米国家防衛戦略 要約

公開日:2018.03.13

アメリカ合衆国 2018国家防衛戦略の要約 

2018年1月19日

戦略的環境
国家防衛戦略は、自由で開かれた国際秩序に対する公然の挑戦と、国家間の長期間に渡る戦略的な競争が再び出現したことに特徴づけられる世界の安全保障環境が、日々複雑さを増 しつつあると認識する。このような挑戦に対処するには、我われが直面する脅威を適切に評価し、戦争の性質が変化しつつあることを認識し、国防総省の業務の仕方を転換させる必要がある。

米国の繁栄と安全保障に対する中心的な挑戦は、国家安全保障戦略が修正主義国家と分類する国家による長期的で戦略的な競争の再出現である。中国とロシアが、他国の経済的、外交的及び安全保障上の決定に対する拒否権力を獲得して、自国の権威主義モデルに沿った世界の形成を目指していることがますます明らかになりつつある。

中国は、インド太平洋地域において中国に有利な秩序を強制的に近隣諸国に再構築させるために、軍事力の近代化、影響作戦及び収奪的経済を活用している。中国は、全国家的な長期戦略による権力を行使し、経済的及び軍事的成長を続けつつ、近い将来におけるインド太平洋地域の覇権を目指し、また将来は地球規模での優位を確立し米国に取って代わることを目指した軍の近代化計画を推進し続けるだろう。本戦略の最も遠大な目標は、二国間の軍事上の関係を、透明性と不可侵の道に向かわせることである。

同時に、ロシアは、NATOを粉砕し、欧州と中東の安全保障と経済上の構造を自国に有利なものに変えるために、周辺国の政府、経済、及び外交上の決定において拒否権力を手に入れようとしている。ロシアがジョージア、クリミア及び東ウクライナにおける民主的プロセスの信頼性を損ない覆すために新しい技術を使用していることだけでも懸念を引き起こすのに十分だが、それにロシアによる保有核兵器の拡大及び近代化が加わると、ことの重大性は明白である。

戦略環境における別の変化は、回復力はあるけれど、弱体化しつつある第二次世界大戦後の国際秩序である。第二次世界大戦においてファシズムが打倒された後の数十年の間、米国と同盟国及びパートナー国は、侵略と強制から自国の自由と国民をよりよく保護するため自由で開かれた国際秩序を構築した。第二次世界大戦終結以来、現行国際秩序は進化し続けているが、米国の同盟国及びパートナー国とのネットワークが世界規模の安全保障のためのバックボーンであることに変わりない。中国とロシアは、現在、現行国際秩序の恩恵を利用しつつ、同時に秩序の内部からその原則と「交通規則」を骨抜きにして現行国際秩序を弱体化させつつある。

北朝鮮やイランなどのならず者政権は、核兵器の追求、またはテロへの支援により、地域を不安定化させている。北朝鮮は、核、生物、化学、通常、非通常の全てを混ぜた兵器を追追求することによって、また、韓国、日本及び米国に対する強制力を獲得するため弾道ミサイル能力を高めようとすることによって、政権の生き残りを保証し、影響力を増大しようとしている。中東においては、イランが、国家支援のテロ活動、拡大しつつある代理勢力のネットワーク及び自国の目標を達成するためのミサイル開発計画を使い、地域での覇権を求め争う一方で、影響力と不安定の弧を主張しつつ、周辺国と競っている。

修正主義国家及びならず者政権は、権力のあらゆる側面において競っている。これらの国家及び政権は、新たな前線に対する強制力を拡大し、主権の原則を犯し、曖昧さを利用し、非軍事と軍事の境界線を意図的に曖昧にしながら、武力紛争までには至らないレベルでの努力を増している。

米国の軍事的優位に対する挑戦は、世界の安全保障環境における別の転換を表している。数十年間に渡り、米国は、あらゆる作戦の領域において、圧倒的あるいは支配的な優位性を享受してきた。一般的に、米国は、米軍を好きな時に配備し、好きな場所で招集し、好きなように作戦を行うことができた。今日、空、陸、海、宇宙及びサイバー空間のあらゆる領域が競争にさらされている。

米国国民は、領域をまたいで、速度と範囲を増しつつある、これまでより多くの死傷者を出す、より破壊的な戦場に直面しており、その範囲は、接近戦から、海外の戦域中に広がり、米国の本土に到達しつつある。競争相手や敵の中には、目的達成のために、戦闘状態までには至らない他の競争の分野も利用する一方で(例えば、情報戦争、曖昧なまたは関与を否認している、代理勢力による活動、及び転覆)、米国の戦闘ネットワークと作戦概念を標的にすることを最大限に活用しようとしているものもいる。こうした傾向は、もし何の取り組みなされなければ、米国の侵攻を抑止する能力に対する挑戦となるだろう。

安全保障環境は、急速な科学技術の進歩と変化する戦争の質にも影響されている。新しい技術開発の推進力は途絶えることがなく、参入障壁が低いためより多くのアクターに拡大し、加速度的なスピードで動いている。新たな技術には、高度 先端 先進コンピューティング、「ビックデータ」分析、人工知能、自律化(技術)、ロボット工学、指向性エネルギー、極越音波及び生物工学が含まれる。これらは、まさに、米国が未来の戦争を戦い勝利できるようになることを確実にする技術である。

新たな商業用技術は社会を変革し、究極的には戦争の性質を変化させるだろう。技術的な進歩の多くが商業部門において行われるという事実は、米国の競争相手である国家と非国家的行為者もそれらの技術を入手できることを意味し、そのために米国が慣れてしまった、従来の米国が強すぎて勝負にならない試合が損なわれていく恐れがある。国防総省の技術上の優位性を維持するには、産業文化の変革、投資の源、及び国家安全保障上のイノベーション基盤全体に対する保護が必要だろう。

世界の舞台においては、国家が主要な行為者であるが、非国家的行為者たちも、次第に洗練度合いを増しつつある能力により、安全保障環境を脅かしている。テロリスト、国家を超えた犯罪組織、サイバー空間のハッカー及び悪意のある非国家的行為者たちは、大規模な混乱をもたらす能力の向上により、世界の状況を変化させてしまった。このことにはプラスの面もある。安全保障を維持する上での米国のパートナーも国家だけに限られないからである。多国籍組織、非政府組織、企業及び戦略的なインフルエンサーとの共同作業やパートナーシップの機会を得ることができる。物理的なカリフ制国家の崩壊にもかかわらず、イデオロギーと不安定な政治的及び社会的な構造が原因となり、テロは慢性的に発生し続けている。

今日、米国本土がもはや聖域でないことは否定できない。米国国民を攻撃しようとしているテロリストにしろ、個人の、商業の、または政府のインフラに対する悪意のあるサイバー活動にしろ、あるいは政治的な転覆や情報破壊活動にしろ、米国はその標的になっている。生活、ビジネス、政府及び軍のあらゆる側面において、コンピューター・ネットワークへの接続が増大しつつあることが、重大な脆弱性を生み出している一方で、商業的または軍事的な宇宙の利用に対する新たな脅威が出現しつつある。紛争の最中には、死活的に重要である米国の防衛、政府及び経済インフラに対する攻撃を予想しなければならない。

北朝鮮などのならず者政権は、核、化学及び生物兵器などの大量破壊兵器及び、長距離ミサイル能力を求め続け、また開発し続けている。また、イランによる長距離ミサイルの輸出に見られるように、こうした能力を悪意のある行為者に拡散している場合もある。同様に、核兵器関連技術及び進んだ製造技術の拡散が慢性的な問題になっている一方で、テロリストも大量破壊兵器を入手しようとし続けている。最近の生物工学の進歩により、化学兵器を入手する潜在的可能性が増し、入手方法がより多様になり、また入手がより簡単になりつつあり、別の懸念を引き起こしている。

国防総省の目標

本戦略を支持して、国防総省は米国本土を防衛し、世界において傑出した軍事大国であり続け、勢力の均衡が我が国に有利であり続けることを確実にし、我が国の安全保障及び繁栄を最も助長する国際秩序を推し進める準備。

中国及びロシアとの長期的な戦略的競争が、国防総省にとっての主要な優先課題であり、米国の安全保障と繁栄に対して両国が今日もたらしている脅威の重大さ、及びこうした脅威が将来増大する可能性のため、投資を増やし維持することが必要である。同時に、国防省は、北朝鮮やイランなどのならず者政権を抑止して反撃し、米国へのテロリストの脅威を打破し、資源的に持続可能な方法に移行しつつ、イラク及びアフガニスタンにおいて米国の利益を確固としたものにするための努力を維持する。

防衛目標は、以下の項目を含む。

 米国本土を攻撃から防衛すること
 世界及び要となる地域の両方において、統合軍の優位性を維持すること
 敵が我が国の死活的利益に侵略するのを抑止すること
 国内の関係省庁のカウンターパートが、米国の影響力と利益を促進することを可能にすること
 インド洋・太平洋地域、ヨーロッパ、中東及び西半球において、米国にとり有利な、地域における勢力の均衡を維持すること
 同盟国を軍事的侵攻から防御すること、強制に対抗してパートナー国を支援すること、及び共通の防衛に対する責任を公平に分担すること
 敵国及び非国家的行為者による大量破壊兵器の入手、拡散または使用を説得して断念させ、防止または抑止すること
 テロリストが米国本土及び米国市民、海外の同盟国とパートナー国に対する国外での作戦行動を指示または援助するのを防ぐこと
 公共の領域が自由で開かれていることを確実にすること
 国防総省における考え方、文化及び管理体制を変革しつつ、引き続き低コストで迅速に成果を達成すること、そして
 国防総省の業務を効果的に支え安全と支払い能力を持続させる、比類ない21世紀の国家安全保障イノベーション基盤の拠点を確立すること。

戦略的アプローチ

長期間の戦略的競争においては、外交、情報、経済、金融、インテリジェンス、法の執行及び軍事という、国力における多数の要素を切れ目なく統合することが必要である。他のどの国よりも多く、米国は、我われが有利であり競争相手が強さに欠ける場所において競争相手に挑戦するイニシャチブを握り、競争力のある空間を拡大することができる。より強力な軍隊、強固な同盟及びパートナーシップ、米国流技術革新、及び結果を出す文化が、決定的かつ持続的な米国の軍事的優位性を生み出すだろう。

米国が競争力のある空間を拡大する際、競争相手及び敵に対して協力の機会を受け入れる手を差しのべ続けるが、それは強い立場から、そして米国の国益に基づいてのことである。万一、協力が失敗した場合でも、我われは、米国市民、米国の価値、及び利益を防衛する準備を整えておくだろう。ライバルが攻撃をあきらめるか否かは、米国の強さ及び我われの同盟国やパートナーシップの活力をどう認識するかにかかっている。

戦略的には予測可能、作戦上は予測不可能に 長期的な戦略的競争相手を抑止する、または打ち負かすということは、前回の国防戦略において焦点であった地域的な敵を抑止する、または打ち負かすこととは根本的に異なる課題である。米国の強さと同盟国との統合された行動は、侵攻を抑制することに対する米国の本気度を示すだろう。しかし、米国のダイナミックな軍の使用、軍事的態勢、及び軍事作戦には、敵の決定者にとっての予測不可能性を取り入れるべきである。競争者を巧みに不利な立場に置き、競争者の努力を妨げ、米国の選択肢を広げる一方で競争相手の選択肢をなくし、かつ、競争者を不利な条件下で紛争に対峙せざるを得ないようにすることで、同盟国及びパートナー国とともに、米国は競争者に挑戦する。

国内の関係省庁と統合する 競争の空間を効果的に拡大するには、国力のあらゆる要素を利用するため、国内の関係省庁と共同で行動する必要がある。国防総省は、国務省、財務省、法務省、国土安全保障省、商務省、米国国際開発庁、及びインテリジェンス・コミュニティー、法執行機関などによる、経済的、技術上、及び情報上の脆弱な部分の改善に取り組むためのパートナーシップを見出し構築する努力を支援する。

強制と転覆を阻止する 武力紛争にまでは至らない競争において、修正主義国家及びならず者政権は、汚職、収奪的な経済手法、プロパガンダ、政治的な転覆、代理勢力、及び、現場での事実を換えるための軍事力の使用または使用の脅威を使用している。米国の安全保障上のパートナー国の中の多くの国との経済上の関係を利用することにたけているものもいる。国防総省は、国内関係省庁による取り組みを支援し、米国の利益を確保し、こうした強制を阻止するために、米国の同盟国とパートナー国のために、同盟国とパートナー国とともに、及び同盟国とパートナー国を通して業務を行う。

競争的な考え方を育てる 今日出現しつつある安全保障環境において成功するためには、国防総省と統合軍は、修正主義国家、ならず者政権、テロリスト及び脅威を与える行為者よりもよく考え、策略において勝り、より多くのパートナー国を確保し、イノベーションにおいて勝らなければならないだろう。

国防総省は、以下の3つの異なる方針に沿った努力を継続しつつ、米国優位の空間を拡大する

 第一に、より強力な統合軍を建設しつつ軍事的準備態勢を再建し、
 第二に、新たなパートナー国を惹きつけつつ同盟を強化し、そして
 第三に、国防総省の業務手法をより低コストでよりよい成果を出すために改革すること。

より強力な軍隊の構築

戦争を防止するための最も確実な方法は、戦争に勝利する準備を整えておくことである。そのためには、競争的アプローチで軍の発展に取り組み、かつ戦闘準備態勢を回復し、強力な軍隊を戦場に送るための、多年にわたる一貫した投資を行うことが必要である。米軍の規模が重要である。米国は、敵を打ち負かし、米国国民と米国の死活的利益を防衛する長続きする結果を出すために十分で有能な軍隊を戦場に送らなければならない。国防総省の目標は、紛争のあらゆる範囲の領域において高い能力を維持する一方で、起こりうる全ての紛争において決定的な優位性を有する統合軍である。

戦争準備態勢を優先する 強さにより平和を達成するには、統合軍が戦争準備態勢により紛争を抑止することが必要である。平時の通常の日々の作戦においては、統合軍は3つの要となる領域、すなわちインド太平洋地域、ヨーロッパ及び中東、において侵攻を抑止し、テロリストと大量破壊兵器による脅威を弱め、武力衝突以下のレベルの挑戦から米国の利益を守るために、持続可能な形で競う。戦時には、完全に動員された統合軍は、主要国からの侵攻を打破し、その他の場所における隙を狙った侵攻を抑止し、差し迫ったテロリストと大量破壊兵器の脅威を阻止する能力をもつ。平時においても戦時においても、統合軍は核兵器及び非核の戦略的攻撃を抑止し、米国本土を防衛する。これらの任務を支えるため、統合軍は、情報上の優位性を確立して維持し、かつ米国の安全保障上の関係を構築、強化及び維持しなければならない。

要となる能力を近代化する 過去の兵器や装備で未来の紛争を戦っていては、勝利を期待できない。米国の競争相手や敵国の野望や能力の範囲と速度に対処するためには、長期的で予測可能な予算により要となる能力の近代化に投資しなければならない。未だに対処できていない、据え置かれたままの準備態勢、調達、及び近代化要求の遅れがこの15年間の間に増大し、これ以上無視できなくなっている。国防総省は、能力とキャパシティの必要性に答えるために、的を絞った規律ある人員及び装備の増強を行う。2018年国防戦略は、計画されている国防総省の2019-2023会計年度予算をしっかりと支え、国防総省の近代化プログラムを加速させ、米国の競争上の優位を強固にするためのたゆまぬ努力に追加的な資源を投入する。

核戦力 国防総省は、核の指揮、統制、通信、及び支援インフラを含む、戦略核兵器の三本柱を近代化する。核戦力の近代化には、競争相手の核または戦略的非核攻撃の脅しに基づく強要戦略に対抗するための選択肢を開発することを含む。

 戦争遂行領域としての宇宙とサイバー空間 国防総省は、米国の宇宙能力を確実にするため、回復力、再構成、及び作戦への投資を優先する。また、サイバー空間での防衛と回復力に投資し、またサイバー能力の軍事作戦における全領域への継続的な統合に投資する。

指揮、統制、通信、コンピュータ及び諜報、監視、及び偵察(C41SR) 戦術レベルから戦略的立案に至るまで、回復力があり、生き残り可能で、連携したネットワークと情報エコシステムの開発に優先的に投資する。また、サイバー攻撃中に(攻撃した)国家や非国家主体から身を守るとともに、彼らの責任追及を行う一方で、情報を得て活用し、競争相手にはそうする優位性を与えないで、我われが攻撃元を特定することができるような能力に優先的に投資する。

ミサイル防衛 戦域ミサイルの脅威と北朝鮮の弾道ミサイルの脅威の両方に対応するための、多層的ミサイル防衛及び破壊能力に集中的に投資を行う。

戦闘環境下での統合軍の殲滅能力 統合軍は、動く戦力投射プラットフォームを破壊するため、敵の防空・ミサイル防衛ネットワークの中にある多様な標的を攻撃できなければならない。これには、複雑な地形での接近戦における殲滅能力を高めることを含む。

前方戦力の機動と態勢の回復力 攻撃を受ける中で、全ての領域において展開でき、生き残ることができ、作戦を実行し、機動でき、かつ再生できるような陸、空、海、宇宙戦力への投資を優先する。大規模、中央集権的、強固な防御設備を施していないインフラから、小規模、分散型、回復力と順応性のある、能動かつ受動的防衛を含む基地設置への移行も優先される。

最新の自律システム 国防総省は、競争上の軍事的優位性を得るため、民間の新発見の迅速な応用を含む、自律システム、人工知能、機械学習の軍事利用に幅広く投資する。

回復力と機敏さに富む兵站 事前集積した前方備蓄と弾薬、戦略的輸送力アセット、パートナー国と同盟国による支援とともに、複数領域における持続的な攻撃を受ける中での兵站の持続性を確実にするための、民間部門に依存しない分散型の兵站と整備に対する投資を優先する。

革新的な作戦概念を練り上げる 近代化は、ハードウェアのみで定義されるものではない。国防総省が軍を組織し使用する方法においても変革が必要とされる。新たな技術が戦場において何を意味するかを予想し、将来の紛争において予想される軍事的な問題を厳密に定義し、実験や計算されたリスクを負う文化を育てなければならない。我われは、米軍の競争上の優位性を高め殲滅能力を高めるような作戦概念を開発しつつも、競争相手や敵が米軍を打ち負かそうとするために、どのように新たな作戦概念と技術を用いるかを予想しなければならない。

強力、機敏で回復力のある軍の態勢と使用法を開発する 軍の態勢と使用法は、変化しつつある世界の戦略環境に存在する不確実性に対応できるように適応性がなくてはならない。米軍の使用モデルと態勢の大部分は、米国が軍事的に比類なく優越しており、主要な脅威はならず者政権であった冷戦直後の時代に起源をもつ。

ダイナミックな軍の使用 ダイナミックな軍の使用とは、事前対策的な統合軍の使用や規模が可変な使用に対する選択肢を提供しつつ、大規模な戦闘のためのキャパシティと能力を維持することを優先するものである。信頼できる戦闘能力をもち柔軟性のある戦域態勢についての近代的な世界作戦モデルは、紛争中に争いかつ作戦の自由を提供する能力を高め、そして、国の政策決定者によりよい軍事上の選択肢を提供する。

世界の戦略環境は、戦略上の柔軟性と行動の自由度を高めることを要求している。「ダイナミックな軍の使用」概念は、国防総省が統合軍を使用する方法を優先度の高い任務のために事前対策的で規模が可変な選択肢を提供するように変える。ダイナミックな軍の使用は、不測の事態に対応する準備体制を維持し、かつ長期的な戦争準備体制を確実なものにしつつ、戦略環境を事前対策的に形成するために準備ができた部隊をより柔軟に使用する。

世界作戦モデル 世界作戦モデルは、競争における及び戦時の任務を達成するためにいかに統合軍を配置し使用するかを説明している。基本的な能力には、核、サイバー、宇宙、C41システム、戦略的機動性、及び大量破壊兵器拡散対策を含む。モデルは、接触、弱体化、増派、本土の4つの層から成る。それぞれが、我われが武力紛争にまで至らないレベルにおいてより効果的に競争するのを助けるよう設計されている。敵の侵攻を遅らせ、弱めまたは阻止し、戦いに勝利する軍を増派し、紛争の拡大をコントロールし、米国本土を防衛する。

職員の能力を養成する 質の高い軍人及び文民の職員を採用、育成及び維持することは戦闘での成功に不可欠である。殺傷力の高い機動的な軍を育てるには、単に新技術及び態勢の変化以上のものが必要である。それは、任務を成功裏に達成するために、新たな能力を統合し、戦闘の方法を適応させ、省の業務のやり方を変える、米国兵士と国防総省の職員の能力にかかっている。米国兵士の創造性と才能は米国にとり長期的な最大の強みであり、努力しなければ得られないものである。

専門軍事教育(PME) PMEは、殺傷力と創意工夫を犠牲にして必修単位を取ることにより重点を置いてきたため、停滞している。国防総省は、競争相手に反撃するための新技術と技を採用する一方で、歴史の知識を深めて、戦闘の理論と実践における知的なリーダーシップと軍人としてのプロ意識を重要視する。PMEは、戦闘中の通信状態の悪化及び通信不能による影響を減らすため、戦闘の概念における活動の独立性を重要視する。PMEは、統合軍の中での信頼と相互運用性及び同盟国とパートナー国の軍隊との信頼と相互運用性を構築するための戦略的な資産として使用されるべきである。

有能な人材の管理 国家レベルでの政策決定において有能な指導者を育成するには、アームド・サービスの中での有能な人材の管理を幅広く見直す必要がある。これには、特別研究員、文民教育、関係省庁間における政策決定過程及び同盟と連合への理解を深めるための課題を含む

文民職員の専門家 近代的で、機動的で、情報において優位性を待つ国防総省には、やる気のある、多様で高い技術力を持つ文民職員が欠かせない。国防総省は情報を単に管理するためだけでなく活用するために、新たな技能を重要視し、国防総省の現在の職員に情報専門家、データ科学者、コンピューター・プログラマー、及び基礎科学研究者と技術者を補充する。国防総省はまた、外部の専門家へのアクセスを拡大し、小規模の企業、スタートアップ企業及び大学と協働するための新たな官民パートナーシップを考案して、死活的に重要な技術を省の業務に取り入れるための、簡素化された従来のやり方にとらわれない道を継続して探る。

結論

国家防衛戦略は、緊急の変革を相当な規模で達成しようとする私(国防長官ジム・マティス)の意図を明確にしている。

国防総省は、複雑さを増す安全保障環境の下で、競い、抑止し、勝利できる、我われの時代にふさわしい統合軍を戦場に送るという職務の執行において、創造的な方法を用いなければならず、持続的な投資を行わなければならず、規律正しくなければならない。支配的な統合軍は、米国の安全保障を守り、米国の影響力を高め、米国国民の生活水準を高める市場へのアクセスを維持し、同盟国やパートナー国との間の団結を強化する。

いかなる戦略も実行において適応性が必要ではあるが、本要約は、米国国民が現在享受している自由を無傷のままより若い世代に引き継ぐためになすべきことの要点を述べている。しかし、(その内容に)特に目新しいことはない。本戦略は米国国民による持続的な投資を要求しているが、米国国民が今日の生活様式を享受できるようにより大きな犠牲を払った過去の世代のことを思い起こす。

何世代にもわたってそうであったように、米軍の自由な男性と女性は、米国国民を守るために技術と勇敢さを以て戦うであろう。どんな戦略を実行するにも、知恵と資源が潤沢でなければならないと歴史が教えている。私は本戦略が、適切でかつ米国国民の支持を得るに値するものであると確信している。

ジム・マティス

(訳:ピースデポ)
出典:www.defense.gov/Portals/1/Documents/pubs/2018-National-Defense-Strategy-Summary.pdf