核兵器・核実験モニター バックナンバー

【日誌】核・ミサイル/沖縄(16年11月21日~12月5日)

公開日:2017.04.13

DPRK=朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)/GSOMIA=軍事情報包括保護協定/MD=ミサイル防衛/MOX=ウラン・プルトニウム混合酸化物/PKO=(国連)平和維持活動

●11月22日 原子力規制委、仏原発で強度不足の疑いがある鋼材が使われていた問題で、国内で強度不足の可能性はないと判断。
●11月22日 ベトナム政府、同国南部に建設予定の日ロが受注していた原発計画を資金難と住民の反対により中止。
●11月23日 日韓政府がGSOMIAに署名。
●11月24日付 オバマ米政権、次期大統領選でのトランプ氏当選を受け、核兵器の先行不使用宣言の見送りを決定。
●11月24日 松井広島市長が岸田外相を訪問。国連・核兵器禁止条約決議への日本の反対に遺憾を表明し、禁止条約交渉の主導を求める首相宛要請書を手交。
●11月25日 安倍首相、北方領土へ地対艦ミサイルを配備したロシアに対し遺憾の意を伝えたと参院本会議で明かす。
●11月25日 原子力規制委、使用済核燃料再処理施設とMOX燃料加工工場の防災対策重点区域をそれぞれ半径5km、1kmに決定。
●11月27日 政府、MDシステム強化に向けた約1,880億円を含む16年度第3次補正予算案編成方針を固める。
●11月27日 スイスで2029年までに脱原発する提案を国民投票で否決。
●11月28日 日中政府が北京で外交防衛幹部による安保対話。双方の安全保障や防衛交流について意見交換。
●11月29日付 経産省、東電福島第1原発の事故処理に22.6兆円を要すと試算。他の大手電力や新電力にも費用負担させる方向。
●11月29日 東京で日越国防政策対話。海上安全保障の重要性と、引き続き協力を進める必要性への認識で一致。
●11月29日 チェルノブイリ原発で石棺を覆い放射性物質の拡散を防ぐ構造物が完成。欧州復興開発銀行が資金拠出。
●11月30日 国連安保理、核実験強行のDPRKへの追加制裁決議を採択。DPRKの石炭輸出総額総量を明示し、核実験を続ければ国連加盟国特権を剥奪する条項を設ける。
●11月30日 自衛官の母親が、駆けつけ警護、宿泊地共同防衛は違憲として南スーダンPKO派遣差止め訴訟を札幌地裁に起こす。
●12月1日 三反園鹿児島県知事、原発稼働可否の決定権限は自分にないと議会で発言。8日予定の川内原発1号機再稼働に関して。
●12月1日 東電、福島第1原発事故による農林業の損害賠償について、19年末まで3年間延長する方針を福島県などに示す。
●12月2日 オバマ米大統領、中国企業による独半導体製造装置メーカーの米子会社買収を禁止する大統領令を発出。
●12月3日付 ウクライナ軍がクリミア半島近くで中距離地対空ミサイルを試射。ロシアは艦船を派遣し、迎撃態勢を示す。
●12月5日 韓国国防部、3兆9千億円相当の17年度国防予算が確定と発表。今年比4%増。
●12月5日 経産省、新電力にも原発による電力の利用を促す方針を示す。

沖縄

●11月21日 県議会軍特委、東村・高江区を視察。仲嶺区長・伊集村長と意見交換。
●11月21日 翁長知事、全国知事会研究会で米軍基地負担訴え。山田知事会長、「全国知事会の共通課題として議論」と述べる。
●11月21日 辺野古違法確認訴訟の中立・公正な審理求め、福岡高裁那覇支部前で集会。「オール沖縄会議」主催、900名が参加。
●11月22日 翁長知事、普天間飛行場を視察。佐喜真市長が同行し現状を説明。知事、「早期返還の思いは同じ」と答える。
●11月24日付 宜野湾市、14年西普天間地区先行取得に係る地権者説明会で「返還後、評価額下がる」と説明。
●11月24日 北部訓練場ヘリパッド建設問題。工事差止め求める住民らの仮処分申し立て審理終結。那覇地裁、12月6日にも判断。
●11月24日 石垣市議会、機動隊員による差別発言に対し抗議意見書を可決。発言は「不適切」としながらも、「県民への差別ではない」と言及。
●11月24日 翁長知事、沖縄関係予算満額確保を求め首相官邸・自民党税制調査会幹部などに要請行動。12か所18人と会談。
●11月25日 「政府・沖縄県協議会」会合。県、シュワブ陸上部の一部工事再開容認。安慶田副知事、「埋め立てと関係せずと判断」。
●11月28日 翁長知事、北部訓練場ヘリパッド建設について「4千haの返還に異議を唱えるのは難しい」「苦渋の選択」と述べる。
●11月29日 翁長知事、ヘリパッド建設に関する一連の発言を「建設容認ではない」と説明。「報道は不本意」と述べる。
●11月29日 沖縄県警、「沖縄平和運動センター」を捜索。威力業務妨害の疑いで4人を逮捕。シュワブゲート前テントなども捜索。
●11月29日 日本ジャーナリスト会議、北部訓練場ヘリパッド建設現場での取材妨害問題を調査。一時拘束の記者らと面談。
●11月30日 第2次普天間爆音訴訟団、17日の一審判決を不服とし控訴。
●12月1日 普天間騒音被害訴訟控訴審判決。一審同様、国へ約9億5千万円の賠償命じる。米軍機墜落の不安・恐怖も損害認定。
●12月2日付 沖縄県警、燃料費予算逼迫。県外機動隊投入で執行額急増、年度内3700万円不足の見込み。他費目からの流用検討。
●12月4日付 米軍、北部訓練場で麻薬密輸対応訓練。東村議らの視察団に対し説明。日米安保条約逸脱の可能性も。
●12月4日 若宮防衛副大臣、東村・国頭村両村長と会談。北部訓練場の返還条件であるヘリパッド移設に理解求める。

くわしく

【資料】南スーダンPKO国会論戦 ――日本政府、「参加5原則は守られている」   (16年10~11月の衆参の委員会議事録より、関連の政府答弁を抜粋)

公開日:2017.04.13

今年7月上旬、現地首都ジュバではキール大統領派とマシャール第一副大統領(当時)派が大規模な戦闘を行い、民間人を含む270人以上の死者を出した。このような状況の中で日本政府は、10月25日、PKO派遣の17年3月末までの5か月間延長を決め、11月15日には、駆けつけ警護、宿営地の他国との共同防護の新任務を含む実施計画を閣議決定した。11月21日から部隊が段階的に現地に入っている。新実施計画は12月12日から適用される。ここでは、PKO参加5原則に関連する政府答弁を紹介する。(出典:国会会議録検索システム。引用部分の強調はピースデポ)

270人以上が死亡しても「戦闘」ではなく「衝突」

答弁:「(7月上旬の事案について)武器を使用して人が亡くなる、さらには物が損壊するという事態は生じましたが、(日本政府はマシャール派を国、国に準ずるものと認定しないので)それは法的(周辺事態法、PKO法)な意味における戦闘行為ではなく、衝突であるというふうに思います。」
(稲田防衛大臣。10月11日参院予算委員会。質問者は民進党・大野元裕議員。)

「戦闘」と「衝突」はどう違う?

答弁:「(前略)政府としては、一般に、実力を用いた争いが我が国のPKO法における武力紛争に該当するか否かは、今御説明のとおり、事案の態様、当事者及びその意思等を総合的に勘案して個別具体的に判断するということにしております。このうち、事案の態様でございますが、これは、ある実力を用いた争いが散発的、偶発的なものであるか否かということでございます。また、当事者とは、当該争いの主体が系統立った組織性を有しているか、また、支配が確立されるに至った領域を有しているかといったことでございます。意思とは、当該争いを起こした主体が事案の平和的解決を求める意思を有しているか否かということでございます。」(前後で「マシャール派を含む争いは散発的で、同派は系統立った組織性と支配を確立した領域を有さず、平和的解決を求める意思を有するので、紛争当事者にあたらない。よって7月の事案は戦闘行為ではなく衝突である」との趣旨の説明。)
(宮島昭夫内閣府国際平和協力本部事務局長。10月28日衆院内閣委員会。質問者は民進党・大串博志議員。)

「支配地域」がないので武力紛争ではない

質問要旨:政府は「マシャール派には支配が確立した領域がないのでPKO参加5原則の1.が満たされている」と説明している。2月の第十次要員の家族説明資料ではマーシャル派の「支配地域」と書かれていたのに、7月の事案後に発行した資料で「支配地域」の表現が削除されているのはなぜか。
答弁:「第十次要員の家族説明会資料の当該ページ(16年2月1日付)は、当時の反政府勢力の活動が活発な地域が自衛隊から[原文ママ]活動するジュバとは地理的には離れているということを示すために作られたものでありましたが、現地の報道等各種情報を引用し、現地の情報が、各種報道が使っているところの支配地域との表現を用いたわけでありますが、しかしながら、南スーダン情勢に関して隊員家族の間に誤解を生じかねない不正確な記述でもありました。そのため、陸幕を通じて資料の修正を指示し、第十一次要員の家族説明会資料からは修正した資料(16年8月1日付)を使用しているところでございます。(後略)」
(稲田防衛大臣。11月22日参院外交防衛委員会。質問者は共産党・井上哲士議員。)

外国軍隊は「駆けつけ警護」の対象外

質問要旨:外国の軍隊は駆けつけ警護の対象か。
答弁:「(前略)外国の軍隊ということになりますと、それは、みずから、みずからの生命、身体を保護する能力を備える者であるということから、南スーダンにおります自衛隊の部隊は、何度も申しますけれども、治安維持活動、安全確保業務を行っているものではなく、あくまでも施設部隊、道路をつくったり施設をつくったりしている部隊が、人道的見地から、緊急の要請を受けて、そしてその対応できる範囲で行うものでございますので、通常は、外国の軍隊は想定されないということでございます。」
(稲田防衛大臣。11月15日衆院安全保障委員会。質問者は自民党・大西宏幸議員。)
      (まとめと中見出し:山口大輔)

PKO参加5原則
1. 紛争当事者の間で停戦合意が成立していること。
2. 国連平和維持隊が活動する地域の属する国及び紛争当事者が当該国連平和維持隊の活動及び当該平和維持隊への我が国の参加に同意していること。
3. 当該国連平和維持隊が特定の紛争当事者に偏ることなく、中立的立場を厳守すること。
4. 上記の原則のいずれかが満たされない状況が生じた場合には、我が国から参加した部隊は撤収することができること。
5. 武器の使用は、要員の生命等の防護のための必要最小限のものを基本。受入れ同意が安定的に維持されていることが確認されている場合、いわゆる安全確保業務及びいわゆる駆け付け警護の実施に当たり、自己保存型及び武器等防護を超える武器使用が可能。      (出典:外務省サイト「PKO政策Q&A」)

くわしく

PSNA共同議長による見解及び提言(仮訳)

公開日:2017.04.13

核兵器禁止へのブレークスルーの可能性

 2016年10月27日、第71回国連総会第一委員会において歴史的な決議(L.41)が採択された。決議は、「核兵器の完全廃棄に繋がるような、核兵器禁止のための法的拘束力のある文書を交渉する国連の会議を2017年に開催することを決定」したものである。123カ国(核不拡散条約(NPT)締約国である非核兵器国ならびに朝鮮民主主義人民共和国(DPRK))がこの歴史的決議に賛成したことを我々は歓迎する。他方、4つの核兵器国(米国、ロシア、英国、フランス)のみならず、NATO諸国、韓国、日本といった拡大核抑止の下にあるほとんどの国々(棄権票を投じたオランダを除く)がこの決議に反対したことは極めて遺憾である(38カ国が反対、16カ国が棄権)。我々は、これらの国々が決議を支持し、核兵器を禁止する条約の交渉に参加することを強く求める。

北東アジア:行き詰まり、そして交渉への可能な手掛かり

 北東アジア地域においてモンゴルの一国非核兵器地位が定義され確立されたことは、関係諸国の意向に十分配慮しつつも、政治的、外交的手段によって核兵器をめぐる安全保障問題に成功裏に対処できるということの明確な手本である。
 このような好例がある一方で、行き詰まりは継続し、悪化さえしている。2016年に、DPRKは3年ぶりに4回目及び5回目の核実験を行った。また、核搭載可能な弾道ミサイルに関しても多くの実験が行われてきた。これらの実験は、国連安保理決議に対する明確な違反であり、我々は、DPRKの核兵器計画の進展に対し強い懸念を表明する。
 また、双方から軍事力を誇示する対応が示されている。具体的には、恒例の米韓合同軍事演習の強化、米国本土及びグアムからの米戦略爆撃機の飛来作戦、朝鮮人民軍による上陸訓練及び上陸阻止訓練などがあげられる。韓国国土への高高度防衛ミサイル(THAAD)システムの配備に関する米韓合意は、朝鮮半島を超えて地域全体の緊張を高めている。
 北東アジアの特殊な状況はまた、2012年の米朝の「うるう日合意」以来、核問題におけるこのような行きづまりや後退を乗り越えるための、DPRKを関与させる二国間、三カ国間、あるいは多国間の公式の協議の場が一度ももたれなかったという事実に表れている。米国によるいわゆる「戦略的忍耐」政策は機能しておらず、6カ国協議参加国のいずれもこの行き詰まりの打開に向けた主要なイニシアティブをとっていない。
 その一方で、DPRKの側からは米国に交渉を求める重要な呼びかけがなされてきたことに我々は注目している。2015年1月、DPRKは、米国が韓国及びその周辺における合同軍事演習を一時中止するのであれば、それと引き換えに、核実験の一時中止などの呼応した措置をとる用意があるとの提案を行った。こうした呼びかけは今年一月にも繰り返され、「米国が合同軍事演習を中止すれば、その見返りとして核実験の中止と平和協定の締結を行うということを含め」、すべての提案が引き続き有効であるとDPRKは述べた。
 さらに、2016年 7月 6日、DPRKは 5項目からなる具体的条件を示した1。5項目のうち4項目は米国が以前に同意した内容であった。加えて、DPRKは、もしこれらの条件が満たされれば、朝鮮半島の非核化の実現に向けた決定的な突破口が開かれるであろうと述べた。これらの条件は検討に値すると我々は考える。地域における共通の平和と安全保障のスキームの発展をめざした地域的協議にDPRKを関与させるべく行動を起こさないことは、核能力増強のためのさらなる時間的猶予をDPRKに与えることになるであろう。

包括的アプローチの必要性

 DPRKを関与させるためには、問題を核・ミサイル問題のみに限定することは不可能であり、朝鮮戦争を終結させる和平条約や、非核兵器国としてのDPRK、韓国、日本に安全の保証を供与する北東アジア非核兵器地帯(NEA-NWFZ)の設置を含めたより包括的なものに拡大されるべきであることはいまや明らかである。我々は、北東アジアの安全保障に関する様々な問題を議論するプラットフォームを設置することを勧告する。このようなフォーラムが存在しないことは、北東アジアの既存の安全保障枠組みにおける弱点の一つである。我々は6カ国協議のすべての参加国に対し、北東アジアにおける現在の憂慮すべき状況を打開するために新たな努力を傾注し、新ラウンドの協議を開始するよう求める。
 我々は核兵器国の兵器近代化計画、ならびに弾道ミサイル防衛の配備といった地域における軍備競争を激化させるような活動について懸念しており、これらの活動を抑制するよう核兵器国に求める。
 とりわけ我々は、ドナルド・トランプ次期米大統領に対し、核兵器が地域と世界に及ぼしている真の脅威に対する認識をいっそう高め、軍事的解決のみを追求するのではなく、政府間ならびに市民社会レベルでの対話を通じて、核政策の新しい選択肢を慎重に検討していくことを強く求めるものである。もしそのような慎重な検討がなされるのであれば、米新政権の誕生は、外交面でのブレークスルーの可能性に向けた新たな機運醸成の機会となり得る。
 また、我々は、韓国と日本が特別の役割を担うことを求めるものである。上述した核兵器の法的禁止に関する国連総会決議に至る近年の議論の中で、拡大核抑止に依存する非核兵器国が担うべき役割が強調されてきた。韓国と日本は、米国の拡大核抑止の強化を要求するべきではなく、むしろ、地域における核の脅威に対しては、NEA-NWFZの設立に向けた包括的アプローチのような外交的プロセスによる解決が最善策であると身を持って示すべきである。こうしたアプローチは核兵器の役割を低減しグローバルな核軍縮の前進に貢献するものとなる。さらに、既存の大量備蓄に加えてさらなるプルトニウムを分離する日本の計画は、中国及び韓国における不必要かつ危険なプルトニウム分離に対する反対を損なうものである。

モートン・H・ハルペリン
(オープンソサエティ財団上級顧問)
マイケル・ハメル=グリーン
(ビクトリア大学メルボルン校名誉教授)
ムン・ジョンイン(文正仁)
(アジア太平洋リーダーシップネットワーク(APLN)議長、延世大学教授)
梅林 宏道
(RECNA前センター長、長崎大学客員教授)


1 朝鮮中央通信(2016年7月6日)。5点は以下の通り。(1)韓国にあるすべての米核兵器について公表しなければならない、(2)韓国にあるすべての核兵器を解体しその検証を行わなければならない、(3)米政府は韓国及びその周辺に攻撃的核兵器を配備しないことを保証しなければならない、(4)米国は北朝鮮に核兵器を使用しないことを誓約しなければならない、(5)米政府は韓国から核兵器使用の権限を有するすべての軍隊を撤退させる意図を宣言しなければならない。

くわしく

PSNAメンバー一覧

公開日:2017.04.13

モートン・H・ハルペリン ※
 (オープンソサエティ財団上級顧問、米国)
マイケル・ハメル=グリーン ※
 (ビクトリア大学メルボルン校名誉教授、豪州)
ジョンイン・ムン ※
 (アジア太平洋リーダーシップネットワーク(APLN)議長、  延世大学教授、韓国)
梅林 宏道 ※
 (RECNA前センター長、長崎大学客員教授)
ジャルガルサイハン・エンクサイハン
 (モンゴル大使、ブルーバナー代表)
フランク・フォン・ヒッペル
 (プリンストン大学教授、米国)
黒澤 満
 (大阪女学院大学教授)
ジェジョン・ソ
 (国際基督教大学教授、韓国)
アレキサンダー・I・ニキーチン
 (モスクワ国際関係大学教授、ロシア)
ディンリ・シェン
 (復旦大学国際研究所副所長、中国)
朝長 万左男
 (日本赤十字長崎原爆病院名誉院長、長崎大学客員教授)
鈴木 達治郎
 (RECNAセンター長、パグウォッシュ会議評議員)
ピーター・ヘイズ
 (ノーチラス研究所所長、豪州)
マーク・スー
 (ベルリン自由大学教授、パグウォッシュ会議評議員、韓国)
ツゥンチャン・パン
 (APLNメンバー、パグウォッシュ会議評議員、中国)

くわしく

【資料】北東アジア非核兵器地帯設立を促す「専門家パネル」が発足   ――禁止条約交渉との連動も視野にワークショップなど開催へ   

公開日:2017.04.13

政策提言などを通じて北東アジア非核兵器地帯の設立を促進することを目的に、日韓米中ロなど7か国の専門家からなる「北東アジアの平和と安全保障に関するパネル」(PSNA)が11月20日、発足した。構成員は核軍縮に関わる政策立案者、研究者、市民運動関係者ら15人。そのうち、本誌主筆の梅林ピースデポ特別顧問を含む4人が共同議長を務める。PSNAは今後、まずは5年間にわたり、ワークショップ開催などを通じ議論を深めていく方針。来年始まる核兵器禁止条約交渉との連動も視野に入れる。以下にミッション・ステートメント、構成員一覧、そして共同議長による「見解及び提言」を掲載する。(編集部)

くわしく

<資料5>広島・長崎両市長の声明

公開日:2017.04.13

内閣総理大臣 安倍 晋三 様
外務大臣 岸田 文雄 様 (各通)

インドとの原子力協定交渉について(要請)
 今月中旬に予定されている日印首脳会談において、我が国とインドとの間での原子力協定の署名に向けた動きがあるとの報道がなされています。
 この協定は、「核兵器を廃絶する上で障害となりかねない」という被爆者を始めとする多くの市民の考えに反するものであり、「核物質や原子力関
連技術・資機材の核兵器開発への転用の懸念を生じさせる」ものでもあります。
 今、NPT体制については、核兵器保有国と非核兵器保有国が一丸となって、空洞化を招くことなく、その強化を図っていくべきときであり、日本政
府は、その橋渡し役を果たすべきときでもあります。
 インドに対しては、何よりも早期にNPT体制に加入することによって、核兵器開発につながらないように働き掛けていくべきであると考えます。
 日本政府におかれては、これまでも被爆地から繰り返し行ってきた協定締結に向けた交渉中止の要請を今一度、想起していただき、対処することを強く要請します。
 
 平成28年11月7日

広島市長 松井 一實

平成28年11月7日
外務大臣 岸田 文雄 様
長崎市長 田上 富久

インドとの原子力協定交渉の
即時中止について(要請)

 今月中旬に予定されている日印首脳会談において、我が国とインドとの間での原子力協定の署名に向けた動きがあるとの報道がなされています。
 核兵器を保有し、NPT(核不拡散条約)に未加盟のインドと原子力協定を締結することは、たとえ同国が原子力の平和的利用を表明しているとしても、核物質や原子力関連技術・資機材の核兵器開発への転用が懸念されます。
 また、NPT非締約国に対して非核兵器国として早期かつ無条件での加入を求めるなどNPT体制の堅持・強化を追求する立場を表明しながら、この協定に署名することは、自らがNPT体制の空洞化を招くことにもなりかねません。
 先月27日の国連総会第一委員会における核兵器禁止条約の交渉開始を求める決議案への反対に続く日本政府の一連の動きは、「核兵器のない世界」の実現を待ちわびる被爆者の思いに背くものであり、被爆地としては決して看過できません。
 日本政府におかれましては、今一度、一日も早い核兵器廃絶を願う被爆者の思いを真摯に受け止め、協定締結に向けた交渉を中止するよう強く要請します。

くわしく

<資料4>「日印原子力協定阻止キャンペーン2016」による抗議書

公開日:2017.04.13

2016年11月11日

内閣総理大臣 安倍晋三殿
外務大臣   岸田文雄殿

「日印原子力協力協定」署名 抗議書
 
 本日(2016年11月11日)、日印両首相は首脳会談を東京で開催、「原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とインド共和国政府との間の協定(以下、本協定)」に署名した。私たち「日印原子力協定阻止キャンペーン2016」は、両政府の蛮行に強く抗議する。
 本協定署名は、核廃絶へ向かう世界の流れに逆行し、「民衆の声、核廃絶への世界の願い」を踏みにじるもので、到底許されるものではない。
 2010年6月の交渉開始以来、本協定について、多くの問題が国内外より指摘されてきた。特に、核拡散防止条約(NPT)や包括的核実験禁止条約(CTBT)に加盟せず二度も核実験を強行したインドとの本協定は、原発輸出だけでなく、核兵器増産を許す内容である。本協定の署名は、日本がこれまで戦後一貫して堅持した「核廃絶とNPTを基本とする外交」を放棄することを意味する。
 広島・長崎両市長の11月7日付「要請文」の通り、両被爆地の人びとの怒りは強い。さらに、東電福島第一原発の被災避難の人たちも、事故収束なき状態での原発輸出を厳しく批判している。
 かねて私たちは、インドの原発反対・核兵器反対運動と協力し、交渉の即時中止を求め活動してきた。今後も日印運動の交流と連帯を強化し、国際支援を得て引き続き反対運動を展開する。
 本日を「日印原子力協定反対・世界同時行動デー」として、首相官邸前、大阪など国内各地、インドの輸入原発建設予定各現地(ジャイタプール、コヴァダ、クーダンクラム)、デリー、ムンバイなど各都市、さらにイギリス、アメリカ、ドイツにて大規模抗議集会を開催、抗議メッセージ発表を行う。
 世界の人びとは、安倍・モディー両首相による締結への決断を許すことはない。重ねて、本協定署名に抗議する。
 私たちは今後、国会の承認手続きにおける徹底した情報公開での慎重審議を求め、志しを共にする多くの衆参議員と協力し、「承認阻止」のために闘う。

日印原子力協力協定の締結反対!
日印原子力協力協定承認阻止!
「日印原子力協定阻止キャンペーン2016」 

くわしく

<資料3>インド外相の2008年9月5日付声明(抜粋訳)

公開日:2017.04.13

(前略)
 インドは、普遍的で、差別的でない、全面的な核兵器廃絶を長きにわたり確固として公約している。ラジブ・ガンジー元首相が1988年に国連に提出した核兵器のない世界へのビジョンは今も万民の共感を得ている。
(略)
 我々の民生用核計画は、国際的な不拡散体制を強化するものである。全面的な民生用核協力の開始は、インドにとっても世界にとっても良いことであると信じる。それは、世界的なエネルギー安全保障及び気候変動との取り組みの努力に対して、きわめて有益な影響を与えるであろう。
(略)
 我々は、自発的で一方的な核実験のモラトリアムを継続する。我々は、核兵器競争を含むいかなる軍備競争にも加わらない。我々はつねに、グローバルな責任を認識しつつ戦略上の自主性を堅持してきた。我々は核兵器を先制使用しないという政策を確認する。
 我々は、軍縮会議における、普遍的で差別的でない、検証可能な多国間の核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の交渉を妥結に導くために、他の国々とともに努力してゆくことを約束する。
 インドは非の打ち所のない不拡散の実績を有している。我々は、実効的で包括的な国家的輸出管理システムを持っており、それはもっとも高度な国際標準に合致するよう絶えず更新されてきた。これを明らかにしたのが2005年の「大量破壊兵器及び運搬手段(禁止)法」である。インドは、包括的な輸出管理立法措置とミサイル技術管理レジーム(MTCR)及びNSGガイドラインの遵守という両面から、核物質及び技術の保安のための必要な措置を段階的にとってきた。
 インドは、濃縮技術や再処理技術の移転を含め、機微な技術の拡散源とはならない。我々は、不拡散体制の強化を支持する。我々は、濃縮・再処理装置を保有していない国々にこれらの装置が広がることを制限するための国際的努力を支持する。我々は、国際社会と協力して不拡散という共通の目標のために努力する所存である。これに関連して、インドはトリウム燃料及び国際燃料バンクの設立に供給国として参画する意思がある。それはインドの利益にも合致する。
 インドは、IAEA の核保障措置システムが果たしている役割に大きな価値を見出している。インドはIAEAとの間で合意に達した保障措置協定の実質化のためにIAEAと協働してゆく所存である。民生用核施設に関する追加議定書に署名し、それを遵守するとの公約に従い、我々は保障措置協定追加議定書の早期締結実現に向けてIAEAと密接に協働している。
(訳:ピースデポ。強調は編集部)

原文:
  http://mea.gov.in/in-focus-article.htm?18806/Statement+by+External+Affairs+Minister+of+India+Shri+Pranab+Mukherjee+on+the+Civil+Nuclear+Initiative

初出(本誌313号、08年10月1日)より抜粋して再掲。

くわしく

<資料2>見解及び了解に関する公文  

公開日:2017.04.13

2016年11月11日、東京

1 本日署名された原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とインド共和国政府との間の協定(以下「協定」という。)に関連し、下名は、次のとおり記録する。
(i)日本側代表団の代表は、当時のインド共和国外務大臣プラナーブ・ムカジー氏が2008年9月5日に行った声明(以下「9月5日の声明」という。)が協定の下での両国間の協力の不可欠の基礎を成す旨述べた。
(ii)協定第14条の規定を実施するに当たり、日本側代表団の代表は、(i)に規定する基礎に何らかの変更がある場合には、日本国政府が同条に規定する権利を行使し、及び同条に定める手続を開始することができる旨述べた。
(iii)日本側代表団の代表は、9月5日の声明に違反するインドの行動は通常の状況からの深刻な逸脱とみなされることとなる旨述べた。そのような場合において、協定の適用を受ける核物質の再処理は、協定第14条9の規定に従って停止される。
(iv)日本側代表団の代表は、更に、そのような場合において、発電の中断がインドの経済に及ぼす悪影響についての補償及び契約上の義務の中断を理由とする損失についての補償に関するインドの請求に対し、日本国が協定第14条9に規定する協議を通じて異議を申し立てる権利を留保する旨述べた。
(v)インド側代表団の代表は、9月5日の声明をインド共和国政府が再確認する旨述べた。

2 前記については、両国の見解の正確な反映であることが了解される。

(署名 略)

くわしく

<資料1>原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とインド共和国政府 との間の協定(主文抜粋)  

公開日:2017.04.13

2016年11月11日、東京
第1条
 この協定の適用上、
(a)(略)
(b)「核物質」とは、次に規定する(i)原料物質又は(ii)特殊分裂性物質をいう。
(i)原料物質とは、次の物質をいう。
 ウランの同位元素の天然の混合率から成るウラン
 同位元素ウラン235の劣化ウラン
 トリウム
 金属、合金、化合物又は高含有物の形状において前記のいずれかの物質を含有する物質
 他の物質であって両締約国政府により合意される含有率において前記の物質の1又は2以上を含有するもの
 両締約国政府により合意されるその他の物質
(ii)特殊核分裂性物質とは、次の物質をいう。
 プルトニウム
 ウラン233
 同位元素ウラン233又は235の濃縮ウラン
 前記の物質の1又は2以上を含有する物質
 両締約国政府により合意されるその他の核分裂性物質
特殊核分裂性物質には、原料物質を含まない。
(c)~(j)(略)
第2条
1 平和的非爆発目的のための原子力の利用における両締約国政府の間の協力は、この協定の規定に従うものとする。(略)
2(略)[編注:協力の方法を規定]
3 2に規定する協力は、次の分野及び両締約国政府により合意されるその他の分野において行うことができる。
(a)適当な規制に従って行われる原子炉の設計、建設、運転のための補助的役務、保守活動及び廃止措置
(b)核燃料サイクルの全ての側面であって、(a)に規定する活動に関連するもの(核燃料加工並びに放射性廃棄物の処理及び管理を含む。)
(c)~(f)(略)
4、5(略)
第3条
1 この協定の下での協力は、平和的非爆発目的に限って行う。
2 この協定に基づいて移転された核物質、核物質ではない資材、設備及び技術、技術に基づく設備並びに回収され又は副産物として生産された核物質は、平和的目的以外の目的で使用してはならず、また、いかなる核爆発装置のためにも又はいかなる核爆発装置の研究若しくは開発のためにも使用してはならない。
第4条
1 この協定の下での協力は、日本国と機関[編注:IAEA]との間及びインド共和国と機関との間の関係する協定に従って両国について適用される機関の保障措置が適用されていることを要件として行う。
2、3 (略)
第5条
1 各締約国政府は、この協定に基づいて移転された全ての核物質及び回収され又は副産物として生産された核物質についての計量管理制度を維持する。
2(略)
第6条~第9条(略)
第10条
 この協定に基づいて移転された核物質、核物質ではない資材、設備及び技術、技術に基づく設備並びに回収され又は副産物として生産された核物質は、供給締約国政府の書面による事前の同意が得られる場合を除くほか、受領締約国政府の国の管轄の外(供給締約国政府の国の管轄内を除く。)に移転され、又は再移転されない。
第11条
1 この協定に基づいて移転されたウラン及びこの協定に基づいて移転された設備において使用され、又は当該設備の使用を通じて生産されたウランは、同位元素ウラン235の濃縮度が20パーセント未満である範囲で濃縮することができる。この協定に基づいて移転されたウラン及びこの協定に基づいて移転された設備において使用され、又は当該設備の使用を通じて生産されたウランの同位元素ウラン235の濃縮度が20パーセント以上になる濃縮は、供給締約国政府の書面による同意が得られた場合に限り行うことができる。
2 この協定に基づいて移転された核物質及び回収され又は副産物として生産された核物質は、この協定の附属書Bの規定に従い、インド共和国の管轄内において再処理することができる。
3(略)
第12条、第13条(略)
第14条
1 各締約国政府は、この協定の有効期間の満了前に、他の締約国政府に対して1年前に書面による通告を行うことによりこの協定を終了させる権利を有する。(後略)
2~8(略)
9 第11条の規定に基づく再処理は、この協定の附属書Bに規定する施設におけるこの協定の適用を受ける核物質の再処理の継続が自国の国家安全保障に対する重大な脅威を生じさせるおそれがある又は当該施設の防護に対する重大な脅威が存在するといずれか一方の締約国政府が判断する場合に限られる例外的な状況において、いずれか一方の締約国政府により停止される。(後略)
第15条、第16条(略)
第17条
1 この協定は、両締約国政府がこの協定の効力発生のために必要なそれぞれの国内手続を完了したことを相互に通告する外交上の公文を交換した日に効力を生ずる。
2 この協定は、40年間効力を有するものとし、その後は、いずれか一方の締約国政府がこの協定の有効期間の満了する日の遅くとも6箇月前までに他方の締約国政府に対し、外交上の経路を通じて、この協定を終了させる意思を書面により通告しない限り、自動的に10年間ずつ延長されるものとする。
3(略)

(署名 略)

附属書A (略)
附属書B インド共和国の管轄内にあるこの協定に基づいて移転された核物質及び回収され又は副産物として生産された核物質の再処理(略)

くわしく

日印、「核協力協定」に署名核ビジネスと軍事協力を「被爆国」の使命より優先した日本

公開日:2017.04.13

 「日印核協力協定」1(英文表題の訳として適切なので本誌はこのように呼ぶ。以下「協定」)は、前文と全17条の本文、2つの附属書から構成される。同時に「見解及び了解に関する公文」(以下「公文」)も署名された。資料1(2~3ページ)に協定の抜粋、資料2(3ページ)には「公文」の全文を示す2。

核兵器と原発の「同時拡散」

 「協定」交渉が始まったのは、2010年であった。この交渉には次のように国内外からの批判と懸念が表明されてきた。
 第1に、インドは核不拡散条約(NPT)にも包括的核実験禁止条約(CTBT)にも加盟せず、74年と98年に核実験を行い、核保有と軍拡を継続している。同国は、110~120発の核弾頭内にあるものを含めて、推定0.39~0.79トンの軍事用プルトニウムを保有している3のみならず、「核の三本柱」4の増強を進めている。「再処理」の包括的事前承認(第11条2)を含むインドとの核技術協力は、核拡散を追認・助長し核軍拡に手を貸すことに他ならない。
 第2に、先行する他の「協力協定」(13か国1機関)とも共通する問題だが、福島原発事故(11年)の原因究明も、被災者、被災地の補償と復興もなされない中で、国内の新設が止まっている原発を輸出することは、道義的に許されない。貧困や強権政治に呻吟しつつ、原発建設に反対しているインド民衆の現実を思えばなおさらである。
 「日印原子力協定阻止キャンペーン2016」(ピースデポも呼びかけ団体として参加)が発した抗議文と、広島、長崎市長による協定締結前の中止要請を資料4及び5(4~5ページ)に示す。

「ビジネスと軍事協力拡大」の論理が支配

 安倍政権が交渉を加速してきたのには次のような狙いがある。
 まず、政府と産業界は世界的な「インフラ需要の高まり」と市場獲得競争の激化を受けて、「官民一体の受注に向けた従来の取組を更に推進する」(「日本再興戦略2016」5)ために、大規模な原発建設計画を持つインドとの協定の早期締結を必要としている。また関連企業の国際的な合従連衡に伴い、米、仏などの原発輸出が日本企業の参加なしに実施不可能なケースが現実化しているという事情からも、協定締結が急がれている。
 他方、日印政府には、米国に同調して中国を牽制するために、軍事面での協力を強化するという動機が強く働いている。11月11日の首脳会談で合意された「共同声明」6は、両国の「長期的パートナーシップの永続的基盤」の相互提供を確認した。ここではエネルギー・インフラ面での協力と並んで、次のように軍事協力強化の方針が示された。「両首脳は、(略)安全保障・防衛分野における協力を一層強化する必要性を改めて表明するとともに、日印防衛装備品・技術移転協定及び日印秘密軍事情報保護協定という2つの防衛枠組み合意発効を歓迎した。」(「共同声明」第7節)
 このように「核協力」を支配するのは「エネルギー・インフラ・ビジネスと軍事協力」を軸とする日印の戦略的連携深化の論理である。インドの核技術の強化にパキスタンは神経をとがらせている。パキスタンの背後には中国がいる。「協定」は南アジアのパワーポリティクスに新しい不安定要因をもたらすであろう。

「核実験をすれば協力停止」は明文化されず

 安倍首相は、この協定は「インドを国際的な核不拡散体制に実質的に参加させる」ものだと話した(11月11日の共同記者会見)。その証左として首相が繰り返してきたのは「インドが核実験を行った場合には協力を停止する」との公約である。しかしこの公約は「公文」にも「協定」にも明文化されていない。
 まず、「公文」は「08年9月5日のムガジー・インド外相の声明」を「両国間の協力の不可欠の基礎」(1(i))と位置づけ、それに「何らかの変更がある場合」には日本が協力停止の権利を行使することができ(ⅱ)、インドが同声明に違反したならば、核物質の再処理は「(協定14条9に従って)停止される」(ⅲ)としている。(ⅱ)は核実験が協力停止の「理由になりうる」ことを示唆するものだが、(ⅲ)で日印いずれの側からもなしうる協力停止の対象は「再処理」に限られている。
 日本政府は、「核実験による協力停止」の公約を明文化する代わりに次のような方針を述べるだけである。「本協定は,終了を求める理由のいかんにかかわらず、書面による通告の日から一年で終了すると規定している[編集部注:第14条1]ことから、インドが核実験を行った場合には,我が国は,協定の規定に基づき,協定の終了につき書面による通告をインドに対して行い,その上で,本協定上の協力を停止する。」7
 ここで「公文」が引用する「インド外相の声明」とは、08年9月に核供給国グループ(NSG)8が、米印核協力協定を結ぼうとする米国の圧力に押されて、「NPT非締約国には核技術を輸出しない」という指針をインドに例外的に適用しないことを決める契機となった声明である(4ページ・資料3に抜粋訳)。この中で、外相が「核実験の一方的モラトリアムを継続する」と述べていることは事実だ。それに拘束力を持たせるためには、日印協定は「外相声明に違反した場合には協力を停止する」と明文化しなければならないはずだ。
 「協定」には他にも多くの問題がある。しかし何よりも重大なのは、日本が、「ビジネスと軍事協力拡大」という目的の前に「被爆国」としての使命と矜持を捨て去ろうとしていることだ。これは10月27日の「核兵器禁止条約交渉」決議への反対に通ずる、日本の歴史的使命への裏切りである。17年1月に始まる通常国会での「協定」承認を許してはならない。(田巻一彦)


1  「原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とインド共和国政府との間の協定」(Agreement between the Government of Japan and the Government of the Republic of India for Cooperation in the Peaceful Uses of Nuclear Energy)。
2 外務省「日印首脳会談」(16年11月11日)サイト。
     www.mofa.go.jp/mofaj/s_sa/sw/in/page3_001879.html
3 RECNA市民データベース。
  www.recna.nagasaki-u.ac.jp/recna/datebase
4 地上発射弾道ミサイル、航空機搭載核爆弾、潜水艦発射弾道ミサイル。インドの核弾頭・運搬手段の概要は本誌502-3号(16年9月1日)。
5 首相官邸ウェブサイト。www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/2016_zentaihombun.pdf
6 注2と同じ。
7 11月11日、野上内閣官房副長官の記者ブリーフにおける発言。注2と同じ。
8 核技術輸出国が形成する輸出管理のための緩やかな国際組織。48か国が参加(16年6月末現在)。

くわしく