核兵器・核実験モニター バックナンバー

【日誌】 核・ミサイル/沖縄(16年7月21日~8月20日)

公開日:2017.04.14

APLN=核不拡散・核軍縮アジア太平洋リーダーシップ・ネットワーク/ARF=ASEAN地域フォーラム/ASEAN=東南アジア諸国連合/EEZ=排他的経済水域/IUCN=国際自然保護連合/OEWG=公開作業部会/PCA=常設仲裁裁判所/PKO=平和維持活動/THAAD=高高度防衛ミサイル

●7月24日 ビエンチャンでASEAN外相会合。共同声明(25日発表)は南シナ海PCA判決に言及せず。
●7月25日 ビエンチャンで米韓外相会談。THAAD配備を確認。
●7月25日 ビエンチャンで中朝外相会談。王中国外相「朝鮮半島の非核化を堅持」、李北朝鮮外相「中国側と友好協力関係を強固に」。
●7月26日 ビエンチャンでARF。南シナ海問題ではPCA判決巡る米中の溝は埋まらず。北朝鮮核ミサイル問題でも議論深まらず。
●7月30日付 全国44被爆者団体への朝日新聞社アンケート。「活動存続に危機感」91%、「今後も世代超え活動を続けるべき」95%。
●8月2日 防衛省、16年版防衛白書を閣議報告。中国海洋進出、北朝鮮の核・ミサイル開発を批判、在沖米軍の駐留意義を強調。先島への部隊配備の方針示す。
●8月3日 北朝鮮が朝鮮半島西岸から弾道ミサイル2発を発射。1発は直後に爆発、もう1発は男鹿半島西方の日本EEZ内に落下。
●8月4日 原水禁世界大会が開幕。広島(6日まで)と長崎(6~9日)。
●8月5日 ジュネーブで国連核軍縮OEWGの最終会期が開幕。
●8月7日 政府、11月に南スーダンに派遣するPKO陸自部隊に駆けつけ警護との他国軍との宿営地共同防護を付与へ。
●8月8日 稲田防衛相、北朝鮮の弾道ミサイル発射に備え、自衛隊にミサイル破壊措置命令を発出。今後3か月毎に更新する。
●8月9日 田上長崎市長、長崎平和宣言で核保有国首脳らの長崎訪問、非核三原則法制化、北東アジア非核兵器地帯創設を訴える。
●8月9日 国連安保理、北朝鮮ミサイル非難声明を断念。中国がTHAAD韓国配備自制を意味する文言を要求、日米が拒否。
●8月12日 四国電力、伊方原発3号機を再稼働。
●8月14日付 日本政府、宮古島などから尖閣諸島に到達可能な射程300キロの地対艦ミサイルを開発することを計画。
●8月16日 APLNが米の先行不使用政策支持の声明。(本号参照)
●8月17日付 韓国政府、20年代半ばから迎撃ミサイルSM3搭載可能なイージス艦3隻を配備すると発表。
●8月19日  国連核軍縮OEWG、核兵器禁止の法的措置の交渉を2017年に開始する勧告を採択して閉幕。(本号参照)

沖縄

●7月21日 県議会、北部訓練場ヘリパッド建設中止を求める意見書を与党の賛成多数で可決。自民反対、公明・維新は退席。
●7月22日 東村・高江でヘリパッド建設工事着工。ゲート前で機動隊が市民を強制排除。車両・テントを撤去し資機材を搬入。
●7月22日 国、違法確認訴訟を提起。辺野古埋立て承認取消しに対する国の是正指示に翁長知事が応じないのは違法と主張。
●7月25日 自民・稲田政調会長、宜野湾市役所で佐喜真市長と会談。普天間早期返還を強調するも、「5年以内」期限には触れず。
●7月26日 武装した米兵約10人、銃を持ち北部訓練場外の県道を移動。
●7月27日付 米海兵隊、「戦略展望2025」で北部訓練場部分返還を「機能強化」と強調。「限られた土地を最大限に活用」と明記。
●7月29日 全国知事会、沖縄の基地負担軽減を議論する研究会設置を全会一致で了承。
●7月29日付 県と国、先月24日にキャンプ・シュワブ内で初の遺骨収集関連調査実施。証言者も同行。
●8月1日 無人偵察機グローバルホーク2機が嘉手納基地に飛来。県内では初確認。
●8月2日 IUCN、辺野古新基地建設をめぐる勧告案について外務省の削除要請を却下。土砂搬入による外来種侵入の恐れを指摘。
●8月2日 宮古島市・千代田部落会、陸自配備に反対決議。決議書を市に提出へ。
●8月2日 沖縄防衛局、キャンプ・ハンセン一部地区早期引渡しの意向。地元の名護市・幸喜区は「細切れ返還」として反対。
●8月4日 菅官房長官、基地と振興の「リンク論」を初めて認める。稲田防衛相・鶴保沖縄担当相も同調。
●8月5日 辺野古違法確認訴訟第1回口頭弁論。翁長知事が意見陳述。
●8月7日 首相夫人・安倍明恵氏、東村・高江N1テントを訪問。
●8月8日 翁長知事、桑江沖縄市長と面談。キャンプ・キンザー倉庫群受入方針を容認。
●8月12日 在沖米海兵隊、15~17日の旧盆期間中の訓練制限を発表。
●8月13日 沖縄国際大学米軍ヘリ墜落事故から12年。県内消防11本部に放射線防護服、3本部に放射線測定機が整備されず。
●8月13日 米退役軍人団体VFP年次総会。辺野古新基地建設中止を求める決議案・東村高江ヘリパッド新設中止を求める緊急決議案を全会一致で可決。
●8月17日 東村・伊集村長、自民県議団にヘリパッド建設に伴う騒音被害の補償として交付金制度の創設を要請。他、早朝・夜間訓練の中止、飛行ルートの変更等も求める。
●8月19日 普天間飛行場の格納庫・隊舎等、老朽化で年内にも補修工事実施へ。費用は数十億円規模。日本側が負担。
●8月20日 辺野古違法確認訴訟結審。翁長知事への本人尋問。判決は9月16日。

くわしく

【連載「いま語る」67】 「核と原子力の歴史を一枚の絵に描く」 ロメイ・小百合さん

公開日:2017.04.14

 この春、博士論文の準備のため日本でフィールドワークを行っています。それで、3・4・5月は国会図書館で1960年以降の核兵器、原発関連の雑誌を読み漁りました。そして、4月に行われたG7外相会議に合わせ、初めて広島を訪れ1週間滞在、そこで、専門家、有識者、政治家、被爆者の方々にインタビューを行い、NGOのシンポジウムにも参加しました。その時印象に残っているのは、被爆者の方々が自分達の声が次世代に伝わらないかもしれないという強い危機感を持っていることに、ピースシーズのような若い世代が反応して、伝え継ごうとしていることでした。彼らは中国新聞広島平和メディアセンターのウェブサイトに平和や命の大切さを広げていく記事を執筆しています。又、紹介してくれた団体からのアドバイスで、遠方から広島へインタビューを受けに来てくれた被爆者の方に交通費を渡そうとしたところ、強く拒絶され、被爆者の中にも考え方が様々で個々に違いがあることを実感しました。
 南イタリアのカラブリア州ヴィボ・ヴァレンツィア市で、日本人声楽家の母とイタリア人建築家の父との間に生まれ、ローマで育ち、日本人学校幼稚部からフランス校の幼稚部へ移り、そのまま小、中、高校へと進みました。母からは日本語を厳しく教えられましたが、土曜日には補習校にも通っていました。仏校を選んだのは、日、伊、英語以外の言語も使えた方がいいとの両親の考えからでした。ソルボンヌ大学英文学科を卒業しましたが、言語だけでは物足りなく感じ、イタリアに戻りローマ・ラ・サピエンツァ大学で国際政治学を専攻しました。ちょうど卒業の年に東日本大震災が起こり、原発の問題に強く興味を持ち始めました。翌年、山口県の上関原発建設に反対する纐纈あや監督のドキュメンタリー映画『祝の島』の伊語字幕を作成し、シチリアの環境問題をテーマとする映画祭で紹介し、1位に輝きました。イタリアでは、2011年に原発の是非を問われる国民投票があり、日本の原発事故への関心が高まっていました。
 大学院では、イタリアで唯一、核を専門としているローマ第三大学、歴史学のレオポルド・ヌーティ教授に師事し、『日本の核政策』という題で修士論文を執筆し、現在 “Japanese Nuclear Mentality(日本人の核の精神性)”という題で博士論文を準備中です。日本の戦後史において、日本人の精神性がどのように核兵器と原子力発電所との間に相互に及ぼし合い形成されていったのかを一枚の絵にまとめ、それを俯瞰し、評価する試みです。この中で、日本は唯一の戦争被爆国であるのにアメリカの核の傘による安全保障政策を取る矛盾、ひとたび事故が起こればその被害は甚大であることが明白であるにもかかわらず原子力発電を推進し、日本中に原子力発電所が林立する矛盾がどのように生まれていったかを解き明かしたいと考えています。加えて、日本人以外の被爆者についても論究する考えです。
 2014年にローマ近郊アルミエーレ元米軍基地で行われた、ワシントンD.C.のシンクタンク「ウィルソンセンター」の Nuclear Proliferation International History Project(核拡散国際歴史プロジェクト)と大学共催のNuclear Boot Camp(核新兵キャンプ)に参加できました。そこでは、核の研究をする歴史、政治、文学、社会学の博士課程に在学中、又はこれを志望する学生が参加し、核専門家の指導の下、核に関するありとあらゆるテーマを議論し発表し、学ぶことができました。この経験により、アカデミックの世界に目が見開かれ、この世界で生きていく決意を固めました。
 今秋11月には韓国のソウルでAsia Pacific Nuclear Boot Campが行われます。昨年8月にこの準備のためのワークショップがソウルで開かれた際、中国人、韓国人の学生や研究者たちに出会う機会が多かったのに、日本の学生は言葉の壁のせいか、出会うことが少なく、世界的に孤立している感を受けたので、もっと積極的な参加を希望します。
 趣味のフィギュアスケートやバレエの他、絵も描いており、ウェブサイト(www.sayurimvromei.deviantart.com)で発表しています。技法は墨絵とデジタルを用いたものです。パリで禅の本3巻で、アメリカでは子どものためのバレエのe-bookで挿絵として採用され、出版されています。
 来る9月にスタンフォード大学に渡り、来年6月までスコット・セーガン教授の下、博論の準備と執筆を続けます。博士号取得後はアメリカでこの分野の仕事を見つけたいと願っています。
 最後に、明後日から再び広島を訪れ、オバマ大統領の歴史的スピーチを現地で感じ取る予定です。(5月24日にインタビュー。まとめ、写真:山口大輔)

くわしく

【英核戦力トライデント】 メイ新政権下の下院議会、議決で更新を再確認 スコットランド出身議員は圧倒的に反対

公開日:2017.04.14

 英国議会下院は7月18日、「英国の核戦力」を主題に討議と投票を行った。就任間もないメイ首相がこの日、「バンガード級潜水艦を4隻の後継艦に交代させて現行の核戦力を維持する」などとする動議を提出1。動議は5時間半を超える討議の末、投票に付され、賛成472、反対117の賛成多数で可決された。
 英国唯一の核戦力トライデント2は、20年代以降に耐用年限を迎える原潜4隻を交代させる更新決定が労働党政権下の06年になされた。従来、潜水艦建造の予算の「主要支出決定」を16年頃に行うとされていたが、15年11月の「防衛・安全保障見直し」(SDSR)では、更新計画の規模の大きさと複雑性を理由に、主要支出決定はせず段階的に投資計画を定める方針に変更された3。今年3月、ファロン国防相は、予算支出を決めるためではなく核戦力更新の原則を確認するため、恐らくは7月以降に下院で議決を行うとしていた4。

「EU離脱後も核抑止で欧州防衛」示す

 7月18日の議決実施は同月9日、キャメロン首相(当時)が決定した。キャメロン氏がこの日、ワルシャワのNATOサミット会場で議決実施を発表したのには、EU離脱後も引き続き欧州の安全保障に取り組むとの英国の姿勢を示す狙いがあったとも推測されている5。EU残留を訴えていた同氏は6月23日国民投票での離脱派勝利を受け辞任する意向を表明していたが、9日時点ではまだ保守党党首選の9月実施が見込まれていたことから、任期中に自ら議決を実施するつもりでいた。ところが11日、他候補の撤退で次期党首候補がメイ氏1人となったことから党首選が取りやめられ、メイ氏は同日党首に、13日には首相に就任した。キャメロン氏の議決実施決定を支持していたメイ首相6は予定通り下院で討議と投票を実施した。
 討議では目新しい論点はほとんど出なかったようだ。英米安全保障情報評議会(BASIC)の分析7によると、更新賛成派は、核保有は安全保障上の脅威を抑止する、雇用を生む、技術革新をもたらす、といったメリットを挙げた。他方、反対派は、高額かつ数値化しにくいコスト、通常兵器や保健・教育に予算を回す必要性、核兵器の反道徳性、スコットランドが核戦力を抱える不当性、水中ドローンなど新技術への潜水艦の脆弱性、などの問題を指摘した。
 投票結果の内訳を党派別にみると、賛成は保守党が322、労働党が141、その他9。反対は保守党1、労働党48、スコットランド国民党(SNP)52、その他16であった。更新反対派のコービン党首らの主張と党従来方針とのねじれを抱える労働党8は議員の自由投票とした9ところ、およそ3対1で賛成が反対を上回り、それ以外に41人が棄権または欠席した10。
 党内がほぼ更新賛成一色の保守党政権にとってこの時期の議決は、EU離脱の国民投票で生じた党内の亀裂を修復し、メイ首相の「お披露目」を行って新政権の船出に弾みをつけると共に、更新の可否などを巡り党内の足並みが乱れている労働党に打撃を加える好機だった。実際、安定多数での更新可決や労働党内での票の割れ方を見ると、そうした効果はあったのかもしれない。

スコットランド独立論の再燃も

 ただ、今回の投票結果で見逃せないのは、全員反対のSNP議員をはじめ、原潜基地を抱えるスコットランドの出身議員58人中57人が党派を超えて反対票を投じたことだ。国民投票でEU残留票が多数を占め14年住民投票時の独立機運が再燃したといわれる同地域だが、住民投票の争点でもあったトライデント更新が改めて確認されたことで、独立の論議が再活性化する可能性がある。
 イングラムBASIC専務理事は、このスコットランド独立問題のほか、更新経費がさらに膨らむ可能性、対潜戦技術の急速な発達、核なき世界を目指す国際社会の動きの加速などにかんがみ、トライデント更新問題は今回の議決で決着がついてはいないと述べている11。トライデントをとりまく状況は変化し続けており、更新政策の不合理は今後も追及されるだろう。(荒井摂子)


1 動議を含む全討議内容と投票結果は英議会議事録に掲載。https://hansard.parliament.uk/
2 核弾頭搭載の潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)トライデントⅡを配備した原子力潜水艦4隻からなる「トライデント・システム」の略称。
3 2015年版「国家安全保障戦略および防衛・安全保障見直し」(SDSR)4.76節。
4 16年3月3日付「ハフィントンポストUK」(電子版)。
5 16年7月9日付「ロイター通信」(電子版)。
6 16年7月17日付「ガーディアン」(電子版)。
7 BASICウェブサイト内(www.basicint.org)記事「Monday’s Trident Debate」。
8 本誌494号(16年4月15日付)参照。
9 16年7月19日付「BBCニュース」(電子版)。
10 16年7月18日付「ガーディアン」(電子版)。
11 16年7月18日付BASICブログ投稿。
 www.basicint.org/blogs

くわしく

<資料2>APLNの「先行不使用」支持声明

公開日:2016.12.22

 伝えられるところによれば、オバマ政権は彼の任期の最終局面で、いかに核軍備管理アジェンダを再活性化するか考慮している。長らく懸案となっている重要なイニシアチブには、米国がいかなる状況でも核兵器を先に使用しない誓約をするという「先行不使用」政策がある。

 オバマ大統領の核兵器のない世界のビジョンに目に見える前進がほとんど見られない中で、我々は長年の米国核戦略に対するこの重要な変更を歓迎する。

 オバマ大統領は核政策課題に対する力強い公約とともに大統領に就任した。彼は2009年にプラハで行った最初の主要な外交政策演説で、核兵器の脅威のない世界の力強いビジョンを明言した。彼の大統領としての功績にはロシアとの新START 条約、4回の核保安サミット、イランとの核平和利用交渉、歴史的な5月のヒロシマ訪問が含まれる。

 大胆な政策課題は立ち往生したままだ。

 「先行不使用」は象徴的な価値と、すぐれて実際的な意義の両面を持つ。その潜在的利益はありうる欠点を大きく上回っている。「先行不使用」はリスクの高いドクトリンや兵器の配備からの転換を促す。先行不使用政策は前進配備、警報即発射態勢、現場指揮官への権限事前委譲の必要をなくす。つまり事故や非承認の使用の見込みが著しく低下することになる。「先行不使用」は世界的に増大している核兵器への人道上の懸念にも応えるものである。

 もし、アメリカの例に倣って「先行不使用」が全ての核武装国家によって採用されれば、この政策は地球規模の核規制レジームの目玉となり、戦略的安定性を強化し、危機に際しての不安定さを低減させ、核兵器と通常兵器の境界線を明確にし、核兵器使用に反対する規範をさらに強固にする。

 オバマ大統領は「核兵器を使用した唯一の国として」米国は「核兵器廃絶を先導し続ける道徳的義務がある」と正しくも語った。先行不使用条約から生まれる信頼の向上は核武装国間の緊張を緩和させ、さらなる核軍縮の進展へとつながる環境の醸成に貢献する。

 われわれは米国の「先行不使用政策」を奨励し、アジア太平洋地域の同盟国がそれを支持するよう要求する。

署名者

ムン・チュンイン/共同呼びかけ人、ラメシュ・タクール/共同呼びかけ人、阿部信泰/日本原子力委員会委員、元国連軍縮事務次長、ハスミー・アガム/マレーシア人権委員会議長、元国連大使、ペ・ミョンボク/韓国中央日報論説委員、ジム・ボルガー/元ニュージーランド首相、ジョン・カールソン/元オーストラリア防衛・不拡散事務所長、サイモン・チェスターマン/シンガポール国立大学法学部長、チョン・ヨンウ/元韓国大統領上級補佐官(外交、国家安全保障)、サイ・リツニョ/中国現代国際関係研究所シニアフェロー、ジャヤンタ・ダナパラ/元国連軍縮事務次長、ギャレス・エバンス/オーストラリア国立大学総長、元オーストラリア外相、ファン・ジーシー/中国社会科学研究院戦略研究ディレクター(北京)、トレバー・フィンドレイ/メルボルン大学、国連事務総長軍縮諮問委員、マリアン・ハンソン/クイーンズランド大学、ピーター・ヘイズ/ノーチラス研究所代表、ペルベス・フードボイ/物理学教授、国連事務総長軍縮諮問委員、ファン・ヨンス/韓国核不拡散管理研究所長、ジェハング・カラマト/元パキスタン統合参謀本部議長、陸軍参謀本部、川口順子/元日本外相、キム・スンファン/元韓国外相、キショレ・マブバニ/シンガポール国立大学リークワンユー公共政策部長、元シンガポール国連常任代表、ラリス・マンシン/元外相、駐英上級委員、駐米大使、C・ラジャ・モハン/インドカーネギー財団理事長、ヘワ・マタラ・ガマジ・シリパラ・パリハッカラ/元スリランカ北部州知事、ジェフリー・パーマー卿/元ニュージーランド首相、デービッド・パイン/元ニュージーランド在マレーシア高等弁務官、カシット・ピロミャ/元タイ外相、スリン・ピツワン/元ASEAN事務局長、タイ外相、R・ラジャラマン/ジャワハラルネルー大学理論物理学名誉教授、マンプリート・セシ/空軍研究センター(ニューデリー)、シェン・ディンリ/復旦大学国際研究所副所長(上海)、ソン・ミンソン/元外相、北朝鮮研究大学学長、ラケシュ・スード/元インド首相公使(核不拡散)、カルロス・ソレタ/元駐露フィリピン大使、鈴木達治郎/長崎大学核兵器廃絶研究センター長、トン・ヌ・シ・ニン/トリビエ国際大学学長、元駐EUベトナム大使、ニャモソー・トゥヤ/元モンゴル外相、シャシ・ヤギ/元印空軍長官、シッダース・バラダラヤン/ワイヤ誌編集長(インド)、アルン・ビシュワナサン/国立高等学術研究院、インド科学研究院(バンガロール)、ウィリョノ・サストロハンドヨ/元駐豪インドネシア大使、アンゲラ・ウッドワード/カンタベリー大学(ニュージーランド)、湯崎英彦/広島県知事

(訳:ピースデポ)

原文: www.a-pln.org/statements/statements_view/APLN_No_First_Use_Statement_2016

くわしく

<資料1>米上院議員有志からオバマ大統領への書簡

公開日:2016.12.22

2016年7月20日

親愛なる大統領閣下

 最近の歴史的な広島訪問時に、貴職は核保有国に対して「恐怖の論理から逃れ、核のない世界を追求する勇気を持たねばならない」と訴えた。このビジョンを我々が生きている間に実現できないかもしれないとの認識を語る一方で、貴職は「粘り強い努力によって破滅の可能性を減ずる」と述べた。我々はそれに同意する。そして貴職の訪問に拍手を送る。

 貴職が合衆国核政策の包括的な見直しを行っているという報道に照らして、我々は合衆国の核兵器関連支出を減額し、核戦争のリスクを減らすために、貴職が執務室での最後の日々に大胆な行動を取ることを励ますためにこの手紙を書いている。我々が貴職に検討を求める措置は、過剰な核近代化計画の縮小、核兵器の先行不使用政策の採用、そして警報即発射計画を取り消すことである。これらのオプションは、全て合衆国の国家安全保障を強化し、「わが国の安全保障戦略における核兵器の役割を低減する」という、2009年プラハにおける貴職の誓約を前進させる。

 何よりもまず我々は、貴職が不必要な新型核兵器と運搬手段の生産計画を縮小することを要請する。中立的な見積りによれば、核兵器の維持と近代化計画には、向こう30年間で約1 兆ドルが必要とされる。これは、非核兵器に多額の支出が必要となった時に、我が国の防衛予算に対する巨大な圧力となるだろう。とりわけ我々は、貴職が長距離スタンドオフ兵器と呼ばれる新型空中発射式核巡航ミサイルという、核戦争のリスクを増大させるだろう不必要な能力に200億ドルを費やす計画を取り消すよう要請する。

 現行の核近代化計画を支持する者たちは、ロシアとの新START条約を議会で承認させるための取引の一部として、貴職が新型核兵器の生産を約束したと頑迷に主張している。しかし、この約束は現在と異なる予算環境の下で、核兵器近代化の総費用がまだ明らかにされない中でなされたものだ。

 無駄な核兵器支出を縮小するのに加えて、我々は合衆国の核態勢の変更を支持する。冷戦終結後四半世紀以上がたつ今も、米国は、紛争における核先行使用オプションを維持している。このオプションを保持することによって、奇襲攻撃に対する相互の恐怖は増幅され、他の核武装国に対して保有核兵器の高度警戒態勢を維持する圧力が加えられ、意図せざる核戦争のリスクが増大する。

我々の比類のない通常兵器の軍事能力に照らせば、我々は本土や同盟国への非核攻撃を抑止するために核の先行使用による威嚇に依存する必要はない。先行不使用政策を採用することによって、合衆国は、我々の安全保障に対する通常兵器と核兵器による脅威の両方を抑止しつつ、偶発的な核紛争のリスクを減少させることができるであろう。

 最後に、合衆国は現在、核攻撃警報があれば、即、核兵器を発射する計画を維持している。この政策は危機に際して大統領が注意深く思慮する能力を損ね、誤警報の際に悲惨な過ちが犯される可能性を高める。不慮の核戦争のリスクをさらに低下させるため、我々は警報即発射方式を中止することによって、司令官が核兵器の使用を検討することのできる時間を長くすることを支持する。

 核戦争はアメリカの国家安全保障に由々しきリスクをもたらす。広島と長崎への核爆撃の教訓は明白である。核兵器は二度と使用されてはならない。我々は核戦争のリスクを低下させ米国の安全保障上の利益を守るために、なしうる全てのことをなさねばならない。

敬具

合衆国上院議員
エドワード・J・マーキー
ダイアン・ファインスタイン
アル・フランケン
バーバラ・ボクサー
ジェフリー・A・マークリー
バーナード・サンダース
エリザベス・ウォレン
シェロッド・ブラウン
パトリック・リーヒ
ロン・ワイデン

(訳:ピースデポ)

原文:
www.markey.senate.gov/imo/media/doc/7-20-16%20EJM%20Letter%20to%20President%20Obama%20on%20Nuclear%20Weapons.pdf

くわしく

オバマ政権、核「先行不使用」を検討か―被爆国日本は支持表明を!

公開日:2016.12.22

 7月10日、米ワシントンポスト紙は、オバマ米大統領が7か月後の退任を前に、紛争時に核兵器を先に使用しない「先行不使用」政策の採用や国連安全保障理事会での核実験禁止決議、ロシアとの新START条約の5年間延長、警報即発射態勢の解除、核兵器近代化予算の削減などを含む、核政策変更を検討している、と報じた。

 「先行不使用」に関しては、10年2月、核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)日本と民主党核軍縮促進議員連盟所属の国会議員が中心となり、米国が、先行不使用とほぼ同義の、敵国による核攻撃を抑止することを核兵器の「唯一の目的」とすることを支持する国会議員204名分の署名をオバマ大統領宛てに送った1。核態勢見直し(NPR)が進んでいる中で、米国に政策転換を促すことが目指されたが、米国は機が熟していないとして、これを見送った経緯がある。

 米国内では、7月20日、民主党上院議員10名が連名の書簡をオバマ大統領に送付した(3ページ・資料1に全訳)。書簡は、「先行不使用」などの政策オプションは「合衆国の国家安全保障を強化し、 09年にプラハで大統領が誓約した『安全保障戦略における核兵器の役割の低減』を前進させる」と訴えた。

 8月16日には核不拡散・核軍縮アジア太平洋リーダーシップ・ネットワーク(APLN)2がアジア太平洋の米同盟国に対し、「先行不使用」支持を求める声明を発表した(4ページ・資料2に全訳)。同声明の署名者には阿部信泰・日本原子力委員会委員/元国連軍縮事務次長、川口順子・元外相、鈴木達治郎・長崎大学核兵器廃絶研究センター長、湯崎英彦・広島県知事が名を連ねている。

 日本においては、広島・長崎市長、民進党岡田代表、公明党山口代表らも、米の「先行不使用」政策への転換を支持、ないしは好意的な見解を表明している。7月27日にはNGO核情報、原子力資料情報室、原水禁の呼びかけで日本政府へ「先行不使用」支持要請の書簡3が送付された。

 8月12日の米ウォールストリート・ジャーナル紙はケリー国務長官、カーター国防長官、ムニス・エネルギー庁長官ら主要閣僚が「先行不使用」に異論を唱えていることを報じている。同記事には日本を含む核の傘依存国の反対論も引用されている。

 「先行不使用」が、核軍縮における一歩の前進であることは間違いない。日本が唯一の戦争被爆国として、これを支持するべきであることは論をまたない。しかし、報復のための(第2撃)核使用や、通常戦力による抑止力強化を認めるという点で、「先行不使用」の採用は、極めて不充分な政策変更であることを忘れてはならない。(山口大輔)

注:
1 本誌347-8号(10年3月15日)。
2 ギャレス・エバンス豪元外相らが呼びかけ人となり、11年に発足した。アジア太平洋諸国の現・元高官、政治家、研究機関のリーダーなどからなる。
3 「核情報」ウェブサイト:http://kakujoho.net/npt/lttr_nfu.html#d2

くわしく

<資料>OEWG報告書(抜粋訳)

公開日:2016.12.19

2016年8月19日
A/AC.286/CRP.3(口頭修正版)

67.作業部会は、総会に対して、すべての加盟国に開かれ、国際機関並びに市民社会が参加し貢献する、第34節に概説されたような、核兵器を禁止しそれらの全面的廃棄に導く法的拘束力のある文書を交渉するための会議を2017年に開催するよう、幅広い支持のもとに4勧告した。作業部会は、他の国々5は前記勧告に同意せず、多国間核軍縮交渉の前進のためのいかなるプロセスも、国家的、国際的及び集団的な安全保障上の懸念を考慮しなければならないことを勧告し、40節及び41節で合意されることなく概説された、多国間核軍縮交渉を前進させるための、並行的及び同時的な、効果的法的措置及び非法的措置の追求を支持したことを認識した。作業部会はさらに、他のアプローチに関する見解が表明されたことを認識した。

原注:
4 本勧告を支持した国は、アフリカ・グループ(54か国)、東南アジア諸国連合(10か国)、及びラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(33か国)、並びにアジア、太平洋及び欧州のいくつかの国などからなる。
5 本勧告を支持した国は、前(漸)進的アプローチを推奨した24か国などからなる。

(訳:ピースデポ)

くわしく

国連公開作業部会17年「禁止条約交渉」開始を勧告 投票による多数決で波乱の幕切れ―議論の舞台は国連総会へ

公開日:2016.12.16

8月19日、ジュネーブで最終(第3)会期が開かれていた国連核軍縮公開作業部会(OEWG、議長:タニ・トングファクディ・タイ大使)は、国連総会に対して「核兵器を禁止し全面的廃棄に導く法的拘束力のある文書」を交渉するための会議を2017年に開催することを、「幅広い支持のもとに勧告する」報告書を採択して閉幕した。2月から8月にかけての正味20日近くに及ぶ議論は、核兵器禁止交渉の開始を求める非核兵器国の勝利で終わった。最終日には、全会一致での採択という大方の予想に反して、報告書が投票に付されるという波乱があった。議論の舞台は9月13日に開会する国連総会に移る。

最終日のドラマ―全会一致から一転、投票に

「法的拘束力のある核兵器を禁止する文書の交渉を2017年に開始するべき」と主張する「核兵器禁止推進派」(多数派)と、「そのような交渉は時期尚早。安全保障上の懸念を考慮して現実的な諸措置を取るべきである」と主張する、日本を含む核兵器依存国=「前(漸)進的アプローチ派」の間の溝は、最終日を迎えてもついに埋まることはなかった。議長の努力と各国政府代表の協力でギリギリまで非公式の折衝が続けられた結果、報告書最終案の「V.結論と合意された勧告」のうち第67節は「核兵器禁止交渉の2017年開始」と「現実的な諸措置」の両論を併記し、作業部会は2つの「勧告があったこと」を「認識した」という文面になっていた。これは、全会一致での採択を追求する立場からなされた苦肉の妥協案であった。「禁止推進派」の国々も不満足ながらこれが全会一致できる最善であり、これで採択されることもやむなしという認識にほぼ到達していた。

 ところが、採択手続きに入る前の最終討論で、「前(漸)進的アプローチ派」24か国中の14か国を代表して発言に立った豪州が「、2017年に禁止条約交渉の会議を開催するとの提案を行っており承認できない」と報告書案に異を唱えた。そして、いよいよ議長が採択手続きに移ろうとしたその時、豪州は今度は「一国の資格での発言」と断った上で次のように「報告書全体の投票」を求めた。
「我々はこの報告書の採択を支持できない。報告書全体の投票を行い、立場を明らかにしたい。国家的・国際的安全保障の深い問題が争点になっている。妥協できる文言を探る真摯な努力は十分理解するが、この状況では明快さが必要だ」。

「禁止推進派」の歴史的勝利

 この予期せぬ事態を受けて、2段階の投票による採決が行われた。投票方式は総会の通常の方法である挙手によった。
 第1段階は、グアテマラから口頭提案された報告書の修正案に対する採決である。この修正案は前記の「勧告があったことを……認識した」を「勧告した」に変更するものであった。これは、賛成62、反対27、棄権8で可決された。
 続いて第2段階として、修正された報告書案全体に対する投票が行われ、結果は、賛成68、反対22、棄権13であった。3分の2近い賛成多数で採択された報告書の第67節を資料に示す。「核兵器禁止条約の交渉のための会議を2017年に開催するよう、国連総会に勧告する」旨が明記されている。
 これまでの議論の流れから、投票にかければ、報告書の両論併記的部分が「禁止推進派」の意向に沿って修正されて真の「勧告」に「昇格」し、それが圧倒的多数で採択されることは十分予測可能であった。相手方を利するリスクを冒してなお「投票」を主張した豪州の真意は不明である。禁止条約交渉開始に反対した事実を鮮明にして記録に残したかったということだろうか。
 その点がどうあれ、「禁止条約交渉2017年開始」の勧告が勝ち取られたことが、「禁止推進派」の国々およびそれと共同歩調を取ってきた被爆者、NGOや市民にとって歴史的な勝利であることは間違いない。この勧告を背景にして国連総会で新しい交渉開始決議が採択されれば、2017年には「禁止条約交渉」を主題とする会議が開かれることになる。
 ただ、OEWG報告書が全会一致ではなく多数決で採択されたという事実が、総会における新決議の議論にどのような影響を与えるかについては、不透明さが残ることも事実である。多数決採択によって「核兵器禁止交渉」に中間的な国々が「反対」もしくは「棄権」に追いやられた側面は否定できない。特に、挙手による投票は記名投票とは違うものの、いったん反対を表明した国々は、総会で一転、賛成に回ることが難しくなるかもしれない。禁止推進派が多数派であるとの事実が明記されている以上、両論併記的なものであったとしても全会一致の報告書のほうが多数決採択のものより事実上の重みをもち、総会に提出される禁止条約交渉開始決議へのより強力な支えになりえたと考えられなくもない。いずれにせよ、禁止条約の早期締結を目指す国々や市民が今、目指すべきなのは、勝ち取られた「2017年交渉開始」の勧告を含むOEWG報告書を最大限生かしつつ、国連総会での禁止条約交渉開始決議の内容を熟議し、これを採択に持ち込むことだろう。

露わになった日本の偽善的態度

 豪州と共に報告書に異を唱えた13か国に日本は加わっていない。「前(漸)進的アプローチ派」 24か国の間に何らかの方針の食い違いが発生した可能性がある。だが私たちが見過ごしてならないのは、OEWG各会期を通じて「禁止のための交渉は時期尚早」「安全保障上の懸念を考慮すべき」と同派の先頭に立って主張してきた日本が、採決で反対でなく棄権票を投じたことだ。日本政府代表は投票後の説明で「日本は核軍縮に関する基本的立場から棄権した」とし「核兵器のない世界を創るには核兵器国と非核兵器国の協働が不可欠だと信じる」と述べた。しかし、事実は国連総会が「すべての国が作業部会に参加することを奨励した」(報告書13節)にもかかわらず「核兵器国、核兵器保有国は参加しなかった」(同節)のである。この事実を無視してあたかも核兵器国の代弁者のように振舞いながら、全会一致ができなくなった途端、「棄権」によって自称・橋渡し役の体面を取り繕ったことは偽善であり欺瞞という他はない。
(田巻一彦、荒井摂子)

付記:ピースデポは、8月第3会期の後半(8月16 ~19日)に荒井事務局長をジュネーブに派遣しました。現地報告がウェブサイトに掲載されているのでご参照ください。
www.peacedepot.org/menunew.htm

注1:ポーランド、ブルガリア、ハンガリー、韓国、イタリア、ベルギー、スロバキア、ルーマニア、ラトビア、エストニア、ルクセンブルク、トルコ、リトアニア、そして豪州。

くわしく