核兵器・核実験モニター バックナンバー

【日誌】核・ミサイル/沖縄(16年4月6日~4月20日)

公開日:2017.07.17

DPRK=朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)/ICBM=大陸間弾道ミサイル/IS=「イスラム国」/PFOS=パーフルオロクタンスルホン酸


●4月6日 川内原発1・2号機の運転差止を求める仮処分申立の即時抗告審。福岡高裁宮崎支部が住民側の抗告を棄却。
●4月7日付 シリア北部アレッポでアサド政権軍戦闘機が武装組織から地対空ミサイルで攻撃受ける(5日、シリア国営通信)。
●4月7日付 中国が南沙諸島スビ礁に新たに灯台建造(中国国営新華社通信)。
●4月7日 ベトナム外務省、中越境界が不確定の南シナ海トンキン湾海域に中国が石油掘削装置を移動と発表、中国に撤去求める。
●4月8日 6日に鹿児島で消息絶った入間基地所属の空自機U125の乗員6人全員とみられる遺体を発見。防衛省は墜落事故と認定。
●4月8日 中谷防衛相、来日中の米太平洋海兵隊トゥーラン司令官と会談。離島奪還を想定した陸自・海兵隊の共同訓練充実で一致。
●4月8日 ベルギー連続テロで5容疑者を拘束と同国検察が発表。
●4月8日 ケリー米国務長官がバクダッドを訪問、アバディ・イラク首相、ジャファリ同外相と会談。IS掃討へ協力強化で一致。
●4月9日 DPRKが新型ICBM大出力エンジンの地上噴射実験に「成功」(朝鮮中央通信)。
●4月9日 馬台湾総統が台湾最北端の島・彭佳嶼彭を視察。尖閣諸島の領有権を改めて主張し東アジアの平和を訴える。
●4月10日 米政府がオバマ大統領の5月伊勢志摩サミット後の広島訪問を検討中とワシントン・ポスト紙が報道。
●4月11日 10日開幕のG7外相会合が閉幕。被爆地から核なき世界めざす「広島宣言」を採択。出席外相が平和公園・原爆資料館訪問。
●4月11日 来日中のケリー米国務長官、「オバマ大統領含めすべての人が広島に来るべき」と語る。
●4月11日 熊本県の被爆者ら5人の原爆症認定訴訟の控訴審。福岡高裁、3人を原爆症と認めた1審判決を支持し国の控訴を棄却。
●4月13日 川村外務省報道官、G7広島宣言で「human suffering」を「非人間的な苦難」と訳した点に問題なしとの認識示す。
●4月14日 クリントン米大統領候補が日本、韓国の核武装を容認するトランプ米大統領候補の政策を危険だと非難。
●4月14日 カーター米国防長官がマニラでガズミン比国防相らと南シナ海情勢を協議。米軍の事実上の比駐留方針を確認。
●4月14日 東京中央区の男性による安保法廃止求める本人訴訟で最高裁が上告棄却決定。訴え却下の1、2審判決が確定。
●4月15日 DPRKが中距離弾道ミサイル「ムスダン」発射に失敗。国連安保理は発射を一連の決議違反と非難する報道向け声明。
●4月15日 安倍内閣、必要最小限の核兵器保有・使用は憲法上禁止されていないとの政府見解に変更なしとする答弁書を閣議決定。
●4月19日 公式訪日調査終えたケイ国連「表現の自由」特別報告者が都内で会見。放送法4条廃止、特定秘密保護法改正を促す。
●4月20日付 政府、6月に安全保障分野の日ロ実務者協議を開始すると発表。
●4月20日 原子力規制委、高浜原発1、2号機が新規制基準充足との審査書を正式決定、安全対策基本方針での関電の申請許可。

沖縄

●4月6日 宮古島陸自配備計画。地下水保護を求め市民らが緊急声明。協議会文書の全面公開・計画撤回求める。
●4月7日 県市長会、16年度第1回総会。九州市長会へ普天間飛行場運用停止などは提議しない方針。
●4月7日 「拠点返還地跡地利用推進交付金」で1億6479万円を宜野湾市に交付。キャンプ瑞慶覧・西普天間返還跡地利用計画で。
●4月8日 政府、北部訓練場の年内部分返還検討。オスプレイ運用のためのヘリパッド新設が条件。翁長知事は態度を保留。
●4月8日 中谷防衛相、米太平洋海兵隊司令官との会談で「一日も早く普天間飛行場の辺野古移設が完了するよう全力あげたい」。
●4月9日 嘉手納基地周辺PFOS検出問題。沖縄防衛局、県要求の表現弱め米側へ要請。「直ちに中止」を「可能な限り抑制」に。
●4月12日 普天間飛行場返還合意から20年。翁長知事、現在の膠着状態は政府の責任と指摘。辺野古移設計画の見直し求める。
●4月12日 名護市久辺3区住民アンケート。辺野古移設「条件付き容認」「推進」47.2%。普天間解決策「県外・国外移設」「即時閉鎖」62.4%。住民に複雑な心境。(琉球新報調べ)
●4月14日 辺野古和解条項協議・作業部会会合。県、臨時制限区域のフロート撤去等を要請。政府は高江ヘリパッド工事現場入口のテント撤去求め、県は行政指導に応じる方針。
●4月14日 普天間移設、民主政権時に「会場浮体型施設建設案」。元防衛事務次官・秋山氏が証言。セミサブ(半潜水式浮体)工法案。
●4月15日 嘉手納基地の閉鎖・撤去訴え、同基地第1ゲート前で市民らが抗議行動開始。新基地建設反対から「全基地撤去運動へ」。
●4月15日 東村・高江区住民ら、北部訓練場の全面返還優先を求め環境省へ要請行動。騒音影響・自然環境調査の実施も要請。
●4月17日 嘉手納基地のPCB管理に欠陥。90年代には米環境保護庁基準値の1700倍濃度の汚染検出も。ジャパン・タイムズが報道。
●4月18日 県、北部訓練場ヘリパッド新設工事に反対する住民らの抗議車両駐車を文書指導へ。沖縄防衛局に方針伝達。
●4月19日 米軍関係者の事件・事故防止策を議論するワーキングチーム会合を開催。県、基地関係市町村、政府、在沖米軍が出席。
●4月19日 米軍サイト、普天間所属オスプレイの熊本派遣で「県民はオスプレイ快く受入れ」と報じる。沖縄の地理的優位性を強調。
●4月19日 嘉手納基地周辺PFOS検出問題。政府、「代替困難な用途ではない」として原則使用禁止である旨の答弁書を閣議決定。

くわしく

【ピースデポ第17回総会記念講演会 抄録③】  
対論「未来へ――日本の選択はどうあるべきか?」   西崎 文子(東京大学大学院教授) × 梅林 宏道(ピースデポ特別顧問)

公開日:2017.07.17

冒頭発言 岐路に立つ日本の核兵器政策

梅林 宏道 ピースデポ特別顧問

 今、地球上に15,700発位の核弾頭があり、その94%を米ロが持っています。両国が大幅に減らさなければ、全体としても核兵器削減は進行しません。米ロの保有核兵器は2010年頃までは下がる傾向でしたが、皮肉にもオバマ大統領になってからほとんど減っていないのみならず、各国とも戦力近代化に巨額の投資をしている。現役の戦略兵器は冷戦時代に作られ、寿命が来たものは更新の時期で、次世代兵器の開発が進んでいます。米国は冷戦期よりはるかに高額を投資している。ロシアは旧ソ連崩壊の後、遅れをとりましたが核開発の努力を続け、成果が見え始めている。新型兵器の配備がまさに始まった段階です。
 このお先真っ暗な状態をどう変えるかという議論が、ここ5年くらい二つの柱で進行してきました。どちらもオバマ政権の登場で出てきた芽です。2010年のNPT再検討会議で公然化しました。
 一つは、核兵器のない世界を達成し維持するには法的な枠組みが必要だと、NPTの枠組みで、ほぼ国際社会全体として合意した。もう一つは、核兵器の使用が「壊滅的な人道上の結末」をもたらすと確認した。日本では当たり前の認識だったかもしれませんが、NPT条約の場では、非人道性を明確な文書として共有したのはこれが初めてです。
 この二つを活用する具体的な場として明日(2月22日)から国連の核軍縮公開作業部会が始まります。迷った末にこれへの参加を決めた日本政府が、そこで何をするかを市民社会から働きかけていかねばと思います。ピースデポとしては、日本が「核の傘」依存政策を続ける限り大した役割を果たせないと政府に言っています。
 1964年に中国が核実験をしました。かつての侵略戦争の相手国が核兵器を持ったのですから、日本で非常に大きな安全保障上の問いが発生したわけです。その時に「核の傘」か核武装かの二者択一論に基づき、日本は被爆国として核武装はしない、その代わり米国の核の傘の下で核の脅威から安全を守るという選択をした。そして核の傘とセットの非核三原則を日本は1968年に採択したのですが、その前年にラテンアメリカ非核兵器地帯が合意されたのです。これを手伝ったカナダの外交官が後に、「あらゆる国際政治学者と外交官が、とてもできるはずはないと言っていた。しかし実際にはできたので、外交でこれが不可能、ありえない、ということはない」と書いています。
 それで日本も、二者択一ではない第三の選択、北東アジア非核兵器地帯を作ることが可能です。そのイニシアチブを日本が取る。10年位かかるかもしれないが、そういう方向に向かうのは政治決断です。外務省の役人にはできない選択を政治家がすべき局面だと、先日の参院調査会1でも強調しました。その政治を動かすのが私たち市民社会ということで、今日は西崎さんと、そういう議論につながるやり取りをできたらと思います。


対 論  西崎 文子 × 梅林 宏道

 梅林 西崎さんの講演で現在の米国の選挙に言及がありましたが、翻ってオバマ選挙の時は外交の軸があったのではないか。というのは、第2期ブッシュ政権の最後の国防長官ゲイツが、軍事でやれることは限られていると力説し、米国は軍事以外の、「範を垂れる」というソフトパワーをもっと出さねばと議論した。オバマのプラハ演説も「米国は核兵器を使用した唯一の国の道義的責任として、核兵器のない世界に向かうリーダーシップをとる必要がある」と、自分を変えることで人を説得できるという価値観を出している。第1期オバマ政権の国防長官はゲイツが引き継いだんです。私はそこに「流れ」があると思いました。
 これから大統領選挙が本格化した時に、外交の議論の争点はどの辺になっていくんでしょうか。

 西崎 まず、範を垂れることで影響力を及ぼすという議論ですが、米国での議論は、世界を変えていくのか、「丘の上のかがり火」なのかのどちらかなんですね。でもイラク戦争をやっておいて「範を垂れる」ことができるのかと私は思ってしまいます。ゲイツは軍事偏重だったブッシュ政権期の外交を改めようとしたということで、それ自体は合理性がありますが。オバマが登場した2008年と今では米国の雰囲気はまた違います。2008年前後も米国が困難に直面しているという意識があったけれど、あくまでイラクあるいはアフガニスタンの戦争についてであって身近には捉えていなかった。しかし、この間サンバーナーディーノでのテロ2があったりして、局面が変わってきたと思います。今、オバマのようなビジョンを掲げる政治家が人々の支持を集めることができるか疑問に思えます。
 選挙戦から見える外交の軸はやはり「強い米国」。オバマのもとで米国は弱体化したという意識が非常に強いですね。専門家はそのような議論には根拠がない、軍事的にも政治的にも米国が圧倒的に強いと力説しますが、一般的にはオバマが米国を骨抜きにしたと。だからトランプのように米国をもう一度偉大にするといった言説が圧倒的になる。それを正面から疑問視する議論が生まれてくる可能性は今のところない。

 梅林 オバマ第2期選挙の時、我々は彼の次の軍縮提案を待っていた。米国の核戦略立案には時間がかかるので最初の4年はブッシュの戦略を実行する以外なかったが、オバマらしいことがやれるのは次の4年だということで、新しいものが出てこないか期待したのですが、第2期に出てきた戦略は、1000発までしか核弾頭を減らせないという残念な内容でした。ただオバマもベルリン演説の中でもいいことを言っていて、核兵器が存在する限り「正義を伴う平和」はないと。そういう考え方が政策化されることは多分、今の米国社会ではないだろうということを、西崎さんのお話を聞きながら再確認せざるをえないのですが。とはいえ、米国とどういう接点を作って、日本からのメッセージをどう発信すれば少しでも前進するのかを考えねばと思います。

 西崎 私のオバマ評価は比較的高いのですが、それは肝心な時に正しいことを言うからです。「戦争に名誉はない」とか、「ベトナムやイラクの泥沼はこりごりだ」。これらは今の米国ではなかなか言えないことです。そういった意味で、梅林さんと同じく私もオバマの思考過程には共感するところが多いです。ただし仰るとおり、それを政策に移すことが現実的にできるのか。彼が軍事偏重でない大統領だからこそ難しいこともあると思う。タカ派の大統領が思い切ったことをやる可能性もあるので、オバマのアジェンダが別の個性をもった政治家に受け入れられれば、新しい局面が開かれる可能性はある。
 日本に関して言うならば、日本政府は被爆地、被爆のことをもっと真摯に考えてほしいです。興味深いのは、原爆の慰霊式典に出席する安倍首相が、歓迎されざる客となっていることです。被爆者そして長崎・広島市長の側から、安倍政権の外交政策に対する非常に厳しい批判が出ていて、対決姿勢がかなり明らか。あれは健全だと思います。今まで遠慮していたのが表にでてきた。私たちは衝突を嫌いますが、衝突が必要なときもある。

 梅林 一方で、米国の政策に影響がある言論人の中で、戦後日本の平和政策を日本は今変えないと「日米同盟」はうまくいかないと議論する人たちがいて。米国のオピニオンリーダーはそういう人が多いと日本の政治家が一方的に思っていると私は思うんですけれども、例えば北東アジア非核兵器地帯の話をすると、米国民主党のブレーンの人たちがすごく乗ってくるんです。2000年だったか、中堅国家構想(MPI)という米国のNGOがマクナマラ(米元国防長官)を、北東アジア非核地帯を推進する論客として日本の外務省に連れていった。すると彼はすごい勢いで、日本は東アジアで自分の外交をやらなければならない、いつまでも米国の下で働いている日本はいらないと言うわけです。ところが自民党も民主党も、外交通の人は米国をものすごく気にして、非核兵器地帯のようなイニシアチブに関しては怯えるようなところがあります。日本はもっとイニシアチブを取れと言う人は米国では少数派なんでしょうか。

 西崎 流れから言うと少数派かもしれませんね。マクナマラもそうですが、辞めてから自分たちがどういった核政策を進めたのかと愕然としている。ジョージ・ケナンもそうなんですね。ケナンは核抑止論を全く評価しないのですが、そういう人はやはり日本の「反核姿勢」に期待するんだと思うんです。しかし米国の日本通と日本の米国通のタッグにも非常に強いものがあって、日本があまりイレギュラーな―と米国が思うような―行動をし始めると警戒する。その圧力は強い。ただ、それを気にしていたら日本として何もできません。
 もう一つは、米国の今の大統領候補もオバマも、日本に対する特別の思い入れは小さいのでは。ブッシュのお父さん位までの世代は戦争と戦後を知っていて、日本は敵から同盟国になった特別な国だとの認識がある。しかしそうした歴史的記憶のない人たちは、日本を単なる同盟国として捉えるようになる。そういった米国の日本認識の変化にもうまく対応しなければと思います。どうも日本の方が「記憶が長い」ですから、占領以降の米国の特別な関係を重視しがちですが、米国は特別な関係という意識を必ずしも引き継いでいない気がします。トランプも1980年代のイメージで日本を語っていますし。

 梅林 ここで西崎さんの被団協での経験から示唆を頂きたいのですが、非核三原則が守られていないということで、僕は随分、国内で日本のこの核兵器政策を批判するのに、もう少し効き目があるというか、直接政府の判断を変えさせるような市民レベルからのアプローチがないかと考えていて。被爆者が、日本政府のやり方があまりにひどいので、自分たちの尊厳を否定された思いを抱く局面があったと思うんです。今「人道上の結末」の問題が国際社会で議論し直されている時に、そういうことを整理して日本政府の政策を検証できるような、例えば裁判などができないのかと思うのですが。

 西崎 簡単ではないかもしれませんね。被団協は互助組織としてスタートし、被爆者認定訴訟、国民法廷、生活実態調査など、国民の支持を受けて色んな活動をやってきましたが、政府との関係は微妙なところがあります。つまり、共通項は被爆者だということだけですので、政治的には色んな人が含まれます。ただ、一つの思いだけは一緒で、それはとにかく核兵器はなくしてほしいということです。それが被団協の強みだと思うのですが、政治とは違う一点主義にならざるを得ない。死ぬまで被爆者をやめられないという、その思いがどうやったら一番うまく伝わるかに苦心してきたような気がします。

 梅林 そこは非常によくわかります。だから被爆者一人ひとりの人格と核兵器の問題をつなぐ接点が争点になる、そういう場面をどう作るべきかかなと。
 それと少し重なるのですが、「宗教者キャンペーン」という署名運動をピースデポもお手伝いしていて、「私たち日本の宗教者は、日本が核の傘への依存をやめ、北東アジア非核兵器地帯設立に向かうことを求めます」というメッセージを発している。この声明タイトルは政治的には大胆ですが宗教者の言葉としてはそんなに飛躍はないだろうと思えます。立ち上げの会見で呼びかけ人の宗教指導者たちが発言したのですが、汝殺すな、という原点みたいなものからほとばしるように主張が出てくるんです。で、宗教者というのも一つの立場としてあると思いつつ、被爆者という立場もある。それから被爆国日本の「市民」というアイデンティティの立て方もある気がしていて、今の日本の核兵器政策が、自分たちが築いてきたものを正面から崩すということを争点にするような、法的な場面を作った方がいいと思うのです。

 西崎 宗教ということで言えば、米国の一般の人たちも影響を与えることはできると思います。米国の反核平和運動家は宗教的背景を持った人が多いですし、米国は宗教色が強い国で、その中から聖戦論も出てきますが、逆に核兵器被害について感受性が鋭い人も現れてくる。そういった人々に訴えていくことで、共感の輪を広げられると思います。

 梅林 今のご指摘は非常にヒントになりました。「宗教者声明」は日本の宗教者のメッセージとして作られたわけですが、日本の宗教者の運動が国際的になっていくと、それと共鳴する格好で米国の議論も作られていく可能性は十分あるという印象です。これからもよろしくお願いします。大いに一緒にやっていきましょう。
(まとめ:ピースデポ)

編注
1 16年2月17日に行われた参議院「国際経済・外交 に関する調査会」。梅林特別顧問は参考人として意見陳述した。本誌490-1号(16年3月1日)参照。
2 15年12月2日、米カリフォルニア州サンバーナーディーノの福祉施設で起きた銃乱射事件。死傷者約30人。テロ事件として捜査されている。

西崎 文子(にしざき ふみこ)
東京大学大学院総合文化研究科教授。専門は20世紀アメリカ政治外交史。アメリカ外交の理念的な側面を研究。大学生の頃から、通訳として日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の国際活動にかかわってきた。著書に『アメリカ外交とは何か』(岩波書店、2004年)ほか。TBSテレビ「サンデーモーニング」にコメンテータとして出演。
梅林 宏道(うめばやし ひろみち)
ピースデポ特別顧問。長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)客員研究員(前センター長)。核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)東アジア・コーディネーター、「中堅国家構想(MPI)」国際運営委員として軍縮、安全保障問題にとりくむ。著書に『情報公開法でとらえた沖縄の米軍』『在日米軍』『非核兵器地帯』など。

くわしく

【短信:北朝鮮の動向】  政治・外交パフォーマンス、5月の労働党大会に照準

公開日:2017.07.17

 5月上旬に36年ぶりに開催される第7回朝鮮労働党大会に向けて、北朝鮮の政治・外交のすべてが動いていると言っても過言ではない。
 2月18日、労働党中央委員会、労働党中央軍事委員会が、共同で全党員へ第7回労働党大会への檄をとばした1。金日成主義・金正日主義礼賛と金正恩最高司令官への忠誠という基調を繰り返しつつ、広範な分野で党員の決起を呼びかけた。
 曰く「人民第一主義を全党に貫け」「青年の訓練に全力を注げ」「水爆実験成功の精神をすべての分野に」「朝鮮流で世界クラスの地下鉄の建設を」「人民の生活水準の改善を」「ハウス野菜生産の沸き立つ全国運動を」「全土を果樹園に」「消費財問題の完全解決を」「新世紀の教育革命の炎を燃やせ」「全人民の科学技術能力の向上で科学技術大国の早期実現を」「社会主義保健システムの利点を全開せよ」「世界の進歩政党や人民との連帯の強化を」……。
 5月に向かうこの時期の北朝鮮の政治・外交パフォーマンスは、このような国民総動員の文脈において理解する必要がある。

米国の新作戦計画による緊張激化

 この国民運動の中で、3月7日に米韓合同軍事演習が始まった。野外実動演習フォウル・イーグルと初期の米軍投入訓練キー・レゾルブである。例年のものであるが、史上最大規模の兵力の投入とともに、今回の演習には新要素が加わった。
 米軍の新しい作戦計画5015の一部が昨年暴露され、韓国国会で激しい議論になった。その内容は、危機において、米韓は朝鮮戦争のような正規戦ではなくて、先制攻撃によって一気に北朝鮮の軍事拠点を破壊し、金正恩指導部の中枢を襲って殲滅する非正規攻撃を行うというシナリオである2。このシナリオが、今回の大規模演習の内容として組み込まれていると考えられた。北朝鮮はこのシナリオを「斬首作戦」(beheading operation)と呼んで金正恩殺害計画として非難し、激しく反発した。実際には、この作戦概念は新しいものではなく、米国の対テロ戦争において指導部中枢個人を殺害する「斬首戦略」(decapitation strategy)と呼ばれたものである。イラク戦争においてサダム・フセインを標的にした軍事作戦はその一例であった。

先制攻撃の言説とリスク

 北朝鮮による激しい反発は、北朝鮮が「先制攻撃」の意図を繰り返し表明し、瀬戸際までエスカレートさせたことに現れている。2月23日、北朝鮮は最高司令官の重大声明を発表した。この文書は、国連総会と安保理に送付・配布された3
 声明は作戦計画5015の意図を「DPRKの最高司令部を標的とした『斬首作戦』を通して『社会体制の崩壊』を目指す」ものであると述べ、それは、「北朝鮮の核・戦略ミサイルの使用を命じる権限のある者を排除するための先制攻撃」を意味すると主張した。その上で、北朝鮮もまた、「この瞬間から、敵軍に反撃するための先制的な正義の作戦に突入する」と宣言した。
 「相手が先制攻撃をするので、こちらが先に先制攻撃をして相手の中枢を叩く」と言っているように読めるが、北朝鮮の文言は注意深く作られている。上記の最高司令官の重大声明は、「敵の特殊作戦部隊や兵器が『斬首作戦』を実行する兆候をいささかでも示せば」という条件を付けている。これ以後も、北朝鮮は「先制攻撃」の言説を繰り返しているが、すべてにおいて、この国際法を意識した注意深さは保たれた。
 このことは、北朝鮮が「何をするか分からない」状態において行動しているのではないことを示している点において、一つの安心材料ではある。しかし、このような状況においては双方の側からあらゆる形の謀略が可能なのであって、武力衝突のリスクは極めて高く、危うい。

核・ミサイルの技術力を誇示

 同じ時期、北朝鮮は核・ミサイル技術力の進展を誇示する宣伝活動を繰り返した。
 3月9日、労働新聞が写真入りで小型化した核弾頭の写真を載せ、金正恩が科学者から弾頭小型化と運搬ミサイルに搭載するための標準化の説明を聞いたと報じられた。3月15日には、弾頭の再突入環境模擬試験の成功が写真入りで報じられ、3月24日には固体燃料ロケットの燃焼実験に成功した写真を公開した。4月9日にはICBM用の新型ロケット地上噴射実験の成功を動画で公開した。
 これらの公開は、北朝鮮の抑止力の信憑性を印象づけるよりも、むしろ技術段階がまだ実戦兵器レベルに達していないことを示すものである。この技術的成果の強調の狙いは、国防戦略における自主科学技術の成果を強調する国内政治目的であると考えるのが妥当であろう。(梅林宏道)

1 韓国中央通信・英語版、16年2月18日。
2 「朝日新聞」、15年10月5日。
3 A/70/760-S/2016/179

くわしく

<資料3>オバマ米大統領の16年3月30日付「ワシントン・ポスト」紙への寄稿(全訳)

公開日:2017.07.17

核兵器のない世界のビジョンを、いかにして現実にするか

2016年3月30日
アメリカ合衆国大統領
バラク・オバマ

 グローバルな安全と平和に対するあらゆる脅威の中で、最も危険なのは核兵器拡散と潜在的な核兵器の使用である。それゆえに7年前、私はプラハでアメリカが核兵器拡散を防止し、核兵器のない世界を追求することを約束した。このビジョンは「我々は地球上から核兵器が完全に取り除かれる日を追求する」と発言したロナルド・レーガンを含む民主党、共和党の私の前任者たちのビジョンに基づくものだ。
 3月31日、私はワシントンで、テロリストが核兵器を入手したり使用したりすることを防ぐという、我々のプラハ・アジェンダの主柱の建設を前進させるため、50か国以上の世界のリーダーたちを、第4回核保安サミットに迎える。我々は、例えば12以上の国々から高濃縮ウラン、プルトニウムを成功裏に撤去したという進捗を確認する。アメリカを含めた国々は新たな約束をする。そして我々は核保安を支持する国際条約や機関を強化し続けるだろう。
 ISILもしくはISISと呼ばれるテロリスト集団などの組織による脅威が継続する以上、我々は世界一危険なネットワークが世界一危険な兵器を手に入れるのを防ぐため、同盟国やパートナーとともに対テロ努力を見なおすであろう。
 核テロの防止以上に、私がプラハで概略を説明した、より広範なビジョンに向けた重要な進展があった。
 第1に、我々は核兵器のない世界に向けた具体的な歩みを続けている。アメリカとロシアの配備核弾頭数を2018年までに1950年代以来過去最少のレベルにするために、アメリカとロシアは引き続き新START条約の義務を遵守する道を進んでいる。アメリカが敵を思いとどまらせ同盟国の安全を保障するために安全で効果的な保有核兵器を維持しているさなかにも、私は我々の国家安全保障戦略においては核兵器の数と役割を減じてきた。私はまた新型核弾頭の開発を中止し、アメリカが核兵器を使用したり使用の威嚇をするような偶発的状況が生ずる可能性を減少させてきた。
 第2に、我々は核兵器の拡散を防ぐ、核不拡散条約を含むグローバルなレジームを強化してきた。我々は特にイランのような国で、核兵器の拡散を防止するための国際社会の団結に成功してきた。核兵器を保有したイランは、我々と我々の同盟国、パートナーの国家安全保障に対し受け入れがたい脅威を作り出すことになったかもしれない。それは中東地域の核軍備競争の引き金になったかもしれないし、グローバルな不拡散体制が瓦解し始めることになったかもしれない。
 イランは当初外交的解決を拒否したが、米国は核兵器に対する義務を守らなかった国家が直面することになる結果を説明しながら、イランに制裁を課すべく国際社会を動員した。厳しい交渉の後、イランは核兵器保有に向かうあらゆる道筋を閉ざすという核取引に合意した。いまやイランは核プログラムを監視する、これまで交渉されたどれよりも包括的な査察体制の下にある。言いかえれば、この取引により、世界は核爆弾を手にした国がもうひとつ増えるのを防いだのである。そして我々はイランが約束を果たすことを注意深く確認中である。
 第3に、我々は自らの責任を果たしている国々が平和的核エネルギーにアクセスできるよう、民生分野の核協力の新しい枠組みを追求している。私が7年前に設置を呼びかけた国際燃料バンクが今、カザフスタンで建設中である。これにより国々は、転用や盗難のリスクのあるウラン濃縮を行わずに自分たちの必要なエネルギーを得ることができるようになるだろう。
 これらの進展にもかかわらず、私は我々が未解決の問題を抱えていることをまず認める。ロシアにINF条約への違反がある以上、我々はロシアにその義務を完全に遵守するよう求め続ける。我々の軍の指導者たちと同じように、私は冷戦時代の強大な保有核兵器は、今日の脅威に適合していないと引きつづき信じている。合わせて世界の核兵器の90パーセント超を保有するアメリカとロシアはさらに備蓄を減らす交渉をすべきである。
 国際社会は、最近の核実験やミサイル発射を含む北朝鮮の継続的な挑発に対して結束しなければならない。国連安全保障理事会により北朝鮮に課された追加制裁は、違反には結果が伴うことを示している。アメリカは同盟国やパートナーとともに、平和的手段による朝鮮半島の完全かつ検証可能な非核化のために協働してゆく。
 さらに広くいえば、世界の安全保障はアメリカを含む国々に対して包括的核実験禁止条約の批准を求めており、兵器用核分裂物質の生産をきっぱりと終了させる新しい条約を締結することを求めている。
 私はプラハで、核兵器のない世界の安全と平和は、すぐには、おそらく私の生きている間には達成されないだろうと言った。しかし我々は既に始めている。核兵器を使用した唯一の国として、アメリカは核兵器廃絶を先導する道義的責任がある。しかし、このビジョンは一つの国では達成できない。それは世界全体の仕事である。
 我々の前には高いハードルがはっきり見えている。しかし私は、核兵器の拡散は不可避だという宿命論におちいってはいけないと信じている。我々はありのままの世界の現実に対処すると同時に、あるべき世界の姿を追求しなければならない。
(訳:ピースデポ)

※原文テキスト:

くわしく

<資料2>核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)から第4回核保安サミットへの公開書簡(全訳)

公開日:2017.07.17

2016年3月28日

持続可能な核保安のためには普遍的な拡散コントロールと核軍縮措置が必要です

国家首脳、核保安サミット代表者各位

 3月31日から4月1日にかけてワシントンDCで開催される核保安サミットを歓迎し、皆さまの出席に感謝します。
 兵器級核物質の存在によって、核兵器または放射能兵器(ダーティボム)の製造と使用のリスクが生まれます。これらの使用は、計り知れぬ苦難を生み出す壊滅的な人道上、環境上の結末をもたらすでしょう。これを防がねばなりません。
 私たちは、核保安サミットと核物質の安全確保のためのフォローアップ行動をとおして各国及び各政府の首脳によって人類を代表して示される、協力の精神と実践に勇気づけられています。
 私たちは、2009年4月9日のプラハ・フラチャニ広場での歴史的演説に続いてこの努力を開始したオバマ大統領を賞賛します。そして、4度の核保安サミットの開催地を提供した米国、韓国及びオランダを賞賛します。
 しかしながら、持続可能な核保安のためには、オバマ大統領によるプラハ演説のもう一つの重要な焦点であった、核兵器のない世界の平和と安全の実現のための、同じように高いレベルの努力が必要です。核兵器がテロリストあるいは国家の関与する事故、計算違いもしくは常軌を逸した行動によって使われるリスクを取り除くための方法は、核兵器の廃絶以外にありません。
 私たちは、核軍縮は、地方、国内、地域そして世界におけるあらゆるレベルの努力があってはじめて実現される「世界的な公益」であると信じます。
 よって私たちは、皆さまが核保安サミットにおいて、核軍縮をめざすための核保安サミットと同様の高いレベルのプロセスを支持することを誓約されるよう要請します。
 私たちは、おのおのの属する議会、議会連合体及び多元的ネットワークにおいて、このような努力を支持することを約束します。
 世界中の議員、自治体首長、宗教指導者が発した共同声明「核兵器のない世界―私たちの公益」を賛同の意をこめて添付いたします。

(署名)
PNND共同代表 サベル・チョドリー国会議員(バングラデシュ)、他9名。
PNND評議委員及び特別代表 ムハンマド・アンワー・エル・サダト国会議員(エジプト)、他22名。
(訳:ピースデポ)
※原文テキスト:

くわしく

<資料1>2016核保安サミット・コミュニケ(全訳) 

公開日:2017.07.17

2016年4月1日

 核および放射能テロの脅威は国際の安全保障に対する最大の挑戦の一つである。そしてその脅威は継続的に拡大している。2016年4月1日、第4回核保安サミットのためにワシントンDCに集った我々国家指導者は、このサミットが2010年以来、その脅威に対する認識を高め、核保安に関する多くの具体的で意義深い永続的な改善をもたらしたと言えることを誇らしく思う。サミットはまた、核保安に関する国際的法律文書の広範囲の批准と履行などを通して、国家、地域、世界のレベルで核保安の枠組みを強化した。我々は核物質の物理的防護に関する条約とその2005年の改正、核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約の重要性を強調し、それらの普遍化と完全なる履行に向けて努力する。我々は核物質と原子力施設の物理的防護に関する2005年改正条約の速やかな発効と、さらなる批准を歓迎する。
 我々は核軍縮、核不拡散、原子力の平和的利用という共通の目標に対する誓約を再確認する。我々はまた核保安を強化する措置が、原子力エネルギーを平和目的で開発、使用する国家の権利を妨げないことを再確認する。我々は、国家が各々の義務に従い、核兵器に用いられる核物質を含むすべての核及び放射性物質、並びに自らの管理下にある核施設の保安を常に効果的に維持することは、国家の基本的責任であると再確認する。非国家主体による核や他の放射性物質の入手を防ぐため、さらに多くの作業がなされる必要がある。非国家主体はこれら物質を邪悪な目的のために使うことがありうるからである。我々は核テロの脅威を減じ核保安を強化することによって、平和で安定した国際環境を醸成することを誓約する。
 保安の改善を持続するためにはあらゆるレベルにおける絶え間ない警戒が必要である。そして我々は我々の国々が核保安を継続的な優先課題とし続けることを誓約する。我々は指導者として自身の責任を強く認識している。今日取る行動によって明日の核保安事故を防ぐことができる。機微な情報を保護しつつ、各国の状況に照らして、我々がそのような措置を目に見える形で取ることを選べば、それは各国の核保安体制の有効性を高め、信頼を構築することに貢献する。
 核、放射性物質テロに対抗するには、国家の国内法や手続きに沿って情報を共有することを含む国際協力が要求される。国際協力は共通の利益とすべての人の安全のための、より包含的で調整され持続可能な、強固な核保安の枠組みに貢献できる。
 我々は、グローバルな核保安の構造を強化し国際的指針を開発するにあたっての国際原子力機関(IAEA)の重要な責任と中心的役割、国際機関間及びイニシアチブ間での核保安活動の促進や調整、及び核保安の責任を遂行する各国の努力への支援における指導的役割を再確認する。我々は、IAEAが政治的気運を維持し、すべての関係者の間で核保安の意識を高めるために、2016年12月の閣僚会議を含む核保安に関する国際会議のような、定期的なハイレベル国際会議を開催することを歓迎し、支持する。
 我々はこのサミットのプロセスを支えた官僚や政府専門家の国際的ネットワークを維持し、広く国家共同体を糾合するのみならず、原子力産業や市民社会の関係するパートナーの継続的な参加を奨励するよう努める。
 政治的気運を確保し、国家、地域、世界のレベルでの核保安を継続的に強化するための我々の継続的な集団的決意の中で、我々おのおのが属する国際組織とイニシアチブ(国連、IAEA、インターポール、核テロリズムに対抗するためのグローバル・イニシアチブ、大量破壊兵器及び物質の拡散に対するグローバル・パートナーシップ)を支持しつつ、我々は自発性を基礎として実行され、各国の国内法や関係する国際的義務に合致する添付の行動計画の履行を決意した。これらの計画は参加国の政治的意思を反映している。
 2016年のサミットでこの形態での核保安サミットは終了する。我々は2010、2012、2014年サミットのコミュニケと2010年サミットの作業計画が、我々がこれらを完全に履行するときの努力の指針となり続けるであろうことを確認する。
(訳:ピースデポ)

※原文テキスト:
「核保安サミット」ウェブサイト内  にリンクあり。

くわしく

【ワシントンで第4回核保安サミット】  
継続的取り組みを確認し、シリーズは終了  
「核なき世界」の目標を見失うな

公開日:2017.07.17

ワシントンDCで開かれた第4回「核保安サミット」(3月31日~4月1日)は、2010年以来のサミットで核保安における「意義深い永続的な改善」がなされたとのコミュニケを発して閉会した。このような成果が喧伝されることによって、09年「プラハ演説」で明らかにされた「核なき世界」という目標が後景に追いやられ、逆行する政策が糊塗され、不問に付されるようなことがあってはならない。「核保安サミット」が開かれるのに「核軍縮サミット」が開かれない現実を問うことが必要である。


 09年4月5日のプラハ演説1で、自らの「核兵器のない世界」へのビジョンの3つの柱として、オバマ大統領は「核軍縮」、「核不拡散」、「核保安」を掲げた。大統領はいずれの分野においても協調的外交が必須であることを強調した。
 核保安分野においてプラハ演説で強調されたのは、「テロリストが核物質や核兵器を絶対に手に入れないようにする」という目標であった。大統領は、「世界各地の核物質のすべての保安を4年以内に確保するという国際努力」を誓約した。この努力の中核として2010年4月に開催されたのが第1回核保安サミット(ワシントンDC)であった。以来、第2回(ソウル、12年3月)、第3回(ハーグ、14年3月)と回を重ねてきた。第4回で、このような形態でのサミットは終了となる。4月1日に発表された「コミュニケ」(2ページ・資料1)は、10年以降の歩みを、「(放射能テロの脅威に対する)認識を高め」、「多くの具体的で意義深い永続的な改善をもたらした」と総括し、各国が「核保安を継続的な優先課題とし続ける」ことを誓約した。
 このように核保安の進捗と成果が強調される文脈の中で、見逃すことができないのは、核保安が、あたかも核軍縮とは別個に追求され、実現されうる課題であるかのような認識が広がっていくことである。核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)は3月28日、核保安サミットに参加する国家首脳らに送った公開書簡(2ページ・資料2)で、核兵器がテロリストや国家によって使われるリスクを取り除く方法は「核兵器を廃絶する以外にはないとして、サミットが「核軍縮をめざすための核保安サミットと同様の高いレベルのプロセスを支持する」よう求めた。「核軍縮サミット」こそが、必要とされているのだ。
 3月30日のワシントン・ポスト紙への寄稿(3ページ・資料3)で、オバマ大統領は、核保安以外のプラハ・アジェンダ、すなわち核軍縮、核不拡散への取り組みを明言している。核兵器の廃絶こそがすべてを確かにする方法であることを忘れてはならない。(編集部)

1 ピースデポ・イアブック「核軍縮・平和」14年版、基礎資料1-10(264ページ)に抜粋訳。

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