核兵器・核実験モニター バックナンバー

日誌核・ミサイル/沖縄(17年1月6日~1月20日)

公開日:2017.07.13

CNN=ケーブルニュースネットワーク/DPRK= 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)/THAAD= 高高度防衛ミサイル

●1月6日 米フロリダ州フォートローダーデール空港でイラク帰還兵の男が銃を乱射し5人死亡。
●1月9日 クオモ米ニューヨーク州知事、ニューヨーク市近郊の原発2基を2021年までに閉鎖と発表。
●1月9日 パキスタン軍、核搭載可能な巡航ミサイルの潜水艦からの発射に初めて成功したと発表。
●1月10日 秋葉前広島市長がトランプ次期米大統領に北東アジア非核兵器地帯創設や被爆者との面会を求める書簡を送付。
●1月11日 バイデン米副大統領、昨年予定分に加え約500発の核弾頭を一方的に退役させたと述べる。
●1月11日 韓国防衛白書の2016年版が発刊。同白書はDPRKが核兵器10発分のプルトニウムを保有と推定。
●1月11日 2025年までの脱原発を定めた電気事業法改正案が台湾国会で可決・成立。
●1月12日 米軍が海上配備型Xバンドレーダーをハワイ北西約3,000kmに無期限で配備したとCNNが報道。
●1月13日 稲田防衛大臣がグアムの米アンダーセン空軍基地でTHAADを視察し、DPRK対応として導入を示唆。
●1月15日 トランプ次期米大統領、ロシアが核兵器削減に合意すれば対ロ経済制裁を解除すると英タイムズ紙に語る。
●1月16日付 政府、戦闘機向け次世代ミサイルの日英共同研究を2017年度に完了させる方針を固める。
●1月17日 防衛省、自衛隊が24日から1か月、タイでの多国間合同軍事演習に参加し安保法制下の新任務の訓練を行うと発表。
●1月18日 習・中国国家主席、ジュネーブ国連欧州本部での演説で核兵器の禁止と廃棄を呼びかけ。
●1月19日付 東芝の米原発事業の損失が原発工事コストの上昇を理由に最大7,000億円に上る可能性が明らかに。
●1月19日付 自衛隊の中古防衛装備品を発展途上国に無償貸与・譲与する関連法が20日からの通常国会に提出されると報道。
●1月20日 ドナルド・トランプ氏が米大統領に就任。
●1月20日 韓米日のイージス艦がミサイル探知追跡訓練を実施(22日まで)。
●1月20日 福井県の関電高浜原発で、工事用クレーンが強風のため核燃料保管建物に倒れかかる。放射線漏れはない模様。
●1月20日 ロシア海軍のミサイル駆逐艦と補給艦が、22~23日に実施される海自との捜索・救難共同訓練のため舞鶴港に寄港。
●1月20日 防衛省統合幕僚監部、陸海空自が23日から4日間、市ヶ谷防衛省内で台湾有事を想定した図上演習を行うと発表。

沖縄

●1月6日 在沖海兵隊、MV22オスプレイ空中給油訓練を再開。12月13日の墜落から3週間。詳細な事故調査続く中での強行。
●1月7日 辺野古新基地建設、約7か月ぶりに海上工事再開。キャンプ・シュワブ沿岸部にフロートを設置。
●1月9日 MVオスプレイ通過時、沖縄高専屋上で101dbの騒音測定。低周波音も心理的・物的影響の基準値上回る。
●1月10日 米軍伊江島補助飛行場にてパラシュート降下訓練中の米陸軍兵、提供施設外に着地。農作物や人的被害はなし。
●1月12日 沖縄市民連絡会、北部訓練場ヘリパッド工事現場への派遣機動隊に関する「県予算支出は違法」と住民訴訟を提起。
●1月12日 米空軍、うるま市津堅島訓練場水域でパラシュート降下訓練を実施。兵士及び物資を投下。事前通告なし。
●1月13日 県、辺野古埋立て承認「撤回」を検討。最高裁敗訴受け、対抗策の検討急ぐ。
●1月13日 米軍、うるま市で12日に実施したパラシュート降下訓練を「13・14日」と誤通知。訓練実施後に訂正。
●1月15日 宮古島市長選告示。陸自配備計画是非、経済活性化など争点に。自民・「オール沖縄」候補割れ4名が立候補。
●1月16日 日米地位協定の米軍属適用範囲明確化に関し、日米両政府が「補足協定」締結。岸田外相・ケネディ駐日大使が署名。
●1月16日 沖縄平和運動センター山城議長の釈放を求め緊急抗議行動。辺野古での抗議行動巡り逮捕・起訴され、約3か月間勾留。
●1月17日 佐喜真宜野湾市長、夜間騒音で沖縄防衛局に抗議。12~14日、CH53ヘリの異常音など市民からの苦情が増加。
●1月18日 沖縄防衛局、沖縄県政記者クラブ加盟14社に対し、辺野古臨時制限区域に「許可なき立ち入り」せぬよう申し入れ。
●1月19日 嘉手納基地所属F15戦闘機が同基地に緊急着陸。後部排気口カバーの一部がはがれた状態。
●1月20日 安倍首相、施政方針演説。北部訓練場一部返還などで負担軽減アピール。辺野古新基地建設は「最高裁の判決に従い、推進」と明言。
●1月20日 沖縄防衛局、県の「事前協議」要求に対し辺野古工事に関する説明文書送付。防衛局側は昨年末に「協議終了」と認識。
●1月20日 牧港補給地区周辺で捕獲のハブからPCB・DDT類を検出。底質調査では鉛も。浦添市が昨年調査を実施。

くわしく

特別連載エッセー「被爆地の一角から」100(最終回)「エッセーの舞台裏」 土山 秀夫  

公開日:2017.07.13

 私のエッセーは今回で100回目を迎えます。切りのいい節目ですので私の方からお願いして、今日で拙論の掲載を終わらせていただきます。
 読者の皆様には唐突にお感じかも知れませんが、実はこれまでも辞意を漏らしたことが2、3回はありました。しかし寛大な歴代の編集長から慰留をお受けしますと、ついズルズルと執筆を続けてきたというのが実際のところでした。
 振り返ってみますと、初代の梅林宏道編集長からエッセーのご依頼をお受けし、第1作「臭いの記憶」を執筆したのが2005年7月15日(ピースデポ「核兵器・核実験モニター」第238号)ですから、毎月ほぼ1回として12年目に入ったことになります。「モニター誌の内容と少しでも関連があればテーマはご自由にお選び下さい」とのことでしたので、それなら何とか書き続けられるだろう、とどこか軽い気持ちで引き受けたのが大きな間違いでした。自由に選べるという点がかえって重圧となるのを知ったのは、かなり時を経た後のことでした。
 ただ2010年位までは核兵器またはそれと関連のある政策について、曲がりなりにも忠実に被爆地の立場から批判を加えてきたつもりでした。その際、考えをまとめるのに示唆となった2つの委員会がありました。1つは日本学術会議「平和問題研究連絡委員会」という、大変長ったらしい名前の委員会です。ここでの6年間の特徴は文系・理系の約20名近くの委員が、元々は欧米先進国にくらべて低い扱いを受けている日本の「平和学」の普及、独立性を政府に答申する目的のものでした。またそれのみに捉われることなく、平和学を推進する上で阻害要因とみなされる分野にも切り込んだ自由な討論を旨としていました。例えば核兵器とその抑止論、憲法改正の可否(ちょうど衆参両院に憲法調査会が発足して間もなくだったため、同時進行的な討議の対象となった)などがそれでした。
 もう1つの委員会は故伊藤一長・長崎市長に私がお願いして、市長の諮問機関(平和推進専門会議)として発足させてもらったもの。メンバーは元外交官、核軍縮専門家、編集ないし解説委員クラスのジャーナリスト、地元学者の各2名とし、外交官は4、5年でメンバーを交代する。1998年から現在に至るまで継続中で、被爆地の私たちが国内外に目配りする上で参考になる点が多々ありました。
 ここまでの核兵器またはその政策に関するエッセーは、幸い東京のブックエース社から『平和文庫』の第3弾「核廃絶へのメッセージ――被爆地の一角から」としてすでに出版されています(2011年6月)。ところがここから私の筆は主に或る特定の人物に注がれていくようになります。理由は2つあります。第1は核兵器やその政策について書き進めていくうちに、私の方はたとえエッセーの形を取るにせよ、いつしか本誌であるモニター誌の視点と重複するように感じられてきたことです。しかしそれ以上に私が放置できないと考えたのは、その人物が信念と錯覚している独善的思想の持ち主である第2の点です。
 その人物こそ、今を時めく自民党総裁、総理大臣安倍晋三氏その人です。氏は自民党の「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」の事務局長を務めたこともあってか、「戦後レジームからの脱却」をスローガンに、2度の首相時代を通じて戦後民主主義の打破と立憲主義の否定に突っ走ろうとしています。しかもその根底には、尊敬する祖父・岸信介を戦犯扱いにした連合国への呪詛にも似た私情を絡めているだけに厄介と言えます。
 何はともあれ、長期間にわたってお付き合い下さった読者の皆様に心からお礼申し上げます。また貴重な誌面をご提供いただいた上、校正の労をお取り下さったピースデポのスタッフの皆様に感謝いたします。

くわしく

資料:長崎の若者による「核兵器のない世界を求める声明と提言」

公開日:2017.05.01

第26回国連軍縮会議(共催:外務省、国連)のプレイベントとして、「ユース非核特使フォーラム」が16年12月11日に長崎市で開かれた。被爆の実相の継承を担う国内外の若者14人が参加し、議論の成果をまとめた「声明と提言」を発表した。「声明と提言」は、「人間や都市、自然を脅かす核兵器と人類とは、平和的に共存できないと確信しています」と述べ、全ての国、核保有国、非保有国、一般市民特に若者、の4者に向け具体的提言を行っている。核兵器禁止条約交渉の開始も強く意識した内容となっている。出典:外務省ウェブサイト


(仮訳)
若者による核兵器のない世界を求める声明と提言
(2016年12月11日、長崎)

 私たちは、今日、71年前に原子爆弾を経験した都市である長崎に集まりました。若者として、核兵器のない世界に向けた歩みをいかに進めるかについて、自分たちの見解を示すためです。
 核兵器を巡る情勢は、今大きな転換を迎えようとしています。今年は、広島でG7外相会合が開催され、アメリカのオバマ大統領が広島平和記念公園を訪れ、印象的な演説を行いました。来年には、今年の国連総会での決議に基づいて、核兵器を禁止する、法的な拘束力のある条約についての交渉が始まります。
 歴史や文化、安全保障上の懸念の違いを受け、各国の核兵器に対する認識は異なっています。核兵器が安全保障にとって必要だという主張が幅を利かせており、いまだに世界には1万5千発以上の核兵器が存在しています。その上、核兵器を保有する国や日本を含む「核の傘」の下にある国々の一部は、核兵器の禁止に対する期待の高まりに反して、上記国連総会決議に反対しました。
 しかし、私たちは、人間や都市、自然を脅かす核兵器と人類とは、平和的に共存することはできないと確信しています。広島や長崎の原爆を辛うじて生き延びたにも関わらず、放射線の後遺症による肉体的な苦しみや、差別による精神的な苦しみを味わってきた被爆者は、核兵器保有の危険性について世界に警鐘を鳴らす存在です。
 将来を担うのは若者であり、私たちは、核兵器のない世界の実現という共通の目標と、原爆の悲惨な現実と、もう二度とこのような悲劇を繰り返してはならないという被爆者の方々の想いを受け継いでいく覚悟を、共に抱いています。
 私たちは、お互いに学びあい、歴史や文化の違いを乗り越えるためにアイデアを出し合うことを通じて、核兵器のない世界に向けて、若者の先頭に立っていきます。
 私たちは、全ての国と市民の皆さまに、核兵器のない世界の実現に向けた更なる努力を求め、そして次のことを提案します。

全ての国へ
★核兵器不拡散条約(NPT)に含まれている約束も含めて、核軍縮・不拡散に対するコミットメントを十分に果たすこと。
★核軍縮を加速させるため、NPTの執行機能の改善や、核兵器を禁止する法的拘束力のある条約の交渉などを通じて国際的な法的枠組みの強化をすること。

核兵器を保有している国へ
★核兵器保有の必要性について、安全保障や政治、経済性などの観点から再考し、国家の安全保障と国際的な地位を維持するための他の方法を模索すること。
★全ての核兵器国は、NPT上の義務を果たし、保有する核兵器の数を削減するための具体的な行動を取ること。
★自国及び世界をより安全にするため、NPT非締約国は、速やかに非核兵器国としてNPTに加入すること。
★少なくとも1つの国が、自国の核兵器プログラムを放棄することで模範を示し、「核兵器のない世界」の実現に向けた取組に参加することを期待する。
★国際的な安全保障環境の安定化に繋がらない、核兵器の近代化をやめること。
★不必要なリスクと危険をもたらしている即時発射警戒態勢から全ての核兵器を外し、また誤発射を防ぐこと。
★核兵器の管理には経験豊富な人員を配置し、事故を起こさないよう厳格に管理し、兵器利用可能な物質が、テロリストなど、それを盗もうと企てる人の手に渡らないようにすること。

核の傘の下にある国を含む、非核兵器国へ
★非核兵器国であり続け、「核兵器のない世界」の実現に向けたリーダーシップを発揮すること。
★「核の傘」に頼っている国は、その有効性や信頼性、リスクなどを踏まえて、現行の政策をやめ、非核兵器地帯の設置を含めて、核兵器に頼らない安全保障の枠組みを構築すること。
★核兵器の使用は、深刻な人権侵害であり、「核の冬」を含めた人道的および環境的に甚大な影響を世界規模で及ぼすことを発信するとともに、国際連合など安全保障を扱う機関に対して、核兵器のそのような側面に注目するように働きかけ、主要な課題とすること。
★非核兵器国が一丸なって、核兵器国が核軍縮の努力を加速させるように働きかけたり、核兵器を禁止する条約を策定することなど、核兵器のない世界の実現に向けた取組みを行い、それらの取組を核兵器国も巻き込んで国際社会全体で行うようにすること。
★日本は、唯一の戦争被爆国として、「核の傘」に頼ることをやめ、国際社会に対して核兵器の恐ろしさや非人道性について強いメッセージを発信し、また、核兵器を禁止する法的拘束力のある条約の交渉において積極的な貢献を行うこと。

世界の一般市民、特に若者へ
★核兵器が存在することにより我々の安全や環境、生存が脅かされており、核兵器は、現代の極めて重要な課題だと理解すること。核兵器は、危険で無責任でコストのかかる兵器であり、我々の安全や平和の保証には繋がらないと認識すること。
★広島・長崎の原爆や核実験などの核兵器がもたらす悲惨な現実、そして戦争一般についての悲惨な現実について、加害と被害の双方の視点から学び、決して忘れず、まわりの人たちにも同じようにすることを促し、記憶の風化を防ぎ、過ちを繰り返さないこと。
★一人ひとりの意見が重要であること、そして未来は我々の手の中にあることを信じ、様々な革新的なツールを使って発言すること。例えば、
— ソーシャルメディアを活用して、各国政府や国際機関に対して働きかけること。
— 若者に対して、政治的な議論や、関連する草の根活動に参加する機会となるプログラムを開発すること。
— 核兵器の壊滅的な影響についての理解促進のため、スマートフォン等のためのアプリなど、デジタルな教育ツールを開発し、教育現場でも活用すること。

くわしく

資料:イラン核合意の継続を科学者たちからドナルド・トランプ氏への書簡

公開日:2017.05.01

ドナルド・トランプ氏は選挙キャンペーンの中で、米、ロ、英、仏、中及び独とEUがイランとの間で15年7月14日に署名した「共同包括的行動計画(JCPOA)を「史上最悪の合意」と非難し、「大統領に就任したら破棄する」とほのめかした。ここに紹介するのは、就任式間近の今年1月2日、ノーベル賞受賞者を含む科学者と技術者37人が同氏に送った公開書簡である。科学者たちは、イランの核開発を防止するJCPOAを継続するよう強く訴えている。JCPOAについては本誌476-7号(15年8月1日)を参照。(編集部)


2017年1月2日

拝啓 トランプ次期大統領 様

 2015年8月9日、原子力と核兵器の物理及び技術に関する知識を持つ科学者と技術者のグループが、正式には共同包括的行動計画(JCPOA)として知られているイラン合意について、オバマ大統領に公開書簡を送りました。その中で私たちは、JCPOAを「過去に交渉されたどの核不拡散の枠組みよりもはるかに厳しい制約を持つ、画期的な合意」であるとの認識を述べました。

 「履行日」から11か月が経過した今、JCPOAの現状に対する私たちの評価を貴殿にお伝えするためにこの書簡をしたためています。この合意に従って、イランは約3分の2の遠心分離機の稼働を停止し、IAEAの封印をして保管しています。さらに、イランは、兵器製造に使用可能な(兵器級)高濃縮ウランの出発物質である、低濃縮ウランの備蓄の95%以上を国外に移転しました。イランは、暫定的共同行動計画(JPOA)の合意以前に行っていたような濃縮度20%近くのウランをもう生産しておらず、濃縮度は3.67%に制限されています。遠心分離能力が低下されたことと、部分的に濃縮されたウランの大量の備蓄が廃棄されたことにより、イランが核兵器1発を製造するのに十分な量の高濃度ウランを取得するのに要する時間(ブレイクアウト・タイム)は、JPOAの交渉中は数週間でしたが、何か月にも延びました。今や国際原子力機関(IAEA)の査察官は、イランのナタンツ濃縮施設に毎日立ち入る権利を持ち、同施設に設置されたモニタリング機器によりオンラインで継続的に濃縮度を測定することができます。私たちはこの施設で突然多量の濃縮ウランが製造されることはありえないと確信します。

 イランの重水炉の原子炉容器である巨大な「カランドリア」は、運転不可能な状態になっており、また、イランの重水の備蓄は130トンに減少し、この水準に制限されています。最近IAEAにより報告された余剰の重水0.1トンに戦略的な重要性はありませんが、この問題も11トンの重水を国外移転することで解決されました。このことはIAEAによって検証されています。原子炉の設計変更によってプルトニウムの生成量は以前の原子炉の約10%に減少するでしょう。そして、新しい原子炉の建設が完成して操業を開始したら、プルトニウムを含有した使用済み燃料はイランから搬出されます。これらの措置によってイランは、核兵器のもうひとつの原料であるプルトニウムの生産手段を失うことになります。

 さらに、イランは、核不拡散条約に基づいてIAEAと締結した保障措置協定「追加議定書」の手続きをさらに強化することに同意しました。この同意により、IAEAの査察官は、特に遠心分離機の製造・研究開発・保管場所、ウラン鉱山、そして秘密のウラン濃縮施設と疑われる場所の全てに立ち入ることができるようになりました。

 つまり、JCPOAはイランが突然大量の核兵器製造のための物質を生産しうるというリスクを劇的に低減しました。その結果、イランの周辺国が感じていた自国で核兵器を開発するという選択への圧力が減少し、どの周辺国も新たな民生・軍事両用の核開発計画を発表していません。

 当面は、実施中の検証手続きにより警戒を続けることが必要でしょう。前回の書簡の中でも述べたように、もし約10年後に、イランがJCPOAで許されているように、自国の濃縮能力を増やす決定をした場合は、さらに強力な検証手続きを導入することが望ましいでしょう。またそうすることは、国際的に受け入れられているIAEAの慣行に従って認証された最新の検証手続きを履行するという、JCPOAにおけるイランの誓約とも合致します。現在はイラン一国のみで行っている原子炉用の燃料生産プログラムに、他の国が参加することも、透明性を高めるために望ましい方法かもしれません。

 JCPOAは、貴殿あるいは将来のどの米国大統領からも選択肢を奪うものではありません。むしろJCPOAは、貴殿がイランが核兵器を製造しようとしているのか否か、またそれがいつなのかを知ることをより容易にしています。また、JCPOAにより、(核兵器製造の試みに対する)効果的な対策をとる時間と正当性を得ることができます。

 私たちの技術的な評価では、多国間合意であるJCPOAは、イランの核開発計画に対する強力な防壁になっています。私たちは、貴殿が、この米国の死活的な戦略的資産であるJCPOAを継続されることを求めます。

リチャード・L・ガーウィン
 (IBM名誉フェロー)
ロバート・J・ゴールドストン
(プリンストン大学)
ジークフリード・S・へッカー
 (スタンフォード大学)
マーティン・ヘルマン
(スタンフォード大学)
ラッシュ・D・ホルト
(米国科学振興協会)
R・スコット・ケンプ
(マサチューセッツ工科大学)
フランク・フォン・ヒッペル
(プリンストン大学)
他の署名者30名

(訳:ピースデポ)

くわしく

核兵器禁止交渉への提案「枠組み条約」で核保有国・依存国の参加を促す

公開日:2017.05.01

2017年に核兵器禁止条約の交渉を開始するという歴史的決議「多国間核軍縮交渉を前進させる」(A/RES/71/258)が16年12月23日、国連総会で採択された。この決議に基づいて、3月下旬、禁止条約交渉のための会議がニューヨークの国連本部で始まる。しかし決議は、交渉に付されるべき条約案の内容に詳細には踏み込んでいない。本稿では、条約にどのような要素がいかなる構造をもって含まれるべきかを検討した上で、核保有国や依存国の段階的参加を促しうる「枠組み条約」の素案を示したい。


条約の望ましいあり方を考察する

 国連総会決議71/258(以下「決議」という)(注1)の内容や核兵器の人道上の影響に関する3度の国際会議などここ数年の有志国を中心とする国際社会の努力を考え合わせれば、核兵器禁止条約の交渉、制定が「壊滅的な人道上の結末」への懸念に下支えされた緊急の要請であることは明らかである。
 そのような前提に立って、交渉に付される「禁止条約」が備えるべき要素や特徴を、以下のように考えた。

1.核兵器を全面的に禁止する

 交渉されるのは、「核兵器を禁止し」、核兵器の「完全廃棄に導く」、「法的拘束力のある」文書である(決議主文8節)。よって第一に条約に含まれるべき要素が核兵器の全面的禁止であることは論をまたない。

2. 核兵器の完全廃棄をめざすことを法的に誓約する

 決議主文8節は「禁止」が核兵器の完全廃棄へと導かれることを要求している。いかなる核兵器禁止条約であっても、それだけで将来の完全廃棄に貢献するという主張もありうる。しかし、主文8節の要求をより明確に達成するには、決議前文9節に列挙されている、核不拡散条約(NPT)に関連して従来から繰り返されてきた政治的な諸誓約を、法的誓約にすることが望ましい。

3.現存する核兵器に関する透明性措置やリスク低減措置を追求する

 核兵器の使用や爆発がもたらす「壊滅的な人道上の結末」への憂慮が禁止条約(交渉)の起点にあることを考えれば、核兵器が現に存在していることによる核爆発リスク(偶発的、人為的を問わず)の低減措置についても追求されるべきである(決議前文3節参照)。主文7節はこれら措置の「実施を適宜、検討することを勧告」しており、これら措置についても「禁止」と共に条約交渉の対象にすることは、決議の趣旨に沿う。

4.廃棄と検証は必ずしも含まれなくてもよい

 決議前文17節は「核兵器を禁止する法的拘束力のある文書」、その次の前文18節は「不可逆的で検証可能で透明性のある核兵器の破壊のための追加的措置」について述べている。「禁止」について述べたのとは別の節で「破壊」に言及していることから、「検証」および「破壊」ないし「廃棄」に関する規定は条約に必ずしも含まれなくてよいことが含意されていると考えられる。
 とはいえ、最終目標が「完全廃棄」であり、「条約」がそこ「に導く」(主文8節)法的文書とされる以上、「条約」は完全廃棄を誓約する内容を含むべきであろう。

5.「禁止」への段階的参加を可能にする

 決議はまた、「すべての国連加盟国に対し、(交渉)会議に参加するよう奨励」(主文9節)している。事実、最終的には核保有国が関与することなしに「核兵器のない世界」は実現できない。しかし決議採択に際しての国連総会での討議内容(注2)やそれ以前からの核保有国・非保有依存国の態度をみると、それらの国が禁止条約に当初から参加することは期待できない。
 多数の有志国によって全面的禁止のみを規定する条約を交渉、制定すれば、核兵器が一層使いにくいものとなり、保有国による核兵器削減を促すという考え方もあろう。他方、核保有国や非保有依存国とりわけ後者の姿勢に流動化を促して交渉への参画につなげ、支持・加盟を段階的に拡大しうるような条約を探求する意義は極めて大きい。それは「完全廃棄に導く」ための具体的な方策ともなる。

「枠組み条約」モデルの提案

 以上の考察から、我々は、全面的禁止の選択を確保しつつ、完全廃棄の法的誓約、透明性・リスク低減措置など前項で述べた諸要素をも包含し、選択的、段階的な加盟を可能にするような「枠組み条約」モデルを提案したい。
 決議が下敷きにした公開作業部会(OEWG)報告書(注3)は、「枠組み条約」について「核軍縮プロセスの様々な側面を漸進的に扱った相互に補強しあう一連の諸条約、あるいは、核兵器のない世界に徐々に進むための『シャポー』合意とそれに続く補足合意や議定書から成る」(38節)ものであると述べている。我々もまた同じ趣旨で「枠組み条約」という言葉を用いる。
 このような例の一つとして「気候変動枠組み条約」(92年採択。以下カッコ内は採択年)がある。この「枠組み条約」のもとに国別の温室効果ガス排出上限を決めた京都議定書(97年)などが作られた。さらに、国際慣習法化している「世界人権宣言」(48年)と、同宣言を具体化した国際人権規約をはじめとする国際人権諸条約も、総体として「枠組み条約」構造をなしていると言える。軍縮分野には「特定通常兵器使用禁止制限条約」(80年)と、これと同時に署名開放された、禁止もしくは制限される兵器種ごとの4つの議定書があり、同「条約」の締約国が議定書を選択的、段階的に批准してゆく構造になっている。
 以上の一連の法的文書は、大きな枠組みを「基本合意」(注4)によって定め、「基本合意」の締結当初は将来のニーズや世界の情勢、技術の発展段階が予見できなかったり、各国の事情から目標達成のための手段に関する合意がとれなかったりする個別のより具体的な目標や目標達成方法を、議定書などで補っている。
 核兵器廃絶という課題が直面している状況は、上述の様々な「枠組み条約」構造が選択された際の状況と似ている。つまり「核兵器のない世界を実現し維持する」という究極的な目標には総論的合意があるが、個別の目標や方法、時間枠などの各論をめぐっては国家間に大きな隔たりがあり、それが課題解決への前進を妨げているという状況である。
 この状況を乗り越えるための一案として、我々は、「基本合意」を定める「枠組み条約」(「核軍縮枠組み条約」と呼ぶことにする)本体と、当初から付属する複数の「議定書」とからなる法的文書の骨子を考案した(注5)。

「核軍縮枠組み条約」骨子案

1.「枠組み条約」本体

 「核軍縮枠組み条約」全体の目的・趣旨、基本となる法的誓約、条約本体と議定書の関係、締約国会議や運用にかかる条項などを規定する。
(1) 核戦争により全人類の上にもたらされる惨害と核戦争の危険を回避するために、国家の兵器庫から核兵器を廃棄し、核兵器のない世界を実現することを目的とする。
 この文言は、NPT前文と国連総会決議第1号(A/RES/(1))から採用されている。
(2) 次のような法的誓約を行う。
核兵器ない世界を実現、維持する上で必要な枠組みを確立すべく、特別な努力を払う(i)。
厳格かつ効果的な国際管理の下においてすべての側面での核軍縮に導くための条約の交渉を誠実に行い、かつ完結させる(ii)。
核兵器のない世界という目的に完全に合致した政策を追求する(iii)。
核保有国は、保有核兵器の完全廃棄を達成する明確な約束を行う(iv)。
 これらの誓約は、過去に国際司法裁判所(ICJ)から全会一致で勧告され、あるいは核軍縮・不拡散交渉の中ですでに普遍的な合意が形成されている。したがって、核保有国も、その同盟国である非保有依存国も、受け入れることができるはずである。

i  2010年NPT再検討会議最終文書「結論ならびに今後の行動に向けた勧告」の「B-iii」を参照。
ii 国際司法裁判所(ICJ)勧告的意見(96年7月8日)パラグラフ105(2)F項、および核不拡散条約(NPT)6条を参照。
iii 2010年NPT再検討会議最終文書(10年5月28日、NPT/CONF.2010/50(vol.1))「結論ならびに今後の行動に向けた勧告」の「行動1」を参照。
iv 2000年NPT再検討会議最終文書(00年5月19日、NPT/CONF.2000/28)15節6参照。

(3) (1)の目的、(2)の法的誓約を具体化するための議定書を制定する。議定書のいくつかは「枠組み条約」本体と同時に交渉され制定される。それに加えて将来の「枠組み条約」締約国会議において新しい議定書を制定することができる。
(4) この「枠組み条約」本体に同意した国が条約締約国となる。締約国は、次項「2.」に掲げるような議定書に選択的、段階的に加盟することができる。「枠組み条約」本体と議定書には、個別に締約国(加盟国)会議が設置できる。各議定書の内容は「枠組み条約」本体の趣旨に添う範囲内で、それぞれの議定書締約国(加盟国)会議で適宜見直すことができる。
(5) 締約国(加盟国)会議、運用機関などの実務的条項、その他の慣用条項、および発効要件などを定める。発効要件については、締約国の事情により段階的参加を許すような柔軟なものとすることが妥当である。

2.議定書

 「枠組み条約」本体と同時に制定される議定書には以下のようなものが含まれるべきであろう。

A. 核兵器の全面的禁止に関する議定書
 核兵器の保有、開発、製造、実験、入手、備蓄、移動、配備、使用および使用の威嚇、ならびにこれらへの援助、出資、奨励もしくは勧誘を禁止する。
 なお、「使用および使用の威嚇」に関しては、核爆発による壊滅的な人道上の結末をもたらす行為そのものであり、かつ使用側の意図が歴然と存在することから、使用に至らない「保有」や「備蓄」との間に区別すべき重要な違いが認められる(注6)。96年のICJ勧告的意見が「核兵器による威嚇またはその使用」の合法性をもっぱら論じたのもそのような区別が存在するからである。そこで「使用および使用の威嚇」を禁止する議定書を独立させることも考えられる。

B. 積極的義務に関する議定書
 核被害者・被爆者の権利の確保、破壊された環境の回復、条約への支持・協力、国民への教育・啓発などの義務を定める。

C. 核兵器の透明性措置に関する議定書
 核兵器の完全廃棄に不可欠な透明性を前進させるための議定書。例えば、核保有国に保有核兵器及び運搬手段の種類、配備・非配備の別、もしくは警戒態勢等に関する情報を標準的な様式で公開することを義務付ける議定書が考えられる。また議定書には透明性措置を監視・前進させる方策を検討、立案する委員会の設置が規定されてもよい。
 このような透明性措置は、2010年NPT再検討会議最終文書の「行動5」(核兵器国)、「行動20」(すべてのNPT加盟国)によって誓約されているが、この議定書はそれを全ての核保有国の法的義務として拡大するものとなる。

D.核兵器の役割及びリスクの低減措置に関する議定書
 過誤によるものや偶発的使用を含めた核兵器使用の可能性を低下させるために、あらゆる軍事及び安全保障上の概念、ドクトリン、政策における核兵器の役割と重要性をいっそう低減させることを約束する議定書。低減措置には核兵器使用に関する協議、戦略核兵器の警告即発射体制、高度警戒態勢の解除等の一方的措置や複数の核保有国間の措置、非保有依存国を含む拡大核抑止体制における合意などが含まれるだろう。
 さらに、役割及びリスク低減措置の文脈で、先行不使用議定書を独立に設定することも検討に値する。いくつかの核保有国は参加できるはずである。
 また、役割及びリスク低減措置を監視・前進させる低減委員会の設置も考えられる。

E. 包括的核兵器禁止条約(CNWC)の準備に関する議定書
 「枠組み条約」本体と同時に制定することが可能であれば、検証を伴う核兵器の全面的廃棄を目的とするCNWCの準備プロセスに関する議定書についても、検討に値する。
 一方で、本提案では「枠組み条約」本体といくつかの議定書の早期制定を優先させる必要性を強調したい。

柔軟な採択・発効プロセス

 「枠組み条約」本体の締約国は、上記のいずれの議定書にもいつでも加盟することができ、議定書は一定の条件が達成されれば発効する。
 たとえば、核兵器禁止の動きを推進してきた有志非保有国は、当初からすべての議定書に加盟するかもしれない。一方、非保有依存国は、当初は「枠組み条約」本体のみの加盟に留まるが、やがて議定書B・C・Dのいずれかに加盟し、さらに徐々に議定書Aにも加盟する国が増加してゆくことも期待される。核保有国も「枠組み条約」本体に同意できるはずであり、さらには議定書B、C、D(とりわけ「先行不使用議定書」)への加盟へと展開してゆくことができる。
 国際社会の生きた現実は、条約の加盟、発効プロセスを加速も停滞もさせうる。したがって、「枠組み条約」本体と「議定書」への加盟、発効プロセスは、1国的、2国間的、多国間的核軍縮交渉、あるいは新たな非核兵器地帯の創設とそのための交渉等といった地域的努力と同時並行的に進められたときに、活性化されるだろう。そのような努力の進捗によって、新しい議定書が必要な状況が生まれれば、締約国会議で協議し制定できるのも、「枠組み条約」の利点である。

日本にとっての意義

 最後に「枠組み条約」が日本に与えうるインパクトについて考える。
 日本は自らの主導した国連総会決議(注7)で「核兵器のない平和で安全な世界を(……)めざす」(主文1節)としているが、その総論的方針が具体的行動によって裏付けられていない。「枠組み条約」はこのような現実を打開する有効な手がかりを提供すると思われる。
 「枠組み条約」本体は日本の従来の主張を考慮すればすぐにでも締約できる内容である。その上で、たとえば日本が取り組んできた、被爆者援護や軍縮教育・啓発活動は議定書Bへの加盟によって新たな国際的展開の場を得るであろう。また、NPDI(注8)を通じて取り組んできた透明性向上のための「標準様式の作成」などの活動は、議定書Cの制定に積極的に関与することによって加速されるだろう。
 議定書AとDへの加盟の検討は、日本政府にとって米国の核の傘依存から脱却する道を検討することと密接に関係する。この文脈では、北東アジア非核兵器地帯設立によって核兵器依存から脱却するプロセスが検討の対象になるはずである。その際には、「枠組み条約」を活用することで核兵器の世界的禁止と地域的禁止の相互関係が見えやすくなり、韓国、北朝鮮などとの協議がやり易くなるはずである。日本はこのように「枠組み条約」をプラットフォームとした国際的協調を通して、核兵器の全面的廃絶に向けて自らの政策を段階的に進化させてゆくことができる。
 日本がとっている現在の核軍縮・不拡散政策をそのまま出発点としながら、被爆国としての世界的な役割を強めてゆくために、この「核軍縮枠組み条約」のアプローチは極めて有用であると考える。私たち市民も、核兵器廃絶への展望をもって「枠組み条約」を持続的に活用できる。
 ピースデポは上記の骨子案を提言書の形にまとめ、禁止条約交渉決議を主導した国々、日本を含むNPDI諸国や関係者に送付する計画である。(田巻一彦、荒井摂子、梅林宏道)


1 決議全訳は本誌508号(16年11月15日)。第1委員会採択時のものだが変更されていない。
2 たとえば、第71回国連総会第1委員会での米ウッド大使の発言や豪州クイン大使の発言。前者は本誌506-7号(16年11月1日)、後者は以下のサイトを参照。www.reachingcriticalwill.org/images/documents/Disarmament-fora/1com/1com16/statements/17Oct_Australia.pdf
3  A/71/371。16年8月19日に採択され、第71回国連総会に提出された。本誌505号(16年10月1日)に抜粋訳。
4 先に引用したOEWG報告書38節に言う「『シャポー』合意」を以下こう呼ぶ。
5 コスタリカとマレーシアが国連総会に提出した「モデル核兵器条約」(A/62/650)も、時間枠の柔軟な5つの実施段階を含んでいる点では「枠組み条約」的性質を有する。ただ、同モデル条約では検証と廃棄に関する規定が当初から設けられており、その点が、本稿での提案とは異なる。
6 ピースデポがOEWG第2会期に提出した作業文書(A/AC.286/NGO/5)を参照。本誌496-7号(16年6月1日)に掲載。
7 「核兵器の完全廃棄に向けた、新たな決意のもとでの結束した行動」(A/RES/71/49)。本誌509号(16年12月1日)に主文全訳。
8 不拡散・軍縮イニシァチブ。参加国は日本、豪州、ドイツ、オランダ、ポーランド、カナダ、メキシコ、チリ、トルコ、UAE、ナイジェリア、フィリピンの12か国。

くわしく