核兵器・核実験モニター バックナンバー

【日誌】核・ミサイル/沖縄(16年9月5日~9月20日)

公開日:2017.04.14

ASEAN=東南アジア諸国連合/DPRK=朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)/MD=ミサイル防衛/PCA=常設仲裁裁判所/PKO=国連平和維持活動/QRF=即応対処チーム

●9月6日 オバマ米大統領、ラオスでアジア太平洋リバランス政策につき総括演説。日米ガイドラインや韓国MD協力を成果と強調。
●9月6日 ビエンチャンで日比首脳会談。大型巡視船2隻の建造費165億円を円借款供与へ。海自中古練習機TC-90有償貸与も合意。
●9月6日 国連安保理、5日のDPRK中距離弾道ミサイル発射を「強く非難」との報道声明。
●9月6日 米ニューヨーク・タイムズ紙、オバマ大統領が政権内の反対を受け核先行不使用政策採用を取りやめる模様と報じる。
●9月7日 ビエンチャンでASEAN首脳会議。声明は南シナ海PCA判決に触れず、各国も中国への批判抑制。背景に対ASEAN中国経済。
●9月8日 米共和党上院議員ら33人がオバマ大統領に、核実験禁止安保理決議を出すならCTBT関連予算承認を阻止するとの書簡。
●9月9日 DPRKが北東部ブンゲリで5度目の核実験。進む弾頭小型化。韓国気象庁によると爆発エネルギーは前回実験の2倍程度。
●9月9日 国連安保理、DPRKの5度目の核実験で緊急会合。実験を「強く非難」し「追加制裁を検討する」との報道声明。
●9月9日 DPRK核実験を受け、韓国与党セヌリ党の前院内代表が「自衛核保有論」。同党の前代表も米核兵器の韓国配備に言及。
●9月11日 DPRK外務省がオバマ米大統領の核実験非難声明を批判する報道官談話を発表。核開発継続の考えを示す。
●9月12日 中露海軍の合同軍事演習「海上連合2016」が南シナ海で開始。19日まで。
●9月13日付 DPRKが5度目の核実験を前に、米韓の軍事行動計画に対抗するため核開発を進めると中国側に説明していたと判明。
●9月13日 米軍がグアム配備のB1戦略爆撃機2機を韓国上空に展開。DPRKをけん制。
●9月13日 アントニオ猪木参院議員がピョンヤンでリ・スヨン朝鮮労働党副委員長と会談。「核実験は米国に向けたもの」とリ氏。
●9月14日 18年から10年間で380億ドルを米がイスラエルに軍事支援する覚書に両政府が調印。2国間軍事支援で米史上最高額。
●9月14日 オバマ氏が採択めざす核実験自制を求める安保理決議案が判明。法的拘束力を与える部分の削除など当初案から後退。
●9月14日 南スーダンPKO次期派遣陸自部隊が「駆けつけ警護」訓練開始。15日ワシントンで稲田防衛相が米国務長官に伝える。
●9月14日 王毅中国外相、日韓外相との電話会談など通じ、対DPRK安保理追加制裁決議に賛成の意向を示す。
●9月16日付 日米韓、対DPRK安保理追加制裁決議に向け、原油輸出や石炭・鉱物輸入の全面禁止などを要求へ。
●9月18日付 DPRKが9月5日発射の弾道ミサイル3発中2発は軌道と落下水域がほぼ同じと判明。命中精度向上か。
●9月18日 ニューヨークで日米韓外相会談。対DPRK安保理制裁決議や独自制裁を協議。共同声明で米の拡大核抑止を強調。
●9月19日付 米議会が、訪米した韓国与野党幹部らに韓国の核武装や米戦術核配備を認めないと伝えていたと判明。
●9月19日付 中国が対DPRK制裁内容で民生除外を日米韓に示唆と判明。
●9月19日 安保関連法成立から1年。国会前で法廃止を訴える集会。参加者2万3千人(主催者発表)。
●9月19日 ニューヨークで米中首脳が会談。対DPRK安保理追加制裁決議採択で一致するも内容には隔たり。
●9月20日付 陸自が南スーダンPKO部隊に駆けつけ警護など新任務が課された場合にQRFを設置の方針。

沖縄

●9月7日付 米軍協議停滞で返還予定地7事業の道路整備遅れる。北谷町の県道では環境補足協定のため立ち入り調査できず。
●9月8日 訪沖中の「ベテランズ・フォー・ピース」メンバー、沖縄の新基地建設阻止を米で呼びかけへ。県庁で会見。
●9月9日 北部訓練場ヘリパッド建設工事に民間の大型特殊ヘリ投入。重機空輸を開始。
●9月9日 北部訓練場ヘリパッド建設現場で赤土流出。通称「N1裏」を県北部保健所職員が初視察。
●9月9日 有識者らで構成する「普天間・辺野古問題を考える会」、工事強行を批判し共同声明を発表。182人が呼びかけに賛同。
●9月10日付 英国海兵隊将校2人、県内で米海兵隊訓練に参加。米英隊員交換プログラムの一環。外務省「問題ない」との見解。
●9月11日 「東アジア共同体・沖縄(琉球)研究会」が発足。名誉顧問に鳩山元首相。沖縄の自己決定権の在り方を研究・提言。
●9月11日 北部訓練場ヘリパッド建設工事。警察庁、県外機動隊へ事前指示。県公安委員会の派遣要請前日に「特別派遣」文書。
●9月13日 外務省、日米合同委議事録の情報公開拒否。開示訴訟を提起した市民団体、「外交秘密が拡大する危険」と批判。
●9月13日 嘉手納・普天間15年度航空機騒音測定結果発表。嘉手納周辺では、19測定局中8局で基準値超過。同町屋良地区で夜間早朝騒音175.7回。
●9月13日 北部訓練場ヘリパッド建設工事に自衛隊CH47輸送ヘリ2機を投入。4トントラックなどの重機輸送開始。
●9月14日 自民・二階幹事長初来県。翁長知事、会談で辺野古新基地建設断念などを盛り込んだ要望書渡す。
●9月15日 やんばる国立公園(国頭・大宜味・東)、正式指定。18年めどに「琉球・奄美」の世界自然遺産登録目指す。
●9月16日 辺野古埋立て承認取消違法確認訴訟、県が敗訴。福岡高裁が初判断。県側は最高裁に上告へ。
●9月16日 石垣市議会、「石垣島への自衛隊配備を求める決議」案を賛成多数で可決。中山市長、年内に公聴会を開く方針示す。

くわしく

【資料】「アスタナビジョン:放射性のもやの中から核兵器のない世界へ」

公開日:2017.04.14

「核実験に反対する国際デー」である16年8月29日、カザフスタンの首都アスタナで、カザフスタン議会、カザフスタン外務省、PNND(核軍縮・不拡散議員連盟)の共催により、世界各国の議員、宗教指導者、国際機関代表、研究者、科学者、医療専門家、法律家、若者、その他の市民社会代表が参加し、「核兵器のない世界を築く」核軍縮国際会議が開かれた。ピースデポの山口大輔研究員がPNND日本コーディネーターとして参加し、分科会で北東アジア非核兵器地帯の現状についてスピーチを行った。4つの分科会の結果を踏まえて会議の最後に採択された「アスタナビジョン」には、CTBTの早期批准・発効や核抑止力からの脱却、北東アジアを含む非核兵器地帯の設立などに加え、同月スイス・ジュネーブで行われたOEWG(核軍縮公開作業部会)で採択された、核兵器禁止条約交渉の2017年開始の要求が盛り込まれた。

アスタナビジョン:放射性のもやの中から核兵器のない世界へ

 ちょうど25年前の1991年8月29日、ヌルスルタン・ナザルバエフ・カザフスタン大統領は核実験に反対する市民社会の大衆運動の支持を受けて、セミパラチンスク核実験場を閉鎖した。これは世界の軍縮の歴史において、初めてのことである。
 カザフスタン東部にあるセミパラチンスク実験場で、ソビエト連邦によって実施された456回の核爆発は、人間の健康と環境に、現在と将来の世代にわたり壊滅的な打撃をもたらした。太平洋、アジア、北アフリカ、北米を含む世界中で行われた核実験の遺産と、広島と長崎への核爆撃の経験、事故や計算違い、また意図したところの核兵器の使用のリスクにより、これらの兵器を廃絶することはグローバルな至上命題となった。
 我々は、世界第4位の規模の核爆弾を自主的に放棄し、包括的核実験禁止条約に加入し、中央アジア非核兵器地帯を設立し、核実験の危険性と長期的な影響を世界に伝えるためのアトムプロジェクトを開始し、国連に8月29日を核実験に反対する国際デーを制定させ、2015年に国連で採択された核兵器のない世界のための世界宣言を主導し、戦禍を終わらせるため宣言「世界。21世紀」を推し進めた、ナザルバエフ大統領の指導力とカザフスタンの国民とを称賛する。
 我々は、核兵器のない世界が21世紀における人類の主要な目標であるべきであり、これは国連100周年となる2045年までに達成されるべきであるという宣言に表明された希望を支持する。
 我々は世界のリーダーたちが核兵器やその部品がテロリストの手に落ちないように、一連の核保安サミットや他の国際行動を通じて行動したことを称賛する。しかし、世界のリーダーたちは核軍縮にナザルバエフ大統領が置いているのと同様の優先度をもたせるべきである。
 我々は朝鮮民主主義人民共和国による核実験の継続を遺憾に思う。そして我々は全ての核武装国による核兵器の近代化の継続に懸念を表明する。これらの国々の間で緊張が高まると、事故や意図による軍事的事象が世界を壊滅的な核衝突へ向かわせるかもしれない。
 我々は世界中の議会と議員のグローバルレベルでの核不拡散・核軍縮の更なる進展と関連する法制度の採択に対する特別な責任を認識する。
 我々はカザフスタンが2017~2018年の国連安全保障理事会・非常任理事国に選出されたことを祝福する。我々はカザフスタンが核拡散を防ぎ、核兵器のない世界の平和と安全保障を進めるために他の安全保障理事国と緊密に協働することを確信する。
 我々はナザルバエフ大統領が核軍縮と核兵器のない世界の達成への顕著な貢献に対する国際賞を制定するという、この会議で提唱されたイニシアチブと2016年アスタナ・ピースサミットの発表を支持する。
 我々は多国間核軍縮交渉を進める公開作業部会での進展を歓迎し、世界中の政府がさらに進展させることを促す。
 我々、議員、宗教指導者、国際機関代表、研究者、科学者、医療専門家、法律家、若者、その他市民社会代表は政府に次のことを具体的に要求する。

1. この会議がセミパラチンスク核実験場閉鎖25周年、包括的核実験禁止条約署名開放20周年に行われていることに留意し、もしまだ署名、批准していないのであれば、特に核武装国が包括的核実験禁止条約(CTBT)に署名し、批准すること。
2. 採択された2010年核不拡散条約(NPT)行動計画と1996年国際司法裁判所により確認された、完全なる核廃棄を交渉する全世界的な義務に従って、交渉と実質的な議論を開始すること。
3. 1995年再検討延長会議で合意された中東非核兵器・非大量破壊兵器地帯を設立し、国連事務総長にこの義務を進展させることを要求すること。さらに北東アジア、ヨーロッパ、北極といった非核兵器地帯を追加に設立すること。
4. 全ての核戦力の高度作戦準備態勢を解除し、先行不使用政策を採用し、核兵器の使用による威嚇を慎むことで、核兵器使用のリスクを減ずること。
5. 核兵器ゼロ達成のために条約と慣習国際法上の義務を完全に履行すること。
6. 核兵器を禁止し廃棄するために2017年に多国間交渉を開始すること。
7. 核実験と居住地域を核目標とすることを禁止することを含む、国連安全保障理事会による核軍縮に関する暫定的な措置を支持すること。
8. 核軍縮検証のための国際パートナーシップ(IPNDV)への参加などを通じて、グローバルな核軍縮を検証し、補強する手段や方法をさらに開発すること。
9. 安全保障ドクトリンから核抑止への依存を取り除き、その代わりに国際紛争を外交、法律、地域的機構、国連やその他平和的手段で解決すること。
10. 全ての核兵器国ができる限り早く、しかし必ず国連100周年記念以前に、核兵器を完全に廃棄するという目的で、備蓄核兵器を大幅に削減すること。

 我々には核兵器を廃絶しようとする政府を支持し、協力する準備がある。この国際集会に集まったさまざまな人々の間の協力は、核軍縮を達成するグローバルな運動のためのプラットフォームを提供している。

 人類の未来を深く憂慮し、核軍縮の分野におけるカザフスタンの例に勇気づけられ、我々は、命あるうちに核兵器のない世界の平和と安全保障を達成する可能性と必要性を確認する。

(訳:ピースデポ)

くわしく

【資料】「北東アジア非核兵器地帯に進むべき時」文正仁・延世大学名誉教授「原子科学者会報」(BAS)に寄せた論考の全訳。

公開日:2017.04.14

 7月、韓国政府は米国が高高度防衛(THAAD)として知られるミサイル防衛システムを配置することに合意した。この決断は野党に加え、中国政府の猛烈な反対を引き起こした。野党メンバーは政府が直ちにこの決定を撤回し、国会の審議にかけるよう要求した。中国は配備の中止を要求し、対抗措置をとると警告した。しかし朴槿恵(パク・クネ)大統領はこれら要求をきっぱりと拒絶し、北朝鮮の高まる核とミサイルの脅威がTHAADの配備以外の選択肢をなくさせた、という彼女の立場を再確認した。
 北朝鮮に関する朴大統領の戦略は、より厳しい制裁、国際的孤立化、ミサイル防衛からなる全面的圧力によって構成される。対話、交渉、相違の平和的解決という語彙は彼女の辞書から消えた。彼女はすすんで対立のエスカレーションという危険を冒しているようにすら見える。しかし金正恩(キム・ジョンウン)に核兵器を放棄するよう説得する可能なアプローチは残されている―北東アジア非核兵器地帯を追求することだ。

 北朝鮮は核の脅威の減少や除去に関わる国際法の下での平等な取り扱いを長く要求してきた。北朝鮮政府はまた、武装の解除の条件として、他の国が北朝鮮に対していかなる核による威嚇も与えないという、法的拘束力のある保証を受けることを要求した。これらの要求はこの地域に非核兵器地帯を設置する多国間条約を通じて満たすことができるだろう。そのような条約の下で核兵器国は先行不使用政策を採用し、非核兵器国に対して核兵器の使用や使用による威嚇をしない保証を行うという、消極的安全保証を与えるだろう。一方非核兵器国は核兵器を持たないと誓約する、もしくは北朝鮮のような核武装国の場合、核戦力の撤去を誓約する。
 北東アジア非核兵器地帯の概念は古くは1972年に米国の軍備管理サークルの中で初めて紹介された。1996年、軍縮専門家・梅林宏道氏がスリー・プラス・スリーの公式を組み込んだ非核兵器地帯のビジョンを明確に表明した。このモデルの下で日本と二つの朝鮮は非核兵器地帯を設立し、一方中国、ロシア、米国は地域の非核兵器国に消極的安全保証を与える。

 2010年、北朝鮮の核実験に対して、ノーチラス研究所とその所長ピーター・ヘイズは、これをツー・プラス・スリー公式へと発展させた。このモデルの下では非核兵器地帯条約は韓国と日本を非核兵器国とし、米国、中国、ロシアは核兵器国として参加する。北朝鮮は条約の初めには核武装国だが、のちに非核兵器国として条約に従う。このアイディアはその後、磨きあげられ、安全保障問題を審議する地域協議会、地域的友好合意、朝鮮戦争休戦協定の最終的な平和条約への変更、北朝鮮への制裁の終結、北朝鮮での非軍事的核関連活動に関する付帯合意を含みうる北朝鮮政府への経済援助パッケージなどを包含するものとなった。
 それ以上にそのような合意の下で設立された地帯は、査察組織、監視・検証機構、北朝鮮への消極的安全保証(これらの保証は北朝鮮政府による非核化マイルストーンの達成状況に歩調を合わせて与えられる。)の確立を伴う。

 このアプローチは真剣な考慮に値する―このアプローチがこの地域全体の核の脅威を公平なやり方で取り扱うからというだけではない。行き詰まっている6か国協議は対照的に地域の他の安全保障問題に対して低い役割しか果たさず、北朝鮮から発せられる脅威に焦点を置いてきた。
 ノーチラスのアプローチへの明白な挑戦は、核武装国としての北朝鮮の地位が近年高まったことである。しかし、それは、核兵器国が消極的安全保証を提供し、先行不使用政策を確立した場合にのみ、北朝鮮が一定のペースで非核兵器地帯条約の必要条件に従い、前進することを妨げるものはない。それどころか、そのようなアプローチは北朝鮮政府が7月6日の非核化についての提案(筆者がラウンド2で議論した提案1)の中で出した要求を満たすことにさえなるかもしれない。

 非核兵器地帯設立の第一歩は6か国協議が国連事務総長と国連軍縮局に地帯の基礎となる概念を精査するための専門家会議を招集することを要求することであろう。核不拡散・軍縮アジア太平洋リーダーシップ・ネットワーク(APLN)のような市民社会組織による努力も並行して実施されうる。
 北東アジアに非核兵器地帯を設立することは極端な理想主義に聞こえるかもしれない。しかし、半島での深刻な軍事的対立や破滅的な戦争の脅威の中で、行き詰まった交渉の終わりのないサイクルのどこが現実的なのだろうか?
(訳:ピースデポ)
原注
1 “A basis for a breakthrough in Pyongang Statement”, 14 July, Chung-in Moon, http://thebulletin.org/north-koreas-nuclear-weapons-what-now

くわしく

<資料>OEWG報告書

公開日:2017.04.14

多国間核軍縮交渉を前進させるための公開作業部会(OEWG)報告書
2016年8月19日採択

Ⅰ.はじめに(略)
Ⅱ.組織的事項(略)
Ⅲ.作業部会の手続き(略)

IV.実質的議論
A.全般的な意見交換
19.作業部会は、核兵器のない世界の達成と維持に向けた決意を再確認した。これは、多国間核軍縮交渉の前進における普遍的な目標であり続けている。作業部会は、多国間核軍縮交渉を前進させるためには、包括的、包含的、双方向的、かつ建設的な方法で、核兵器関連の問題を議論することが重要であると強調した。これに関して、作業部会は、2000年NPT再検討会議で核兵器国が行った、核兵器の完全廃棄を達成するとの明確な約束を想起した。
20.作業部会の作業は、核兵器の存在が人類に呈している脅威とあらゆる核爆発がもたらす壊滅的な人道上の結末に対する深刻な懸念に下支えされていた。これらの壊滅的な人道上の結末のリスクは核兵器が存在する限り継続する。核兵器の人道上の影響に関する意識の高まりと十分な裏付けのある発表は、核兵器のない世界に繋がるような、すべての国家による緊急かつ必要な行動を促すものである。また、作業部会は、すべての国家がいかなる時も、国際人道法を含む、適用可能な国際法を遵守することの必要性を再確認した。
21.こうした議論と、核兵器の人道上の影響に対する意識の高まりを背景に、多国間核軍縮の進展が遅いことが懸念をもって留意された。(後略)
22.(略)
23.作業部会は、核不拡散条約(NPT)第6条がすべての加盟国の義務、とりわけ核軍縮に関連した効果的な措置について誠実な交渉を進める義務を確立していることを想起した。(後略)
24.作業部会は、NPTの文言に同条約第6条の履行のために追求されるべき特定の効果的措置に関連して具体的な指針が示されていないことに留意した。作業部会は、条約第6条に含まれる核軍縮義務の履行のため、効果的な法的措置の立案が求められてきたことに留意した。
25、 26.(略)
27.一定数の国は、国際的な安全保障環境、現在の地政学的な状況、既存の安全保障ドクトリンにおける核兵器の役割が核軍縮のためのいかなる効果的措置の追求においても考慮されるべきであると強調した。これらを考慮しないアプローチは、核保有国ならびに自国の安全保障ドクトリンを核兵器に依存している国の参加を獲得することはできないとこれらの国は主張した。これらの国は、保有核兵器のさらなる大幅削減を促進するための条件作りの手段として、信頼醸成措置の重要性に留意した。これには国家間、とりわけ核兵器を保有する国家間の対立や緊張を緩和するための努力が含まれる。
28.他方、多くの国は、核兵器の問題に関連しては、国家の利益よりも、集団的な安全保障(collective security)が優先されるべきであると強調した。これらの国は、国家安全保障と集団的な安全保障の間になんらの矛盾も存在しないと主張した。これに関連して、核兵器が人類全体にもたらす結末や核兵器が継続して存在することのリスクと脅威について人道イニシアティブが検討を重ねてきたことが留意された。また、それが国境を越え、グローバルに影響しうることから、核兵器のリスクはあまりにも高く、核兵器が国内に存在することはそこに住む人々の防護や安全保障を強化するどころか、むしろ低めるとの見解が述べられた。
29.作業部会は、核兵器のない世界を達成する最良の機会はすべての核兵器保有国の関与を通じたものになるだろうと考えた。
30.一定数の国は、核兵器の総数の削減、安全保障ドクトリンにおける核兵器の役割の低下、および消極的安全保証の範囲拡大のために核兵器国が取った諸措置に留意した。
31.しかし、多くの国は、そのような諸措置が核兵器の役割の低下に部分的にしかつながらず、社会全体を危険にさらす能力については手付かずのままであることに留意した。核兵器国が自国の保有核兵器の質的な改良や近代化に引き続き邁進しており、核兵器依存を継続していることに懸念が示された。また、核兵器の使用や使用の威嚇に関連した規範の弱体化が見受けられることにも懸念が示された。
32.よって多くの国は、核兵器の容認を前提とした政策や実践に対する国際社会や世論の姿勢を変えることなどを通じて、核兵器の価値を低下させることから核兵器を忌むべきものにすることに焦点を移していく必要性を強調した。このような変化は、核兵器の禁止及び廃棄のための人道の誓約とも合致する。この誓約を行った国は、核兵器の容認できない人道上の結末、環境への影響、その他の関連するリスクの観点から、核兵器を忌むべきものとし、禁止し、廃棄することを誓約している。
B. 核兵器のない世界の達成と維持のために締結が求められる具体的かつ効果的な法的措置、法的条項及び規範
33.作業部会は、核軍縮のためのいかなる効果的な法的措置の立案も、核軍縮・不拡散体制の強化と、NPT第6条の履行を目的とするべきであり、それらは同条約を補完し強化するものでなければならないことを強調した。核兵器のない世界の達成と維持のために締結が求められる具体的かつ効果的な法的措置、法的条項及び規範を議論する上で、多くの可能なアプローチが検討された。
34.過半数の国(a majority of States)1は、2017年に、国連総会において、すべての国家、国際機関、市民社会に開かれた形で、核兵器の完全廃棄につながるような、核兵器を禁止する法的拘束力のある文書の交渉を開始することに支持を表明した。この法的文書は、一般的禁止と義務を確立することに加え、核兵器のない世界の達成と維持に対する政治的な誓約を確立するものである。市民社会の代表もこの見解に支持を示した。
35.そのような法的文書が含みうる要素にはとりわけ以下が含まれる。(a)核兵器の取得、保有、備蓄、開発、実験、生産の禁止。(b)核兵器のすべての使用への関与の禁止。これには核戦争計画への関与、核兵器の目標設定における関与、核兵器の管理要員への訓練が含まれる。(c)国家の領土内への核兵器持ち込みの容認の禁止。これには核兵器搭載船舶が港湾や領海に入ることを認めること、国家の領空に核兵器搭載航空機が飛来することを認めること、国家の領土内における運搬を認めること、国家の領土において核兵器の配置や配備を認めることが含まれる。(d)核兵器活動に対する融資や、IAEAの包括的保障協定が適用されていない国家に対する特殊核分裂性物質の提供の禁止。(e)条約が禁止するあらゆる活動に対する直接的または間接的な援助、奨励、勧誘の禁止。(f)核兵器の使用及び実験の被害者の権利を認め、被害者への支援提供と環境修復を誓約すること。このような文書に含まれる要素や条項については交渉の対象になることが留意された。
36.核兵器を禁止する法的拘束力のある文書は、それが核兵器の廃棄に関する措置を含まず、その代わり不可逆的、検証可能かつ透明性のある核兵器廃棄のための措置を将来的な交渉課題として残していることから、核軍縮に向けた中間的あるいは部分的な措置となる。それは、核兵器を徐々に忌むべきものにすることにも貢献する。このような文書を支持する諸国家は、これが交渉開始や発効のために普遍的な支持を必要しないことから、直近の行動として最も実行可能であるとの考えを持っていた。決議68/32に基づき、2018年までに開催される国連ハイレベル国際会議がこれらの交渉の進捗を検討すべきであることが提案された。
37.多くの国は包括的な核兵器禁止条約(a comprehensive nuclear weapons convention)を支持した。これは一般的義務、禁止事項、そして時間制限を伴う不可逆的で検証可能な核軍縮に向けた具体的な取り決めを明示するものである。これらの国家は、特定の時間枠の中で核兵器を完全に廃棄するための段階的計画が条約交渉及びその締結に向けたプロセスに含まれるべきであると論じた。このような条約は、核兵器が廃棄され、新しい核兵器が製造されていないという保証を各国に与える、非差別的で国際的に検証可能な法的取り決めを構成するものとなる。核兵器を保有する国家の参加なくしては核兵器の検証された廃棄のための詳細な条項を交渉することは技術的に困難であることが留意された。多くの国が包括的な核兵器禁止条約の速やかな交渉開始を支持したが、そのような条約は核兵器保有国の参加をもって初めて効果的になりうることに留意された。これらの国家の多くは核兵器を禁止する法的拘束力のある文書の交渉についても支持を示した。決議68/32に基づいて2018年までに開催される国連ハイレベル国際会議がこれらの交渉の進捗を再検討すべきであることが提案された。
38.いくつかの国(some States)は枠組み合意(a framework agreement)が1つの可能な選択肢だと述べた。これは、核軍縮プロセスの様々な側面を漸進的に扱った相互に補強しあう一連の諸条約、あるいは、核兵器のない世界に徐々に進むための「シャポー」合意とそれに続く補足合意や議定書のいずれかから成る。このようなアプローチは、すべての国家の懸念を同時に考慮に含めることで、柔軟性を備え、信頼醸成措置のための余地を残し、核軍縮に向けた円滑な移行を可能にしうるものである。核兵器の廃棄を達成するための特定の時間枠を必ずしも含まない。交渉されうる第一の補足合意あるいは議定書は核兵器の使用または使用の威嚇の禁止になりうることが提案された。
39.いくつかの国は、混合(hybrid)アプローチについて論じた。これには核兵器を禁止する条約について直ちに交渉を始めることが含まれる。このような条約は、国家による宣言、国家による履行、検証、段階的破棄、援助、技術協力、核兵器の完全廃棄に続いて実施されるべき非差別的な検証体制、に関連した諸議定書によって補完される。このアプローチの支持者は、これが最初は参加に抵抗を示すすべての国家を漸進的に関与させていく枠組みを提供することで枠組みアプローチの包含性を反映させつつ、核兵器禁止条約(NWC)と同程度の包括性と有効性を提供するものになると考えた。
40.一定数の国2は「漸進的アプローチ」への支持を表明した。これは、すべての核兵器の廃棄という目標への条約レベルの誓約をすでに含んでいるNPTをはじめとする既存のグローバル体制の重要性に焦点を当てたものである。(中略)重要なランドマークが、核兵器数が非常に少ないところまで削減され、効果的な検証の技術と方法論を伴った国際的に信頼性のある検証体制が確立された「最小限地点」である。これらの国家はグローバル・ゼロが手の届くところまで来た段階で、核兵器のない世界の達成と維持のための追加的な法的措置が必要になると考える。(中略)漸進的アプローチに基づいて提案されている多くの措置は、コンセンサスをすでに得ている既存の誓約を反映したものであるとの見解が示された。
41.(略)
42.議論された別のアプローチは、NPTに議定書を追加するという案であり、これは別々の法的文書として交渉しうる。このようなアプローチは核軍縮をNPTの不可欠な一部として維持させるものとなる。
43~46.(略)

C. 多国間軍縮交渉の前進に貢献しうるその他の措置
47.作業部会は、多国間軍縮交渉の前進に貢献しうるその他の措置について議論した。透明性、リスク低減、意識啓発は、核軍縮の検証可能性と不可逆性を実現する上で重要である。
現存する核兵器に付随するリスクに関連した透明性措置
48.作業部会は、不可逆性、検証可能性とともに透明性の原則を重視し、これを核軍縮のプロセスに不可欠とみなした。透明性なくしては、核軍縮は信頼のある形で検証できないし、核軍縮措置が不可逆的な方法で実行されたことに国家は十分な信頼を持つことができない。また、透明性の強化は、国家間の不信感を軽減し、地域的及び国際的なレベルで信頼と信用を構築するものである。
49.作業部会は、核兵器保有国の報告する情報に一般市民や近隣国、その他の国が確実にアクセスできることの重要性を強調した。これに関連して、多くの国は、説明責任の強化と核軍縮の促進のため、国連の枠組みの中で報告メカニズムが確立されることを支持した。
50.核兵器計画及び活動に関連した情報の公開に関して、テロリスト、犯罪者、非国家主体による悪意のある使用から機微の情報を防護することの必要性が強調された。
51.現存する核兵器に付随するリスクに関し、様々な国から多様な透明性措置が提案された。これには、核兵器保有国がとりわけ以下の点に関して標準情報を定期報告すべきであることが含まれた。(後略)
52.上述のような標準情報は国連事務総長に提出され、事務総長によって加盟国や一般市民に情報提供されるべきである。
53.多くの国は、自国の軍事及び安全保障の概念、ドクトリン、政策において核兵器の役割を維持しているその他の国家も、とりわけ以下に関する標準情報を定期報告することが奨励されるべきであると提案した。
(a)自国の領内にある核弾頭の数、種類(戦略あるいは非戦略)、地位(配備あるいは非配備、警戒態勢)
(b)自国の領内にある運搬手段の数と種類
(c)軍備及び安全保障の概念、ドクトリン、政策における核兵器の役割と重要性の低下のためにとられた措置
事故や誤謬による核兵器爆発や無認可あるいは意図的な核兵器爆発のリスクを低減し除去するための措置
54.作業部会は、事故、間違い、無認可、あるいは意図的な核兵器爆発のリスクが、核兵器が存在する限り常に存在し続けると考えた。このようなリスクを除去する唯一の手段は核兵器の完全廃棄を達成することである。
55.作業部会は、核兵器爆発に関する、現在の、そして増大するリスクの原因となりうるいくつもの因子について議論した。これらの因子には、たとえば国際及び地域レベルでの核保有国とその他の国家を含む緊張の高まり、サイバー攻撃や非国家主体に対する核兵器の指揮統制システムや早期警報ネットワークの脆弱性、核兵器システムの自動化の拡大などが含まれる。同時に、核兵器計画における透明性の欠如を考慮すると、そうしたリスクの性質の正確な評価が困難であることが認識された。
56.多くの国は、核兵器を高い警戒レベルに維持することで核兵器のもたらすリスクと脅威を大幅に増大させ、核軍縮のプロセスに否定的な影響を与えかねないとの特段の懸念を表明した。これに関して、これらの国は、核兵器システムの作戦上の地位を低下させる措置が人間の安全保障及び国際の安全保障を増大させ、核軍縮への中間的措置になると同時に核兵器に関連したいくつかのリスクを緩和する効果的な措置になると論じた。
57.作業部会は、核兵器の完全廃棄までの間、リスクを低下させ、安全性を高めるための措置の実施に支持を示しつつも、それが核兵器の保有や使用に対する支持を示唆するものでないことが強調された。
58.核兵器の完全廃棄が達成されるまでの間、事故、間違い、無認可、あるいは意図的な核兵器爆発のリスクを低減し除去するために、様々な国から多様な措置が提案された。これには、核兵器保有国及びその他の関連する国家が以下に向けてさらなる実際的措置を講じることが含まれた。(後略)
核爆発がもたらす広範な人道上の結末の複雑性及び相互関連性に対する意識と理解を高めるための追加的措置
59~63.(略)
多国間核軍縮交渉の前進に貢献しうるその他の措置
64、65.(略)

V. 結論及び合意された勧告
66.作業部会は、核兵器のない世界の達成と維持のために締結が求められる具体的かつ効果的な法的措置、法的条項及び規範について明確化するための追加的な努力が可能であり、また、追求されるべきであると勧告した。作業部会は、NPT及びその中に盛り込まれた誓約の重要性を再確認するとともに、いかなるそのような措置、条項、規範の追求もNPTの三本柱を含む核軍縮・不拡散体制を補完し、強化すべきであると論じた。
67.作業部会は、総会に対して、すべての加盟国に開かれ、国際機関ならびに市民社会が参加し貢献する、第34節に概説されたような、核兵器を禁止しそれらの全面的廃棄に導く法的拘束力のある文書を交渉するための会議を2017年に開催するよう、幅広い支持(widespread support)のもとに勧告した。作業部会は、他の国家が上述の勧告に合意しなかったこと、そしてそれらの国が多国間核軍縮交渉を前進させるためのいかなるプロセスも国家的、国際的及び集団的な安全保障上の懸念を考慮しなければならないと勧告し、合意されていない第40及び41節で概説されたように、多国間核軍縮交渉を前進させるための並行的、同時進行的かつ効果的な、法的及び法的以外の措置で構成される実際的措置の追求を支持したことを認識した。さらに、作業部会はその他のアプローチに関する見解が示されたことも認識した。
68.また、作業部会は、各国が適宜、本報告書が提案するような、多国間核軍縮交渉の前進に貢献しうる様々な措置の履行を検討すべきであると勧告した。これらの措置には次が含まれるがそれに限定されない。現存する核兵器に付随するリスクに関する透明性措置、事故や誤謬による核兵器爆発や無認可あるいは意図的な核兵器爆発のリスクを低減し除去するための措置、核爆発がもたらす広範な人道上の結末の複雑性や相互関係に対する意識や理解を向上させるための追加的措置、そして多国間核軍縮交渉の前進に貢献しうるその他の措置。

VI.報告書の採択(略)

別添Ⅰ 漸進的アプローチのもとで提案された諸措置(略)
別添Ⅱ 国際的法的文書に含みうる効果的な法的措置として提案された諸要素(略)
別添Ⅲ 議長、加盟国、国際組織、機関、非政府組織による提出文書一覧(略)

原注
1 アフリカ・グループ(54か国)、東南アジア諸国連合(10か国)、ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(33か国)の構成国、そして一定数のアジア、太平洋、欧州の諸国その他で構成される。
2 漸進的アプローチを提唱している24か国その他で構成される。

(長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)の暫定訳にピースデポが手を加えた。)

くわしく

【核兵器禁止条約決議案】 OEWGの成果を前進させるために――国連総会「核兵器禁止条約の交渉開始を求める決議案」への提案

公開日:2017.04.14

第71回国連総会が9月13日、開幕した。核軍縮関連決議は10月3日開会の第1委員会での審議をへて、12月の総会全体会において採択される。もっとも注目されるのが、8月に発出された国連公開作業部会(OEWG)の勧告を受けた「核兵器禁止交渉の17年開始」を中核とする決議の動向である。すでにオーストリア外相は9月22日、そうした決議案を他国と共同で提出する旨を総会で明言した。決議案が幅広い支持をもって採択され、核兵器廃絶プロセスに持続的に貢献してゆくために、そこに含まれるべき要素について考察し、望ましい決議案の輪郭を提案する。

国連総会における課題

 OEWG報告書(3~5ページに抜粋訳)の勧告には2つの要素が含まれていた。核兵器を禁止する法的文書に関する交渉を17年に開始する勧告(第67節)と現存する核兵器の諸リスクの低減を含む諸措置に関する勧告(第68節)である。
 今回の国連総会の任務は、核兵器禁止を含む、軍縮を促進するための諸措置を定める法的文書の輪郭を具体的に示しつつ、同文書の交渉を17年に開始することを求める決議を圧倒的多数で採択することである。「核兵器禁止派」の国々と市民社会は、その決議がどのような内容の「法的文書」を目指し、どのような交渉の場を設定するのかという核心的課題に挑戦する必要がある。
 総会でそうした決議が採択される公算はきわめて大きい。しかし、現状ではその決議に含まれるべき内容については多くの選択の幅が残されている。その内容を決定するに際して、考察すべき重要な2つの課題があるであろう。
 第1は「核兵器の禁止」をどのような文脈において要求するかという問題である。OEWGの勧告第67節は「第34節に概説されたような、核兵器を禁止しそれらの全面的廃棄に導く法的拘束力のある文書を交渉するための会議を2017年に開催する」と述べているだけである。OEWG報告書には、法的文書として簡易型条約(第36節)、包括的条約(第37節)、枠組み合意(第38節)、混合アプローチ(第39節)といったオプションが議論された旨が記載されているが、それはあくまでも議論の紹介である。勧告された禁止条約の要件は「第34節に概説されている」ということと「全面的廃棄に導く」という2つの要件である。この要件を満たす文脈で禁止条約は追求されなければならない。
 第2の課題は、OEWGに参加しなかった核保有国や核兵器依存国の抵抗や妨害への対処である。
米国の政府高官は8月末、公の場でこう話した。「ある国家グループが(……)意見の分極を惹き起こし検証できない核兵器禁止条約を追求している。核軍縮はすべての国家の見解と安全保障上の利益を考慮したアプローチでのみ達成可能である(……)これが、最近終了した核軍縮に関するOEWGの最終報告を私たちが拒絶する理由である。合衆国はすべての国が核兵器禁止という非現実的な努力を拒絶するよう訴える」1。米国はこの基本姿勢を総会においても堅持し、他の核保有国や核兵器依存国とともに、先進的決議の採択を妨害し、決議内容を弱体化するような外交攻勢をかけてゆくであろう。ロシアも外務省の不拡散軍備管理担当者が「OEWG報告書は非現実的で有害でさえある」と語ったと伝えられており2、米国と同様の姿勢をとることが予想される。
 禁止条約交渉を求める決議案(以下「禁止交渉決議案」)には、勧告第67節の要件を満たす文脈とともに、核保有国と核兵器依存国が一体となって反対することを阻止し、これらの国々の流動化を促して支持を拡大しうるような構成要素が求められる。

新決議案に含まれるべき3つの構成要素

 このような観点から考え、「禁止交渉決議案」には、以下のような3つの要素が含まれる必要があると考える。

(a)禁止条約交渉開始
 第1は言うまでもなく、核兵器を禁止する条約についての交渉を2017年に開始するという「禁止条約交渉開始」の要素である。
 勧告第67節が「第34節に概説されたような」と引用している第34節は、法的文書について「この法的文書は、一般的禁止と義務を確立することに加え、核兵器のない世界の達成と維持に対する政治的な誓約を確立するものである」と述べている。ここで述べられている「一般的禁止と義務」を明記することが求められる。

(b)廃絶への政治的誓約
 実は第34節はもう1つ重要な要素に言及している。禁止条約は「核兵器のない世界の達成と維持に対する政治的な誓約を確立する」役割を担っているという要件である。つまり「禁止条約交渉」の要素は、この交渉によって核兵器のない世界の達成と維持という大目的への政治的誓約を改めて確立するという文脈において行われるべきであるという当然の要件がここには含意されている。ここにいう「政治的な誓約」には、NPT前文や第6条、過去のNPT再検討会議での合意文書等が含まれるであろう。NPT合意文書には2000年合意の「核兵器全面廃棄への明確な約束」や2010年合意の「NPT及び核兵器のない世界という目的に完全に合致した政策を追求」また「核兵器のない世界を実現、維持する上で必要な枠組みを確立すべく、全ての加盟国が特別の努力を払う」などがある。「禁止交渉決議案」は、このような要素を組み込むことによって国際社会が蓄積してきた合意を基礎とする正統性が強化されるであろう。
 この構成要素は、核保有国や核依存国が同意しうる要素としての働きをする。このような要素を禁止条約がおかれる文脈に置くことのメリットは、OEWG報告書が紹介している「枠組み合意」のアイデア(第38節)においても述べられている。「(枠組み合意は)すべての国家の懸念を同時に考慮に含めることで、柔軟性を備え、信頼醸成措置のための余地を残し、核軍縮に向けた円滑な移行を可能にしうる」。
 
(c)核兵器に関する透明性措置とリスク低減措置
 現在交渉が追求されている核兵器禁止条約は、核兵器の廃棄を含まない条約となる可能性が高い。のみならず、核保有国の禁止条項への支持はすぐには得られそうにない。とすれば、「核兵器使用の人道上の壊滅的影響」を論拠とする禁止条項を追求する交渉は、平行して現存する核兵器リスクの低減措置を交渉する必要がある。その意味で勧告の第67節と第68節がセットになっていることは重要な意味がある。
 OEWG報告書は第68節において、「各国が適宜、本報告書が提案するように、多国間核軍縮交渉の前進に貢献しうる様々な措置の履行を検討すべきである」とした上で「現存する核兵器に付随するリスクに関する透明性措置、事故や誤謬による核兵器爆発や無認可あるいは意図的な核兵器爆発のリスクを低減し除去するための措置」の履行を求めている。決議案の構成要素としてこの要求を盛り込むには、例えば「透明性促進及びリスク低減措置条約」交渉準備会議の設立を求める条項が考えられよう。

有機的統合と発効要件

 以上の3つの構成要素をバラバラに含むのではなくて、1つの決議案に有機的に統合された決議案が求められる。「禁止交渉決議案」というよりも、実質的には「核軍縮を前進させる法的文書の交渉を求める決議案」の内容となるべきものと考える。順序としては、(b)政治的誓約の要素がまず述べられて、その帰結である当面の行動として(a)禁止条約の交渉開始と(c)透明性・リスク軽減措置の準備会議が位置づけられるという構成である。
 さらに重要なことは、国の事情によって(b)のみの批准、(b)と(a)、(b)と(c)の選択的批准、(b)、(a)、(c)すべての批准と、段階的参加を許すような条約発効要件を定めることを前提として決議案を作成することである。これによって暫定的禁止条約や措置条約準備が、政治宣言的条約の構成の排他的ではない一部に包含することができる。
 日本政府がこのような構想を推進することを期待したい。(田巻一彦、荒井摂子、梅林宏道)


1 8月29日、カザフスタン首都アスタナで開かれた核軍縮国際会議におけるフリート米国務省次官補主席代理の発言より。発言全文は米国務省ウェブサイト内。www.state.gov/t/avc/rls/261327.htm
2 16年9月23日付「ヴェストニク・カフカザ」。
 http://vestnikkavkaza.net/news/Russian-Foreign-Ministry-considers-full-ban-of-nuclear-weapons-unrealistic.html

くわしく