核兵器・核実験モニター バックナンバー

【日誌】核・ミサイル/沖縄(17年3月6日~3月20日)

公開日:2017.07.14

BMD=弾道ミサイル防衛/DPRK=朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)/ EEZ=排他的経済水域/EPA=(米)環境保護庁/KCNA=朝鮮中央通信


●3月6日 DPRK、米国が敵対政策を止めなければ核兵器を中心とした国防力を増強するとの文書を党機関紙で発表。
●3月6日 DPRK、北西部トンチャンリから弾道ミサイル4発発射。日本のEEZ内に落下。
●3月7日付 DPRK、6日の弾道ミサイル発射は在日米軍への攻撃訓練と明言。
●3月7日 中国王毅外相、米韓合同軍事演習の停止と引き換えにDPRKのミサイル実験の中止を提案。
●3月7日 日本学術会議検討委、軍事目的のための科学研究は行わないとする声明案を確認。
●3月8日 米国務省トナー報道官代行、7日の中国による米韓演習停止提案を拒否するも、会話の道は開いていると述べる。
●3月10日 政府、国家安全保障会議を開き南スーダンPKOに従事する陸自施設部隊を5月末を目途に撤収する方針を決定。
●3月13日付 志位共産党委員長、国連の核兵器禁止条約交渉会議に参加する意向を表明。
●3月13日 米韓合同軍事演習キーリゾルブ開始。DPRK核・ミサイル施設を先制攻撃する作戦も展開へ。
●3月13日 KCNA、米国が先制攻撃の動きを見せれば核攻撃で侵略と挑発の本拠地を焦土化するとけん制。
●3月14日 平和首長会議、国連全加盟国に「核保有国と依存国が核禁止交渉に参加することを強く要請する」公開書簡を送付。
●3月15日付 米政権、核兵器禁止条約交渉への日本の参加に激しく反対。複数の外交筋が明かす。
●3月15日 廃棄したとされていた南スーダンPKO部隊の昨年7月の日報が、陸自に保管されていたことが判明。
●3月16日 米国務省トナー報道官代行、北核問題を巡る6か国協議は成果がなかったとして今後の開催に懐疑的な見方を示す。
●3月16日 トランプ米大統領、国防費を大幅増額するためのEPA予算大幅減をはじめとする18会計年予算方針を発表(今号参照)。
●3月18日 ティラーソン米国務長官、米ウェブニュースのインタビューで、DPRKの核状況の展開によっては韓日の核武装容認を考慮すると明かす。
●3月19日 DPRK、トンチャンリで弾道ミサイル用の新型大出力エンジンの燃焼試験に成功したと発表。
●3月19日 安倍首相、防衛大学校卒業式での訓示で、防衛力を強化し、役割を拡大すると述べる。
●3月20日 安倍首相、パリでオランド仏大統領と会談し、海洋安全保障と民生用原子力分野での協力を確認。
●3月20日 中国外務省、核兵器禁止条約交渉に参加しないと表明。
●3月20日 日ロ防衛相会談。日本はロシアによる北方領土の軍備増強を抗議、ロシアは日本のBMDに懸念を表明。

沖縄

●3月6日付 米退役軍人省、沖縄勤務経験のある元陸軍兵と元空軍兵の2名に枯れ葉剤接触の疑いによる被害補償を認定。
●3月7日 那覇市議会、那覇軍港の早期返還・那覇港の早期整備を求める要請決議及び意見書を賛成多数で可決。
●3月7日 辺野古新基地建設、海上工事再開から1か月。汚濁防止膜固定用のコンクリートブロック228個のうち約6割の投下完了。
●3月7日 菅官房長官、普天間飛行場の5年以内運用停止について、「状況は大きく変化」とし実現困難との見解示す。
●3月7日 名護市教委、沖縄防衛局へ辺野古海域の文化財調査を要求。昨年7月、建設予定地で「長崎兼久遺物散布地」を遺跡認定。
●3月8日 米海兵隊、キャンプ・ハンセン内着陸帯でヘリによるつり下げ訓練を再開。複数のタイヤを落下させる。民間被害なし。
●3月8日 ニコルソン四軍調整官、沖縄の全基地を「日米共同使用」にと主張。米軍機の夜間飛行は「即応性の観点から必要」と強調。
●3月9日 知事公室辺野古新基地問題対策課、17年度当初予算に米国シンポに係る委託料や弁護士費用として約2900万円を計上。
●3月9日 辺野古新基地建設・高江ヘリパッド建設などに121万2,281人分の反対署名集まる。市民団体が連携、過去最大規模。
●3月10日付 海自と米原子力空母の東シナ海での共同訓練が終了。7日から。
●3月10日 辺野古新基地建設。大浦湾臨時制限区域内で汚濁防止膜の設置作業始まる。
●3月10日 那覇地裁、沖縄平和運動センター山城議長へ妻との接見認める。弁護側は、保釈を求め最高裁へ特別抗告。
●3月15日 政府、辺野古新基地建設工事の「岩礁破砕許可」再申請せず。地元漁協の漁業権放棄を根拠に。県は法的措置を検討。
●3月15日 「ジュゴン米国訴訟」、控訴審結審。原告、改めて辺野古新基地建設中止を求める。判決日程未定。
●3月16日付 在沖米軍基地から一般廃棄物2万6,332トン(15年度)。県環境部、米による処理施設整備を求める考え。
●3月17日付 県、4月以降に辺野古新基地建設現場で無許可の岩礁破壊が行われた場合、法的措置として工事差し止め訴訟も検討。
●3月18日 沖縄平和運動センター山城議長保釈。威力業務妨害などの罪で、勾留5か月。福岡高裁那覇支部、地検の抗告を退ける。

くわしく

【ピースデポ第18回総会記念講演会・抄録(1)】   
「北朝鮮核開発の現状と非核化の課題
――発想を変え、ロードマップを描くとき」             石坂浩一(立教大学准教授)

公開日:2017.07.14

 私はこの10年近く、「日朝国交正常化連絡会」の共同代表を務めてきました。重要な問題に我々が十分取り組めていないと思っており、皆さんに私の知っていることをお伝えしつつ、学び合っていけたらいいと思います。後半の田巻さんの核兵器禁止条約の話について事前に資料を拝見しました。私が考えていることと一致することも多く、議論の中で深めていければと思います。

分岐点にたつ朝鮮半島の核情勢

 トランプ米政権が誕生しました。韓国ではパク・クネ(朴槿恵)政権が退陣直前の状況にあります。昨日、18回目の「ろうそく集会」という朴槿恵大統領退陣要求の集会が行われました。100万人が集まったと韓国のマスコミは伝えています。一方、朴槿恵を支持する集会の数もだんだん多くなっています。最初は軍人出身の極右勢力の動員で来ている人々が中心でしたが、最近宗教右翼が加わってきています。今朝の『東京新聞』は、「彼らが300万人集まったと大言壮語した」と報じていますが、実際には2桁くらい違うのではないかと思います。朴槿恵政権は最期の時を迎えていると思いますが、それに抵抗する右翼的な動きも強まっています。対立が激化する傾向にあることは間違いありません。加えて北朝鮮がどうなるかを予測することは難しい。
 そんな中、チョ・ソンニョル(趙成烈)という韓国の国家安保戦略研究院責任研究員が北東アジアにおける軍事バランスの3つの可能性を述べています。①日韓が核保有をして北朝鮮と対抗するようになる:トランプが候補者であった時期の言動から、アメリカが核保有を容認する姿勢に進むのではないかという予測です。②北朝鮮が非核化を受け入れ、日韓朝が非核兵器地帯条約を締結し、米中ロは核不使用の方向に進む:これはピースデポがずっと訴えてきたことです。そのプロセスは日韓が非核兵器地帯条約を結び、米中ロから消極的安全保証の約束を取り付け、北朝鮮の非核化に進むというものです。いろいろなアイディアが市民や研究者から出ているということで、その中で梅林さんの名前も紹介されています。もうひとつの可能性は、③北朝鮮は核保有し、米国は日韓への核の傘提供で対抗する:つまり現状維持。北朝鮮の核保有が深化し、よいありかたではない。
 このような分岐点に立って私たちが今どうすればいいか、材料提供をしたいと思います。

金正恩体制をどうみるか

 まず、キム・ジョンウン(金正恩)体制について簡単に述べます。このところ日本のマスコミはキム・ジョンナム(金正男)氏と思われる人物が殺害されたというニュースで大騒ぎになっています。金正恩体制はこの間動揺している様子がないという評価を受けてきた。そのため金正男氏が殺されたのはなぜだろうかということになっています。昨年5月に朝鮮労働党大会を久しぶりに開き、6月には国会に当たる最高人民会議において憲法も変え、北朝鮮の政治体制は金正恩を中心として回っていくことへスムーズに移行していると捉えられています。党内でも金正恩氏は党委員長という肩書になり、労働党大会の中でも活動総括で(北朝鮮は)「責任ある核保有国」であると自己規定されています。
 最高人民会議では憲法改正が行われました。今までは国防委員会が中心となってキム・ジョンイル(金正日)が委員長だったのが金正恩氏の代になって臨時の第一委員長となっていました。今回の改正で正恩氏は国務委員会の委員長となっています。政治体制は軍の方に権力が移っていたものが改めて党中心の体制になってきている。国家社会主義体制の通常の体制に戻ってきていると評価されています。金正恩体制では軍人はそれほど重視されていません。指導者が若く、世代交代が進んでいます。若い指導者だからまとめる力がないのではないかという揺さぶりが周囲から起こっています。それゆえ自分たちの国防力・軍事力を誇示することを強く意識しているのだと思います。
 昨年は何度もミサイルの発射が行われました。昨年6月23日に「火星(ファソン)10」が、8月25日に潜水艦発射弾道ミサイル「北極星(プッククソン)」が、今年になって安倍首相の訪米中の2月12日に地対地中長距離弾道ミサイル「北極星2」が発射されました。ミサイル性能特性試験の内容が『朝鮮中央通信』に詳しく発表されています。当初は、このころにICBMを発射するのではないかと言われていました。それは金正恩氏が新年辞で大陸間弾道ミサイル(ICBM)実験準備が最終段階だと表明していたからです。トランプが「ICBMなどない」と言うのに対して、北朝鮮は「いつでもどこでも指導者の意のままにICBMを発射できる」と反論しました。若い指導者がアメリカや周辺国から侮られないよう強い姿勢を示しているのであろうと思います。

「まず核放棄」に固執しなければ対話の糸口は有る

 それでは北朝鮮の方針が軍事一辺倒で冒険主義的かというと本心はそうでないだろうと思います。昨年7月6日の北朝鮮政府報道官声明というものがあり、それを見ると、これが本当のところではないかなと思わされます。日本のマスコミではほとんど注目されませんでした。内容は次のようなものです。①韓国にある米国の核をすべて公開すること、②韓国から米国のすべての核兵器と基地を撤去し検証を受けること、③朝鮮半島とその周辺にある核攻撃手段を二度と持ち込まないと保証すること、④核による脅しと攻撃を行わないこと、⑤米軍の撤退を「宣布」すること。これらが実現されれば北朝鮮も「相応する措置」をとる。⑤の米軍の撤退を「宣布」するとなっているのは米軍の撤退をすぐにしろというのではなく、いずれ撤退すると言えば自分たちも相応の措置を取るという意味だと思われます。
 いま米朝間に対話はなく、チェ・ソニ(崔善姫)という米州局長が米国への入国が認められず、国務省を引退した人が北朝鮮側と会って意見交換するいわゆる「トラック2」をトランプ政権が認めなかった、と今朝の新聞は報じていました。かぼそい糸でつながっているという状況の中で北朝鮮は何らかのきっかけをつかみたいと考えていると思います。そのきっかけについてオバマ政権は、核の放棄が優先だと言い続けてきました。最終的には北朝鮮が核を放棄すべきだと私も思います。しかし対話の入り口が核の放棄というのは難しい。米国国務省の関係者も、オバマ時代のことですが核の「凍結」から始めて対話に入らないといけないと言っていました。そのように北朝鮮とアメリカとの対話が作られていけばと思います。

金正恩の「並進路線」は経済優先

 北朝鮮の「並進路線」のうち核の問題について深く踏み込んでお話しします。並進路線は一般的に核開発と経済発展を同時に追求することだと言われています。祖父のキム・イルソン(金日成)の時代に同じような並進路線を言ったことがあるので、これにあやかって利用していると日本でも解説されています。この並進路線にも時代的変遷があることを北韓大学院大学のキム・ドンヨプ(金東葉)氏が述べています。この方は金正男氏の事件の最初のころに『毎日新聞』に冷静で参考になる談話を寄せていた人です。金氏によれば、「並進路線」は次のような変遷をとげてきました。
 1962年に金日成氏は、対立関係にある他の派閥の人々を排除していく過程で「国防経済並進路線」を主張しました。それは国防力を南に対抗して強化しなければならない、今は贅沢できないけれども、国民は「ベルトを締めて」(ひもじさに耐えて)一緒に働いてくれ、というものでした。これは並進路線と言いながらも実は国防を優先するという路線でした。金正日時代に入ると、「先軍経済路線」がとられ、ますます国防や軍事に力点が置かれるようになりました。実は金正日氏は、現在北朝鮮で行われているような経済改革をその頃から考えていて、こんにち行われていることは、金正日氏が考えていたけれどうまく実行できなかったものを改めて進めているという側面があります。
 これに対して、金正恩時代の13年に明らかにされた「経済・核武力並進路線」は明らかに軍事力より経済を優先させるという並進路線だということができます。12年4月15日に「太陽節100周年」つまり金日成氏が生まれて100年の閲兵式が行われました。ここで金正恩氏は公開演説のデビューをし、「わが人民が2度とベルトをきつく締めあげることなく、社会主義の富貴栄華を存分に享受できるようにしよう」と述べました。北朝鮮の経済状況が良くないことを述べているということですが、人民が富貴栄華を享受できるようにしたい、というのは彼のカラーを出した発言だと思います。14年8月の労働新聞の論説「わが革命の最終勝利を確固として担保する戦略的路線」は、「新たな並進路線の真の優越性は、国防費を追加的に増やさずとも戦争抑止力と防衛力の効果を決定的に高めることにより経済建設と人民生活向上に力を集中することができるようにするところにある」と述べています。
 韓国の研究者がずっと言ってきたことですが、通常兵器で北が南に対抗することは経済力からできない、従って核を持つことで戦略的優位を保ちたいという意思から核兵器に執着している、という考え方を裏書きするような論説が北側でも出てきているということです。経済を活かすための核開発と言われていますが、制裁が継続しており、対外経済が閉ざされてしまい経済を活かすこともうまくいかないのが現状です。核を持つうえに経済もうまく進めようとするのは虫のいい話で、そう簡単に物事は進みません。韓国の研究者が指摘しており、日本から見てもある程度はわかるわけですが、我々には経済路線が成功しているようには見えません。北朝鮮の国民生活や民生が向上するところに至っていない。しかし訪朝した人の話を聞くと、ピョンヤンだけを見ると物資が出回り、飢餓とモノ不足の共和国ではなくなってきている。金正恩政権の並進路線は一定程度実行されているが、核開発をしながら、という条件下では限界があると考えることができます。だから封鎖や制裁ではなく経済協力や民生向上の協力が入り口になるのではないかと考えられます。

「圧迫」から「関与」への転換を

 北朝鮮の核開発が依拠する法律にどのように書いてあるかをみましょう。13年に制定された「核保有国地位確立法」には次のように書かれています。
第1条 共和国の核兵器はわが共和国に対する米国の持続的で度重なる敵視政策と核の脅威に対処してやむを得ず保有することになった正当な防衛手段である。
第2条 共和国の核武力は世界の非核化が実現される時まで……服務する。
第9条 共和国は核戦争の脅威を解消し究極的に核兵器のない世界を建設するため闘争し、核軍拡競争に反対し、核軍縮のための国際的な努力を積極的に支持する。
 これを簡単に実行してくれるとは期待できませんが、「皆さんの国の法律は、こう言ってますよね」と私たちは言うことはできると思います。一緒に非核化をしましょうという時に、究極的には非核化したいと皆さんの国の法律もこのように定めていますよね、と私たちは言えるはずです。
 前出の趙成烈氏は核保有数と戦略の変化について次のように言っています。
20個以下――韓米の先制攻撃に対する報復
50個保有――日本への限定的核使用の可能性
100個到達――米国も攻撃目標とし先制使用の脅威を与えることも可能
 このまま放置すれば北朝鮮は核兵器を増やして100個くらいに到達したら米国に脅威を与える力を持てるという状況にある。オバマ政権は戦略的忍耐と言いながら北朝鮮が核を増やすのを放置した。今、関与しなければこの状況は変わらないことを改めて私たちは確認して日本政府にそのことを伝えていかなければなりません。
 朴槿恵政権は。北朝鮮に対する圧迫政策に傾斜してきました。15、16年の就任後最初の2年間は少しあいまいなところもありましたが、北朝鮮を圧迫して打倒する方向で進めてきました。しかしその大統領自身が市民社会に打倒されるところに来ています。朴槿恵政権が交代して新しい政権ができる。状況はプラスの方向に変わるということになると思います。昨年日本政府が米国の核先行不使用宣言に反対したというニュースを聞きました。この先行不使用をオバマが言うと、北朝鮮に対する圧迫が期待するほど強くなくなると、日本政府は考えたのかなと思いました。
 日本の独自制裁が北朝鮮に対して行われています。制裁が必ずしも成果につながっていません。しかし在日朝鮮人の人々は祖国と往来することに不便を被っている。制裁は在日朝鮮人に対するいじめにしかなっていない。日本の中の排外主義を高める効果はあるが、核の問題を解決する方向を見いだせていない。元外務省軍縮・不拡散科学部長(現ウィーン日本代表部大使)の北野充さんが、著書で北朝鮮の核実験に対して、過去にしたことに対する制裁になっているが未来を変えるための制裁になっているだろうか、という指摘をされていた。北野さんは、今のままではだめだということが分かっている方だと思いました。今の日本と韓国の政策は必ずしも良い方向に動かしてこなかった。これからの北朝鮮に対するアプローチが問われています。

非核化へのロードマップ

 想定しうる非核化へのロードマップを考えてみました。私がこの10年くらい携わってきた日朝国交正常化が不可欠なのではないかということを盛り込んだ問題提起です。

第1段階:対話の再構成
 第1段階としては、米朝は対話できない状況だが対話の場をもう一度再構成して持たなければならないのではないかと思います。そこから関与することが起こらなければならないのではないか。日本政府、米国政府が関与しなければこの問題は解決しません。米国が核先行不使用を宣言し、通常兵器による攻撃をしないと宣言する見返りに北朝鮮が核開発を凍結し実験停止と核兵器の増産中止を行う。そこから対話に入っていく。何らかの糸口を見つけなければなりません。それは、さきほど述べた昨年7月の北朝鮮政府声明や6者協議の共同宣言などにある程度含まれています。そうしたものを活かしながらいかに有効な形で再生させていくかということです。
 2000年代は6者協議を進めてきたが、6者という枠組みですべての話し合いが行えるか明らかでない。むしろ6者にこだわらないで何が優先課題か見極め協議を進めることが重要ではないかと思います。この間中国が、制裁は必要だが対話によって一つひとつ問題を解決しないと前進はできないと繰り返し要求しています。その通りだと思います。関係国が制裁の一部解除などで対話の環境を作ることが必要だと思います。拉致被害者の家族の皆さんがこれ以上待てないということで、北朝鮮が拉致被害者を全員帰国させるならば制裁を解除して対話に臨むべきだと政府に申し入れたという報道が出ていました。全員帰すという設定に問題があるように思いますが、そういう方向で対話に入ることは日本の政府にとって重要なことだと思います。
 韓国は今の状況では4月末か5月初めに大統領選挙になります。主要な大統領候補たちはケソン(開城)工業団地を再開することを訴えています。開城工業団地は北朝鮮の土地を借りて労働力を使っていますが、韓国の企業のものなので制裁措置があっても韓国側が再開を言いやすいところがある。開城工業団地再開をきっかけにして打開を図りたいのが大統領候補たちの考え方だと思います。しかし金正男氏の問題があったので韓国側の警戒の世論がこれまでより高くなる可能性があります。韓国は一番先に手を付ける場所がないので開城工業団地が重要なポイントになると思います。右派勢力はこれに対して強い抵抗を見せるだろうというのが今後のポイントです。韓国で一番先に動きがありそうな予感がします。

第2段階:平和定着の枠組み作り
 こうしたきっかけが作られていくと、第2段階として具体的な平和定着のための枠組み作りに入れると思います。これまでの北朝鮮を巡る合意は米朝のものが多いですが、南北合意事項があります。6者協議の共同宣言もあります。これまで出たものは次のようなものです:
90年代の米朝合意/米朝共同コミュニケ/南北非核化共同宣言/南北基本合意書/10.4南北共同宣言/6者協議の2005年9月19日共同声明
 このような、現在事実上死文化しているような合意事項を生き返らせ保証するシステムを作ることが重要と思います。こうして朝鮮半島における平和定着のためのシステムを形成していくことによって朝鮮半島をより安定した状況にし、相互不可侵、信頼構築、軍縮システムの確立が進んでいく状況が作れれば、核兵器の凍結から削減、廃棄への道筋が見えてくるだろうと思います。実際に話し合うときには、これらを一つのパッケージとして提示して話し合うことになるだろうと思います。一つずつ話し合うことはない。どれが先になるかわからないが、核開発の凍結は周辺国およびアメリカが納得しなければならない条件なので、そこからどうやって進めるか。
 朝鮮半島は昔から統一が言われていますが、いま南北統一は簡単ではない。南北朝鮮の人々が選択をして、統一に向かって安定した平和な民族国家ができることは悲願ですが、統一国家を作ることが簡単ではないということは初めての南北首脳会談でキム・デジュン(金大中)さんが身にしみて感じたことだと聞いています。統一は成就するかもしれませんが、今一番重要なことは朝鮮半島の平和定着だと思います。平和定着のシステムはどこから作るか。核の問題があり、通常兵器の問題があり、人的交流の問題もあります。韓国が開城工業団地を造って相互依存的な南北の関係を作ることが実は平和定着の第一歩だったが今機能していない。日本もそういう相互依存的な状況にしていくことが大切と思っています。北朝鮮と国交正常化し、経済協力をする。どちらが先になるかわかりませんが、経済協力を部分的に始めておいて何年後かに国交正常化しようという約束の仕方もあるかもしれません。かつて米朝の枠組み合意で原発を提供するというのがありました。今はあの時と違い自然エネルギーや人々の生活を向上させるためのツールが昔よりも増えています。「人々の生活を豊かにする」と皆さんの指導者もそう言ったではないですか、と伝えて国交正常化を交渉しながら経済協力を始めていくことも可能かもしれません。
 経済関係の相互依存的な関係を作って平和を定着させていかないと核の問題や緊張の問題は解けない。私たちは知恵を絞らなければならない。この後の田巻さんの話を含めて良いアイディアを生み出して世論として作り上げていきたいと思います。
(まとめ:ピースデポ)

石坂浩一(いしざか こういち) 

 1958 年生まれ。立教大学異文化コミュニケーション学部教員。2016 年度以降、立教大学平和・コミュニティ研究機構代表。「東北アジアに非核・平和の確立を!日朝国交正常化を求める連絡会」で発足時から共同代表を務める。韓国社会論、日朝・日韓関係史専攻。編著に『北朝鮮を知るための51 章』(明石書店)、共編著に『現代韓国を知るための60 章』(明石書店)、共著に『金大中と日韓関係』(延世大学金大中図書館)などがある。

くわしく

コラム:防衛費を考える(1) 「後年度負担」によって膨らむ「実質物件費」

公開日:2017.07.14

国会で審議中の2017年度政府予算案1の防衛費は48996億円2、第2次安倍内閣発足以来4年連続の増額である。

1) 人件・糧食費(21662億円、全体の44%):職員の賃金、自衛隊員の食費など。

2) 物件費(歳出化経費)(17364億円、全体の35%):16年度以前の契約に基づき17年度に支払わねばならない経費。これが「後年度負担」の1つの柱である。

3) 一般物件費(活動経費)(9970億円、21%):17年度の契約に基づき、17年度に支払われる経費。

 「三分類」のうち、1)と2)はいわゆる「固定費」、17年度に「払わなければならない」ことがすでに決まっている経費である。つまり、日本の17年度軍事費のうち79%は「固定費」で占められている。家計で言えば、食費と住宅ローンで収入の80%が消えてゆく。しかしその中でさえ、政府は次のような新装備の(武器)調達を計画している:

◎垂直離着陸輸送機V22オスプレイ4機(447億円)、機動戦闘車36両(252億円)。

◎ 探知能力を向上した潜水艦(3000トン×1隻・728億円)。

BMD能力向上迎撃ミサイル・SM-3ブロックIIA147億円)。

 

後年度負担:水面下に潜る軍拡の意思

 これらの「調達計画」を見て、多くの人が思うだろう。軍事費は「80%が固定費」なのに、なぜこんなに新しい装備調達ができるのだろうか・・・これが「後年度負担」というからくりだ。

 憲法86条は「単年度予算主義」を定めている。「その年の予算はその年の予算として国会承認を受け、その年のうちに使い切る」という原則である。しかし、国の事業には、時としてそれに捉われては不都合なケースがある(たとえば何年もかかる建設事業など)。そこで、「財政法」には「予算を5年までであれば分割してもよい」という特例が設けられてきた。防衛省はこの特例を最大限に活用してきた。100億円の航空機を買う場合、初年度は10億円だけ払い、以後最大5年をかけて全額を支払うことが許されるのだ。これを「後年度負担」と呼ぶ。場合によって初年度の支払いは「ゼロ」とされるケースすらある。

 ところが昨今の兵器の値上がりや財政逼迫で「5年分割」しても負担を吸収できなくなってきた。そこで政府は、2015年の国会に防衛費に限定した特別措置法案を提出し成立させた。「防衛調達長期契約法」3と略称されるこの法律で、分割払い期間は10年まで許されることになった。

 その結果17年度予算でいえばこのようなことが起こる。

 装備の購入などに使える<一般物件費>は、9970億円である。しかし、政府の予算説明資料を注意深く読むと、これ以外に「新規<後年度負額>が19700億円ある」と書かれている。これは17年度に契約するが、代金は18年度以降最長10年で払えばよい、というものだ。つまり、後年度負担まで含めれば、17年度予算に新たに盛り込まれた装備調達経費は<(9970億+19700=29670億円>になる。

 さらにここに「16年度までに買ったが17年度に支払わねばならない経費(歳出化経費)を加えなければならない。それが前記のとおり<17364億円>ある。

 つまり、17年度予算には、表面にだされたよりずっと多い、<47034億円>の「軍拡の意志」が反映されているのだ。この関係を示したのが下の図である。

 17年度「調達計画」の多くにはこの方式が採用されている。例えば、「オスプレイ4機で391億円」が計上されているが、このうちで「一般物件費」として17年に支払われるのは、たかだか10%(もっと少ない、あるいはゼロの可能性がある)で、残りの90%以上は、18年以降に最長10年をかけて「ローン返済」されてゆくのである。「オスプレイ」に関するこの支払い計画の全体像はまだ公表されていない。

 「後年度負担」は2ページで述べた「防衛費GDP1%枠」をクリアするために存分に活用されてきたという経過がある。「トランプ軍拡」の時代、高額な米国製兵器の調達圧力高まるだろう。そのような調達が増えれば増えるほど、単年度予算でみた「防衛費」と「軍拡の意志」の乖離は拡大し、負担は後の世代へと回されてゆくのである。(田巻一彦)

 

1 防衛省「わが国の防衛と予算(案)-平成28年度予算の概要」(http://www.mod.go.jp/j/yosan/yosan.html)。

2 「SACO関連経費」や「米軍再編経費」の一部は防衛費と別枠。

3 「特定防衛調達に係る国庫債務負担行為により支出すべき年限に関する特別措置法」。(平成272015)年430日法律第16号)。

くわしく

<資料>トランプ大統領の両院合同議会演説(抜粋訳)

公開日:2017.07.14

2017年2月28日
米国連邦議会議事堂、ワシントンD.C.

ホワイトハウス大統領報道官室
即時リリース

(略)
 こんにち我々が目にしているのはアメリカの精神の復活です。我々の同盟国は米国が再び先頭に立つ準備ができていることを知るでしょう。世界中すべての国が―友人であれ敵であれ―米国が強力で、誇り高く、自由であることを知るでしょう。
(略)
 約束した通り、私は国防長官に「イスラム国」―イスラム教徒、キリスト教徒、そしてあらゆる信仰や信心を持つ男女や子どもを虐殺してきた無法で野蛮な者たちのネットワーク―を粉砕し、破壊する計画を立てるよう命じました。我々はイスラム世界を含む友好国や同盟国と協力して、この卑劣な敵を地球から抹殺します。
 また、私はイランの弾道ミサイルプログラムを支援する組織や個人に新たな制裁を課し、イスラエルとの揺るぎない同盟を再確認しました。
(略)
 米国を安全な状態に保つために、我々は合衆国軍の兵士たちに対し、戦争を防止するのに必要な手段を提供しなければなりません。―もし戦わねばならないなら―彼らは戦って、そして勝利するのみです。
 私は議会に、軍を再建し、国防費の自動(強制)一律削減を廃止し、そして米国史上最大の国防費増額を要求する予算案を送ります。私の予算案は退役軍人のための資金も増やします。退役軍人たちはこの国に尽くしてくれました。今度は我々が彼らに尽くさねばなりません。
(略)
 米国がどのような友人になるか思案している同盟国の皆さん、制服を着た我らの英雄たちを見なさい。我々の外交政策は、世界との直接的で力強く有意義な関与を要求しています。重大な安全保障上の利益を基盤とした米国のリーダーシップこそ、我々が世界中の同盟国と共有するものです。
 我々はNATOを強く支持します。この同盟は、ファシズムを追放した2つの世界大戦と冷戦における結束を通じて鍛えられ、共産主義を打倒しました。
 しかし我々のパートナーは財政的な義務を果たさねばなりません。そしていま、我々の強力で率直な議論をふまえて、彼らはちょうどそれを始めたところです。実際、資金は入ってきています。大変よいことです。我々はパートナーが―NATO域内であろうが中東であろうが太平洋であろうが―戦略運用、軍事作戦の両方で直接的で意義のある役割を果たし、コストの公平な負担分を支払うことを期待します。彼らはそうしなければなりません。
 我々は歴史ある慣例を尊重し、あらゆる国家の外交上の権利を尊重します。そして彼らもまた国家としての我々の権利を尊重しなければなりません。自由主義国こそが人々の意思を表現する最高の手段であり、米国はあらゆる国家が自身の進路を計画する権利を尊重します。私の仕事は世界を代表することではありません。アメリカ合衆国を代表することです。
 しかし我々は、争いが多いのではなく少ないほど米国が栄えることを知っています。我々は過去の過ちから学ばねばなりません。これまで世界中で―世界のいたるところで、荒れ狂い、猛威をふるう戦争と破壊がありました。こうした人道上の災害の唯一の長期的な解決策は、多くの場合、避難民たちが安全に故郷に戻り、長い長い再建のプロセスを開始する条件を整えることです。
 米国は利益が共有され合致するところでは新しい友人を見つけ、新しいパートナーシップを作り上げる意思があります。我々は戦争や争いではなく、調和と安定を求めます。平和を見つけ出せるところでは平和を求めます。
 こんにち米国は、以前の敵とも友好を結んでいます。最も親密な同盟国の中には、数十年前に怖ろしい戦争を敵味方に分かれて戦った国もあります。こうした歴史を見れば、我々は皆、よりよい世界は可能だと信じられるはずです。米国建国250周年には、世界がより平和で、より公正で、より自由であることを願います。
(後略)
(訳:ピースデポ)
原文:
https://www.whitehouse.gov/the-press-office/2017/02/28/remarks-president-trump-joint-address-congress

くわしく

姿を現した「トランプ軍拡」路線  国防予算を10パーセント増、同盟国には防衛負担増要求

公開日:2017.07.14

トランプ米大統領は2月28日の両院議会演説で「歴史的な国防予算の増額」を宣言し、3月16日には国防予算を10%増額するとの18会計年「予算方針」を提示した。大統領はこの軍拡予算を背景に、同盟国への防衛費負担増の圧力を強めている。「アメリカ第一」を標榜するトランプ路線は、同盟国のみならず「敵対国」をも巻き込んだ軍拡の嵐を巻き起こそうとしている。安倍政権はこの路線を歓迎し、「防衛費GDP1%枠」を公然と捨て去って積極的に一端を担うことを示唆した。地域の軍拡と相互不信を増幅するこの愚行を止めるのは日本市民の役目だ。


国防予算10%増額を提案

 2月28日の演説1の抜粋訳を2ページの資料に示す。ここで大統領がまず示したのは、「軍再建のために史上最大級の国防費増額予算案を議会に提出する」方針であった。実際、3月16日に議会に提出された「アメリカ第一:再び偉大な国にするために」と題された18会計年(17年10月~)「予算方針」2では、「債務拡大なき国防費の歴史的増額」が重点施策の筆頭に挙げられた。その結果、18会計年度の国防総省予算額は6,390億ドル(対17会計年比520億ドル増)になる。内訳は基礎予算5,740億ドル(同10%増)、海外非常事態作戦予算が650億ドル(同4.3%増)である。
 国防予算は、国家財政再建のためにオバマ政権が施行した「2011年予算管理法」の下で削減措置を受けてきた。18会計年の予算増は、この「強制削減」を全面的に撤廃することによって「オバマ大統領の下で劣化した軍を再建する」ことが目的であると「予算方針」は述べる。予算の使途の詳細は5月提出予定の予算案で明らかにされるが、「予算方針」では対ISIS戦費、部隊の効率・即応性の向上、老朽化した装備・インフラの改善、退役軍人手当、陸軍、海兵隊、海軍、空軍の人員や装備の増強などが例示された。
 このような国防費増額を「債務拡大なしに」賄う財源は、対外援助を含む国務省予算、環境保護庁予算などの大幅削減によって捻出する。これらの重要政策を犠牲にした大軍拡に対しては、共和党内部からさえ異論が出されている。

同盟国への負担増額要求

 トランプ演説で打ち出されたもう1つの方針は、「同盟国に米国の予算増額に見合った公平な負担を求める」ことである。
 演説に先立つ2月15日、NATO外相会議に出席したマティス国防長官は、記者団に対して次のように語った。「アメリカに掛け値なしの同盟上の義務履行を求めるならば、共通の防衛努力への支援を示すべきだ」3
 これは選挙キャンペーン中から繰り返されてきた要求である。NATO加盟国には「国内総生産(GDP)2%相当」の国防費を予算化するとの申し合わせがある。しかし現状では、加盟国28か国の中でこの目標を達成しているのは英、エストニア、ギリシャ、米の4か国に過ぎない。有力国でさえ、仏(1.78%)、トルコ(1.56%)、独(1.19%)、カナダ(0.99%)という現状である4。トランプ政権自らの大軍拡に加えて、加盟国が負担増に応じれば、ロシアも軍拡で対抗するだろう。トランプ軍拡はこうして増幅、波及してゆく。

日本も防衛費増額で呼応か

 安倍首相は、3月2日の参議院予算委員会において、トランプ政権の軍拡方針をアジア太平洋の軍事バランスを考慮した適切なものだと評価した。さらに首相は、米との防衛協力を強化してゆくとした上で、防衛費「GDP1%枠」にこだわらず必要な防衛費を確保してゆくとの考えを示した。首相は、トランプ氏から「負担増要求」は来ていないとも言ったが真偽はわからない。 
 1976年、日本が軍事大国にならないための「定量的規制値」として三木内閣によって定められた「GDP(当時はGNP(国民総生産))1%枠」は、87年に中曽根内閣で撤廃されたが現在も結果的には維持されている。トランプ軍拡に呼応するだけでなく、「1%枠」を超えて軍備拡張を進めるならば、それは地域に相互不信と軍拡競争の種をまく重大な誤りである。(田巻一彦)


1 毎年1月の議会開会から約2か月後に大統領が行う演説は「一般教書演説」と呼ばれるが、新大統領の就任直後に行う演説は慣習的にこのように呼ばれる。
2 www.whitehouse.gov/sites/whitehouse.gov/files/omb/budget/fy2018/2018_blueprint.pdf
3 『ワシントン・ポスト』(電子版)、17年2月25日。
4 同上。

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