【資料】「アスタナビジョン:放射性のもやの中から核兵器のない世界へ」

公開日:2017.04.14

「核実験に反対する国際デー」である16年8月29日、カザフスタンの首都アスタナで、カザフスタン議会、カザフスタン外務省、PNND(核軍縮・不拡散議員連盟)の共催により、世界各国の議員、宗教指導者、国際機関代表、研究者、科学者、医療専門家、法律家、若者、その他の市民社会代表が参加し、「核兵器のない世界を築く」核軍縮国際会議が開かれた。ピースデポの山口大輔研究員がPNND日本コーディネーターとして参加し、分科会で北東アジア非核兵器地帯の現状についてスピーチを行った。4つの分科会の結果を踏まえて会議の最後に採択された「アスタナビジョン」には、CTBTの早期批准・発効や核抑止力からの脱却、北東アジアを含む非核兵器地帯の設立などに加え、同月スイス・ジュネーブで行われたOEWG(核軍縮公開作業部会)で採択された、核兵器禁止条約交渉の2017年開始の要求が盛り込まれた。

アスタナビジョン:放射性のもやの中から核兵器のない世界へ

 ちょうど25年前の1991年8月29日、ヌルスルタン・ナザルバエフ・カザフスタン大統領は核実験に反対する市民社会の大衆運動の支持を受けて、セミパラチンスク核実験場を閉鎖した。これは世界の軍縮の歴史において、初めてのことである。
 カザフスタン東部にあるセミパラチンスク実験場で、ソビエト連邦によって実施された456回の核爆発は、人間の健康と環境に、現在と将来の世代にわたり壊滅的な打撃をもたらした。太平洋、アジア、北アフリカ、北米を含む世界中で行われた核実験の遺産と、広島と長崎への核爆撃の経験、事故や計算違い、また意図したところの核兵器の使用のリスクにより、これらの兵器を廃絶することはグローバルな至上命題となった。
 我々は、世界第4位の規模の核爆弾を自主的に放棄し、包括的核実験禁止条約に加入し、中央アジア非核兵器地帯を設立し、核実験の危険性と長期的な影響を世界に伝えるためのアトムプロジェクトを開始し、国連に8月29日を核実験に反対する国際デーを制定させ、2015年に国連で採択された核兵器のない世界のための世界宣言を主導し、戦禍を終わらせるため宣言「世界。21世紀」を推し進めた、ナザルバエフ大統領の指導力とカザフスタンの国民とを称賛する。
 我々は、核兵器のない世界が21世紀における人類の主要な目標であるべきであり、これは国連100周年となる2045年までに達成されるべきであるという宣言に表明された希望を支持する。
 我々は世界のリーダーたちが核兵器やその部品がテロリストの手に落ちないように、一連の核保安サミットや他の国際行動を通じて行動したことを称賛する。しかし、世界のリーダーたちは核軍縮にナザルバエフ大統領が置いているのと同様の優先度をもたせるべきである。
 我々は朝鮮民主主義人民共和国による核実験の継続を遺憾に思う。そして我々は全ての核武装国による核兵器の近代化の継続に懸念を表明する。これらの国々の間で緊張が高まると、事故や意図による軍事的事象が世界を壊滅的な核衝突へ向かわせるかもしれない。
 我々は世界中の議会と議員のグローバルレベルでの核不拡散・核軍縮の更なる進展と関連する法制度の採択に対する特別な責任を認識する。
 我々はカザフスタンが2017~2018年の国連安全保障理事会・非常任理事国に選出されたことを祝福する。我々はカザフスタンが核拡散を防ぎ、核兵器のない世界の平和と安全保障を進めるために他の安全保障理事国と緊密に協働することを確信する。
 我々はナザルバエフ大統領が核軍縮と核兵器のない世界の達成への顕著な貢献に対する国際賞を制定するという、この会議で提唱されたイニシアチブと2016年アスタナ・ピースサミットの発表を支持する。
 我々は多国間核軍縮交渉を進める公開作業部会での進展を歓迎し、世界中の政府がさらに進展させることを促す。
 我々、議員、宗教指導者、国際機関代表、研究者、科学者、医療専門家、法律家、若者、その他市民社会代表は政府に次のことを具体的に要求する。

1. この会議がセミパラチンスク核実験場閉鎖25周年、包括的核実験禁止条約署名開放20周年に行われていることに留意し、もしまだ署名、批准していないのであれば、特に核武装国が包括的核実験禁止条約(CTBT)に署名し、批准すること。
2. 採択された2010年核不拡散条約(NPT)行動計画と1996年国際司法裁判所により確認された、完全なる核廃棄を交渉する全世界的な義務に従って、交渉と実質的な議論を開始すること。
3. 1995年再検討延長会議で合意された中東非核兵器・非大量破壊兵器地帯を設立し、国連事務総長にこの義務を進展させることを要求すること。さらに北東アジア、ヨーロッパ、北極といった非核兵器地帯を追加に設立すること。
4. 全ての核戦力の高度作戦準備態勢を解除し、先行不使用政策を採用し、核兵器の使用による威嚇を慎むことで、核兵器使用のリスクを減ずること。
5. 核兵器ゼロ達成のために条約と慣習国際法上の義務を完全に履行すること。
6. 核兵器を禁止し廃棄するために2017年に多国間交渉を開始すること。
7. 核実験と居住地域を核目標とすることを禁止することを含む、国連安全保障理事会による核軍縮に関する暫定的な措置を支持すること。
8. 核軍縮検証のための国際パートナーシップ(IPNDV)への参加などを通じて、グローバルな核軍縮を検証し、補強する手段や方法をさらに開発すること。
9. 安全保障ドクトリンから核抑止への依存を取り除き、その代わりに国際紛争を外交、法律、地域的機構、国連やその他平和的手段で解決すること。
10. 全ての核兵器国ができる限り早く、しかし必ず国連100周年記念以前に、核兵器を完全に廃棄するという目的で、備蓄核兵器を大幅に削減すること。

 我々には核兵器を廃絶しようとする政府を支持し、協力する準備がある。この国際集会に集まったさまざまな人々の間の協力は、核軍縮を達成するグローバルな運動のためのプラットフォームを提供している。

 人類の未来を深く憂慮し、核軍縮の分野におけるカザフスタンの例に勇気づけられ、我々は、命あるうちに核兵器のない世界の平和と安全保障を達成する可能性と必要性を確認する。

(訳:ピースデポ)