に難くない。いわゆる日本決議(A/C.1/71/L.26、次号で詳報)に昨年は棄権した米国が今年は共同提案国に加わった事実は、岸田外相は言葉を濁しているものの(4~5ページの資料2に掲載の記者会見記録を参照)、2つの決議をめぐる何らかの申し合わせが両国政府間にあったことをうかがわせる。
 日本はこれまで、核依存国としては唯一、国連総会での核兵器に関する決議に反対したことがなく、賛成しない場合でも棄権にとどまってきた。核依存政策を採りつつ、対外的に「核兵器の非人道性を身をもって知る唯一の戦争被爆国」を標榜し国内的には被爆地に配慮しての、ある種つじつま合わせのための投票態度だったと理解できる。
 しかし今回はそうした投票態度を取らずに核依存国としての立場のみを鮮明にし、人道性に根差す被爆国としての立場は後退させた。反対の理由について岸田外相は、決議が「核兵器国と非核兵器国の協力による具体的・実践的措置を積み重ねていくことが不可欠」との日本の基本的立場に合致しないからと言う。しかし、L.41決議が下敷きにしたOEWG勧告・報告書の採択に棄権した際にも日本政府は同様のことを理由にしており8、投票行動の変化の説明になっていない。やはり米国の影響が最大の理由とみてよいだろう。「同盟」国からの圧力くらいであっさり棄権から反対に態度を変えた日本政府には、元々本気で被爆国としての責務を果たす気などなかったのだと言われても仕方あるまい。米国が日本決議への共同提案国となった「成果」を政府は強調するが、米国は一昨年までの態度に戻ったに過ぎないのみならず他の核保有国で日本決議に賛成する国は昨年同様1つもなく、強調するほどの成果とも言えない。
 日本政府が核兵器国と非核兵器国の橋渡し役を自任しながら、実際には核兵器国の側に立ってその代弁ばかりしていることは、つとに指摘されてきた。それを考えると、「被爆国」の看板を掲げて核兵器関連決議に他の核依存国とは一線を画す投票行動をとってきたこと自体、偽善的であり手放しで称賛できるものだったとは言い難い。

スウェーデンの「橋を架ける精神」に注目

 一縷の望みは、岸田外相が「交渉に積極的に参加をしたい」旨を明言している点である9。核兵器の禁止自体はいずれかの時点で必要になることは日本政府自身も認めてきたのだから、是非、よりよい禁止条約を策定するとの立場に立って条約交渉に臨んでほしい。その際には、NATOと緊密な協力関係を持ちながらL.41決議に賛成したスウェーデンの態度が参考になるように思われる。
 スウェーデンはNATO加盟国ではないが、近年のロシアの軍事活動をにらんで14年9月にNATOとの間で駐留受入国支援に関する了解覚書(MOU)を締結した10。そのスウェーデンはOEWGでは棄権したが今回は決議に賛成した。その投票理由説明を資料3として5ページに示す。そこに述べられている通り、スウェーデンは、禁止条約が完全な核軍縮達成のため「最も効率的」なのか「現時点では(……)分からない」としつつ「事の重大さを考えれば、我々には試してみる責務がある」として交渉参加を表明している。そして条約の「実効性(……)は可能な限り広い支持が得られるかにかかっている」とし、支持を得るため「交渉は、核兵器国を含んだ包括性と橋を架ける精神に基づいて遂行すべき」とする。さらに、交渉における条約の適用範囲の議論においては「軍縮のみならず、より広く安全保障上や防衛上の問題も考慮されねばならない」と述べており、禁止反対派の強調する「安全保障上の考慮」も否定していない。
 このスウェーデンの発言や、先に引用したオランダの発言が示唆するように、米国との同盟関係があったとしても禁止条約およびその交渉に参加するという選択肢は十分成り立ちうる。日本も、米国をはじめとする核兵器国の意を汲むかのようにひたすら禁止条約は時期尚早との論陣を張り続けるのではなく、核保有国にも将来参加が可能な条約を構想しつつ核保有国をその議論に引き込むことでこそ、「核保有国と非保有国の協力」を推進する橋渡し役としての貢献ができるのではないか。ピースデポが9月末に岸田外相に提出した要請書の主眼もそこにある11。そして日本は交渉に参加するのと並行して、自国の安全保障における核抑止依存をなくしていくための努力を開始するべきである。(荒井摂子)


1 資料1の冒頭と訳注1に全57か国の国名を掲載した。
2 文書は「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)ウェブサイトからダウンロード可能。
 www.icanw.org/wp-content/uploads/2016/10/NATO_OCT2016.pdf
3 「ジャパンタイムズ」(電子版)16年11月3日付社説に「米政府が日本にも同趣旨の説得を行ったと日本政府関係者が明かした」旨が述べられている。
4 例えば10月18日、米軍縮大使がアフリカ諸国の大使との非公式会合を行った姿が目撃されている。ICANツイッター。
 https://twitter.com/nuclearban
5 http://nonukes.nl/wp-content/uploads/2016/10/NATO-and-a-nuclear-ban_PAX_October-2016.pdf
6  www.reachingcriticalwill.org/images/documents/Disarmament-fora/1com/1com16/eov/L41_Netherlands.pdf
7 OEWGでの各国の投票行動はICANウェブサイトの16年8月25日付投稿記事による。
 www.icanw.org/campaign-news/support-for-a-conference-in-2017-to-negotiate-a-treaty-banning-nuclear-weapons/
8 投票後の理由説明で日本代表が述べている。本誌502-3号参照。
9 米政府内でも日本の交渉参加を容認する意見が台頭しているとの報道がある。例えば16年11月6日付「中国新聞」(電子版)。
10  MOUは「災害や安全保障への脅威」などの緊急時にNATO軍の駐留を受け入れ、NATO軍が領域内で訓練や作戦などを行う際に支援すると定める。本誌471-2号(15年5月15日)参照。
11 本誌前号(506-7号、16年11月1日)参照。要請書全文は以下:
 www.peacedepot.org/media/pcr/160930_mofa_yousei_unres.pdf

くわしく