核兵器・核実験モニター バックナンバー

【日誌】核・ミサイル/沖縄(17年4月21日~5月20日)

公開日:2017.09.14

ASEAN=東南アジア諸国連合/DPRK=朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)/EEZ=排他的経済水域/ICBM=大陸間弾道ミサイル/SACO=沖縄特別行動委員会/THAAD=高高度防衛ミサイル


●4月23日 朝鮮半島近海へ航行中の米海軍原子力空母カールビンソンと海自護衛艦2隻が西太平洋で数日間の共同訓練開始。
●4月25日 都内でDPRK核問題6者協議の日米韓首席代表者が会合。中ロに対DPRK圧力強化を求めることで一致。
●4月26日 広島平和記念資料館の東館が新装開館。本館は工事で閉鎖。「被爆再現人形」撤去。
●4月26日 米政権、国務・国防・国家情報の3長官共同声明で新・対北政策。オバマ戦略的忍耐路線を破棄、軍事攻撃も選択肢に含む。
●4月26日 米空軍、カリフォルニア州バンデンバーグ基地からICBMミニットマン3の発射実験。マーシャル諸島環礁付近に着水。
●4月29日 DPRKが西部北倉付近から北東方向に弾道ミサイル1発を発射も失敗か。韓国軍発表。
●5月1日 安保関連法に基づく「武器等防護」初任務のため海自護衛艦「いずも」が横須賀基地出港。房総沖~四国沖で米海軍の貨物弾薬補給艦を護衛(3日終了)。
●5月1日 トランプ米大統領、米通信社インタビューで、適切なら金正恩DPRK労働党委員長と会談すると語る。
●5月2日 韓国国防省、在韓米軍THAADの稼働を確認。当初予定を大幅前倒し。
●5月2日 ウィーンで20年NPT再検討会議第1回準備委が開幕。12日まで。(本号参照)
●5月3日 安倍首相、改憲求める集会へのビデオメッセージで20年に新憲法を施行したいと明言。9条に自衛隊の明記を追加とも。
●5月3日 米空軍、4月26日に続き同様のICBMミニットマン3発射実験。今年3回目。
●5月8日 安倍首相、米軍活動への影響を理由に「武器等防護は非公表」。衆院予算委で。
●5月9日 韓国大統領選。日韓「慰安婦」合意見直しと対北融和を掲げる文在寅氏が当選。
●5月10日 文韓国大統領、就任演説でDPRK核ミサイル問題に関し「必要ならワシントン、北京、東京、条件が整えば平壌にも行く」。
●5月10日 東電持株会社に福島第1原発廃炉費用積立を課す「原子力損害賠償・廃炉等支援機構法」改正法、参院本会議で可決成立。
●5月14日 DPRK、西部・亀城付近から東北東へ弾道ミサイル1発を発射。高度2千km超で約30分飛行。EEZ外の日本海に落下。
●5月15日 DPRK政府、前日の新型地対地長距離BM「火星12」発射実験が成功と発表。
●5月16日 日印核(原子力)協力協定の国会承認案が与党の賛成多数で衆院本会議通過。
●5月17日 関電、高浜原発4号機を再稼働。
●5月17日 米政府、イラン核合意による経済制裁解除を当面継続と発表。
●5月19日 イラン大統領選。現職ロハニ師が反米強硬派の対立候補を破り再選。
●5月19日 衆院法務委、「共謀罪」の趣旨を含む組織的犯罪処罰法の改正案を、野党(維新除く)反対の中、自公維の賛成多数で可決。

沖縄

●4月21日 米軍北部訓練場ヘリパッド建設抗議活動中に逮捕された男性が保釈。昨年10月4日から半年以上勾留。
●4月23日 うるま市長選、与党推薦・現職の島袋氏が3選。菅官房長官、翁長県政支える「オール沖縄」を「現実と違う」とけん制。
●4月24日 政府、辺野古埋立て本体工事第一段階となる護岸工事を開始。埋立て区域北側「K9護岸」から着手。
●4月24日 嘉手納基地でパラシュート降下訓練。MC130特殊作戦機から、30人の兵員が脱出、物資投下なし。2011年以来の実施。
●4月25日 翁長知事、辺野古埋立て工事に着手した政府に対し、差止め訴訟を起こすことを明言。「岩礁破砕行為」確認後提訴へ。
●4月26日付 辺野古新基地建設のため設置された汚濁防止膜、海底に届かず。ヘリ基地反対協が海中写真公開。県の検証求める。
●4月26日 那覇空自F15戦闘機2機、米原子力空母カールビンソンとの共同訓練参加。
●4月28日 米軍属女性暴行殺人事件発生から1年。初公判の見通し立たず。外国人被告の公判前整理手続きに長時間要す。
●5月3日 米空軍、コロラド州軍F16戦闘機12機の嘉手納基地暫定配備を発表。
●5月8日付 県民世論調査。日本復帰を「評価」76%。復帰して悪くなった点では、「米軍基地被害増加」が最多の43.7%(琉球新報)。
●5月8日 辺野古新基地建設。護岸工事で、砕石投下。
●5月10日 公明党県本部「在沖米軍基地調査ワーキングチーム」、提言書まとめる。普天間飛行場5年以内運用停止など政府へ要求。
●5月10日 翁長知事、西普天住宅跡地へ普天間高校の移転を検討。自民調査会で表明。
●5月10日 米軍、米嘉手納基地でパラシュート降下訓練。SACO合意以降初の夜間訓練を実施。沖縄防衛局の中止要請を無視。
●5月12日 キャンプ・ハンセン内安富祖ダム工事現場での流弾問題、コンウェイ大佐が「発射2か所を特定」と発言。
●5月15日 日本復帰から45年。菅官房長官、沖縄振興策と基地問題は「結果的にリンク」との認識を表明。
●5月15日付 名護市、米軍「再編推進事業補助金」の交付対象にならず。再編実施のための「必要な協力」を認められないため。
●5月16日付 沖縄平和運動センター山城議長、6月に国連人権理事会で演説へ。長期勾留や表現の自由侵害を訴え。
●5月17日 防衛省、石垣市へ陸自駐屯地配置図面を提示。敷地内には弾薬庫も整備。
●5月17日 普天間飛行場負担軽減会議。県が「5年以内運用停止」求めるも、政府は辺野古新基地工事の進捗を理由に難色。

くわしく

【連載「いま語る」72】「伝え続ければ願いは叶う」楪 望さん(フリーアナウンサー、広島県観光特使)

公開日:2017.09.14

 今年も8月に向けて、報道番組で被爆者、被爆二世の方の取材を計画しています。北朝鮮の核兵器問題のために核兵器に対する世間の関心が高まっているのを感じます。私には外国人の友人、とりわけアメリカ人の友人がたくさんいます。トランプ政権が誕生したことで、核兵器や戦争の話題も出るようになり、そこから広島の原爆の話になることがあります。アメリカの友人たちは日本の学校では見せないような惨たらしい映像を観てきた人もいると聞いています。その結果として原爆が引き起こした事実を知識として持っている気がしています。またアメリカの学校では、教えるだけでなく、「考える教育」が主流で原爆投下をあなたはどう思うかなど、問いかけやディスカッションをしながら授業が進められます。一方日本の人たちは、ニュースには敏感であっても、原爆は昔の出来事であり、今の日本にミサイルは飛んでこないと思っているように感じます。これは日本での取材を通じて肌で感じることです。この現状をどうしたらいいのか、何ができるのかずっと考えてきました。
 私は小学校の教員免許を持っているのですが、その教育実習先で子どもたちが戦争中に広島に爆弾が落とされたという事実しか知らなかったことにショックを受けたことがあります。原爆によって広島の人々がどうなったか、どのような思いを抱えてきたのか。事実を風化させないように私の口から伝えるのは、微力ながら私にできることの一つだと思っています。学習指導要領では担任の先生が社会科の授業をコーディネートできるので、原爆を取り上げることは先生の裁量に任せられる部分が多いと思います。広島出身でない教師の友人からどうやって原爆を教えていったらよいのかの相談を受けることがあります。広島で生まれ育った私には、雛鳥が親鳥を覚える「刷り込み」のように原爆のことが身に付いています。「はだしのゲン」を読み、平和公園で語り部の人から聞いた話を作文にし、原爆資料館で辛い思いをして見た展示を絵にしたりしてきました。これらのことを通じて、見たことや聞いたことの意味を自分なりに考えて表現することを通して創造性を育てる「創造教育」が私の記憶を定着させてきたと、いま振り返ってあらためて思います。もしかしたら、アメリカの学校での授業に似ているのかもしれません。だから教師の友人には「創造教育」を勧めています。子どもたちが自らの考え方を構築してゆく上で教師の責任は重大です。かつては学校で戦争賛美を教えられてきた子どもたちが戦前の社会を造りました。そうさせないために教壇に立つ先生には踏ん張ってほしいと思うのです。
 今年4月末、広島の原爆資料館の常設展示の入れ替えで、火傷を負った被爆者の姿を再現したジオラマの人形が撤去されるという出来事がありました。広島の人への電話取材では「再現人形」撤去には賛否両論があったと聞きました。しかし、子どものころから人形を怖い思いで見てきて、原爆が人の命と心を消し去ることの象徴であると考えてきた私には今回の撤去は衝撃で、残念であり、これでいいのかという気持ちです。怖さから学ぶこと、感じることも多々あると思います。
 最近、被爆二世の私の義理の叔父が、これまで話してくれなかったことを話してくれるようになりました。叔父の父が作った絵本(「原爆の少女ちどり」山下まさと作画、汐文社)の読み聞かせを関東圏の小学校、幼稚園で行うことを計画しています。この読み聞かせには親子で来てもらい、読後、感想を話し合い、私の世代の親に伝わったことが子どもに伝わったらいいなと思っています。
 原爆体験の継承活動で核兵器がなくなるのかはわかりません。核兵器廃絶には他にも方法があるのかもしれません。私の原爆体験継承への想いというのは、被爆者や被爆二世の眠っている叫び、その人たちが生き、記憶がしっかりしているうちに、そして私が生きている間にその記憶の箱を開け、伝えなければならない、ということだけです。継承活動に関わる人が増え、人の輪が広がり、その結果、核兵器廃絶への意識を持つ人が増えることを願います。
 いろいろな可能性が見えてきたと感じています。私は、毎年8月6日にブログに思いを綴っています。TwitterやInstagramでも発信していて、それを見た人が、今日が原爆の日だと気づいてくれる。それだけでもいい。ちょっとは考えるきっかけになってくれたらいい。YouTubeチャンネルでの被爆者インタビューの計画、原爆とは結びつかないような業界とのコラボの計画など、原爆体験の継承活動に注目を集め続けるために、これからも私なりの発信をし続けます。(談。まとめ、写真:山口大輔)
ゆずりは・のぞみ
広島県広島市出身、横浜国立大学教育人間科学部卒。大学での研究テーマは「平和教育」。被爆地広島で育った一人として、残された被爆者の声を次の世代へどう継承するかという観点から数多くの取材を行っている。現在はAbemaNewsフィールドキャスターとして、事件から政治まで様々なニュースの現場からの生中継リポートを中心に活躍中。

くわしく

【被爆二世が国賠訴訟を提起】 「遺伝的影響」を視野に援護策の不在を問う 弁護士 足立 修一

公開日:2017.09.14

国賠訴訟の提訴、第1回弁論

 2017年2月17日、広島地裁に、同月20日長崎地裁に、被爆二世の原告らが、被爆二世に対する援護措置がなされていない立法不作為の状態が国家賠償法上違法であることを理由として、国賠請求を提訴した。
 広島地裁では、本年5月9日に第1回口頭弁論が行われ、原告2名の意見陳述、在間弁護団長からの意見陳述が行われ、次回は、8月22日に行われることになった。
 また、長崎地裁では、本年6月5日に第1回口頭弁論が行われ、原告の意見陳述、弁護団からの意見陳述が行われる予定である。

被爆二世による今回の提訴の意義

 被爆者一世に対する援護は、1957年に原爆医療法が制定され、その後、1968年に原爆特別措置法が制定されて、いわゆる原爆二法として、健康診断、医療給付、医療費の給付、健康管理手当の給付などが行われてきた。これらは、1994年に被爆者援護法として一本化された。しかし、これらの法律では、援護の対象となる被爆者は、①直接被爆者、②入市被爆者、③救護被爆者、④胎児被爆者の4類型とされ、被爆二世は対象とされないため援護措置の対象とはされていない。
 このような法制度に対し、被爆二世は、援護措置を求める運動を行い、参議院では1989年、1992年に被爆二世を援護対象とする法案が可決されたこともあったものの、1994年の被爆者援護法の制定の際には、援護対象から外された。
 被爆二世も、高齢の者は70歳を超えている。これまで援護を求めて運動してきた結果、東京都、神奈川県や大阪府吹田市、摂津市などの一部の自治体で援護措置として医療補助がなされている例もあるが、国全体としては援護策はとられていない。
 今回の裁判では、被爆による遺伝的影響があることを明らかにし、被爆の実相を明らかにすることを通じて、被爆二世を「第五の被爆者」として認めさせ、現状では、被爆二世に対する援護措置としては不十分な健康診断しかなされていない状況=立法不作為の状態が国賠法上違法であることを認めさせることを目指す。そして国に被爆二世に対する援護措置を制度化させることを目指している。

訴状の内容

 訴状では、被爆者援護の制度の歴史、放射線の健康影響、放射線の遺伝的影響、立法不作為が違法であることなどを主張している。特に、放射線の遺伝的影響については、既に日本遺伝学会などが1950年代から遺伝的影響が存在していることを前提とする意見表明をしていることなどを指摘し、遺伝的影響が存在しうる旨のこれまでの見解を踏まえた援護措置を求めている。また、参議院での被爆二世への援護を認める法案が可決された事実もあるのに、現状で援護措置が存在していないことは、立法不作為であって違法であると主張している。

今後の展開について

 国は、去る5月9日の広島地裁での期日までに、提訴後約3か月もあったのに、事実の認否すら行わなかった。これからの訴訟の進行の中で、国は、これまで、放射線影響研究所で被爆二世への遺伝的影響についての研究をしてきたが、現時点までに有意な影響が認められないとの報告書が出されていることを前提とした主張をしてくることが予想される。
 この主張に対しては、そもそも、放射線影響研究所の研究方法には問題があったことを指摘するとともに、これまでにヒト以外の生物(ショウジョウバエ)・哺乳類(マウス)では既に遺伝的影響が認められていること、ヒトについても、イギリスの原子力施設で勤務する者の子どもについて遺伝的影響が認められるとの研究報告があること、さらには日本でも両親が被爆者である場合に子どもが白血病になりやすいとの研究結果も存在していること、などを挙げて遺伝的影響を主張してゆく。
 今後、放射線の遺伝的影響についての科学論争になることも予想されるが、科学論争を決着させること自体が訴訟の目的ではない。むしろ科学的に解明されない限り、何らの措置もとらないという国の施策の不当性を追及してゆく必要がある。援護策をとらないまま放置し、後に援護すべきだったと結論付けられたときには受け入れ難い結果を招く。したがって、訴訟では「予防原則」の観点から被爆二世の援護措置の必要性を認めさせることを目指してゆく。
 今後、被爆による放射線被害の実相を明らかにする作業を続け、被爆の被害を矮小化しようとする流れに抗して、被爆二世の権利が確立するまで闘う所存である。皆様のご支援、ご注目をお願いしたい。

くわしく

<資料>Pupo2017声明(仮訳)

公開日:2017.09.14

東京、2017年2月24日

 私たち下記署名者は、2日間、日本のプルトニウム政策を議論するために世界中から集まりました。会議には地域、国、国際レベルの政府・非政府、工学、法学から外交に至る幅広い背景を持った関係者が集い、日米関係、特に2018年に30年の期限をむかえる日米原子力協力協定の観点から日本のプルトニウム政策について議論しました。さらに、我々はこの協定と日本のプルトニウム政策が北東アジア地域と他の世界に与える影響についても議論しました。我々は、日本が自身の原子力政策について、エネルギー安全保障と環境への影響といった観点を考慮しながら、日本の人々にとって最善となるよう決定しなければならないことを認識します。しかしながら、日本のプルトニウム政策は、国際社会や北東アジア地域に否定し難い影響を有しており、責任ある国家として、日本は北東アジア地域と国際社会の平和と安全と安定を維持するべく対処しなければなりません。日本はこの責任を、例えば2014年3月のハーグ核セキュリティサミットにおける米国との共同声明において「核物質の保有量を最小化するというこれまでの全てのサミットのコミュニケの精神」に言及し、国際社会に向かって「更なるHEU(高濃縮ウラン)とプルトニウムの最小化のために何ができるかを各国に検討するよう奨励」したように、明確に理解しています。

 私たちは、議論を通じて、幾つかの主要な結論に至りました。
1)日本と米国の近隣諸国の多くは日本の48トンにのぼるプルトニウム備蓄と2018年に稼働予定の六ヶ所再処理工場で最大年間8トンを分離する計画を深く憂慮している。そうした国々はこのプルトニウムを、地域の緊張を高める核拡散上の脅威であり、また盗難への脆弱性から核テロリズムの脅威であると認識している。
2)人々の原子力発電の危険性への認識は福島第一原発事故後、顕著に広がったにもかかわらず、再処理のもつ核拡散、核テロリズム、超過コスト、安全性リスクにかんしては、一般の関心は未だに欠けている。
3)使用済み燃料の再処理は、貯蔵や直接処分といった放射性廃棄物の管理、エネルギー安全保障やコストに対して、それがもたらす大きなリスクを正当化するだけのいかなる優位性も提示しない。日本は世界の他の国々が進めている、より安全かつ確実で安価な代替手段―具体的には深地層処分が未決定の間は乾式貯蔵をおこなう―から学ぶべきだ。

 したがって我々は日米両政府に以下の点を提言します。

 日米原子力協力協定に則り、合同委員会を組織し、
(1)  六ヶ所再処理工場の問題について、地域及び世界の安全保障に与える影響という観点から再検討をおこなうこと
(2)  地域及び世界の懸念を緩和するため、日本の既存のプルトニウムの安全かつ確実な管理方法を、IAEAの管理下に置くことの可能性も含めて検討すること
(3)  プルトニウム処分方法についての情報交換と分析をおこなうこと

 そして、中国政府、韓国政府ならびに日本政府に対して、以下の点を提言します。
(1)  北東アジア地域のさらなる分離プルトニウムの蓄積を回避するために、再処理モラトリアムを約束すること。日本政府はすでに分離プルトニウムを48トン保有していることから、再処理モラトリアムの先頭に立って、六ヶ所再処理工場の稼働無期限延期をおこなうべきだ。この地域内の他国政府は、この先例にならって、再処理による分離プルトニウムに関するすべての活動と将来の計画をすべて停止することを約束するべきだ。
(2)  このモラトリアム/停止の間に自国のすべての核燃料サイクル政策にかんして包括的な検証をおこない、そして使用済み燃料の貯蔵・処分についての代替手段について検討すること。それらの検証は独立した第三者の専門家とすべての関係者を巻き込んだものでなければならない。メディアや他の場で、すべての情報とデータが完全に公開されたなかで、精力的な公開討論がおこなわれなければならない。関係するすべての政府はこうした再検討の結果を尊重し、それらの提言に沿ってプルトニウム政策を変更するべきだ。

  出典:
  原子力資料情報室ウェブサイトwww.cnic.jp/7348#a1

くわしく

【日本のプルトニウム政策を検証】 18年「日米原子力協定」延長にらみ国際会議 原子力資料情報室 松久保 肇

公開日:2017.09.14

背景とねらい

 原子力資料情報室は米国の「憂慮する科学者同盟」と共催で、2月23日・24日の2日間にわたり、「日米原子力協力協定と日本のプルトニウム政策国際会議2017」(以下PuPo2017、なおPuPoはPlutonium Policyの略)を東京の国連大学にて開催した。国際会議には米国、韓国、台湾、中国、フランス、ドイツ、そして日本から23人のスピーカーを招き、参加者は150人を得た。
 日本ではこれまで、使用済み燃料を再処理して取り出されるプルトニウムを、高速増殖炉で燃料として使うとともに、増殖させて再び使うことを方針としてきた。一方で、再処理は計画通りには進まなかった。2014年に廃止が決定された東海再処理施設は、1981年の稼働から2012年までで1,140トンウラン分の使用済み燃料を再処理したが、年間210トンウランと称した処理能力には遠く及ばなかった。1993年に着工した六ヶ所再処理工場も23回の稼働延期を重ねて未だ稼働できていない(現在は2018年稼働予定)。さらに2016年には高速増殖炉原型炉もんじゅの廃炉が決定されるなど、高速増殖炉計画も進んでいない。
 日本は2014年のハーグ核セキュリティサミットでの安倍首相ステートメントにある通り、「『利用目的のないプルトニウムは持たない』との原則」を持ち「プルトニウムの回収と利用のバランスを十分に考慮」することを国際公約としている。プルトニウム利用が進まない中、政府と電力会社はウランとプルトニウムの混ざったMOX(Mixed OXide)燃料を軽水炉で使おうとしてきた(プルサーマル)。しかしこの計画も順調ではない。
 こうした環境下で、2018年には1988年に締結された現行の日米原子力協力協定が期間満了を迎えることとなる(ただし期間満了後は自動延長され、日米いずれかが6か月前に事前通告することにより協定終了となる)。これに対して日本の私たちは何ができるのか。国際会議の主な狙いはそれを考えることにあった。そのため、必ずしも原子力に否定的ではない方、日本のプルトニウム政策を堅持するべきだという立場の方にもご登壇いただいた。この種の会議でこのような多様なスピーカーが一堂に参加する機会はこれまでなかったのではないかと考えている。
 もう一つの狙いは日本のプルトニウム政策の世界への広がりを考えることにあった。
 1988年に締結された現行の日米原子力協力協定では米国が日本に使用済み燃料の再処理に関する包括事前同意(協定に定められた特定の施設における再処理の実施を事前に認める)を行っている。1988年に現行協定が締結される際には、米国政府・議会に強い反対が存在し、この反対は今なお存在する。なぜなら、日本が再処理を行うことは、近隣諸国を刺激することにつながるからだ。
 日本は日本のプルトニウムは平和利用目的にしか使わないと説明する。しかし、日本は国内外に48トンのプルトニウムを保有し、それを使うあてもないまま、年間8トンのプルトニウムを分離する六ヶ所再処理工場を稼働させようしている。その姿を周辺諸国は、平和利用というだけでは説明がつかない、日本はいざとなれば核兵器を保有できる体制を維持しようとしているのではないかとみている。
 米国は日米原子力協力協定締結以降、非核兵器保有国には再処理の包括事前同意を認めていない。しかし日本にみとめてなぜ自国に認めないのかという声は絶えない。例えば2015年に締結された米韓原子力協力協定の交渉時、韓国はそのように主張し、実際にプルトニウムを取り出す前段階までの技術研究を認められることとなった。日本のプルトニウム政策は国内の経済性・安全性問題にとどまることなく、国際安全保障問題に直結する課題なのだ。

成果と課題

 2日間の議論を通じて、日本のプルトニウム政策が行き詰まりを迎えていることが改めて確認された。国際会議の登壇者の一人で原子力も核燃料サイクルも推進するべきだとする遠藤哲也元原子力委員会委員長代理も、例えば16~18基の原発でMOX燃料を使うことで余剰プルトニウムを減らそうとする「プルサーマル計画」の実施に見通しが立たないことなど、日本の核燃料サイクル政策は問題を抱えており、その推進には再処理と高速炉の将来像を描き出す司令塔が必要だと主張した。司令塔が必要だという主張は、逆説的に司令塔が存在しない、誰も日本のプルトニウム政策を積極的に進めたがっていない、ということを示している。さらに会議では日本政府が主張するエネルギー安全保障に資するプルトニウム政策という点も偽りがあることが明らかになった。ウラン資源は枯渇する状況にはなく、プルトニウム利用は極めてコスト高なのだ。
 2日間の国際会議で改めて確認されたのは、日米原子力協力協定は自動延長路線が濃厚であること、しかし、米国議会など協定を変更するための手掛かりは存在するということだった。米国からの登壇者から、米国で同趣旨のシンポジウムを開催してはどうかとの提案もあった。また、会議の終了に際して国際会議参加者有志でPuPo2017声明を発表した(資料)。なお現在、原子力資料情報室では米国への代表団の派遣を検討している。

くわしく

<資料>ピースデポ発言「北東アジアにおける核リスクの低減と軍縮」(17年5月3日、国連ウィーン本部)

公開日:2017.09.14

 ありがとうございます、議長、代表団のみなさん、市民社会の仲間たち、

 3月に米国国務長官が、朝鮮半島における現在の危機を解決するため「全ての選択肢がテーブルの上にある」と述べ、4月には米国大統領が「もし(中国が)手助けをしないと決めたならば、米国は中国抜きで問題を解決する」とツィートしたように、北東アジアにおける軍事的緊張はここ数か月間、きわめて高いままです。核戦争が、事故や誤算によっていつでも起こりかねないという差し迫った危険があります。

 我々は北東アジアでの核と安全保障の問題に対する持続可能な解決方法を、待ったなしで見つけ出さねばなりません。そしてそのためには、現在の危機が歴史的背景に深く根ざしていることを認識する必要があります。

 1953年の朝鮮戦争の停戦以来、休戦協定が平和条約に置き換えられたことはありません。1958年から1991年まで34年の長きにわたって米国は大韓民国(ROK)の土地に戦術核を配備してきました。朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)を仮想敵として標的にした米韓合同軍事演習が繰り返し行われてきました。冷戦後でさえも西側のDPRKに対する敵視政策が続き、DPRKは絶え間ない米国の核兵器の脅威にさらされてきました。

 DPRKが国連総会において「(米国が)核の脅迫を続ける限り、DPRKは質的、量的に自衛のための核戦力をさらに増強し続けるだろう(リ・トンイルDPRK大使、2016年10月)」と発言したのはこうした状況でのことです。そして、ROKと日本は米国に拡大核抑止の強化を要請しています。この核のエスカレーションにより弾道ミサイル防衛を伴う新たな軍備競争が生まれ、それが中国やロシアを含む国家間の緊張をつくり出しています。この負のスパイラルを止めることが至上命題です。

 DPRKだけに核プログラムの放棄を要求することはこの悪循環を終わらせるのに正しい解決策ではありません。休戦協定を平和条約に変えること、ROKと日本の核武装を禁止すること、地域内の非核兵器国の安全保障をすることを含む、相互に密接に関連する問題を包括的に解決する必要があります。

 包括的解決の不可欠な一部分として、北東アジア非核兵器地帯(NEA-NWFZ)構想が学術界やNGOの間で議論されてきました。2015年に長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)は、地域の平和と安全のための鍵となる問題を解決する方法とともにNEA-NWFZの設立を目指す「北東アジア非核化のための包括的枠組み合意」を提案しました。非核兵器地帯に関しては、「スリー・プラス・スリー」案が提案されています。この案によれば2つの国家カテゴリーがあります。地域内の非核兵器国群、つまりROK、DPRK、日本と周囲の核兵器国群、つまり米国、中国、ロシアです。後者のカテゴリーの国家群が前者のカテゴリーの国家群に消極的安全保証を与えます。

 ROKと日本でNEA-NWFZ構想を推進する議員の努力がありました。ROKと日本の議員92名がNEA-NWFZを支持する声明に賛同しています。2008年に日本で、当時野党第一党であった民主党の主要な議員連盟(率いていたのは元外相)がNEA-NWFZモデル条約案を発表しました。日本の地方政府レベルでは546もの首長がNEA-NWFZ設立のための声明に署名しました。加えて、最近、宗教指導者が力強い声明「米国の核の傘への依存を止めることを日本に要求し、北東アジア非核兵器地帯設立へと向かう」を出すという新しい動きが始まりました。また、国連で重要な進展がありました。事務総長への軍縮問題に関する諮問会議は国連に対し、NEA-NWFZの設立に向けて適切な行動をとることを2013年に勧告しました。

 この地域における核戦争のリスク低減は緊急の課題です。DPRK、ROK、日本の市民を核の脅威から等しく解放する地域的機構の設立が必要です。我々は現在の危機を、持続可能な地域の平和と安全保障のための行動を起こす機会とするべきです。我々は関係する政府が戦争の瀬戸際に向かってお互いを脅迫し合うのではなく、むしろ交渉へ向けて大胆な一歩を踏み出すことを要求します。
(訳:ピースデポ)

原文:www.reachingcriticalwill.org/images/documents/Disarmament-fora/npt/prepcom17/statements/3May_PeaceDepot.pdf

くわしく

【2020年NPT再検討会議 第1回準備委員会(ウィーン)参加報告】

公開日:2017.09.14

 5月2日から12日にかけて、2020年NPT(核不拡散条約)再検討会議第1回準備委員会がオーストリアの国連ウィーン本部で開かれた。ピースデポからは研究員の山口(筆者)がこの前半部分(2~5日)と各国政府やNGOのサイドイベントに参加した。
 5月2日午前10時、準備委員会が時間通り開始された。400人は入る会議場は満席で、立ち見の参加者も出ていた。
 オランダ大使のファンデルクワスト議長から開会の辞でこの会議の狙いが述べられた。1995、2000、2010年再検討会議の結果を参照しつつ、共通する意見・共有できる目標を探っていこうとされた。

岸田外相の発言

 一般討論に入り、最初の発言者は日本の岸田外相であった。他国にはないハイレベル政府高官としての出席に対し、議長より謝意が述べられた。岸田外相の発言は核廃絶へのステップ・バイ・ステップ・アプローチなど、これまでの政府の立場の繰り返しで、ほとんど新しいものはなかった。外相は、核軍縮に関して日本がとる次の3つの行動を示した。
1. 今年、核兵器国・非核兵器国の両方から核軍縮の専門家を招へいし、賢人グループを設置する。その提案を次回準備委員会(18年4月、ジュネーブ)に提出する。
2. 今年、CTBT(包括的核実験禁止条約)の発効に寄与するために東南アジア・太平洋・極東地域の国家を招いて地域会議を開催する。
3. 国境と世代を越えて原爆の人道的影響の認識を広げるため、若者と「CTBTユースグループ」のネットワークを設置する。広島と長崎に1,000名を招待する。
 北朝鮮核問題に関しては、国連安保理決議と2005年6か国協議共同声明の遵守、核・ミサイルプログラムの放棄、NPTへの復帰を求めるだけでなく、核兵器保有の動機減少のために安全保障環境を改善する、朝鮮半島非核化に向け日本が外交努力を主導する、と発言していたのは少しは期待できるのだろうか。しかし現実には、例えば韓国のメディアでこの問題での日本の役割を期待している論調はほとんど存在しないことを認識しておかねばならない。また、日本が米国の核の傘の確認、ミサイル防衛の強化、米韓合同軍事演習への協力を通して北朝鮮の核保有の動機を増大させていることとの整合性の説明がつかない。

北朝鮮核問題はいかに語られたか

 引き続き、核兵器国、NATOなどの核依存国、非同盟運動の非核兵器国、非核兵器地帯を構成する非核兵器国などの大使が順不同で発言していった。この中で北朝鮮核問題がどのように語られるのか、注意深く聞いていた。ほぼ全ての国が北朝鮮核問題について言及していく中で、多くの国が北朝鮮の核・ミサイル開発を非難し、北朝鮮に国連安保理決議の遵守とNPTへの復帰を要求し、各国に北朝鮮への制裁を要求するだけに終わっていた。一般討論を聞くことのできた4日の午前中までに発言した82代表(国家以外も含む)のうち、明確に対話を呼びかけていたのはわずかにオランダ、スロベニア、中国、アイルランド、スイス、タイ、イギリス、カナダ、リトアニア、シンガポール(発言順)のみであった。(発言原稿を後で確認したところ、日本同様、米ロも外交圧力について触れていた。)特に日米は自らの行動も地域の安全保障環境の悪化に寄与しているという認識を示さないまま、北朝鮮の核問題を理由に核抑止の重要性を語っていた。この点は、それぞれの国の安全保障に対する懸念が等しく取り扱われず尊重されていない、国際社会は二重基準を放棄せよ、として中ロの代表に批判されていた。
 日本のミサイル防衛や米韓軍事演習に関連して、4日の昼休みに仏韓政府主催のサイドイベント「北朝鮮の核・ミサイルの脅威とNPT」に参加し、韓国の大使と外務省幹部の発言を聞く機会があった。そこでは、北朝鮮は関係国との交渉を欲していないという認識が示されたほか、米国が韓国に配備するTHAADを始めとするミサイル防衛システムはもっぱら防御的なものであるという認識も示された。一方、合同軍事演習については、次のような認識が示された。北朝鮮の核・ミサイル実験は国連安保理決議に反する非合法なものであるのに対し、合同軍事演習は非合法なものでないから何も問題はないとした。米韓合同軍事演習が北朝鮮への脅威になっているという認識は示されなかった。どこの国でも外務省の人間は、政府(行政権)の決定事項の忠実な執行者であり、非難するのはお門違いであるのは承知している。しかし、問題解決のための方法を計画する際に基礎となる事実の認識に公平さを欠いていて理性的で建設的な提案を政府に対してできるのだろうか。それだけに政治の重要性を再度痛感させられた。
 米国の代表は北朝鮮核問題を重大なものとしてとらえ、この準備委員会の中心的課題(central issue)として議論されるべきであると提起した。日程上ほんの一部しか参加することができなかったこの後に行われたクラスター1(核不拡散・軍縮・国際平和と安全保障)、全く参加できなかったクラスター2(核不拡散・保障措置・非核兵器地帯)の声明をウェブサイトで確認してみたが、この点について深められた形跡はない。
 この問題に関して中国から提案があった。これは今回の準備委員会前から中国により語られていた「複線的アプローチ(dual-track approach)」と「凍結対凍結(suspension for suspension)」である1。前者は朝鮮半島の非核化と平和機構の設立を並行して行うもの、後者は北朝鮮の核・ミサイル実験の凍結を条件に米韓合同軍事演習の凍結をするものである。これは15年にRECNA(長崎大学核兵器廃絶研究センター)が提案している、「北東アジア非核化のための包括的枠組み合意」2と親和性の高い提案である。

NGO発言

 5月3日午前中の時間枠の終了時点では、一般討論を行う予定の74代表中51代表だけが発言を終えていた。これを中断して午後は予定通りNGO発言が行われた。全部で19のNGOが発言した。最初の5名は日本のNGOからの発言であった。児玉さん(被団協)、小溝広島平和センター理事長、田上長崎市長(以上平和首長会議)、土田さん(原水協)、河合さん(創価学会インターナショナル)が発言した。13番目の筆者を含めて日本からの発言は6名。日本の核廃絶への熱意を示せたと思う。核兵器国と核兵器依存国の発言の中にある核ドクトリンに基づいた安全保障が、人類の生存と地球環境の保全を全く考慮しない非現実的な空疎なものに聞こえるのに対し、NGOからの発言は核兵器による非人道的体験と世代を越えた影響、核抑止への疑問、NPT6条に定められた核軍縮義務不履行への疑問、NPTで5か国に核兵器保有が認められている二重基準への疑問など、地に足のついた熱のこもった議論であった。ピースデポの発言「北東アジアにおける核リスクの低減と軍縮」(資料)も日米韓による核抑止政策、アメリカによる核保有の正当化を名指しで強く批判するものであり、発言の間中、場内がざわめいているのを感じた。国家代表の多くは代名詞を用いて核兵器国を遠回しに批判していたのに対し、NGOは国名を名指しで直接的に批判していたのが印象的だった。(山口大輔)


1 「中国国際電視台」17年4月29日。https://news.cgtn.com/news/3d49544f32597a4d/share_p.html
2 以下のサイトから全文を閲覧可能。www.recna.nagasaki-u.ac.jp/recna/asia

くわしく

【米軍に情報公開請求】弾道ミサイル防衛能力を持つ米イージス艦の全艦名が判明――最新鋭艦の半分が横須賀に

公開日:2017.09.14

世界中に配備されている米海軍イージス艦のうち弾道ミサイル防衛能力を持つイージス艦の配備港ごとの全艦名を掲載した米軍文書を、ピースデポが初めて入手した。横須賀には最新の能力を持つイージス艦の半数が配備されており、ここから米軍の世界的ミサイル防衛戦略における日本の基地の際立った役割を知ることができる。


公開された米軍資料

 現在、横須賀を母港とする巡洋艦、駆逐艦11隻のすべてはイージス戦闘システムを搭載した、いわゆる「イージス艦」であるが、その中のどの艦に弾道ミサイル防衛(BMD)能力が付与されているかに関して米軍資料はなかった。また、米軍全体のBMD能力イージス艦の名前とその世界的な分布を知ることが、横須賀の役割を知る上で重要であった。今回、情報公開請求を行うことで初めてそれらのことが明らかになった。
 米軍への情報公開請求は梅林が行った。2015年10月21日に米海軍システム軍(Naval Sea Systems Command)に請求したものが国防総省ミサイル防衛局(MDA)へと転送され、約1年4か月経って17年2月2日に回答を得た。
 得られた資料は、①「今日のイージスBMD艦隊:33BMD艦と1陸上イージス・サイト(2016年5月現在)」と題する図表と、②「イージスBMD計画の説明:計画における能力の変遷」と題する図表の2点である。いずれもミサイル防衛局が作成した資料であり、ブリーフィング用に作成した資料のように見受けられる。資料①に16年5月時点における米海軍の全BMD能力艦の配備港ごとの艦名が記載されている。それを整理したのが3ページの表である。
 資料①によると、ミサイル防衛局はBMD能力艦を3.6、4.0、9.Cという3つのベースライン(BL)で分類している。ベースラインというのは、米海軍がイージス・システムの改訂バージョンを呼ぶときの名前である。BL0から最新のBL9まで開発されており、BL10が開発中である1(17年5月20日現在)。米海軍がなぜこの3つのBLによってイージス艦のBMD能力を分類しているのかの理由は資料①に説明されていない。
 しかし、そのヒントが資料②に示されている。資料②はイージス艦のBMD能力の変遷を図示しているが、その変遷の大きな区分を、オバマ政権が提案したBMD欧州段階的適応性アプローチ(EPAA)2における段階区分に従って行っている。14年の米ミサイル防衛局の報告によると、EPAA第1段階はイージスBMD兵器システム「イージスBMD3.6.1」と迎撃ミサイル「スタンダード・ミサイルSM3ブロック1A」によって達成され、第2段階はイージスBMD兵器システム「イージスBMD4.0.X」と迎撃ミサイル「スタンダード・ミサイルSM3ブロック1B」によって達成される3。資料②の記述はこれとほぼ合致する形でBMD能力の変遷を示している。資料①におけるBMD能力分類も、このようなEPAAの段階に対応して行ったものと考えられる。

イージス・システムとBMD

 しかし、3ページの表はベースライン3.6、4.0、9.Cと記されており、これがBMD能力とどのように関係するのかは判然としない。
 米MDAは、イージス・システムのBLとは別に、イージス艦のBMD能力の改訂バージョンをバリアントとかケイパビリティ・アップグレード(CU)と呼んでBMD3.6、BMD4.0などと示している(BMD3.6.1のように小数点以下でさらに細分化されたバージョンを示す)。しかし、イージスBLとBMDバージョンの関係は単純ではない。
 たとえば、15年6月18日、横須賀に巡洋艦チャンセラーズ・ビルが2度目の母港化のために入港したとき、「ベースライン9」を装備した初の海外母港艦であると喧伝された。しかし、同艦にはBMD能力は備わっていない。このようにイージス・システムBLとイージスBMD能力のバージョンには直接の関係はない。
 したがって、ここではイージス・システムとBMD能力との関係を、もう少し基本的なところで解説しておきたい。そもそもイージス・システムとは、米海軍が、軍艦が曝される様々な脅威から軍艦や艦隊を守るため、1システムに能力を集中させて自動的に戦闘を指揮・統制でき、迎撃兵器を制御・誘導できるような総合兵器システムを目指して開発されてきたものである。軍艦が曝される脅威には、敵の航空機の機銃やミサイルや電波妨害兵器、敵の軍艦や陸上基地からの対艦ミサイル攻撃(短距離弾道ミサイルや巡航ミサイル)、敵の潜水艦による魚雷やミサイル攻撃などがある。イージス・システムはこれらの攻撃を撃破するために様々な兵器を装備し、自動的に選択して撃破する。撃破のための兵器の多くは垂直発射装置(VLS)に収められているが、イージス艦には約100本の垂直発射管が装備されている。そこには、対空ミサイル、対潜水艦ミサイル、さらには対地攻撃用の巡航ミサイル・トマホークなどが収められている。ある段階から、BMD用の迎撃ミサイルもこれに加わった。
 さらにイージス・システムは、他のイージス・システムや人工衛星とネットワークを組んで能力を高めるようになった。
 これらのさまざまな進歩がイージス・システムBLを高度化してきたのである。
 このようなイージス・システムに新しくBMD能力が加わることになった。そしてBMD能力自身のバージョン・アップも始まり、イージスBMDバリアントを生み出してきた。
 イージス・システムBLとイージスBMD能力バージョンの組み合わせはこのようにして始まった。米海軍によると17年1月26日現在、イージス艦の数は84隻である4。その中でBMD能力をもつ軍艦は33隻に過ぎない。

横須賀とロタ(スペイン)

 表に見られるように、昨年5月時点で世界中に配備されていたBMD能力を持つイージス艦で最新型のベースライン9.Cを運用しているのは4隻である。そのうち2隻が横須賀に配備されている。また、9.Cにアップグレード中の駆逐艦が2隻あるが、そのうち駆逐艦ミリウスが今年7月に横須賀に来る予定であり、これで最新型6隻中3隻が横須賀所属となる。つまり、最新のBMD能力イージス艦の半数が横須賀に配備されていることになる。これは米国が日本防衛に力を入れているためではない。北朝鮮の弾道ミサイルから日本やグアムを防衛するBMDシステムが、そのまま中国や北朝鮮のミサイルから米本土を守るBMDシステムの構築と密接に繋がっているからである。
 表で明らかなようにBMD能力イージス艦の海外母港は横須賀の他にスペインの軍港ロタにおいても行われている。ロタへの4隻のイージスBMD能力艦の配備はEPAAの第一段階の事業として行われた。しかし、イージス艦の本来の役割と能力においてBMDはその一部に過ぎない。
 報道によると、今年4月7日にシリア空軍基地に向けてトマホーク巡航ミサイル59発を発射した米軍艦は、ロスとポーターという2隻のイージス駆逐艦であった。今回の調査によって、この2隻はEPAA計画によってBMD目的でロタを母港とした駆逐艦であることが判明した。この事実は、ミサイル防衛艦は同時に対地攻撃艦でもあるというイージス艦の本性を現している。(梅林宏道、山口大輔)


1 米海軍「ファクトファイル:イージス戦闘システム」。 www.navy.mil/navydata/fact_display.asp?cid=2100&tid=200&ct=2
2 EPAAは09年9月17日、ブッシュ政権のBMD構想を変更してオバマ政権によって提案されたものである。第1~第4段階を経て実現する。詳しくはピースデポ「イアブック2009-10版」92-93ページ参照。
3 米国防総省MDA「イージス弾道ミサイル防衛:現状」。www.mda.mil/system/aegis_status.html(14年11月9日にアクセス。現在はアクセス不能。印字コピーを筆者が保存)
4 注1と同じ

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