【ワシントンで第4回核保安サミット】  
継続的取り組みを確認し、シリーズは終了  
「核なき世界」の目標を見失うな

公開日:2017.07.17

ワシントンDCで開かれた第4回「核保安サミット」(3月31日~4月1日)は、2010年以来のサミットで核保安における「意義深い永続的な改善」がなされたとのコミュニケを発して閉会した。このような成果が喧伝されることによって、09年「プラハ演説」で明らかにされた「核なき世界」という目標が後景に追いやられ、逆行する政策が糊塗され、不問に付されるようなことがあってはならない。「核保安サミット」が開かれるのに「核軍縮サミット」が開かれない現実を問うことが必要である。


 09年4月5日のプラハ演説1で、自らの「核兵器のない世界」へのビジョンの3つの柱として、オバマ大統領は「核軍縮」、「核不拡散」、「核保安」を掲げた。大統領はいずれの分野においても協調的外交が必須であることを強調した。
 核保安分野においてプラハ演説で強調されたのは、「テロリストが核物質や核兵器を絶対に手に入れないようにする」という目標であった。大統領は、「世界各地の核物質のすべての保安を4年以内に確保するという国際努力」を誓約した。この努力の中核として2010年4月に開催されたのが第1回核保安サミット(ワシントンDC)であった。以来、第2回(ソウル、12年3月)、第3回(ハーグ、14年3月)と回を重ねてきた。第4回で、このような形態でのサミットは終了となる。4月1日に発表された「コミュニケ」(2ページ・資料1)は、10年以降の歩みを、「(放射能テロの脅威に対する)認識を高め」、「多くの具体的で意義深い永続的な改善をもたらした」と総括し、各国が「核保安を継続的な優先課題とし続ける」ことを誓約した。
 このように核保安の進捗と成果が強調される文脈の中で、見逃すことができないのは、核保安が、あたかも核軍縮とは別個に追求され、実現されうる課題であるかのような認識が広がっていくことである。核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)は3月28日、核保安サミットに参加する国家首脳らに送った公開書簡(2ページ・資料2)で、核兵器がテロリストや国家によって使われるリスクを取り除く方法は「核兵器を廃絶する以外にはないとして、サミットが「核軍縮をめざすための核保安サミットと同様の高いレベルのプロセスを支持する」よう求めた。「核軍縮サミット」こそが、必要とされているのだ。
 3月30日のワシントン・ポスト紙への寄稿(3ページ・資料3)で、オバマ大統領は、核保安以外のプラハ・アジェンダ、すなわち核軍縮、核不拡散への取り組みを明言している。核兵器の廃絶こそがすべてを確かにする方法であることを忘れてはならない。(編集部)

1 ピースデポ・イアブック「核軍縮・平和」14年版、基礎資料1-10(264ページ)に抜粋訳。