オスプレイ、今後も事故が続くおそれ原因解明なき飛行再開は不当

公開日:2017.04.27

新型垂直離着陸機オスプレイの普天間基地配備から4年強が経つ2016年12月13日、沖縄を初めとして多くの市民がくり返し警告し懸念してきた大事故が沖縄県名護市東岸の浅瀬で発生した。12月7日には岩国基地の戦闘攻撃機FA18ホーネットが高知県沖で墜落したばかりであった。ここでは、今回の事故の原因究明に不可欠な疑問点や飛行時間が増えても減らないオスプレイの事故について考察する。そして、今後、普天間配備の24機を含め計53機ものオスプレイの配備計画がある日本の現状に対して、国内初の大事故が問いかけていることを考える。


事故は夜間空中給油訓練の固定翼モードで起きた

 12月13日、夜9時30分頃、名護市安部沖の浅瀬でオスプレイが着水し(注1)、大破した。乗員5名のうち2名負傷したが死者は出なかった。事故機は、沖縄北東の海上で他のオスプレイ1機(同機は事故機の空中監視の後、着陸装置の故障により普天間基地で胴体着陸をしていた)とともに空中給油機MC130(嘉手納)から空中給油を受ける夜間訓練を実施していた。防衛省によると(注2)「給油が終了し、オスプレイのプローブ(補給口)とMC130の給油ホースを分離させた後、21時5分頃、乱気流等により、給油ホースとオスプレイのプロペラのブレード(羽)が接触し、ブレードが損傷した。」「ブレードの損傷は回転するうちに大きくなり、飛行が不安定な状態となった。」訓練地点から近いキャンプ・シュワブを目的地に飛行したが、途中辿り着けなくなり浅瀬に着水したとされる。
 米軍は、事故は空中給油に伴い発生したもので、搭載システム、機械系統あるいは機体構造を原因とするものではないとし、全機体につき安全上の調査、確認をしたことをもって、19日、空中給油以外の飛行を再開した(注3)。稲田防衛大臣は、14日未明、マルチネス在日米軍司令官との電話会談で「原因究明、十分な情報提供、安全が確認されるまでの飛行停止」を申し入れていたが、いとも簡単に飛行再開を受け入れた。

真相究明には程遠い飛行再開

 事故調査報告書もない段階であるが、原因究明に必要と考えられる疑問点を列挙してみる。

a)プロペラの羽が損傷した事象について

● 事故発生に関連した場所でわかっているのは発見地点だけである。羽を損傷した地点や着水地点は不明。事故発生時の高度、飛行速度、気象条件(気温、風速)も不明である。
● 大気の「乱気流等」によって具体的に何が起きたのか? 乱気流によって機体が上下や左右に揺さぶられMC130との距離が変化し、給油ホースがプロペラに接触したのか。オスプレイは揚力不足のため、大気の乱れに弱いことが要因の一つではないかと疑われる。 
● 機体の大きさに比してプロペラが異様に大きく、給油の際、プローブを出し入れするスペースが狭く、作業は難しいことが想定される。

b)プロペラが損傷した後の飛行状況がほとんど明かされていない。

● 今回の事故の特徴は、滑空ができ、比較的安全とされる固定翼モードにおいて起きたことである。オスプレイの業務に従事した経験のあるアーサー・R・リボロ氏の米議会(注4)証言においても、「V22の推進者たちは、同機は全エンジンが停止しても、固定翼モードに変換することによって安全な着陸が可能であると主張している」とされていた。
● 羽の損傷は、右・左いずれの羽のどの辺りで起きたのか? 回転するうちに損傷はどう拡がったのか? 損傷した方のエンジンは停止し、片方のプロペラだけで飛行したのか? あるいは、左右のバランスを取るため両エンジンともに停止し滑空のような形を取ったのか?
● 「飛行が不安定な状態になった」というのは、羽の損傷が乱気流に伴い発生したことも併せ、機体重量に比べて揚力が不足がちなオスプレイ特有の現象ではないのか? オスプレイは、重い主翼とそれを胴体から支える構造により、自重が約17トンあり(注5)(ヘリコプターと比べ2倍はある)、そのため揚力不足になる。1つの航空機で固定翼モードと垂直離着陸モードの両方の機能を持たせるという高度な目的を追求したことによる、機体の構造的な問題による事故という疑いがある。

c)安定飛行が可能であったのかどうかが明らかにされていない。

● キャンプ・シュワブまで残りわずか約5kmのところでなぜ着水したのか? これは、制御が不能(例えば以下に指摘するように、機体を水平に保持する操作ができなくなったなど)であったことを示しているのではないか。
● 着水は水平に行うことができたのか? 発見地点での写真によれば、左側の主翼はなくなり、左側に傾きながら着水したようにも見えるが、事実はどうか。
 
 米軍は、いち早く「不時着水」と報告し、政府は、それをそのまま発表した。報道のほとんどがそれに従ったが、沖縄など一部のメディアは「墜落」としている。現時点では制御可能であったのかどうかを判断できる材料がなく、少なくとも「不時着水」とは言えない。リボロ氏は「琉球新報」の取材に対し「航空機が制御できていた場合、機体の損傷を引き起こさずに水面に着陸できただろう。機体が激しい損傷を受けた事実はその航空機が制御不能であり、航空機を破壊するに十分な力で水面にぶつかったことを示唆している」(注6)としている。
 これらの情報はボイスレコーダーの分析からわかるはずだが、それは公開されていない。要するにわからないことだらけであり、真相究明には遠く及ばない。少なくとも事故報告書が出て、両政府間で検証が終わるまで飛行再開はありえない。
 この間、日本側は、事故の調査に関して全く排除されたままである。14日、海上保安庁は航空危険行為処罰法違反容疑での捜査を始め、米軍に乗員の尋問を要請したが回答はなかった。04年8月、沖縄国際大学へのCH46ヘリ墜落事故を機に作成された「施設・区域外での合衆国運用航空機事故に関するガイドライン」にも事故原因を究明する調査を共同で実施することなどは盛り込まれていない。

減らないオスプレイの事故

 「航空機の機種の安全記録を代表する指標として」米軍が使用する事故率という考え方がある。これは、「延べ10 万飛行時間当たりのクラスA事故の発生件数」で定義される。クラスAとは、被害総額が200万ドル以上や死亡の発生などの大きな事故である。クラスA事故は数少ない事象であり、年に1回でも起こると一気に事故率は高くなる。その後は運用時間が増えるにつれて徐々に減少し、また事故が起こると一気に増えるといったことを繰り返す。ちなみに米海軍安全センターは、今回の事故をクラスAと評価し、被害額を95億ドルとしている(注7)。
 12年9月、オスプレイの普天間配備に当たり、政府は、オスプレイの事故率は12年4月時点で、03年からの延べ飛行時間が10万3519時間で事故率1.93であり、海兵隊所属航空機種の平均2.45と比べて事故率は低いとした(注8)。その上で、一般に航空機は飛行時間を重ねるごとに事故率は低下すると説明した。以後、政府は事故率データを示さなかったが、近藤昭一議員(民進党)の質問主意書への答弁書で最近4年間の事故率をようやく明らかにした(注9)。12年9月:1.65、13年9月:2.61、14年9月:2.12、15年9月:2.64である。さらに「琉球新報」(注10)は、米海兵隊への取材に基づき15年12月の事故率を3.69としている。オスプレイの事故率は飛行時間が増えても低下しておらず、これに関する明快な説明はない。この疑問に応えるためには、少なくともこれまでの事故を全て検証する作業が不可欠であろう。
 政府は、12年に発生したモロッコ、フロリダでの事故報告書の評価をもってオスプレイの安全性は確認されているとしている。モロッコ事故では、ヘリモードで上昇した後、ホバリング状態で170度旋回した直後に追い風を受け、エンジン・ナセル(注11)の角度を前方に傾けすぎたことで前のめりとなり墜落した。CV22のフロリダ事故では、前方機の後方への侵入が早すぎた結果、前方機による後方乱気流に入り墜落した。いずれの場合も、機体に機械的な不具合はなく、操縦ミスとされた。しかし、事故はパイロットが判断しにくい環境下で起きており、揚力不足を背景に操縦の複雑さや大気側の変化に弱いなど、人為的ミスだけで評価できない要素が大きいことは無視されている。その後、ペルシャ湾、ハワイなどでクラスAの大事故が起きたが、政府は事故報告書の入手すらせず、それらの評価を怠ってきた。例えば15年5月17日、海兵隊員が2人死亡したオアフ島(ハワイ)での事故では、垂直離着陸モードで着陸しようとした際、「塵や砂を吸い込んだ結果、左エンジンの揚力を失い、着陸に失敗した」とされている。この事故原因は機械的、構造的な欠陥そのものである。いずれにせよ、運用時間が増加しても事故が減らない本質的な理由を探ることが必要になっている。

今後、事故は日本列島全域で起こりうる

 ここで、12年10月のオスプレイ(MV22)普天間配備から4年の、日本列島における飛行実績を振り返っておこう。沖縄防衛局調査(注12)によれば、普天間飛行場における飛来状況は、24機体制になった14年4月~16年3月の2年間で見ると、離陸2544回、着陸2554回、合計5098回である。うち午後7時から10時までの離着陸983回、午後10時から翌朝7時までが208回である。1機当たり年に平均106回の離着陸をしている。また夜間飛行も初めから行っている。
 本土への飛来は、13年3月6~8日、岩国基地への3機が始まりである。その後、岩国は本土におけるオスプレイ飛来の中心となった。13年4月22日には6機が飛来、給油を受けてから韓国に向かい、4月30日、及び5月3日に岩国に戻るという形で米韓合同演習参加の中継拠点となった。13年10月16日には2機が岩国を経由して饗庭野(あいばの)での演習に参加。
 東日本への初飛来は14年7月からで、15~18日、1機が直行で厚木基地に飛来し、東富士との間を往復した。7月21日には2機が岩国経由で横田基地に来た後、丘珠(おかだま)空港(北海道)での航空祭に参加。11月6~10日、日米共同防災訓練「みちのくアラート」に3機が参加し、宮城県仙台市、気仙沼市へ飛来するが、途中で引き返したり、仙台湾での着艦訓練では着艦できなかった。15年はキャンプ富士での訓練が増え、厚木、横田周辺での旋回が目立ち、16年からは一度に飛来する機数が増加している。
 15年3月23日、米海軍佐世保基地の赤崎岸壁に強襲揚陸艦「ボノム・リシャール」からとみられるオスプレイ2機が初飛来し、タンクローリーから燃料補給を受けた。3月26日にも1機が全く同じパターンで飛来した。その後の普天間と佐世保を往復するだけの飛来も含め、佐世保基地の赤崎岸壁には少なくとも通算9回、延べ13機が飛来している。このように普天間基地配備のオスプレイの岩国、厚木、横田、佐世保への飛来は恒常化している(注13)。
 これに加え、今後さらにオスプレイの飛来増をもたらす新たな計画が目白押しである。

● 17年から陸上自衛隊木更津駐屯地(千葉県)のオスプレイ整備場運用開始。
● 17年からCV22オスプレイ10機を横田基地(東京都)配備。国内4空域(三沢、ホテルエリア(群馬県など)、キャンプ富士、沖縄訓練場(伊江島、高江))を訓練空域とし、低空飛行訓練が想定される。
● 19年度以降に陸上自衛隊が17機を購入、佐賀空港(佐賀県)が配備候補地とされている。
● 21年以降、海軍仕様の空母搭載オスプレイ2機の岩国基地配備(推定)。

 これらが予定通り進めば日本列島には日米合わせて計53機のオスプレイが配備され、木更津整備場とも相まって、現在の数倍規模で全国各地での飛来が日常化する。事故は日本列島全域で起こりうる。
 今回の事故は、固定翼モードでのプロペラ損傷により起きたが、背景には揚力不足という構造的問題がある可能性が高い。これは、垂直離着陸モードで両エンジンが停止した場合のオートローテーション機能の有無に関する議論にも波及する。この事故を契機に、オスプレイそのものの構造的な問題点を明らかにさせることが急務である。(湯浅一郎)

 注

  1. 米軍は「不時着水」とするが、「滑空しながら水平姿勢を保ち、制御された状態で徐々に降下していた」ことなどを証拠づける事実は示されていない。一方で「墜落」と断定できる根拠もない。そこで、ここでは、ただ水面に降下したという意味で「着水」という表現を使用しておく。
  2. 防衛省「不時着水したMV-22オスプレイについて」、16年12月19日。
  3. 17年1月6日、米軍は空中給油訓練も再開した。
  4. 米下院監視・政府改革委員会(09年6月23日)。
  5. 防衛省「MV-22オスプレイ」、12年6月。
  6. 「琉球新報」16年12月16日。
  7. www.public.navy.mil/NAVSAFECEN/Documents/statistics/ADS.pdf
  8. 防衛省「オスプレイの事故率について」、12年9月19日。
  9. 近藤昭一議員の質問主意書への答弁書。16年5月17日、答弁第261号。
  10. 「琉球新報」16年1月6日。
  11. エンジンを収容する両翼端の円筒部分。
  12. www.mod.go.jp/rdb/okinawa/07oshirase/kikaku/hikoujoukyou2708/10.pdf
  13. 神奈川県、山口県、佐世保市の各ウェブサイト、及びリムピース、厚木基地爆音防止期成同盟、横田・基地被害をなくす会、ピースリンク広島・呉・岩国など市民団体の監視活動などから。