核兵器・核実験モニター バックナンバー

【日誌】核・ミサイル/沖縄(17年5月21日~6月5日)

公開日:2017.09.15

CD=ジュネーブ軍縮会議/CEO=最高経営責任者/DPRK=朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)/G7=主要7か国/ICBM=大陸間弾道ミサイル/IS=「イスラム国」/PKO=(国連)平和維持活動/WH=ウェスチングハウス


●5月21日 DPRK、中距離弾道ミサイル「北極星2」の発射に成功と報ずる。金正恩朝鮮労働党委員長は量産を指示。
●5月21日 2050年までの脱原発を問うスイス国民投票。賛成58.2%、反対41.8%。
●5月22日 国連・核兵器禁止条約交渉会議ホワイト議長が条約案を提示。前文でヒバクシャの苦しみに留意すると言及。(本号参照)
●5月23日付 インドが新たに10基(700万kW)の原発建設を決定。現在22基(678万kW)が稼働中、670万kW分が建設中。
●5月23日 DPRK、最近のミサイル実験は自衛目的の正当な行為であり国際法に違反しないとCDで主張。
●5月24日 東芝子会社で経営破たんした米WHグティエレス暫定CEO、米南部で進行中の原発4基からの撤退方針を明らかに。
●5月27日 南スーダンPKO派遣の陸自施設部隊・約350人のうち、最後の40人が帰国。
●5月27日 伊タオルミナでのG7首脳会議が閉幕。共同声明でDPRKに核・ミサイル放棄を求め、制裁強化を示唆。
●5月28日付 DPRK、新型対空迎撃ミサイル発射実験に成功と発表。金正恩委員長は量産を指示。
●5月29日 DPRKが東部元山から短距離弾道ミサイル1発を発射。450km飛行し日本海に落下。
●5月30日 朝鮮中央通信、前日のミサイル発射は精密誘導システムを使ったと報じる。
●5月30日 楊・中国国務委員(外交統括)が岸田外相と都内で会談し、朝鮮半島問題は武力ではなく外交的に解決すべきと主張。
●5月30日 米国防省、加州バンデンバーグ基地から地上配備型迎撃ミサイルでICBMの迎撃実験に成功したと発表。
●5月30日 米電力大手エクセロン、コスト競争力の低下でスリーマイル島原発を19年に閉鎖することを決定。
●5月31日 露海軍、シリア・パルミラのIS拠点に向け地中海上の艦船から巡航ミサイル4発を発射し命中と発表。
●6月1日付 5月25、26日に北京で中国政府高官が米国防次官補代行と会談し、今は対話でなく圧力を強めねばと伝えたと判明。
●6月1日 防衛省は米空母2隻を含む8隻と海自ヘリ空母「ひゅうが」を含む2隻の計10隻が日本海で共同訓練を開始と発表。
●6月2日 プーチン露大統領、DPRKを念頭に、小国は核兵器を持つ以外に独立と安全を守る方法がないと発言。
●6月3日 日米豪防衛相、DPRKの核問題解決のため今は対話ではなく圧力を加えるべきとの共同声明を発表。
●6月3日 国連安保理、DPRKの核・ミサイル開発に関わる14個人と4団体の海外渡航の禁止や資産を凍結する制裁決議を採択。
●6月3日 DPRK戦略軍、安保理制裁決議に先立ち、自国の核攻撃でグアム、ハワイ、アラスカ、米本土を一瞬で焦土化できると威嚇。
●6月5日 空自主力戦闘機となるF35の国内組み立て初号機が愛知県の工場で公開。1機147億円で42機導入の予定。
●6月5日 サウジアラビア、バーレーン、アラブ首長国連邦、エジプトの4か国、テロ組織を支援しているとしてカタールと国交断絶。

沖縄

●5月23日 沖縄市米軍基地返還跡地サッカー場の汚染除去完了。有害物質含むドラム缶が見つかり、市が除去作業費として7,100万円投じる。政府に財政負担求める方針。
●5月23日 米国防省、18会計年度国防予算案として前年度比約10%増の5745億ドル要求。米本国や海外の基地閉鎖再編も求める。
●5月25日 辺野古埋め立て工事着工から1か月。護岸工事の砕石により、海中が白濁。
●5月26日 嘉手納基地所属F15C戦闘機から部品の一部落下。離陸前点検は異常なし。重さ2.3kg、海上飛行中に落下した可能性。
●5月27日 米海兵隊ネラー総司令官、グアム移転計画の見直しに言及。翁長知事、辺野古移設含む現行の再編計画に疑問呈す。
●5月27日 辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会総会。沖縄県へ県外土砂搬入規制の実効性を高める働きかけを行うことを確認。
●5月29日 嘉手納基地所属米空軍兵をひき逃げ容疑で緊急逮捕。読谷村の国道で衝突事故を起こし、現場から逃走。軽傷者1名。
●5月29日 県、沖縄防衛局へ辺野古新基地建設工事に関し岩礁破砕許可申請を求め再度行政指導。防衛局は「不要」との立場。
●5月29日 全国港湾労組、日本港運協会へ辺野古基地建設工事用の土砂運搬拒否を求め要求書提出。違法行為への加担拒否訴え。
●5月30日付 県、7月にも辺野古新基地建設工事差し止め求め国を提訴する方針。併せて工事停止の仮処分も申し立て。
●5月31日 在韓米軍烏山空軍基地滑走と工事に伴い、同基地所属U2偵察機が嘉手納基地に飛来。U2偵察機4機と空軍兵約180人を一時配備。配備期間は不明。
●5月31日 95~96年に普天間返還問題交渉に関わった元国土事務次官が作成の「下河辺淳文書」を、沖縄県公文書館が一般公開へ。
●6月1日 辺野古新基地建設に抗議する市民ら約50人、機動隊員によりキャンプ・シュワブゲート前歩道に約1時間閉じ込め。
●6月1日付 16年沖縄県内での一般刑法犯の起訴率18.8%。日本平和委員会調べ。
●6月2日 キャンプ・シュワブゲート前、機動隊員が基地建設抗議者らを排除中に、市民2人が負傷し救急搬送。
●6月3日 キャンプ・シュワブ所属米海兵隊員を酒気帯び運転容疑で現行犯逮捕。
●6月5日 防衛省、8月にも宮古島陸自駐屯地建設着手。用地取得に向け手続き進める。工事による地下水への悪影響が懸念。

くわしく

<資料>日本学術会議「軍事的安全保障研究に関する声明」

公開日:2017.09.15

[資料]
平成29年(2017年)3月24日
第243回幹事会

軍事的安全保障研究に関する声明

日本学術会議

 日本学術会議が1949年に創設され、1950年に「戦争を目的とする科学の研究は絶対にこれを行わない」旨の声明を、また1967年には同じ文言を含む「軍事目的のための科学研究を行わない声明」を発した背景には、科学者コミュニティの戦争協力への反省と、再び同様の事態が生じることへの懸念があった。近年、再び学術と軍事が接近しつつある中、われわれは、大学等の研究機関における軍事的安全保障研究、すなわち、軍事的な手段による国家の安全保障にかかわる研究が、学問の自由及び学術の健全な発展と緊張関係にあることをここに確認し、上記2つの声明を継承する。

 科学者コミュニティが追求すべきは、何よりも学術の健全な発展であり、それを通じて社会からの負託に応えることである。学術研究がとりわけ政治権力によって制約されたり動員されたりすることがあるという歴史的な経験をふまえて、研究の自主性・自律性、そして特に研究成果の公開性が担保されなければならない。しかるに、軍事的安全保障研究では、研究の期間内及び期間後に、研究の方向性や秘密性の保持をめぐって、政府による研究者の活動への介入が強まる懸念がある。

 防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度」(2015年度発足)では、将来の装備開発につなげるという明確な目的に沿って公募・審査が行われ、外部の専門家でなく同庁内部の職員が研究中の進捗管理を行うなど、政府による研究への介入が著しく、問題が多い。学術の健全な発展という見地から、むしろ必要なのは、科学者の研究の自主性・自律性、研究成果の公開性が尊重される民生分野の研究資金の一層の充実である。

 研究成果は、時に科学者の意図を離れて軍事目的に転用され、攻撃的な目的のためにも使用されうるため、まずは研究の入り口で研究資金の出所等に関する慎重な判断が求められる。大学等の各研究機関は、施設・情報・知的財産等の管理責任を有し、国内外に開かれた自由な研究・教育環境を維持する責任を負うことから、軍事的安全保障研究と見なされる可能性のある研究について、その適切性を目的、方法、応用の妥当性の観点から技術的・倫理的に審査する制度を設けるべきである。学協会等において、それぞれの学術分野の性格に応じて、ガイドライン等を設定することも求められる。

 研究の適切性をめぐっては、学術的な蓄積にもとづいて、科学者コミュニティにおいて一定の共通認識が形成される必要があり、個々の科学者はもとより、各研究機関、各分野の学協会、そして科学者コミュニティが社会と共に真摯な議論を続けて行かなければならない。科学者を代表する機関としての日本学術会議は、そうした議論に資する視点と知見を提供すべく、今後も率先して検討を進めて行く。

出典:www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/
kohyo-23-s243.pdf

くわしく

【「軍事研究」反対を継承】玉虫色の学術会議声明――科学者間に意見の相違も九州大学名誉教授 中山正敏

公開日:2017.09.15

1.はじめに

 2015年度から発足した防衛省の「安全保障技術研究推進制度」(安保研究推進制度)をきっかけとして、日本学術会議は軍と科学研究との関係について再検討を行い、17年3月に新たな「軍事的安全保障に関する声明」(9ページ資料)を決定した。この声明は、1950年、67年の「戦争を目的とする科学の研究には絶対にしたがわない」という趣旨の声明を承継するもので、学者の良識を示したものとして評価されている。しかし、少し踏み込んでみると、問題はそう簡単ではない。なお望月衣塑子(「世界」6月号)、小沼通二(「科学」6月号)各氏の論考を参照されたい。

2.声明までの経緯

 今回の再検討の起こりは、16年4月の総会における大西隆会長の「大学などの研究者が、自衛目的の研究をすることは許容されるべきだ」という趣旨の私見発言であった。同年6月に杉田敦法政大学教授を委員長とする検討委員会が設置され、委員会には多くの研究者や団体から意見が寄せられた。丁寧な議論を重ね、市民を含めた公開フォーラムを開くなどして、3月7日に声明案が作られて公開され、3月24日に会長、部会長を含む幹事会で決定された。
 このような重大事項を総会で決定しなかったのは、奇異である。検討委の議論の大勢は軍事研究の拒否であったが、会長の意見、また小松利光検討委員(九州大学名誉教授)の「外の脅威には自衛力を高めるべきで、研究者も身綺麗ではすまされない」という意見などがあった。隠れ容認派もあるので、50年代のように総会では可決されない恐れ(本誌16年11月15日号の小文参照)があり、妥協の措置であったと思われる。
 総会では「声明」が紹介され、9人の会員が意見を述べた。反対は小松会員1人で、「自衛についての議論が不足している。安全保障あってこその学問の自由だ。国民の生命・財産の確保に無責任と思われる」という持論による。他の8人は声明を支持した。羽場久美子会員は、「科学者は戦争をより残酷なものにしてきた。研究資金の議論はプラグマティックであり、思想性に欠ける」と指摘した。アジアの現状についても、「北朝鮮のミサイルを地対空ミサイルで迎撃するのでは戦争を拡大する」という趣旨の発言があり、産経新聞はこれを「浮世離れしている」と論評した。討論の最後に「会長は、声明を守ってください」という野次が飛び、会長は「守ります」と応じたという。

3.声明の内容

 しかし声明文の中身は、玉虫色である。まずタイトルは、ずばり「軍事研究への不参加」ではない。大西会長は、「防衛省は軍事研究という言葉を使っていない」と言い続けた。声明文では、「軍事的手段による安全保障にかかわる研究」が、「学問の自由及び学術の健全な発展と緊張関係にある」(強調は筆者による)と認識して、過去の声明を承継するとしている。
 声明は安保研究推進制度について、「明確な目的に沿って公募・審査が行われ」、「内部の職員が研究の進捗管理を行うなど、政府による研究への介入が著しい」と述べたうえで、「(制約のない)民生分野への研究資金の一層の充実」を求めている。さらに、いわゆるデュアルユースの問題を指摘し、「(転用の)可能性のある研究について」、「技術的・倫理的に審査をする制度を設ける」ことを、大学などの研究機関に提言している。
 これらの見解は妥当と思われるが、総体として例えば防衛省資金への応募を禁止するものではない。むしろ、しかるべき手順を踏めば応募してもよい、と読むことができる。豊橋科学技術大学の学長である大西氏は、「国民の90%が防衛装備の現状維持、さらには向上を求めている」のだから、「応募をしてもよい」という見解である(日経ビジネス電子版、17年4月11日のインタビュー)。ただし、「競争的研究資金(約4千億円)の中で、防衛省の予算(増加しても110億円)は少額なので、民生部門の研究からの転用が考えられるべきで、学術会議の議論はその点についてまだ不十分だ」としている。

4.各大学の反応

 もちろん、多くの大学は「大西路線」ではない。新潟大、琉球大では、行動規範として軍事研究を行わない、としている。安保研究推進制度についてのNHKアンケートによれば、「応募を認める」が東京農工大の1大学、「応募を認めない」が九大、東大、早大など16大学、「審査を行った上で判断する」が熊本大や大阪府立大など15大学である。東京農工大は、「申請段階では明確なルール(方針・内規等)がなく、研究受入段階における外部資金等受入審査会において、研究内容に応じた必要な審議・審査を行っている。申請段階での審査は今後検討する」としている。京大、東北大など47大学は、「対応は未定」としている。
 九大の例では、「安全保障・軍事技術に関わる研究ファンドへの応募等について」(平成28年4月6日付け九大連企第2号通知)に基づき、役員会において審議し、総合的に判断した結果、平成29年度も引き続き本学としての申請は行わないこととなった」という通知が、4月11日付で各部局長宛に出された。3月に声明が発出されたことが、新年度の方針の早期決定を促したと言える。
 日本物理学会では、「内外を問わず軍隊と援助その他一切の協力関係を持たない」という67年年の「決議三」から50周年を記念したシンポジウムが開かれた。席上、防衛省以外にも、米軍資金や企業の軍事技術研究などが大学にも波及している状況が指摘され、企業への就職の問題点も含めた議論がなされた。そして、「学会」の公共性からも、今後も検討して行くとの結論をえた。

5.「声明」反対の動きも

 大西氏の意見は、自衛隊が国民に支持されているという現実認識に立脚している。軍事研究に懸念を持つ意見表明が多い中で、最近ネットでは、「防衛研究推進を求める自由市民の会」により声明の撤回を求める署名運動がなされており、すでに3千を超える署名が学術会議に提出されている。筑波大学新聞のアンケートでは、応募について理系学生の42%が賛成、22%が反対なので、応募の禁止は学問の自由の侵害だと非難している。また、安全保障面からの必要性、企業との秘密条項を含んだ研究協力を行っている大学の現実を指摘している。
 これらに対して、「声明」が十分に答えてはいないことは、杉田委員長も認めている。物理学会のシンポジウムでは、吉岡斉九州大学教授が、戦後の反省・ヴェトナム戦争反対に代る大義として、アジアの包括的軍縮の一環としての軍事研究の縮減を目指す必要があると述べた。韓国での北朝鮮、中国に対して柔軟な外交路線の新大統領の誕生のように、アジアのほとんどの国では、中国包囲政策を取っていない。
 前稿でも指摘したように、軍事研究の問題は、学者の中だけで閉じるのではなく、広く市民の立場から考えねばならない。「声明」では、軍事的でない手段による安全保障研究は容認されていることになるが、経済制裁や社会的圧力などの研究は野放しで良いのだろうか? 総会で片田範子会員は、「声明は人間の安全保障に触れていない」と指摘した。

くわしく

<資料>クラスター1(核軍縮)でのロシア政府代表発言(抜粋訳)

公開日:2017.09.15

ミハイル・I・ウルヤノフ大使
ロシア連邦代表団長
2017年5月5日
国連ウィーン
(前略)
 核兵器保有国は核兵器禁止交渉に参加を控えていることに対する非難を浴びている。しかし、このアプローチにはしっかりとした理由がある。交渉プロセスの主導者たちはそもそも核兵器国の参加を期待しないようなやり方で交渉を準備した。説明させてほしい。この交渉のために設定された目的―核兵器の法的禁止とその廃棄に合意すること―は2010年の行動計画を含むNPTの枠組み内で到達したこれまでの合意と相容れない。
(略)
 NPTによれば5核兵器国による核兵器の保有は合法だ。私たちが理解する限り新しい条約は核兵器を違法化しようとしている。その結果、近い将来、我々は同じ国が核兵器の地位に関して相互に排他的な条項をもつ2つの国際条約の加盟国となる状況に直面するかもしれない。逆の立場からいかに熱心に私たちを説得しようとする者があったとしても、そのような衝突はNPTの統合性と存立を不可避的に危険にさらすだろう。
(後略)
(訳:ピースデポ)
原文:
 http://statements.unmeetings.org/media2/14684470/russian-english-cluster-1-new.pdf

くわしく

【NPT再検討会議準備委員会の議論から】禁止条約、北朝鮮、安全の保証

公開日:2017.09.15

禁止条約とNPTの関係を巡って

 2020年NPT再検討会議第1回準備委員会(5月2~12日)では、禁止条約に対する賛成もしくは反対の意見が多くの国から示されたが、見解が詳細に展開され、深い議論が行われることはなかった。禁止条約に反対する核兵器国・英国など、全く言及しないことによって禁止条約反対の意思を示しているとみられる国もあった。そのような中で、禁止条約とNPTとの関係を巡っては、両極的な見解が示された。
 禁止条約を主導したブラジルは、同条約はNPT第6条(核軍縮の誠実な交渉)の履行を強化し、補完するものだと主張した。これに対して、禁止条約反対の核兵器国ロシアは、クラスター1(核軍縮)における発言(下記資料)で、NPTで核兵器国の核保有が合法とされている以上、禁止条約によってこれが違法とされればNPTが危機にさらされると次のように主張した。「近い将来、我々は同じ国が核兵器の地位に関して相互に排他的な条項をもつ2つの国際条約の加盟国となる状況に直面するかもしれない。ある国が逆の立場からいかに熱心に我々を説得しようとしても、そのような衝突はNPTの統合性と生存力を不可避的に危険にさらすだろう。」これは、禁止条約に参加することなど考えていない立場からの牽強付会な議論である。
 これに対して、禁止条約主導国のアイルランドは一般討論の中で次のように反論した。「NPTの起草者たちは、自分たちの仕事は終わっておらず、核軍縮に関する効果的な手段がこれから苦心して作り上げられる必要があると考えていた。このことは交渉の歴史の記録と条約第6条それ自身から明らかである。ここから生まれる勢いが、アイルランド代表団が国連で取り組んでいる、核兵器を禁止し完全廃棄に導くための条約の交渉という仕事に活気を与えている。」このように、主導国は核兵器禁止条約をNPTと補完関係におくように苦心しており、核兵器国は両者は矛盾すると主張したのであった。

「核はどこにあっても違法」という規範

 準備委員会で行われていた北朝鮮核問題に関する議論で参加国が一貫して北朝鮮に求めたのは国連安保理決議の遵守、NPTへの復帰、そしてIAEA保障措置の受け入れ、つまり「北朝鮮は国際ルールを守れ」ということに尽きる。これはイラン核合意ややシリアの保障措置協定を巡っても繰り返し語られたことである。
 明確となったのは、多くの国連加盟国による締約が期待される核兵器禁止条約という国際ルールが新たにできることの意義であった。CTBTが未発効であるという状況の中にあってさえ、北朝鮮以外の核実験を止めているように、「禁止条約」は、「核兵器は誰が持っても、どこにあっても違法である」というシンプルかつ明快な規範を明らかにすることによって、全ての国に核兵器の開発、製造、保有、使用、援助、配備などをためらわせる力となることが期待できる。
 一方、準備委員会では注目すべき発言もあった。禁止条約交渉を求める国連総会決議に棄権し、交渉に参加しなかった中国が、「非核兵器国が無条件の法的拘束力のある安全保証を獲得することは普遍的な要求であり、中国はその要求の早期実現を希望し、国際社会とともにその目標に向かって努力する所存である」と発言したことである。これは非核兵器地帯の重要な原則であり、地帯設立を後押ししうる見解である。(山口大輔)

くわしく

【資料】核兵器禁止条約議長草案に関する核不拡散・核軍縮アジア太平洋リーダーシップ・ネットワーク(APLN)声明(全訳)

公開日:2017.09.15

 下記に署名した私たちAPLNのメンバーは、核兵器禁止条約の交渉の任務を課された国連会議の議長が提出した、核兵器禁止条約案(A/CONF.229/2017/CRP.1、2017年5月22日)を歓迎します。私たちは、条約案が、これまでに発明された中で最も無差別で非人道的な兵器を禁止するための長期間にわたる運動の中で、重要な一里塚であると考えています。人道主義の原則に根差した条約案のテキストは、最終的な核兵器廃絶に向けた大きな一歩として、核兵器の取得、開発、生産、製造、保有、実験、移転、国外配置と使用を明確に禁止するための、交渉を妥結させる上での適切なたたき台になります。

 核兵器が存在し、とりわけ今日のようにいまだに大量に存在している限り、意図的であれ、偶発的であれ、ならず者あるいはテロリストの活動によるものであれ、核戦争の危険が常に存在します。核兵器禁止条約の交渉は、核軍縮の進展が停滞していることや、核兵器国が、核軍縮交渉を行いかつ完結させるというNPT下の義務を真摯に受け止めていないことに対して、大多数の国が抱いている強い懸念の結果であります。

 核兵器国とその同盟国(残念ながらアジア太平洋地域の数か国も含まれています)が禁止条約交渉に参加していないという事実により、核兵器国の姿勢に対する懸念は一層強まっています。交渉に参加すれば、核兵器国は、自国の立場を説明し、核軍縮義務を果たす意思や考慮したい実際上の懸念をを表明し、条約の条項に影響を及ぼす機会を得ることができます。NPTに非加盟の核兵器保有国は、交渉に参加することで、核兵器の不拡散、不使用、実験禁止といった核兵器に関する国際的規範を支持し、そしてNPT上の核兵器国の軍縮義務と類似した軍縮の義務を受け入れるという意思を、示す機会を得ることができます。

 不参加の諸理由を挙げる中で、核兵器国は、核兵器禁止条約は非現実的であり、実践的で段階的な軍縮への努力を損ない、NPTを損なうと主張しています。私たちは、このような主張を受け入れません。

• 今日の状況下では、期限付きの核軍備撤廃の誓約は非現実的かもしれませんが、条約案ではそのようなことを提案してはいません(条約案5条を参照)。むしろ核保有国は、同条約の下で、締約国会議に核軍備撤廃の計画を提出することができます。どのようなプロセスや時間枠を計画するかの決定は、計画を提出する各国に任せられています。
• 禁止条約が実践的で段階的な核軍縮への努力を損なうという主張は、核保有国が、そのような段階的な努力を何ら実行しておらず、また議論すらしていないという事実に照らすと、説得力がありません。私たちは核保有国がこうした段階的な取り組みに関する交渉を一日も早く開始し、目に見える成果につなげるよう求めます。
• 禁止条約は、NPTを損なうことはありません。NPT締約国の約3分の2が禁止条約交渉に参加しています。対立を生じさせているのは、交渉をボイコットしている少数のNPT締約国です。禁止条約は、NPTを損なうどころか、締約国が半世紀近くにわたり達成に力を尽くしてきた、NPTの諸目的を推し進める上での助けになります。

 核兵器国は、NPTが、核兵器国に核軍縮を誠実に交渉する義務を課しているということを忘れてしまっているようです。核兵器禁止条約は、核兵器を非合法化することにより、核兵器と通常兵器の間の規範上の境界線を再確認し、核兵器が永遠に存在するという考えに打撃を与えます。同条約は、核兵器国に、新たな核兵器システムの計画と「近代化」計画を考え直させ、核兵器をどのように削減し廃棄できるかについて真摯に考え始めさせるものでなければなりません。

 このような理由で、私たちは、全ての国が核兵器禁止条約の目的を支持することを求めます。条約に最初から参加できる国はそうすべきであり、現在核兵器を持っている国は、条約案の第5条で求められている、核軍縮のためのさらなる効果的な措置の提案の作成を開始すべきです。
(訳:ピースデポ)

原文: www.a-pln.org/statements/statements_view/APLN_Statement_on_the_Ban_Treaty

くわしく

【核兵器禁止条約交渉】第2会期に向け議長草案――核保有国参加の「2つの道筋」を想定

公開日:2017.09.15

核兵器禁止条約を交渉する国連会議の第2会期を前に、エレイン・ホワイト議長(コスタリカ大使)による条約草案が5月22日、公表された。核兵器のいかなる使用もその非人道性にかんがみ国際法違反と宣言し、包括的な禁止規定により核兵器そのものを違法化する草案は、3月会期で広く合意された事項を概ねカバーしている。ただ、「使用の威嚇」を明示的に禁止していないなど問題点もある。6月15日にニューヨークで再開される交渉会議では、この草案をたたき台として、条約の成案確定に向けた討議が繰り広げられる。


 条約草案の暫定訳を資料1として3~5ページに示す。草案は15パラグラフの前文、全21箇条の本体、そして保障措置に関する3箇条の附属書からなる。
 草案公表時の説明(書面が公開されている1。以下これを〈説明〉と言う)でホワイト議長は、3月会期の議論を通じ浮かび上がった以下の原則に基づいて起草したと述べた:①補完性(既存の諸条約を強化・補完し、不拡散体制とりわけNPTを弱体化させない)、②補強性(既存の不拡散規範を逃れる抜け穴を作らない)、③簡潔・非差別的(明確で強力な禁止)、④将来への基礎(長期運用に堪える柔軟なものに。核保有国の将来の加入に向けた道筋や枠組みを示す)。〈説明〉ではまた、草案が、コンセンサス形成の基礎として、3月会期で参加国の見解が一致した部分をまとめたものだとした。
 前文ではまず、核兵器使用による壊滅的な人道上の結末と「ヒバクシャ」・核実験被害者の苦しみに言及し、核兵器が二度と使用されない努力が必要との認識を示している。その上で、武力紛争の手段が無制限ではないといった国際人道法の諸原則に立脚すれば、核兵器のいかなる使用も国際法・国際人道法上、違法だと宣言している。続いて、国連憲章の目的と原則など既存の国際法上の原則が掲げられ、さらに、「厳格かつ効果的な国際管理の下におけるあらゆる点での核軍縮に至る交渉を誠実に追求し」「かつ完結させる」というNPT第6条や96年ICJ勧告にうたわれた義務が確認されている。そしてNPT、CTBT、非核兵器地帯条約という既存の法的文書に言及して、条約がこれらを補完ないし強化するものであることを示唆している。さらに、国連や国際赤十字と並んで、核廃絶へのNGOや「ヒバクシャ」の努力にも言及された。

「使用の威嚇」など明文で禁止せず

 本体では、1条で禁止事項が規定されている。いずれも3月会期で幅広い合意があった事項といえる。「核兵器その他の核爆発装置」「実験的爆発又は他の核爆発」という文言など、NPTやCTBTと同様の用語法が使われており、前文でこれら条約の重要性をうたっていることとも呼応する。
 「実験」については、3月会期では議論が分かれたが、草案では禁止対象に含まれている。ただ、禁止を求める声のあったコンピューター・シミュレーションや未臨界実験など爆発を伴わない実験は対象から外されている。同じく議論のあった「使用の威嚇」と「融資」も、草案では明示的に禁止されていない。3月会期で多くの発言者が禁止対象に挙げた「通過」も含まれなかった。
 議長は〈説明〉で、3月に議論された中で、引き続き議論を要すると考えられる重要事項のいくつかは、あえて草案では触れずにおき、交渉会議の6-7月会期で先入観なしに議論が続けられるようにした旨を述べている。「使用の威嚇」などの除外にはそうした考慮が働いたと思われる。
 核被害者の権利保障や環境回復といった、いわゆる積極的義務は6条に規定された。同義務に関し、3月会期では条約違反に対する通報者の保護や教育・啓発も挙がったが、含まれなかった。

早期発効を重視した「制度的取り決め」

 草案の7条以降は、いわゆる制度的取り決めに関する規定が並んでいる。
 9条は、発効1年後、それ以後は原則2年ごとに締約国会議を開催すると規定する。5年後以降は運用検討会議の召集も可能になっている。締約国会議では、核兵器計画の廃棄のための規定(追加議定書を含む)など「核軍縮に関する更なる効果的措置」も検討できる。また、非締約国や国際機関、NGOなどがオブザーバー参加できる。
 13条は、締約国に対し、条約普遍化に向けて非締約国に加盟を奨励することを促している。
 一方、発効要件国数は40か国(16条1項)と少なく、早期の発効が目指されていることが窺えるが、議論を呼ぶ可能性がある。留保は認めないとされた(17条)。

核保有国、核依存国を受け入れる準備

 草案には検証規定も盛り込まれた。締約国には、自らが核兵器を持っているか申告をし(2条1項)2、IAEA保障措置を受け入れる(3条、附属書)義務が課されている。〈説明〉は、検証の水準はNPTにおける非核兵器国のものと同等になるよう設計したとしている。禁止条約に否定的な国々からの「条約はNPTを損なう」との批判に配慮し、NPTの特に不拡散体制を損なわないよう手当てしたとも見える。草案はまた、4条で、国が自らの保有核兵器を廃棄した上で条約に加盟する際の検証方法を規定している。この規定の作成に当たっては、同様の過程を経てNPTに加盟した南アフリカのケースが参考にされた。
 この4条と次の5条を、議長は「核活動を保有する国が(条約に)参加できる2つの道筋」と呼んだ。禁止を完全廃棄につなげるとの国連決議71/258のマンデートや3月会期の議論を受けて起草されたという。〈説明〉によると5条は、核兵器を廃棄すると決定した保有国が、禁止条約の締約国会議ないし再検討会議の場で自国の核兵器廃棄計画を交渉・合意し、議定書として禁止条約に附属させることができる旨を定める規定だという(以下、これを「5条プロセス」と呼ぼう)。
 〈説明〉は5条に関連して、締約国会議などでの議定書の追加を可能にする設計を「枠組みアプローチ」と呼び、「こうしたアプローチによって本条約は柔軟性を備え、核軍縮のための確かな枠組みたりえると共に、締約国が条約の機能を発展させられるようにすることで将来にも対応できる」とその効用を述べている。
 ピースデポが「核軍縮枠組み条約」を提案した3主目的の1つは、核兵器の法的禁止が実現した世界において核保有国による核軍縮措置の強化を担保することにあった。議長草案は同様な趣旨で5条プロセスを盛り込んだと考えられる。「禁止」を「廃絶」につなげるためには、禁止条約にそうした趣旨の何らかの条項が含まれる必要があり、その点で5条の意義はよく理解できる。ただ、保有国が5条プロセスを選ぶよう説得する力は、5条自身からではなく、もっと大きな状況から生まれなければなるまい。
 草案で「使用の威嚇」が禁止事項から除かれたのは、核抑止依存国を含む「条約に否定的な国々が、将来加盟する余地を残す配慮とみられる」4との分析もある。第2会期ではこの点や前記の5条プロセスも含めた議論が深まり、条約普遍化への手掛かりが少しでも得られることを期待したい。
 第2会期最初の7日間の暫定日程表(5ページ資料2)によると、会議ではまず条約草案に関する一般的意見交換が行われ、続いて草案を内容ごとに5クラスターに分けて条文の検討が行われる。そして23日午後に翌週以降の日程を決めるとされている。NGOの発言枠としては、初日の午後と各クラスターの最後に15分ずつが確保されている5
 日本政府は、条約草案公表後の岸田外相の発言6からしても、交渉会議第2会期に参加はしないだろう。そのような政府に対し、日本の市民としては、条約成立後に条約への加盟を迫っていくしかない。日本は核抑止依存政策をそのままにして、核兵器そのものを違法とする条約の締約国にはなれないと言える。私たちは「核兵器の違法化」の歴史的意義に立脚して、唯一の被爆国である日本の政策を変える世論と行動を広げてゆくことが求められる。(荒井摂子、田巻一彦)

1 交渉会議公式サイトで閲覧可能。www.un.org/disarmament/ptnw/president.html
2 2条1項と4条1項の「2001年12月5日」という日付は、START-I条約(94年12月5日発効)リスボン議定書に基づき旧ソ連のベラルーシ、ウクライナ、カザフスタンから核兵器が撤去された日を指す。
3 本誌513号(17年2月1日)など参照。
4 「朝日新聞」17年5月24日。
5 3月会期最終日の議長発言、およびリーチング・クリティカル・ウィルからの情報による。
6 17年5月26日の定例記者会見で、「先ほど申し上げました(交渉参加を控えるという)対応を続けることになる」などと述べている。外務省ウェブサイト参照。www.mofa.go.jp/mofaj/press/kaiken/kaiken4_000506.html

くわしく