核兵器・核実験モニター バックナンバー

【日誌】核・ミサイル/沖縄(16年7月6日~7月20日)

公開日:2017.07.15

ASEM=アジア欧州会議/DPRK=朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)/EU=欧州連合/IS=「イスラム国」/MD=ミサイル防衛/NATO=北大西洋条約機構/PCA=常設仲裁裁判所/PKO=(国連)平和維持活動/SLBM=潜水艦発射弾道ミサイル/THAAD=高高度防衛ミサイル


●7月6日 英ブレア政権のイラク戦争参戦や占領政策を検証した独立調査委が報告書。参戦は「最後の手段でなかった」と批判。
●7月6日 米財務省、DPRKでの人権侵害への関与を理由に金正恩・国務委員長ら政権幹部を金融制裁対象に指定。(本号参照)
●7月6日 DPRK、朝鮮半島非核化の条件として在韓米軍の撤退など求める声明を発表。(本号参照)
●7月6日 オバマ大統領、タリバーンの復活受け、アフガン駐留米軍の減員計画を見直し、17年以降もほぼ現状維持の方針を示す。
●7月7日 DPRK外務省、金正恩氏ら制裁の無条件即時撤回せねば「強硬対応措置をとる」との声明。朝鮮中央通信。(本号参照)
●7月8日 韓国国防省と在韓米軍がソウルで記者会見しTHAAD配備を最終決定と発表。
●7月8日 中国外務省、韓国THAAD配備は「この地域の戦略上の安全保障の利益と戦略均衡を著しく損なう」と声明。
●7月8~9日 ワルシャワでNATOサミット。17年以降、東欧4か国に多国籍部隊展開へ。米がルーマニアに配備した迎撃ミサイルの欧州全域での活用も決定。(本号参照)
●7月9日 DPRKが東岸の新浦沖からSLBMとみられるミサイル1発を発射。
●7月10日付 南スーダンで昨夏以来の内戦再燃。首都ジュバで大統領・副大統領両派の戦闘が続発、10日までに272人死亡。
●7月10日 DPRKが国連代表部を通じ米政府に対し米朝対話ルートの断絶など通告。(本号参照)
●7月10日 オバマ米大統領が核兵器の先行不使用などの核軍縮策を検討とワシントンポストが報道。(本号参照)
●7月11日 南スーダン治安悪化で政府、空自C130輸送機3機をジブチへ派遣。PKOに参加中の陸自による邦人陸上輸送も検討。
●7月11日 南スーダンで大統領・副大統領両派が兵士に停戦命令。
●7月12日 南シナ海問題でPCA、提訴したフィリピンの主張を認め、中国主張の境界線に「国際法上の根拠なし」との判決。
●7月13日 中国政府、南シナ海めぐるPCA判決に反論する「白書」を発表。
●7月13日 ジュバの援助関係者ら邦人93人が民間チャーター機でナイロビに到着。陸自隊員、大使館関係者らは残留。
●7月14日 仏ニースで花火大会の見物客にトラックが突っ込み84人が死亡。運転のチュニジア移民の男はその場で射殺される。
●7月14日 関電が高浜原発3,4号機の再稼働を認めない大津地裁の決定を不服とし、大阪高裁に抗告を申立て。
●7月15日付 日本政府が米国の核先行不使用に反対し協議を申入れと判明。(本号参照)
●7月15日 政府、国内の米原子力艦からの放射能漏れ事故対応マニュアルを改訂。原発事故時より狭い避難範囲は事実上不変。
●7月15日 トルコ軍クーデター未遂。市民含む200人超が死亡、約1400人が負傷。
●7月15~16日 ウランバートルでASEM首脳会議。議長声明に「国連海洋法条約に従った紛争解決」の重要性を明記。
●7月16日 仏ニースのテロ、ISが犯行声明。
●7月17日 トルコ政府、米国戦術核保管所でもあるインジルリク空軍基地での飛行禁止措置を解除。
●7月18日 英議会下院、核戦力「トライデント・システム」の更新を可決。メイ首相はロシアとDPRKの脅威に言及。
●7月19日 DPRKがスカッド2発、ノドン1発を日本海に向け発射と韓国国防省。
●7月19日 イラン外務次官、核合意履行として重水40トンをロシアに売却する手続きを進めていると発表。
●7月20日 韓・韓国国防部長官、THAADシステムが米国のMDに編入されないよう、米国と情報共有しないと発表。

沖縄

●7月6日 日米地位協定上の軍属定義を4分類に明確化。実質的な適用範囲縮小で日米合意。契約業者の従業員など一部を除外。
●7月6日 在沖米海兵隊に「日本防衛の任務なし」。82年ワインバーガー証言の公文書を確認。県議会代表質問。
●7月7日付 米軍属女性暴行殺人事件。容疑者、殺意や性的暴行を否認。米軍準機関紙で声明文。沖縄以外での裁判を要求。
●7月8日 先月15日、普天間飛行場内で1,825㌎の航空燃料(JP5)漏れが発生。県・宜野湾市、通報受けるも公表せず。
●7月8日 沖縄防衛局、嘉手納基地地域の騒音分布図を33年ぶりに更新する方針。防音工事対象の「第1種区域」見直しへ。 
●7月10日 参院選沖縄選挙区、伊波洋一氏が初当選。現職・島尻安伊子氏に10万票差。
●7月11日 東村・高江ヘリパッド建設工事。北部訓練場内に資材搬入。翁長知事、「県民との信頼関係損ね、容認できず」と批判。
●7月13日 嘉手納基地所属F15戦闘機が照明弾を誤射。同機の飛行訓練を中止。
●7月14日 国、辺野古埋立て承認取消し違法確認訴訟提起の方針。県の協議要求に応じず。キャンプ・シュワブ内陸上工事も再開へ。
●7月15日 3月に発生した観光客女性暴行事件で、被告のキャンプ・シュワブ所属1等水兵に懲役2年6か月の判決。
●7月15日 防衛省、米兵犯罪防犯パトロール員を辺野古・高江新基地建設現場の「警備要員」に充当。抗議活動を抑制する計画。
●7月18日 翁長知事、鹿児島・馬毛島を視察。おおさか維新の会が普天間飛行場訓練移転候補地として提案。所有者も受入に賛同。
●7月19日 東村・高江向け県道で車両検問。警察官が免許証提示、行き先、危険物確認求める。識者ら、「職権乱用」と批判。
●7月20日 県教委、キャンプ・シュワブ内辺野古崎付近の陸上部・海域を「長崎兼久遺物散布地」として遺跡認定。
●7月20日 空自那覇基地所属F15戦闘機、ブレーキ故障。那覇空港滑走路一時閉鎖。

くわしく

【特別連載エッセー「被爆地の一角から」97】  「“お試し改憲”は不要だ」 土山秀夫

公開日:2017.07.15

 自民党は憲法改定を行うに際して、先ず国民に身近な課題を取り上げ、国民投票に馴らした段階で本丸の9条に手をつけるのが望ましい、との考えを示している。手始めとして、大災害やテロなどを想定した「緊急事態条項」の創設を挙げ、これだと国民の理解が得られやすいと目論んでいるようだ。
 「緊急事態条項」は、国家の緊急時に政治的空白を作らないようにするため、一時的に内閣への権限集中を認めるというもっともらしい条項のように思われがちである。この点について12年に発表した自民党の「憲法改正草案」では、「緊急事態において特に必要があると認めたときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる」とされ、その上で「内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができる」とし、「何人も国その他の公の機関の指示に従わなければならない」と続く。この場合においても、「基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない」とも書かれてはいる。
 しかし自民党の憲法草案全体に見られる基本的姿勢からして、この点はにわかに信じるわけにはいかない。現行の日本国憲法が、国家権力を暴走させないために、国民の手によって規制されていることが自民党には気にくわないらしい。同党の草案では日常の基本的人権でさえ、それが常に公ないし公共的利益に反しない限り、との条件つきで尊重されるとしている。つまり立憲主義の理念とは逆に、国家が国民主権を制御しようとする姿勢が、条文の重要箇所に見え隠れしている。ましてやこうした政党の内閣が緊急事態を宣言した場合、国民の基本的人権の尊重や国家の方針に対するメディアなどの手厳しい批判が、十分に保護されるとは極めて考えにくい。
 敗戦の翌年、日本の新憲法制定のための衆議院における審議に際し、金森徳次郎国務大臣はこのように警告している。「民主政治を徹底させて国民の権利を十分擁護するためには、政府が一存で行い得る措置は極力防がなければならない。言葉を“非常”ということに借りて、それを口実に憲法が破壊されるおそれが絶無とは断言しがたい」として、憲法に非常措置を取り得る規定を入れようとはしなかった。今回、自民党の憲法草案に携わった人たちは、ほとんどが戦後生まれなので知らないだろうが、戦前、戦中を通じていかに多くの一般庶民が「この非常時に貴様らは何たることか」とばかり、警察や軍隊などの権力によって人権が無視されたことかを、金森大臣は身をもって体験していたからに違いない。
 しかも現在の日本では、有事や災害時に内閣に権限を集中させる措置が、すでに法律によってしっかり整備されている。例えば災害対策基本法では首相が災害緊急事態を布告すれば、内閣は国会閉会中でも政令を制定できるし、大規模地震対策特別措置法では、地方公共団体への指示や、警察や自衛隊の派遣を要請できる。また相手国から武力攻撃を受けた場合には、「武力攻撃事態対処法」によって緊急対処事態への基本方針を策定することができるほか、「国民保護法」によって武力攻撃事態での国民の協力が細かく規定され、事柄によっては拒めば刑罰を科すものもある。法律や政令の専門家たちは、こうした現状から憲法を改定して緊急事態条項を追加する必要は全くないと言う。いや、必要ないどころか、戦前のドイツで民主的なワイマール憲法にナチスの国家緊急権が盛り込まれたばかりに、独裁への道を許した歴史の教訓を指摘する人も少なくない。
 安倍首相に告げたい。姑息な策を弄することなく、最初から堂々と9条改定の是非を問うたらよい。世論調査の結果から見ても、多くの国民は9条の改定など望んではいない。それでも国民投票を強行すれば、あなたは必ずや国民の審判に打ちのめされるに違いない。

くわしく

【資料】  歴代カナダ軍縮大使が提言「新政府は核軍縮前進へ積極的外交を」

公開日:2017.07.15

ダグラス・ロウチ氏ら1984年から2011年にかけて(94~99年を除く)カナダの軍縮大使を務めた5人の連名によるインターネット投稿記事が、反核運動家らの間で注目を集めている。地域ニュースサイト「オタワ・シチズン」に、「カナダはこうして核兵器廃絶に寄与することができる」と題し、5人によるコラムが16年6月21日付で寄稿された。元軍縮大使らは最近の米ロ中による新たな核開発競争を憂慮し、「核軍縮を元の道に戻すため」、昨年11月に就任したトルドー首相の率いる「カナダ新政府に何ができるか」と問いかけている。NATO原加盟国であり核兵器依存政策をとってきたカナダは、日本と同様、核兵器禁止条約の交渉開始には消極的な立場である。元軍縮大使らは、カナダ政府がそこから一歩踏み出し、外交を通じて核軍縮を前進させるよう、行動を促しており、核兵器禁止をめざす国々のハイレベル会合の主催といった具体的な提案を行っている。以下、全訳を掲載する。(編集部)


 共著者のマリウス・グリニウス、ペギー・メイソン、ポール・マイヤー、ダグラス・ロウチ、クリストファー・ウェストダルは、4人の首相の下でそれぞれカナダ軍縮大使の任に就いていた。 
 30年前、アイスランド・レイキャビクで、ロナルド・レーガン米大統領とミハイル・ゴルバチョフソ連書記長は、核兵器の全廃につながったかもしれない合意に達するまであと少しという所に迫った。議論は、レーガンが米国の弾道ミサイル防衛システムの開発を認めるべきだと言い張ったことで、頓挫した。
 1986年の失敗にもかかわらず、レイキャビク会談は歴史上最も重要な首脳会談の1つであった。1年後、米国とソ連は中距離核戦力全廃条約(INF条約)に調印し、初めて1つの種類の核兵器を全廃した。数年後に戦略兵器削減条約(START)が調印された。
 レイキャビク会談は核兵器のない世界への展望を示してみせた。それは、世界中の人々にとってのより確かな安全を築くため、指導者たちが敵対関係を超えて未来を描きうることを示した。間もなく冷戦終結が訪れ、平和とは言わないまでも世界的安定がもたらされるという希望が生まれた。
 それから早30年。4月17日、「ニューヨーク・タイムズ」は1面で、米国、ロシア、中国が今や新世代核兵器を「果敢に追求している」と報じた。「これらの軍備増強は冷戦時代の軍拡競争を再燃させる恐れがあり、半世紀以上も核による平和を保ってきた国々の破壊力のバランスが崩れる」と同紙は報じた。ウィリアム・ペリー前米国防長官は、「今日、核による壊滅的事態が起こる危険性は、冷戦期よりも高い」と述べた。引退して久しいゴルバチョフは、「新型核兵器」に遺憾の意を表す声明を発表した。
 どうしてこのようなことが起きたのか。どのようにして、世界の「下向き」だった核兵器の潮流が「上向き」に転じたのか。非難すべき事柄は多いが、カナダの元軍縮大使としての我々の脳裏を占めているのは、核軍縮を元の道に戻すため何ができるか、そして特にカナダ新政府が、プロセスを前に進めるため何ができるか、という問いである。
 最近、キム・ウォンス国連軍縮担当上級代表がオタワでの議会の会合で、カナダは核軍縮の前進のため、核兵器国と非核国の間の橋渡し役を果たしうる独特の位置にいる、と語った。
 何年ものあいだ政府に行動を迫ってきた核廃絶カナダ・ネットワークは、この考えを一歩先に進めた。同ネットワークはこのほど「行動の呼びかけ」を発表し、カナダ政府が今秋、国連総会で「核兵器を禁止し検証可能な廃絶を義務づける法的拘束力ある包括的な条約を交渉する」決議を提案するよう、要請している。
 ジュネーブで現在進行中の国連での作業を通じて、核兵器を禁止する新たな国際条約の土台が築かれている。だから、もしカナダが行動しても決して孤立することはない。1万5,800発の核兵器のどれか1つを使用することで生じる壊滅的影響を深く憂慮する国々による、人道主義に基づく新たな動きが拡大している。厄介なのは、その「戦略概念」の中で核兵器は安全に対する「至高の保証」だと主張するNATOの存在である。
 カナダ新政府は、国連の取り組む幅広い諸課題の前進を明らかに望んでいる以上、時代遅れのNATO政策への忠誠を、加盟国が核兵器廃絶に向けた「明確な約束」をしている核不拡散条約への肩入れよりも強いものにするのかどうか、決めなければならないだろう。
 政府は前進を望む兆候を見せている。このほど、政府は「中堅国家構想」との共催により、22か国の政府による円卓会議をジュネーブで開催した。会議では、核の脅威を減じ新たな核軍拡競争から方向転換するため、外交、協力、高レベルでの政治的誓約が必要であることが指摘された。
 我々は、カナダはこの外交活動を広げるべきだと考える。イランの核開発をやめさせるための最近の合意が示したように、核外交はまだ効果を有する。
 カナダがとり得る1つの積極的な行動としては、核兵器の禁止と廃絶のための法的文書についての交渉を直ちに始めたい国々によるハイレベル会合を主催することが考えられる。核兵器のない世界への道筋をつけるべく、同様の志を持つ中堅国を集めれば、新たな核兵器の危機の緩和に向けた絶大な貢献となるだろう。それは第2のレイキャビクにつながるかもしれない。
(訳:ピースデポ)
原文: http://ottawacitizen.com/opinion/columnists/disarmament-ambassadors-heres-how-canada-can-help-eliminate-nuclear-weapons

くわしく

<資料2>ロシア・フィンランド首脳会談後記者会見でのプーチン大統領発言(抜粋訳)

公開日:2017.07.15

7月1日、ヘルシンキ

質問:
 バルト海地域における(略)軍事状況についてプーチン大統領に尋ねたい。クリミアのロシア編入以降、この地域の緊張が高まり、ロシアはこの地域での軍事プレゼンスの増強を公然と口にした。実際的にこれが意味することは何か、ロシアは何を目指しているのか。

プーチン大統領:
 ロシアは決して緊張を煽ってはいないことを思い起こしてほしい。クリミアに関していえば、ウクライナでクーデターを企てたのはロシアではないし、クリミア半島の人々の生命、健康及び安全を脅かしたのはロシアではない。クリミアとロシアの再統一は完全に無血のうちに、1発の発砲もなく、1人の犠牲者もなく、クリミア住民の意思に基づき国際法に完全に従って行われた。
 完全に挑発であったと我々が考えるクーデターの企みにつづいて、クーデター支持勢力は、欧州及びバルト海地域を含む世界の他の場所で緊張を拡大する行動に出た。NATO は、軍事インフラを我々との境界線に向けて移動させている。
 ミサイル防衛システムが、イランの核脅威に対抗するという現実離れした口実で配備されつつある。だがイランの脅威はすでに除去されイランとの間では条約が締結されている。我が国の核能力を無力化することを目的とするレーダーとミサイル迎撃システムがルーマニアに配備されている。
 迎撃ミサイルを装備したイージス発射システムが、主に射程2000km以上の中距離巡航ミサイルの発射に用いられることはよく知られている。この用途変更は、完全に秘密のうちに数時間で行うことができる。必要なのはコンピュータ・ソフトウェアの変更だけである。その結果、誰も目にすることを欲しない我が国への明白な脅威が生じる。この問題について我々と対話しようとするものはいない。
 そして今、同型のレーダーと迎撃ミサイルシステムの、バルト海地域・ポーランドへの配備が議論されている。我々はどうするのか? どうしたらこれらの脅威を無力化できるだろうか? 我々はしかるべく対処しなければならなくなる。次はバルト諸国へのNATO軍の増強が宣言されるだろう。我が軍部隊の領土内における移動が、攻撃的な行動の例として指摘されるが、我が国との境界線に近い場所でのNATO軍の演習は、どういう訳か攻撃とは扱われない。
 このような状況は、不公正であり現実に逆らうものだ。NATO軍の増強に対して我々はどのように対応するべきなのか? ロシアはフィンランドとの国境から1500㎞離れたところまで部隊を移動させると決定し、それを実行したことを思い返してほしい。それ以来我々は何の変更も行わず、状況はそのままである。その間、バルト諸国におけるNATO軍は増強されている。我々はどうすればよいのか?(略)
質問:
 プーチン大統領に訊ねたい。フィンランドの立場からみると、フィンランドをNATOのほうに押しやろうとしているのがロシアではないかと見える。いずれにせよ、国内ではかつて反NATO的な態度が主流だったが、今はNATOへの接近が真剣に議論されている。なぜ、ロシアはこのように振る舞うのか? 恐らく、大統領はフィンランド国民の安全保障を向上する具体的な提案があるのだと思うが。(略)

プーチン大統領:
 フィンランド市民がなぜ不安を感じているのか理解しがたい。すでに述べたように、我々はすべての軍部隊をフィンランド国境から1500㎞後退させることを決定し、実行した。バルト海や世界の他の地域の様々な緊張にかかわらず、我々はフィンランド国民に不安を与えうるようなことは何もしていない。因みに、我々はフィンランドの中立的地位を認識するがゆえにこのように行動しているのだ。フィンランドがNATOに参加したと想像してほしい。そうなれば、フィンランド軍部隊は全面的に独立した主体的なものではなくなるだろう。フィンランド軍はロシア連邦との国境上に突如出現したNATO軍事インフラの一部となるだろう。
(後略)

(訳:ピースデポ。強調は編集部)

原文:
http://en.kremlin.ru/events/president/transcripts/52312

くわしく

<資料1>欧州におけるミサイル防衛の実施(在ブカレスト米国大使館ウェブサイト)

公開日:2017.07.15

2016年5月11日最終更新

 端的に言えば、我々の欧州における新しいミサイル防衛構想は米国とその同盟国の戦力に対し、より強力で、高性能で、迅速な防衛力を提供する。それは、以前の計画より包括的なものであり、検証済みで対費用効果の高い能力を展開し、米本土を長距離弾道ミサイルの脅威から守る責務に基づくものであるとともにそれを持続する。そして全NATO加盟国への防御を保証し、強化する。
―オバマ大統領

 オバマ大統領は米国と、その海外に派遣された兵力、欧州の同盟国とそのパートナーを、増大する弾道ミサイルの脅威から守ることを誓約している。2009年9月、国防長官と統合参謀本部長の勧告に基づき、オバマ大統領は、より早期に、より包括的な防御を提供するため、ミサイル防衛のための欧州段階的適応アプローチ(EPAA)を発表した。この2年間、政府はNATO諸国と協働し、このアプローチの実施において目覚ましい進展を見ており、大統領が打ち出した到達目標に向かっている。
 EPAAの発表以来、政府はEPAAをNATOの環境の中で実施する願望を明らかにしてきた。2010年11月のリスボンサミットでNATOは、弾道ミサイルの拡散によって引き起こされる脅威の増大に対して全てのNATO加盟欧州諸国の住民と領土、戦力を完全に保障し保護することを目的に、ミサイル防衛能力を承認するという歴史的決定を行った。この決定は、同盟が直面する21世紀の一連の脅威に対抗するNATOの抑止態勢を拡大し、強化する我々の努力と軌を一にしている。NATOはまた、NATO加盟欧州諸国の住民、領土、戦力を保護するために、その現在のミサイル防御の指揮・管制・通信能力を拡張することにも合意した。リスボンでNATO諸国はEPAAをNATOのミサイル防衛に対する米国の国家的な貢献として歓迎するとともに、他のNATO加盟国の追加の自発的な貢献を歓迎した。
 EPAAには、2010年代の残りの期間にわたって実施される4つの段階がある。それぞれの段階で進展があったし、大統領が2009年に設定した目標の達成に向かっている。

・ 第1段階(2011年までに実施)は現在の検証済みのミサイル防衛システムを配備することによって、短距離及び準中距離弾道ミサイルの脅威に対処する。これは、検証済みのSM-3 Block IA 迎撃ミサイルを装備した、イージス弾道ミサイル防衛システムが搭載可能な艦艇の配備を必要とする。今年3月、米艦モントレーは、EPAAを支援するため持続的なローテーションで地中海へ派遣される艦船の最初の一隻になった。第1段階はまた、トルコがNATOミサイル防衛計画の一部としてその受け入れ国になることを最近合意した、地上設置式早期警戒レーダーの配置も必要とする。
・ 第2段階(2015年までに実施)は、ルーマニアへの地上設置型SM-3ミサイル防衛迎撃基地の実戦配備と、より高性能のSN-3迎撃ミサイル(Block IB)の配備によって、短距離及び準中距離の脅威に対する我々の守備範囲を広げる。今週、9月13日に米国とルーマニアは米国・ルーマニア弾道ミサイル防衛協定に署名した。批准されると、米国はルーマニアに陸上配備型弾道ミサイル防衛基地を建設し、維持し、運営してよいことになる。
・ 第3段階(2018年までに実施)は、ポーランドに建設される地上設置型SM-3基地とより進歩したSM-3迎撃ミサイル(Block IIA)の配備によって、中距離及び準中距離ミサイルの脅威に対する防御力を改善する。ポーランドは2009年10月に迎撃ミサイル基地の提供に合意した。そして今日、ポーランドの承認手続きは完了し、合意は効力を発した。
・ 第4段階(2020年までに達成)は中東から米国への中距離ミサイル、ならびに将来における潜在的な大陸間弾道ミサイル(ICBM)の脅威に対抗する能力を、SM-3 Block IIB迎撃ミサイルの配備を通して強化する。それぞれの段階はミサイル防衛の指揮管制システムの更新を含んでいる。

 大統領がEPAAを発表した際に、彼がミサイル防衛に関するロシアの協力を歓迎したことに留意することは重要である。我々はこの側面でも進展を得た。2010年11月にNATO・ロシア評議会(NRC)サミットで、NATOとロシアはミサイル防衛協力の機会を探る約束をした。ロシアとの効果的な協力は、我々の地域全体のミサイル防衛能力の全般的な有効性と能率を向上させることになると同時に、NATOとロシア両方に、より大きな安全保障をもたらすだろう。第一段階としてNATOとロシアは統合弾道ミサイル脅威評価を完了し、評議会が戦域ミサイル防衛協力を再開することに合意した。米国とロシアはまた、国務省や国防総省での数多くの高官作業部会を通じてミサイル防衛協力の議論を続けている。
 前に進むべく、政府は2009年9月に大統領が定めたビジョンを実施するため、連邦議会やNATO諸国と緊密に協議を続ける。我々はまた、弾道ミサイルによって引き起こされる脅威と、我々がその迎撃のために開発している技術の評価を精力的に続ける。合衆国は引き続き、新興の脅威への自在な対処を可能にする、対費用効果が高く、検証済のミサイル防衛に専心する。
 米国のミサイル防衛政策に関する詳細は、「弾道ミサイル防衛見直し」(BMDR)をご覧いただきたい。

(訳:ピースデポ)

原文:
http://romania.usembassy.gov/policy/missile_defense.html

くわしく

【NATOと新「冷戦」】  ルーマニアへの陸上イージス配備で新段階迎える欧州ミサイル防衛  軍拡と冷戦構造の再現を誘発

公開日:2017.07.15

 16年5月12日、米国がルーマニア南部のデべゼルに建設した地上配備型イージス・システム(以下、「AA=Aegis Ashore」)の運用が始まった。同システムは09年9月、オバマ政権がブッシュ政権時代のミサイル防衛(MD)計画を中止し、代わりに打ち出した「欧州段階的適応アプローチ(EPAA)」1の第2段階として、15年12月に建設を完了していた。主要装備は地上配備型イージスSPYレーダー、MK-41垂直発射装置(VLS)12基、スタンダードミサイルSM-3(Block IB)及び発射管制制御システムである。EPAAとデべゼル施設の概要を説明した在ブカレスト米国大使館のウェブページ2の全訳を4~5ページの資料1に示す。AAがEPAA第1段階でスペインのロタに配備された4隻のイージス艦及びトルコに配備された高性能レーダーに追加されることで、NATOの弾道ミサイル防衛システムが格段にグレードアップされる、と米国とNATOは宣伝している。
 5月13日には、ポーランドのレジコーヴォで新しいAAシステムが着工された。18年に運用開始が予定される同システムの仕様は基本的にデべゼルのものと同じであるが、発射装置はSM-3 Block IIAにも対応可能となる予定である、Block IBよりも広い迎撃範囲を持つものとされるBlock IIAは、現在日本と米国が共同開発中である。IIAの配備により、NATOのMDシステムは、欧州全土をカバーすることになるとされる3。同システムの建設にはデンマーク、ドイツ、オランダも資金を拠出する。フランスは、同システムの指揮・管制システムへの信頼性の検証が完了するまで出資を留保中である4
 プーチン・ロシア大統領は13日、これらMDシステムの配備によって「戦略システムがバランスを失い、あらたな軍拡競争の引き金になる」と運用開始を非難した。また、ロシアは艦上配備システムを原型とするAAの発射装置が「本来は、中距離巡航ミサイル・トマホークの発射用であり、簡単にそのようなミサイルの発射用に改造することができる」と指摘、同システムの配備自体が1987年のINF条約5違反であるという従来の主張を繰り返した。このようなMD批判は、7月1日のロシア・フィンランド首脳会談後の記者会見においても繰り返された(5ページの資料2に抜粋訳)。これに対してNATOは、「地政学的にも物理的にも、NATOのシステムでロシアの大陸間弾道ミサイルを撃墜することは不可能」である、さらに、トマホーク発射装置への転用の可能性は技術的にありえない、と反論している。
 このように、5月のMD施設の運用開始は、ロシアとNATOの関係をより悪化させる要因となった。7月8~9日に開催された、NATOワルシャワ・サミットにおいても、ロシアへの批判と警戒が表明された。同サミットのコミュニケ6は、14年9月のウェールズ・サミットで合意された「即応行動計画(RAP)」、「NATO即応部隊(NRF)」の即応態勢向上と規模拡大、「高度即応統合任務部隊(VJTF)」の拡充などの意義を再確認した。
 6月10日から10日間にわたって、NATO軍はポーランドにおいて大規模な共同演習「アナコンダ2016」を行った。同演習は陸軍を中心に3万1,000人の兵力が参加する冷戦終結後最大規模の演習であり、ロシアからは攻撃的行動と解釈される可能性をはらむものであったことをNATOの軍人も認めている7
 NATOは自らの軍の態勢は「本質的に防衛的なもの」(ワルシャワ・サミット声明)であると強調する。しかし、このような即応部隊の編制や共同作戦演習を含む文脈に置かれた時、MDが文字通りの「防衛的」兵器システムであるという説明には全く説得力はない。

ロシアのINF条約違反も誘発

 米ロの間にわだかまるINF条約「不履行」問題にも、AAシステムの配備と活性化は影を落としている。
 ロシアがINF条約に違反する地上発射巡航ミサイル(GLCM)、地上発射弾道ミサイルを取得しようとしているとの情報を米情報部が掴んだのは、08年とされているが、米国務省とロシア外務省がこの問題を初めて議論したのは13年のことであった。米国務省は、2014年の「コンプライアンス・レポート」8に初めてこれを記載し公式に問題化したが、ロシアは否認しつづけている9。ロシアの条約違反の動機には次の要因が含まれると米政府は分析している。①条約締結当時に比べ中距離ミサイルを保有する国が増加した(中国、イラン、パキスタン)にもかかわらず、条約が2国に限られているのは不公平であると考えた(事実、米ロは共同でINF条約の多国間条約化を国連に提案したが受け入れられなかった経過がある)。②EPAAによるMDシステムの欧州配備を脅威と感じ、それらの施設を射程に収めうるミサイルが必要であると考えた10。すなわち、東欧へのMDシステム配備がロシアの条約違反を誘発していることを米国政府自身が認めているのである。

新しい冷戦構造も誘発

 6月26日、中国の習近平国家主席とプーチン大統領は北京で会談し、「世界の戦略的安定を強化するための中ロ共同声明」に署名した11。共同声明は「世界的な戦略的安定性に影響する否定的要因」に対する懸念を表明し、「ある国々もしくは政治的―軍事的同盟が、国際問題に対して、武力行使もしくは行使の威嚇により自らの利益を守るために軍事及び関連技術における優位を追求している」と述べた上で、「対ミサイルシステムの世界中への一方的配備」として「AAシステムの欧州配備」と「高高度防衛ミサイル(THAAD)」を例示して非難した。
 米国が主導するMDによって、冷戦時代に回帰するかのような2陣営の対立構造が作り出されているのである。(田巻一彦)


1 本誌338号(09年10月15日)及び422号(13年4月15日)参照。
2 在ブカレスト米国大使館「欧州におけるミサイル防衛の実施」(16年5月11日)。
3 キングストン・ライフ「ルーマニアのミサイル防衛が活動開始」、「アームズ・コントロール・トゥデイ」、16年6月号。
www.armscontrol.org/ACT/2016_06/News/Romania-Missile-Defense-Site-Activated
4 同上。
5 「中距離及び準中距離ミサイルの廃棄に関するアメリカ合衆国とソビエト社会主義共和国連邦との間の条約」(87年12月8日署名、88年6月1日発効)。射程距離が500kmから5,500kmまでの範囲の地上発射型弾道ミサイルと巡航ミサイルの全廃を義務づけている。
6 www.nato.int/cps/en/natohq/official_texts_133169.htm
7 「ガーディアン」電子版、16年6月6日。
8 正式名称は「軍備管理、不拡散及び軍縮条約もしくは誓約の遵守と履行」(2014年版)。
www.state.gov/t/avc/rls/rpt/2014/
9 経過については、米議会調査サービス報告書「ロシアによるINF条約の履行:背景及び議会の課題」(16年4月13日、R43832)に詳しい。
10 同上。
11 「人民網」電子版、16年6月26日。

くわしく

<資料2>9.19「6か国協議共同声明」(抜粋訳)

公開日:2017.07.15

2005年9月19日、北京
前文(略)
1. 6者は、6か国協議の目標は、平和的な方法による、朝鮮半島の検証可能な非核化であることを一致して再確認した。
 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は、すべての核兵器及び既存の核計画を放棄すること、並びに、核兵器不拡散条約及びIAEA保障措置に早期に復帰することを誓約した。
 アメリカ合衆国は、朝鮮半島において核兵器を持っていないこと、及び、朝鮮民主主義人民共和国に対して核兵器または通常兵器による攻撃または侵略を行う意図を持っていないことを確認した。
 大韓民国(南朝鮮)は、その領域内に核兵器が存在しないことを確認するとともに、1992年の朝鮮半島の非核化に関する共同宣言に従って核兵器を受領せず、かつ、配備しないとの誓約を再確認した。(後略)
2~6.(略)

(訳:ピースデポ)

くわしく

<資料1>朝鮮半島の非核化に関する共同宣言(抜粋訳)

公開日:2017.07.15

1992年1月20日署名
2月19日発効
前文(略)
1. 南と北は、核兵器の実験、製造、生産、持ち込み、保有、貯蔵、配備、使用をしない。
2. 南と北は、核エネルギーを平和目的のみに使用する。
3. 南と北は、核再処理施設とウラン濃縮施設を保有しない。
4. 南と北は、朝鮮半島の非核化を検証するために、相手側が選定し双方が合意する対象に対して、南北核統制共同委員会が規定する手続きと方法で査察を実施する。
5、6.(略)
署名者(略)

(訳:ピースデポ)

くわしく

朝鮮半島非核化協議  米朝関係、「経済制裁」で途絶  北は朝鮮半島非核化の条件を提案 ――変化の芽をとらえ、「非核兵器地帯」に向かう交渉を

公開日:2017.07.15

米国による金正恩国務委員長らへの経済制裁決定に抗議して、朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)は米国との「戦争状態」を宣言、公式外交ルートを閉鎖した。だが、見落としてならないのは、DPRKがその直前、米韓に非核化協議前進のための条件を提示していたことである。米韓と日本は、これをDPRKとの交渉の新次元を開く契機と考えるべきだ。オバマ政権は「先行不使用」宣言の検討を始めた。日本からも声を上げようではないか。朝鮮半島の緊張を「先行不使用」に反対する理由にしてはならない。求められるのは対話と交渉による非核化である。


米「経済制裁」で外交チャンネル途絶

 16年7月6日、米国はDPRK政府による人権抑圧を理由に、金正恩国務委員長らを経済制裁対象に加えると発表した。7月7日、DPRKはただちに外務省声明を発し、制裁は宣戦布告に等しいと非難、米国を「戦争法の対象として扱う」と宣言した。さらに7月10日には、公式外交チャンネルを遮断すると通告した。米・DPRK関係は近年最悪の状況に立ち至っている。

DPRKの「非核化」5項目提案

 「制裁」を巡る緊迫したやりとりの直前に、DPRKが非核化協議の前進につながりうる提案を行っていたことは、ほとんど報道されていない。7月6日に発表された政府声明「『北の非核化』の詭弁を非難する」(以下「7.6声明」)で、DPRKは朝鮮戦争「休戦協定」を終結し「平和協定」を締結することを再度提案するとともに、「非核化協議」に前向きに応じるための次の5つの条件を提示した:
(1) 朝鮮半島のすべての核兵器の存在を公表すること。
(2) 韓国にあるすべての核兵器及び核基地を検証可能な形で撤去すること。
(3) 朝鮮半島及びその近傍に核兵器を配備しないこと。
(4) いかなる場合もDPRKに核兵器による威嚇を行わないこと。
(5) 核兵器を使用する権限のある部隊すべての韓国からの撤退を宣言すること。
 「7.6声明」は、13年以来経済建設と核開発を同時に推進する「並進路線」をとっているDPRKが、経済建設に比重を移そうとしていることの表れであった。米国の「経済制裁」は対話再開の好機を逃す、大きなミスであった。

「7.6声明」は非核化協議を前進させうる

 「声明」の5項目のうち、(5)を除く4項目は、1992年の「朝鮮半島非核化のための南北共同宣言」(資料1)、「第4回6か国協議」における「9.19共同声明」(資料2)などですでに合意されている。 
 DPRKは米ミサイル防衛システム(THAAD:高高度防衛ミサイル)の韓国配備決定に反発、対抗措置を表明しているので、新たな挑発が行われる可能性は否定できない。核実験場の動きが活発化しているとの情報もある1。しかし「7.6声明」は、互いに歩み寄ることを提案して、具体的な協議に道を開きうる要素があることは間違いない。米国が「制裁」で犯したミスを早期にカバーすることが前提となるが、北東アジアの平和と安全保障の根本的解決の第一歩として、私たちは同声明を「北東アジア非核兵器地帯」実現に向けて前進する好機ととらえるべきであろう。

「北東アジア非核兵器地帯」を目指そう

 私たちが、もっとも現実的で実現可能性が高いと考える「北東アジア非核兵器地帯」は次のような要素を持つ:
1) 韓国、DPRK、日本の3か国が非核国として非核兵器地帯を構成する。前記の「南北共同声明」は韓国とDPRKの加盟の基礎となり、そして日本にとっては「非核三原則」と「原子力基本法」がこの基礎となりうる。この3か国に、すでに「非核兵器地帯地位」を確立しているモンゴルが加わればより望ましい。
2) 地域に関わりの深い3つの核兵器国(米国・ロシア・中国)が、非核兵器地帯を形成する3か国に対する核攻撃やその威嚇を行わないと誓約する。これを「法的拘束力のある消極的安全保証」と呼ぶ。
 この構想は、96年に梅林宏道が提案2、04年にはピースデポが韓国NGOなどの協力を得て「モデル『北東アジア非核兵器地帯』条約案」3を起草した。また、12年から15年にかけて長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)によって構想実現の「包括的プロセス」の研究が行われた4

核「先行不使用」の反対理由にするな

 おりしも、オバマ米大統領は核兵器の「先行不使用」5を宣言することの検討を始めた6。この政策変更は「非核兵器地帯」で求められる「消極的安全保証」の基礎となる。日本政府内には抑止力が低下するとして、「先行不使用」宣言への異論が多いと伝えられる。私たちは、被爆国として、地域と世界の非核化を先導するべき責任に背を向けるこの姿勢を強く批判し、声を上げねばならない。(田巻一彦)
ピースデポは、現在「北東アジア非核兵器地帯」への支持拡大のため、2つのキャンペーンに取り組んでいる。「宗教者キャンペーン」と「自治体首長キャンペーン」である。詳細はピースデポ・ウェブサイト(www.peacedepot.org/theme/nwfz/list1.htm)をご覧いただきたい。


1 「北朝鮮、核実験場入口の活動を活発化―目的は不明」、16年7月11日「38ノース」ウェブサイト。http://38north.org/
2 「INESAPブレティン」第10号、1996年8月。
www.inesap.org/sites/default/files/inesap_old/bulletin10/bul10art03.htm
3 www.peacedepot.org/theme/nwfz/model-nwfz.html
4 研究成果は、提言「北東アジア非核兵器地帯設立への包括的アプローチ」(15年3月)として公表されている。www.recna.nagasaki-u.ac.jp/recna/bd/files/Proposal_J_honbun.pdf
5 「ノー・ファースト・ユース」。「先制不使用」とも訳されるが、「核兵器を先に使わない」という意味なので「先行不使用」が適当である。
6 「ワシントン・ポスト」、16年7月10日。

くわしく