核兵器・核実験モニター バックナンバー

【日誌】核・ミサイル/沖縄(16年3月21日~4月5日)

公開日:2017.07.18

DPRK=朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)/EU=欧州連合/FCA=高速炉臨界実験装置/IS=「イスラム国」/MD=ミサイル防衛/PNR=旅客個人情報/NATO=北大西洋条約機構


●3月21日 中国で営口につづき天津など5港がDPRKの全船舶の入港を禁止と判明。DPRKの外貨獲得に打撃。
●3月21日 DPRKが日本海に向け短距離の発射体5発を次々に発射。5発はいずれも200キロ飛行し日本海に落下。
●3月21日 ハバナでキューバ・米国首脳会談。キューバは米国にグアンタナモ基地の返還を求める。
●3月21日付 日本が米国に引渡す日本原子力研究開発機構・FCAのプルトニウムなどを運ぶ輸送船、東海村に入港。(本号参照)
●3月22日 ブリュッセルの空港で2度の爆発の後、市内EU本部近くの地下鉄駅で爆発。34人死亡、約340人負傷。ISが犯行声明。
●3月22日 ゴッテモラー米国務次官、オバマ米大統領が伊勢志摩サミットに合わせ、広島訪問の可能性を検討中と述べる。
●3月24日 DPRK、長距離弾道ミサイルなどに使うとみられる固体燃料の燃焼実験に成功と発表。発表内容に疑問も。
●3月24日 戦没者遺骨収集推進法、衆院本会議で可決・成立、4月1日施行へ。沖縄戦などの戦没者遺骨の収集を「国の責務」と明記。
●3月24日 ベルギー連続テロ受けEUがブリュッセルで緊急の内相理事会。テロ防止へPNR活用し情報共有強化で合意。
●3月25日 四国電力、来年で運転から40年となる伊方原発1号機を廃炉にすると発表。運転延長しても不採算と判断。
●3月26日付 ベルギー連続テロの容疑者が原子力施設の襲撃を検討していた疑いありと25日までに判明。
●3月27日 アサド政権軍、中部パルミラ全域をISから10か月ぶりに奪還と報道(シリア国営メディア)。
●3月28日 今夏の多国間軍事演習「リムパック」で、海自が安保関連法成立後の15年末、米艦防護などの演習はしない意向を米軍に示したと判明。参院選を念頭。
●3月29日 米英仏独、イランのミサイル実験が安保理決議違反だとして、安保理の開催を要求。
●3月29日 安全保障関連法が施行。政府が日本の存立に明白な危険があると認めれば集団的自衛権の行使が可能に。
●3月30日 韓国国防部が国防中期5カ年計画を発表。DPRKの核・ミサイル対応兵器とMD体系の構築、早期警報レーダーの開発を含み、日本円で約22兆円。
●3月31日 米中首脳と日米韓首脳がワシントンで別個に会談し、北朝鮮の核・ミサイル問題に協調して対処することを確認。
●4月1日 3月31日開幕の核保安サミット、テロの脅威に対し核物質の管理強化を行うとの共同宣言を採択し閉幕。()
●4月1日 DPRKが日本海へ向け短距離ミサイルを3発発射。
●4月1日 日本政府、憲法9条が核兵器の保有と使用を一般的に禁止したわけではないとの答弁書を閣議決定。
●4月3日 DPRK国防委、国連安保理制裁決議と米韓軍事演習を非難し、米が核報復攻撃を受ける可能性を示唆。
●4月5日 広島県原水禁が広島市長に対し、G7外相会合声明に核不使用の決議を盛り込むよう岸田外相への働きかけを要請。

沖縄

●3月21日 キャンプ・シュワブ所属兵による女性暴行事件(13日発生)に対し、辺野古で緊急抗議集会。全県での宿泊禁止など要求。
●3月22日 県議会臨時本会議、米兵による女性暴行事件に対する抗議決議・意見書を全会一致で可決。
●3月23日 県、国交相の辺野古埋め立て承認取消を求める是正指示について国地方係争委へ審査申出書を提出。
●3月23日 政府・沖縄県協議会第2回会合。辺野古代執行訴訟和解協議における作業部会設置を確認。県、議事録公開を提言。
●3月24日 第2次普天間爆音訴訟が結審。島田原告団長、最終意見陳述で飛行差し止め訴え。年内に判決の見通し。
●3月24日 おおさか維新の会、鹿児島県・馬毛島への普天間飛行場暫定移設提言へ。他、数箇所を調査。5月に米高官らと交渉予定。
●3月25日 キャンプ・シュワブ司令官、米兵女性暴行事件に関する県議会の面談を拒否。四軍調整事務所への抗議要請一本化求める。
●3月25日 県議会、米兵による女性暴行事件抗議で日米に申し入れ。米軍、事件の再発防止に向けた作業部会設置の方針示す。
●3月26日 中谷防衛相、来県。翁長知事・稲嶺名護市長と代執行訴訟和解後初会談。辺野古移設への理解求める。
●3月27日 石垣陸自配備に伴うレーダー設置で、国立天文台の電波望遠鏡に影響与える可能性。専門家ら早期の情報公開求める。
●3月28日 与那国島陸自沿岸監視隊発足。約160人配置。沖縄に復帰後初の新基地設置。
●3月30日 宮古陸自配備計画。沖縄防衛局、「協議書」を取下げ。候補地の開発による地下水への影響精査へ。
●3月31日 日米首脳会談で安倍首相、「辺野古移設は不変」。オバマ大統領へ代執行訴訟和解受入れへの理解求める。
●4月1日 15年度「地域安全保障に関する県民意識調査」。普天間飛行場固定化「容認せず」68.6%。辺野古移設「反対」58.2%。
●4月2日 那覇地検、芥川賞作家・目取間俊氏を釈放。1日にキャンプ・シュワブ立入禁止区域に侵入したとして米軍が身柄拘束。
●4月4日 国が県の辺野古承認取消に是正指示。県、係争委へ反論書提出。

くわしく

【ピースデポ第17回総会記念講演会 抄録②】  
講演「日米関係と日本の核政策―歴史からの問い」(下)    西崎 文子(東京大学大学院総合文化研究科教授)

公開日:2017.07.18

敗戦による「リセット」を拒む
―被爆者の歴史認識

 なぜ私が戦前・戦後の連続性にこだわり、「敗戦」によって歴史を「リセット」することに危険を感じるのかというと、日本の戦後社会に、この「リセット」を非常に明確に拒否する人々がいたことを強調したいからです。それは、私が学生時代から関わってきた日本原水爆被害者団体協議会(被団協)と被爆者の人々です。
 根源には、日本が戦後、平和憲法を持ちながら被爆者をきわめて冷たくあしらってきたということがあります。占領下でのプレスコードはよく知られていますが、占領が終わった後も日本社会の主流、何より日本政府は、広島・長崎についてアメリカに抗議することはありませんでしたし、被爆者の戦後の生活について何か優しい言葉をかけたこともありません。被爆者は、一貫して差別の対象になり、政策的にも冷遇されてきました。
 さらに被爆者は1970年ぐらいまで、平和運動の中でも孤立してきたと言ってもよいと思います。当時の日本の平和運動は党派対立の中に巻き込まれてしまっていました。大江健三郎の『ヒロシマ・ノート』に生々しく描かれていますけれども、被爆者はそのような平和運動の中で、やはり大切にされてこなかった。だから被爆者が「平和国家日本」とか「被爆国日本」という言葉に、どこか違和感を抱いていたのは当然だったのではないかと思います。

80年基本懇「被爆受忍論」への怒り

 そういった被爆者の感情が噴出するきっかけとなったのが、厚生大臣の私的諮問機関として作られた「原爆被爆者対策基本問題懇談会(基本懇)」が1980年12月11日に提出した「答申」でした。
 「答申」は被爆者対策の「基本理念」について次のように述べました。「今次の戦争による国民の犠牲はきわめて広範多岐にわたり、すべての国民が……犠牲を余儀なくされた」、「しかし、これらの犠牲の中で広島・長崎の原爆投下による被爆者の犠牲がきわめて特殊性が強いものであるということは、何人も否定しがたい」。その一方で、「答申」は次のようにも述べました。「およそ戦争という国の存亡をかけての非常事態のもとにおいては、国民が戦争によって何らかの犠牲を余儀なくされたとしても、それは国を挙げての戦争による『一般の犠牲』として……すべての国民がひとしく受忍しなければならないところであって……」。つまり、「基本懇」は、政治論としては国に責任があるとしても、法律論としては、国の統治行為・政治行為について責任を追及することはできない、と結論づけたのです。
 被爆者の運動にとって、怒りの第1の原点が、被爆だったことは言うまでもありませんが、1980年に出されたこの「答申」は、第2の原点と言えるでしょう。「すべての国民は等しく、戦争による一般の犠牲を受忍すべきであって……」という、ここに被爆者が怒ったのは当然のことです。あの原爆の被害を等しく「受忍」すべきものとは、これは一体何だと。そこがやっぱり一番大きな怒りではあったわけですけれども、もう一つ被爆者が怒ったのは、「およそ戦争という……」というところから始まる一般論です。これは、とても日本国憲法のもとで発せられたとは考え難いものでした。
 この「答申」が出された当日、被団協は声明を発表しています。声明は「答申」が原爆批判のかけらもない、原爆投下の国際法違反についての言及もまったくないものだと批判したうえで、次のように言います。「さらに答申は……一般市民の戦争被害に対して国が今日まで何らの措置も講じて来なかったことを当然視している」。これは、憲法前文の言う「国際社会において、名誉ある地位を占める」ための努力をしてこなかった国に対する痛烈な批判です。
 その意味で被爆者運動は、戦前・戦中を一貫して捉えた運動です。そして戦前が戦後の中に流れ込んでいることを非常に強く意識して繰り広げられた運動でもあります。日本国憲法ができたことによって安心するのではなくて、それを活性化していくという運動を、被爆者は苦労して作り上げてきました。
 こういった歴史認識を、私たちは大切に引き継いでいかねばならないと思います。

オルタナティブな歴史認識

 日本でもアメリカでも「主流」の歴史認識というのは、とても強い形で、そして――昨今の日本ではよくわかると思いますけれども――政治の力によって、私たちに日々伝わってくる。「こういうふうに歴史を見るのですよ」という政治の言葉が伝わってくる。私が強調したいのは、それには徹底的に抗って異議を申し立てる、そうやって、オルタナティブな歴史観というのが存在するのだということを問い続けることの重要性です。
 なぜ、そのような「勝ち目のない闘い」をつづけてゆくのか。それは、「主流」の歴史観では、必ず「リアリズム」の落とし穴に陥ってしまうからです。政治の世界はどうしても「所与」から発想します。与えられた「こうある世界」があって、そこから発想します。その結果「あるべき世界」への歩みが閉ざされてしまうことがある。
 その意味で、オバマ大統領のノーベル賞受賞演説は優れたものだったと思います。なぜかというと彼は戦争をしている自分を説明するのに、かなり苦労しているわけですね。苦労して苦労して、自分がなぜ今戦争をしている国の最高司令官であるかということを説明しているわけですが、その時に、彼は同時に、自分は「こうある世界」に生きながら、しかし「あるべき世界」というのを追求しなければいけないという、苦しい説明をしているわけです。彼はアメリカの大統領だから、苦しい説明になる。
 それに対して、私たち、―そのようなしがらみ、あるいはアメリカの大統領のような責任、あるいは政治的な束縛をうけていない人間―というのは、「こうある世界」と「あるべき世界」の間で、はるかに自由な発想ができる。そしてオルタナティブの歴史観というのを見つけ、考え、そしてそれをもって「こうある世界」に対して批判をぶつけることができる。
 「核抑止論」というのは「こうある世界」です。「核兵器のない世界」というのは「あるべき世界」です。それがどこで転換ができるのか。私は、連続性はありえないと思っています。核抑止論を維持しながら「核兵器のない世界」を構想することはできない。オバマ大統領はプラハ演説でそう謳ったわけですけれども、あれはもともとやはり無理があったというふうに私たちは感じている。でもそれは、オバマがアメリカの大統領であるが故の限界であって、私たちはその限界を超えて発想をしていくことができますし、また、していくべきなのだと思うのです。

【質疑応答】

米国における外交の民主的統制

――外交を民主的に統制することはかなり難しいと言いますか、普遍的な問題だと思うのですね。このような観点からみて、現在のアメリカがどの程度成功しているとお考えでしょうか。
西崎
 外交の民主的な統制というのは、難しい問題だと思いますね。特にアメリカでは。たとえば今年の選挙戦、大統領候補の人たちはほとんど外を見てないですね。そして人々を喜ばせる言葉を必死で探している。だからブレが激しくなる、特にこのところその傾向があると思うのです。
 オバマ大統領は、2008年に大統領選に出た時、かなり強い対話のメッセージを打ち出して、そして就任後2009年ぐらいまでそれを貫いた。それに半分の人は共鳴したと思います。しかし半分の人は強烈にそれに反発した。そのギャップをどう埋めるのかというのは、アメリカにとっては大きな問題だろうと思います。また、オバマ大統領は軍事行動しないから弱い大統領だというふうに繰り返し批判されている。このような風潮は、やはり正していかなければいけない。そうではなくて、たとえば外交での成果というのはこれだけあるのだということを語っていかなければならない。それが民主的な外交の統制の一つだろうと思うのです。そのためにはメディアの役割も重要ですし、何よりも研究者や言論人がしっかりしなければいけないと思うのです。

「同盟」という言葉の危うさ

――西崎さんはお話のタイトルに「日米関係」という言葉を使い、「日米同盟」という言葉を使われませんでしたね。実は私自身も国際政治を研究しておりますので、日米同盟という言葉は軽々しく使わないです。「同盟」という言葉の使われ方について、おそらくウィルソン外交を研究されているお立場からはご意見があると思います。伺えればありがたく思います。
西崎
 私も「日米同盟」というのは、使うときは意識して使います。戦後初めて「日米同盟」という言葉が出てきた――言い出したのは中曽根さんあたりではないでしょうか――それが衝撃的だったということを覚えていますので、それが当たり前のように使われるというのは、ちょっと困ったものだというところはあります。冷戦の初期、対ソ封じ込めの強硬派だったジョージ・ケナンは、スターリンとは妥協できないという政策を掲げた人ですけれども、同時にNATOに反対したんですね。それから日米安保にも反対した。彼はむしろ、ドイツもNATOに入るのではなくて、米ソの兵力を引き離すべきだということを言っていた。「同盟」っていうのは、私たちは当たり前のことだ、外交の一つの手段だというふうに、それこそ刷り込まれていますけれども、質問者の方が挙げたウッドロウ・ウィルソン(第28代米大統領)は、同盟こそが戦争の原因になるのだと言って、「同盟」はやめて国際連盟を作ろうと言った。
 ですから同盟が外交の手段だ、あるいは戦略の一つだということを疑問視する発想が必要だと思います。
(まとめ:ピースデポ)

くわしく

【資料】  プルトニウム分離の中止で世界の核セキュリティー強化に貢献することを求める安倍首相への要請書

公開日:2017.07.18

3月31日から4月1日にかけて米国ワシントンDCで開かれる核セキュリティ-・サミットを前に、世界の核問題の専門家、市民団体などが安倍晋三総理大臣に「六ヶ所使用済み核燃料再処理工場運転の無期限延期を発表することにより、核セキュリティー・サミットに大きな貢献をするよう要請」する書簡を送った。書簡は、前回のハーグ・サミットで宣言された「世界の分離済みプルトニウムの存在量を最小限にするという日米両国の目標に向かって進むため」には再処理でこれ以上プルトニウムを増やさないようにすることこそが重要と訴えている。書簡の署名約180筆の中にはノーベル平和賞受賞団体「核戦争防止医師会議(IPPNW)」も含まれている。(編集部)


総理大臣 安倍晋三 様

2016年3月25日

要請:プルトニウムの分離を止めることによって世界の核セキュリティー強化に貢献すること

下に署名した私たちは、安倍晋三総理大臣と日本政府に対し、六ヶ所使用済み核燃料再処理工場運転の無期限延期を発表することにより、核セキュリティー・サミットに大きな貢献をするよう要請します。

オランダのハーグで2014年に開かれた第三回核セキュリティー・サミットにおいて、安倍晋三総理大臣とバラク・オバマ大統領は以下の通り合意したことを発表しました。

「日本にある日本原子力研究開発機構(JAEA)の高速炉臨界実験装置(FCA)から,高濃縮ウラン(HEU)及び分離プルトニウムを全量撤去し処分する」

そして両者は、次のように宣言しました。

「この取組は,数百キロの核物質の撤廃を含んでおり、世界規模でHEU及び分離プルトニウムの保有量を最小化するという共通の目標を推し進めるものであり、これはそのような核物質を権限のない者や犯罪者、テロリストらが入手することを防ぐのに役立つ」

FCAの331kgのプルトニウムは、米国サウス・カロライナ州にあるエネルギー省のサバンナリバー・サイトに送られることになっています。FCAを運転する日本原子力機構(JAEA)によると、このプルトニウムのほとんど(236kg)は、元々英国からのもので、93kgが米国、残り(2kg)がフランスからのものです。

サウス・カロライナ州の人々に、警備の不十分なJAEA東海村施設における盗取の可能性から世界を守るためこのプルトニウムを受け入れるようお願いする一方で、日本は2018年に、同じく保安態勢の不確かな六ヶ所再処理工場の運転を開始することを計画しています。日本の使用済み核燃料から最高年間8000kgのプルトニウムを分離するよう設計されているこの工場は、現在、核兵器を保有していない国にある唯一の再処理工場です。

米国国家核安全保障局(NNSA)の世界脅威削減イニシアチブ「撤去プログラム概観」(2014年12月3日)によると、FCAの331kgのプルトニウムは、処分のために米国に送られる物質に関する次のようなプログラム要件を満たしているとのことです。

「その物質は、また、国家安全保障に対する脅威であり、即席核爆発装置で使われる可能性があり、高いテロリスト脅威を有し、盗取または転用に対するセキュリティーを保証する他の合理的な道がないものでなければならない」

NNSAは、この危険性を減らすために努力してきているが脅威がまだ残っていると述べ、世界の民生用分離済みプルトニウム問題に対する注意を喚起し、次のように強調しています。

「世界の民生用プルトニウムは過去20年間で急激に増えて」おり、「プルトニウムの蓄積を止め、その量の削減を開始するために更なる国際取り組みが必要である」

第61回「科学と国際問題に関するパグウォッシュ会議――長崎の声:人間性を心にとどめよ」(2015年11月1-5日 長崎)の後、パグウォッシュ会議評議会は、同じ危惧を持って、次のように宣言しました。

「プルトニウムを分離する再処理は、それがエネルギー目的であれ兵器目的であれ、すべての核兵器国を含め、すべての国で止めるべきである。原子力計画における高濃縮ウランの使用は止めるべきである。国際安全保障に与える影響に鑑み、各国は、核燃料サイクルに関する主権に対する制限について相互に合意しなければならない」

2014年末現在、日本は、4万7800kg(47.8トン)の分離済みプルトニウムを保有しています。日本に1万800kg、英国に2万700kg、フランスに1万6300kgです。「核分裂性物資に関する国際パネル(IPFM)」によると2014年末現在の世界の民生用プルトニウムの量は約27万kg(270トン)です。三つの核保有国(フランス、英国、ロシア)と日本がこの分離済みプルトニウムのほとんどを保有しています。米国は約5万kg(50トン)の兵器用余剰プルトニウムの処分に手を焼いています。核兵器利用可能物質のこれ以上の蓄積は、国際社会にとって、また、日本の隣国にとって懸念事項です。隣国は、なぜ日本が核兵器直接利用可能物質をこんなに大量に分離しているのか訝っています。分離済みプルトニウムはセキュリティー上のリスクです。また、他の国が日本の例に倣えば、核拡散リスクを高めることになります。実際、韓国は、日本と同じプルトニウムを分離する権利を認めるよう米国に要求しています。

安部総理大臣とオバマ大統領は、331kgのプルトニウムを米国に輸送する計画を発表した際、続けて、次のように述べています。

「高濃縮ウラン(HEU)とプルトニウムの最小化のために何ができるかを各国に検討するよう奨励する」

2014年3月のこの時点での計画では、六ヶ所再処理工場の運転が、ちょうどもうすぐ開かれる核セキュリティー・サミットの頃に始まることになっていました。この通りに行けば、非常に皮肉なタイミングになっていたでしょう。この予定は、その後、2018年に延期されました。福島事故の後設立された原子力規制委員会の定めた新しい安全性基準を再処理工場運転事業者が満たせていないからです。日米原子力協力協定を2018年に自動延長させることに米国が同意するよう日本政府が望んでいる状況において、計画延期が実質的に日本のプルトニウム分離の注目度を下げることになることを密かに願っているものがあるかもしれません。協定では、米国型の原子力発電所で使われた使用済み燃料からプルトニウムを分離する権利を米国が日本に認めているからです。

私たちは、日本に対し、ワシントンDCで2016年3月31日-4月1日に開催される核セキュリティー・サミットにおいて、世界の分離済みプルトニウムの存在量を最小限にするという日米両国の目標に向かって進むために、六ヶ所再処理工場運転開始計画の無期限延期を発表するよう要請します。そうすれば、核セキュリティー強化のための世界的な取り組みに対する大いなる貢献となることでしょう。

署名者リスト: http://kakujoho.net/npt/lttr_nucscrty.html

(最初の呼びかけ人:伴英幸・原子力資料情報室共同代表、藤本泰成・原水爆禁止日本国民会議(原水禁)事務局長、川崎哲・ピースボート共同代表、田巻一彦・ピースデポ代表)

*編集部注:サウスカロライナ州知事は、日本から輸送されるプルトニウムの受け入れを拒否していると報じられる。16年3月26日、CNN。

くわしく

【英核戦力トライデント】  
英国労働党、「トライデント更新」方針再検討に着手  支持母体の労組は雇用のため「更新推進」

公開日:2017.07.18

 英国では、唯一の核戦力である「トライデント・システム」の更新をめぐって、政府と議会が予算支出を決定すべき重要な時期を迎えている。
 「トライデント・システム」(以下「トライデント」)は、核弾頭搭載の潜水艦発射型弾道ミサイル「トライデントⅡ(D-5)」を配備した4隻のバンガード級原子力潜水艦で構成され、うち1隻が常時海上をパトロールする「継続的海上抑止」(CASD)と呼ばれるローテーション態勢が維持されている。
 これら原潜4隻が2020年代以降に順次、耐用年限を迎えることから、後継艦を就航させてトライデントを維持するとの政府決定が、労働党ブレア政権下でなされたのは06年のことであった。この方針は保守党キャメロン政権にも引き継がれ、10年10月発表の「防衛・安全保障見直し」(SDSR)1では、16年頃に潜水艦建造契約締結などに向けた主要支出決定を政府が行うとの方針が打ち出された。このように、トライデント更新については、労働党は保守党と同様、党としてこれを肯定する立場を取ってきていた2

トライデント廃棄を掲げる新党首

 このような状況に一石を投じたのが、トライデント廃棄の主張を掲げるジェレミー・コービン労働党新党首の登場である。彼は総選挙敗北で辞任したミリバンド前党首に代わり、党首選で60%近い票を獲得して15年9月12日に党首に就任した。
英国最大の反核運動組織・核軍縮キャンペーン(CND)の副議長でもあるコービン氏は、党首選運動で「英国と世界をより安全な場所にするため、英国はNPT上の核軍縮義務を果たし核軍縮への『具体的進展を加速』すべきであり、トライデントを更新すべきではない」3と主張した。そして、党首就任後初となる9月下旬の党年次大会でトライデント更新の是非を討議し採決することを提案した。
 コービン新党首のトライデント廃棄の主張が党内で一定の支持を集めているのは確かだ。各地にある党の下部組織にもトライデント更新反対決議を採択する動きがみられ4、原潜の母港・ファスレーンを抱えるスコットランド労働党は独自にトライデント廃棄の方針を採択している5
 しかし、党大会での議決の提案には、党下部組織の7.1%、支持母体の労組に至っては0.16%の賛成しか得られず、トライデント更新の是非は党大会の議題となるに至らなかった6。また、大会最終日の9月30日にコービン党首がBBCラジオ番組で「首相になったら核兵器使用の許可は決して出さない」と語ったことに対しては、核抑止力を容認する同党「影の内閣」の閣僚たちの一部から批判の声があがった7

労組に根強い「更新推進論」

 このような党内分岐の背景には雇用問題をめぐる労組の危機感がある。
 トライデント後継艦開発は防衛省と3つの企業により共同で進められ、約2,200人が従事するとされている。防衛省は、今後の製造段階で最大6千人分の雇用が生まれ、英国企業約850社が関与すると試算している8。トライデント更新は経済的に困窮する地域の一部に30年の雇用保障をもたらすとの議論もある9
 コービン氏は「防衛産業の多様化」政策でこれに対抗する10。彼は「核兵器依存から脱するに際し、現在トライデント関連の仕事を含め広く防衛産業に従事する人々の雇用と技能を確実に守ることを約束する」と述べ、技術転用や雇用創出の研究・立案を行う機関として、政労使が関与する「防衛多様化庁」の設置を提案する。これらは、2020年次期総選挙後の政権奪還を見据えて準備されている構想である。
 しかし、こうした対案にもかかわらず、英国最大の労組・ユナイト(組合員147万人)は、組合員とその雇用を守るためトライデント更新に賛成するとの既存の方針を、今年7月の定期大会で再確認する方向と伝えられる11。また、約60万人を擁する全国都市一般労組(GMB)もトライデント廃棄に反対する集会を開くなど、トライデント更新賛成の立場を強固に維持している12
 党内の根強い更新推進論に直面するコービン党首の側からは、妥協案も提起されるに至っている。例えば、16年1月17日、コービン氏はBBCの取材に「潜水艦に核を搭載する必要はない」と答え、核弾頭を搭載しないなら後継艦導入に反対しない可能性を示唆した13。さらには、ソーンベリー影の防衛大臣の下で進む党の防衛政策見直し(次項で詳述する)において、核弾頭を潜水艦より低コストの航空機に搭載する案が浮上しているとの報道もある14

党首主導のもとで防衛政策見直し

 党の従来方針を変更するには、年次大会での3分の2以上の議決が必要となる。そこでコービン党首は、16年9月の次期党大会でトライデント更新推進の現行党方針を変更することをめざし、今年1月、トライデント廃棄派のエミリー・ソーンベリー議員を「影の内閣」国防大臣に指名して党の防衛政策見直しに着手した。ソーンベリー氏が発表した「英国の安全保障:労働党の防衛政策見直し」15は、計5分野18項目にわたる検討課題の1つとして「英国の核戦力の更新は、国の安全保障と外交・防衛政策上の目的追及に役立つか」と問題提起し、トライデントの是非について議論することを呼びかけている。党では、この文書に対する意見を、16年4月末まで党員、労組、軍関係者・防衛産業従事者、大学・研究機関、一般市民を含む幅広い人々から募っている。そして意見集約を経て今夏に報告書を公表、それを踏まえた最終的な方針決定を9月の党大会で行うとしている。
 一方、トライデント更新のための予算支出に関する下院議決は、6月23日のEU離脱を問う国民投票の後、少なくも今年7月以降となる見通しであり、9月の党大会後まですれこむとの憶測もある16。議決までにコービン指導部と既存の党方針との間の「ねじれ」が解消されない場合には、労働党は下院の議決では「自主投票」にせざるをえないとの見方がある17。また、自身はトライデント更新賛成派であるバーナム影の内務大臣は、「党内の2つの立場の調整は不可能かもしれない。党は両論を何とか抱えつつ、この問題のみに党内議論を占領させることなく前進していかねばならない」旨、述べている18
 2月27日にロンドンで行われたトライデント廃棄を求めるデモは数万人が参加して大きな盛り上がりを見せた。英国のトライデント反対世論は健在である。党首就任間もない頃、「可能な限りトライデント更新賛成派を説得したい」と語る一方で「党の分裂は避けたい」としたコービン氏19。党内の結束を維持しつつ、核依存からの脱却に向けた政策転換を実現できるのか、注視していきたい。(荒井摂子)


1 ピースデポ・イアブック「核軍縮・平和」2011年版、資料3-6(299ページ~)に部分訳。
2 労働党の2015年選挙マニフェストは「継続的海上抑止(CASD)を通じて提供される、最小限の信頼性ある独立した核戦力を引き続き保持する」としている。
3 コービン氏党首選キャンペーンサイト内の平和・軍縮関連政策ページ(ページ内に防衛政策文書へのリンク)。www.jeremyforlabour.com/defence_diversification
4 「労働党CND」ウェブサイト。www.labourcnd.org.uk/2016/01/clps-say-no-to-trident/
5 15年11月1日「BBCニュース」(電子版)。
6 15年9月27日「ガーディアン」(電子版)。
7 15年9月30日「ガーディアン」(電子版)。
8 英国議会ウェブサイト内「トライデント更新―2015議会の重要課題」、www.parliament.uk/business/publications/research/key-issues-parliament-2015/defence-and-security/trident/
9 16年2月25日「フィナンシャルタイムズ」(電子版)。
10 注3と同じ。
11 16年1月11日「ハフィントンポストUK」(電子版)。
12 GMBウェブサイト。
www.gmb.org.uk/newsroom/gmb-trident-successor-programme-conference
13 16年1月17日「ニューヨークタイムズ」(電子版)。
14 16年2月18日「ハフィントンポストUK」(電子版)。
15 労働党の政見サイト「あなたの英国」内。
www.yourbritain.org.uk/news/britain-s-security-labour-s-defence-policy-review
16 16年3月3日「ハフィントンポストUK」(電子版)。
17 16年1月13日「ハフィントンポストUK」(電子版)。
18 16年2月9日「BBCニュース」(電子版)。
19 15年9月27日、BBC「アンドリュー・マー・ショー」インタビュー。文字起こし:news.bbc.co.uk/2/shared/bsp/hi/pdfs/27091501.pdf

くわしく

【マーシャル諸島「核兵器ゼロ」裁判】  
応訴は3か国(英国、インド、パキスタン)  裁判管轄権に関する口頭弁論おわる

公開日:2017.07.18

2014年4月24日、マーシャル諸島共和国(RMI)は核保有国9か国(米、ロ、英、仏、中、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮)を個別に相手取り、核不拡散条約(NPT)第6条と国際慣習法に定められた、核軍拡競争を停止し核軍縮交渉を行う義務を履行していないとして、国際司法裁判所(ICJ)に訴訟をおこした。「核兵器ゼロ裁判」とも呼ばれるこの提訴は、国際反核法律家協会(IALANA)などの法律家の参画と国際NGOの協力によって実現した。英、印、パはICJの裁判管轄権を受諾し裁判に応じたが、ICJの管轄権を認めなかった他の6か国は応じていない。15年3月7日から3月16日まで、裁判管轄権を審理する先決的段階の口頭弁論が行われた。訴訟を支援した核時代平和財団(NAPF)のプレス発表は、ここまでの審理の模様を次のように伝えている。(編集部)


国際司法裁判所、
歴史的な核軍縮訴訟の
先決的段階における弁論を終結

核時代平和財団(NAPF)プレスオフィス
  2016年3月16日

【ハーグ】 国際司法裁判所(ICJ)は本日、マーシャル諸島共和国(RMI)が、インド、パキスタン、英国を相手取った核軍縮訴訟の先決的段階(編集部注:裁判管轄権を審理)における口頭弁論を終結した。弁論は3月7日から16日まで行われ、同裁判所で審理された初めての核軍縮係争事件となった。一連の審理では、管轄権および受理可能性の問題に関する被告国の異議が扱われた。

 共同代理人であるマーシャル諸島共和国前外務大臣のトニー・デブルムは、1946年から58年にかけて米国がマーシャル諸島領内で行った67回の核実験による核兵器の影響について、同国の見解を法廷で述べた。3月8日のパキスタンに対する聴取の冒頭の緊迫した瞬間、デブルムは法廷内の注目を一身に集め、次のように語った。

 昨日は、ここハーグで絵画のように美しく雪が降る素晴らしい朝を迎えました。熱帯の国であるマーシャル諸島は、かつて、忘れがたく、悲惨な出来事で「雪」を体験しました。1954年の熱核爆弾によるブラボー実験です。それは、広島型原爆の千倍の威力を持っていました。爆発が起きた時、多くの人がいました。子どもたちもいました。彼らは、爆弾から遠く離れた環礁にいました。そこは、一流の科学者や数々の保証によって、完全に安全だと予測されていました。実際には、爆発から5時間以内にロンゲラップ環礁に放射性降下物の雨が降り始めました。数時間のうちに、環礁は細かく白い粉状の物質で覆われました。それが放射性降下物であることを、誰も知りませんでした。子どもたちは、それを雪だと思ったのです。子どもたちは雪の中で遊びました。そして、それを口にしました。

 こうした核実験の歴史が世界的な核軍縮を求めるマーシャル諸島の現在の行動の背景になっている一方で、ICJにおけるこの訴訟が、核保有国のNPT第6条や国際慣習法への違反に具体的に関連していることは明らかだ。

 マーシャル諸島の共同代理人であるフォン・ファンデンビーセンは、今回の一連の弁論に出席した被告が9か国ではなかったことに対し失望を表明した。インド、パキスタン、英国のみが、ICJの強制管轄権を受諾している。ファンデンビーセンは、「他の6か国の核保有国(米国、ロシア、フランス、中国、イスラエル、北朝鮮)が、自分たちはマーシャル諸島による2014年4月24日の提訴に応じる必要はないと判断したことは非常に残念だ」と述べた。

 インド、パキスタン、英国の被告3か国はいずれも、書面や口頭による訴答で、自国は核軍縮を支持しており、核兵器のない世界の必要性に関してマーシャル諸島に同意すると主張した。マーシャル諸島は、こうした願望的な主張とはまったく対照的な行動の具体例を挙げた。

 おそらくそれを最もよく表しているのが、ICJが対インド事件の聴取を行った2日の間に、同国が核弾頭搭載可能ミサイルの発射実験を行う決定をしたことだ。3月7日と14日の両日、インドは弾道ミサイルの実験を行ったが、マーシャル諸島の共同代理人であるフォン・ファンデンビーセンは、この行為を「法廷に対する侮辱」と呼びうるものだとした。

 一方、英国は、今回の事件で自国に不利な判決が下された場合、英国は核保有国の間で核軍縮交渉を呼びかけるという、いわば「片手の拍手」を余儀なくされるであろうと法廷で述べた。3月11日、英国の陳述に対してトニー・デブルムは、「英国にしてみれば、これは、そのような交渉を誠実に追求している当事国などないということを言い換えているに等しい。さらに別の表現をすれば、非行を見とがめられた人が、『みんなやっているじゃないか』と言い返すようなものだ。」

 パキスタンは口頭弁論に出席しない選択をし、ICJ所長のロニー・アブラハムに対して、「パキスタン政府は、申述書においてなした陳述および申立に何も追加することを望んでおらず、したがって、口頭手続に出席しても、提出した申述書に何か追加されることがあるとは思わない」と文書で伝えた。

 トニー・デブルムは締めくくりの言葉で、「1996年の勧告的意見において、この裁判所は、核兵器が『地球上のすべての文明と生態系を破壊する潜在力を持つ』と述べた。マーシャル諸島は、法の支配を信じ、それに依拠するがゆえに、この裁判所に提訴したのだ」と述べた。

 法廷での最終陳述において、マーシャル諸島は判事団に対し、2014年4月24日にマーシャル諸島がその訴状において提起した請求に対して同裁判所が管轄権を有し、また、かかる請求が受理可能であるという判決を下し、宣言することを求めた。

 これよりICJの15名の判事は、特別選任裁判官のモハメド・ベジャウィとともに、書面および口頭による訴答において提起された管轄権および受理可能性の問題について評議を行うこととなる。裁判所は決定を公開の法廷で言い渡すことになっており、その日付は今後発表される。   
 原文及びICJ訴訟に関する詳細なQ&A方式の情報については下記のサイトにある:
www.wagingpeace.org/qa-the-marshall-islands-nuclear-disarmament-cases-at-the-icj/

国際法律チームの連絡先:略。

         (訳:河合公明、ピースデポ)

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