<資料>航行の自由プログラムに関するファクトシート 米国防総省、2015年3月

公開日:2017.09.28

歴史的背景

 建国以来、合衆国は、航海の自由を保全することは重要な国益であると主張してきており、その利益を守るために必要に応じて軍隊を派遣してきた。創設間もない米海軍の最初のミッションの一つは、大西洋や地中海及び隣接する水域において、海賊やその他の海洋上の危険から米国の商業船の安全な運航を守ることであった。同様に、ウッドロー・ウィルソン大統領は米議会に対して、彼の有名な14か条の平和原則演説の中で、米国や他の国々が第一次世界大戦を戦って得ようとしている普遍的な原則のうちの一つは、「海上航行の絶対的な自由」であると語った。そして、米国が第2次世界大戦に参戦する3か月前、フランクリン・ルーズヴェルト大統領は米国民に対して、炉辺談話(訳注:1933~44年にかけてルーズヴェルトが国民に語りかけたラジオ番組(計30回放送))の一つのなかで、「海上及び航空パトロールには、航海の自由という米国の政策を維持する任務が与えられている」と宣言した。歴史が示すように、米国の国益と航海の自由を保持するという政策は、性格において長期にわたるものであり、範囲において世界的なものである。

米国の航行の自由プログラム

 1983年の「合衆国の海洋政策」に述べられているように、合衆国は、国連海洋法条約に反映された「諸利害のバランスに沿ったやり方で、世界的な規模での海洋に関する権利、自由及び利用を行使し、また主張する」。幾つかの沿岸諸国は、合衆国が行き過ぎていると考える海洋上の要求を主張してきた。実際、そういった要求は、海洋に関する国際法に合致せず、また、国際法を管轄する機関の下ですべての国家に保障されている海洋及び空域に関する権利、自由及び利用を侵害するものである。しかし合衆国は、「国際社会の権利と自由を制限することを目的とした他国の一方的な行為を黙認することはない」。
 1979年以来、この国益を保持し、沿岸国が主張する過度な海洋に関する要求を黙認しない姿勢を示すため、大統領は航行の自由プログラムを実施することを政府に指示している。合衆国の航行の自由プログラムは、以下を含んでいる。(1)合衆国外交官(すなわち、米国務省)による協議や表明、(2)軍による作戦行動(すなわち、国防総省の航行の自由プログラム)。

国防総省の航行の自由プログラム

 国防総省の航行の自由プログラムの範囲は包括的である。同プログラムは、国際法の下ですべての国家に認められた海洋及び空域に関するすべての権利、自由及び合法的使用を包含している。同プログラムは、可動性とアクセスを確保するという国防総省のグローバルな利益に基づいて、世界のあらゆる地域の沿岸国による過度な海洋に関する主張に対して積極的に実行されている。同プログラムは原則に基づくものである。つまり、過度な海洋に関する主張をする国がどこなのかということではなく、海洋に関する主張が過度なものなのかどうかによって執行されるということである。その結果、軍は、潜在的な敵や競争相手によるものだけでなく、同盟国、友好国、その他の国々による過度な主張に対しても挑戦する。同プログラムは、沿岸警備隊を含めたすべての軍種から戦力を動員して行われる。同プログラムは、財政的な制約のある環境で効率性を確保するために、航行の自由作戦(すなわち、過度な海洋上の主張に挑戦することを主要な目的として行われる作戦)と、他の航行の自由に関する活動(すなわち、主目的は他にあるが、二義的な効果として過度な要求に挑戦することになる活動)の両方を含んでいる。
 国防総省は、国防総省の航行の自由プログラムを合法的かつ責任をもって実行する。国防総省の航行の自由プログラムの下で行われる行動は、慎重に計画され、法的に検討され、適切に承認され、専門性をもって実行されている。
 毎年、国防総省は航行の自由に関する年次報告書をまとめている。これらの報告書は、米軍によって行われた航行の自由作戦と他の航行の自由に関わる活動に関する機密扱いではない要約であり、特定の沿岸国及びその年に遭遇した過度な要求の内容を特定している。これらの報告書は、国防総省のウェブサイトに掲載されている。これらは、過度な海洋上の主張に対して合衆国が黙認しないことを、軍の活動の安全性を犠牲にすることなく、透明性をもって明らかにすることが目的である。
(訳:ピースデポ)