<資料1>交渉会議組織会合におけるアイルランドの声明(全訳)

公開日:2017.07.14

2017年2月16日
ニューヨーク国連本部

 議長、

 アイルランドはこの組織会合への出席をとても喜んでいます。始めに、諸々の準備作業をしてくださった国連軍縮局(UNODA)にお礼を申し上げます。おかげで今日の会合が実現しました。アイルランド代表団は、コスタリカがエレイン・ホワイト・ゴメス大使を指名したことを心から歓迎し、彼女がこの外交会議の議長に就任することを支持します。代表団一同、3月27日に議長が選出され、会議の諸文書が正式採択されることを期待しています。代表団は特に、この会議を設置する決議で約束されたように、これからの交渉で市民社会が果たす役割を歓迎します。市民社会のパートナーの皆さんの支持と働きかけなくしては、ここまで来られませんでした。市民社会と私たち政府との全面的、積極的な関わりを歓迎します。

 昨年10月、第1委員会開会中のまさにこの建物、この部屋で、アイルランド代表団は、パートナー国のオーストリア、ブラジル、メキシコ、ナイジェリア、南アフリカと共に、この外交会議の設置を求める国連決議を提案しました。会議のマンデートは、核兵器を禁止し完全廃棄につなげるための新たな法的文書を交渉することです。この決議が基礎にしたのは、昨年ジュネーブで開催されタイのタニ・トングファクディ大使が非常に優れた手腕で議長をお務めになった、公開作業部会(OEWG)での知見やその最終報告書でした。そのOEWGは、アイルランド、オーストリア、メキシコ、南アフリカが2015年に第1委員会に提案した決議の結果として実現したものです。そしてその決議は、オスロ、ナヤリット、近くはウィーンでの3つの「人道上の結末」会議の成果の上に成り立っています。それら会議の成果は「人道の誓約」に結実しました。同「誓約」に言及されている、法的ギャップを埋めるための選択肢は、新アジェンダ連合によってNPT再検討プロセスに提出された、いくつかの作業文書の中で示されていました。新アジェンダ連合とは1998年に設立された国家集団で、アイルランドはその創立メンバーであり現連絡調整国です。

 アイルランド代表団がこの問題に関わるようになって20年近くになります。実際、核軍縮は、アイルランドの政府、議会、そして国民にとって、この国際連合への加盟当初からの優先課題でした。当時の外相フランク・エイキンは1957年以来、核軍縮の緊急の必要性について国連で幾多の演説を行い、そうした努力の結果、アイルランドは求められてNPTの最初の署名国になりました。アイルランド代表団にとっては、フランク・エイキンによる署名から今日の取り組みまでが途切れることのない1本の線でつながっています。アイルランドのNPTに対する忠誠は揺るぎません。我々はNPTの普遍化のみならずその履行を望んでおり、そこには条約第VI条の完全履行も含まれます。第VI条の完全履行こそ、この外交会議の招集を実現したい、核軍縮に関する効果的な交渉の進展を確実にしたいという私たちの決意の原動力です。NPTに対するこの歴史ある忠誠は、ルールに基づいた国際秩序と、その秩序の内にある小国の重要な―さらに言えば不可欠な―指導的役割とに対する私たちの信頼の、まさに核心に通じています。よく言われるように、核軍縮は核兵器を持つ大国の課題なのかもしれません。しかし、それは核兵器を持たない小国にとっても等しく重要であり、NPTの下ではそれら小国にとっても同等の責務なのです。NPTは通常、不拡散体制の礎石と評されますが、礎石であるということは何を意味するでしょうか。それは建物全体がその上に築かれている石だということです。私たちNPT締約国は、その責任を真摯に受け止め、率先して模範を示さなければなりません。それこそが、私たち皆が今日ここで行っていることです―そう私は望んでいます。これは一歩です。これだけでは足りないでしょうが、たしかな一歩です。

 土台、礎石、柱といった石造建築に関するたとえは有効ではありますが、NPTが何か石に刻まれていたりある時点で凍結されていたりするような不変のものだと誤解してはなりません。すべての条約と同様、それは生きた文書であり、自らこれが最終的結論だと主張したことは一度もなく、VI条のうちにさらなる効果的措置と補完的な条約とを構想しています。条約の核心部分にはダイナミックな緊張関係があり、核兵器へのいかなる権利も永久に保護することはせず、その代わり軍縮プロセスが前進する限りにおいては核兵器が存在するとの現実を認める、という大取引(グランドバーゲン)が存在します。「前進する」がここでの最も重要な言葉です。というのは、NPTの多国間核軍縮の柱において目立った進展はほとんどなく、今日が20年以上前のCTBT以来、初めての核兵器に関する多国間交渉の幕開けとなるからです。そのCTBTですが、かつてないほど重要性が高まっているにもかかわらず、残念ながらいまだに発効していません。私たちはより広範な安全保障状況を無視できませんし、すべきでもありません。使用の威嚇がタブーではなくなってきているという憂うべき状況があり、違法な核実験が絶えることなく、いわゆる近代化に莫大な投資がなされ、より戦略的な核兵器、標的を絞った使い勝手の良い核兵器について語られています。現在出回っている言説の中で最も危険なものの1つは、いかなる核兵器であっても何らかの制御されたやり方であれば再び使うことができるという考えです。核兵器は、これまでに発明された中で最も強力で最も無差別な大量破壊兵器です。私たちは今や、核兵器がもたらす壊滅的な結末について、また、いかなる適切な人道上の対応も不可能だということを知っているのですから、それらが二度と使われないよう、あらゆることをしなければなりません。

 持続可能な開発目標、そして移住という大問題についての、ここ国連での取り組みを通じて、私たちは多くの国家からなるけれども1つの小さな惑星を共有しているのだということが、改めて確認されています。人類は、戦争はもう沢山だと思っており、それが私たちがこの会場にいる理由です。このことを決して忘れてはなりません。核兵器は国境を尊重することはなく、その影響は誰にも制御できません。古いことわざを引くならば、「虎に乗るものは食われることを恐れて降りるのが難しい」。しかし彼は降りねばなりません。私たちがここにいるのは、これらの毒性兵器にいまだに頼っているものたちを手助けして、彼らのそれら兵器に対する見方を私たち多数派と同じものにしてもらうためです。非人間的で、見境がなく、いかなる合法的な使用もありえないという見方に変えてもらうためです。変化が訪れるのは、現状がより居心地が悪くなり、何か新しいことをするほうが現状を維持するよりも居心地悪さの度合いが少なくなった場合だけです。昨年、100を超える国々が、今が変化の時だと決意しました。アイルランド代表団は議長と副議長団そして事務局を支える用意があります。我々は変化を起こす責任を引き受けつつ、もっと多くの国々がこの挑戦に加わることを願っています。アイルランドは、幅広い国々、とりわけ途上国や比較的小さな国々が勇気をもって今日ここに参加してくださったことを歓迎します。ジュネーブのOEWGでは、それら諸国の声、中でも多くの女性の声が、非常に力強く、また欠かせないものとしてありました。私たちは他の多くの国々が今日の会合を見守っていることを知っています。すでに心を決めている国もあるかもしれません。彼らに訴えます。変化の可能性に心を開き続けてください。私たちのここでの取り組みは全人類を、その希望のすべてを、安全のすべてを守るためであることを分かってください。3月27日、そして6月15日に、ここ国連に来て私たちに加わってください。歴史の流れに乗って、よりよい未来を築くために。

 ありがとうございました。
(訳:ピースデポ)
原文:
 https://www.un.org/disarmament/ptnw/statements/pdf/Ireland-Statement-16-February-2017.pdf