核兵器・核実験モニター バックナンバー

【日誌】核・ミサイル/沖縄(16年1月21日~2月20日)

公開日:2017.07.24

CD=ジュネーブ軍縮会議/DPRK=朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)/IMO=国際海事機関/OEWG=公開作業部会/SM3=スタンダード・ミサイル3/PAC3=改良型パトリオット・ミサイル3/PFOS=パーフルオロクタンスルホン酸


●1月22日 イラン核合意の履行受け、日本の対イラン制裁の解除を閣議了解。
●1月22日 岸田外相とケネディ米駐日大使、16~20年度「思いやり予算」特別協定案に署名。11~15年度総額を133億円上回る。
●1月20-22日 14機の米ステルス戦闘機F22が横田基地に飛来。
●1月23日 習中国国家主席がテヘランでロウハニ・イラン大統領と会談。原発2基建設含め今後2年で総額6千億ドルの貿易を合意。
●1月28日 ジュネーブで国連核軍縮OEWGに向け非公式運営会議。佐野国連軍縮大使が出席、全会一致方式など主張。(本号参照)
●1月28日 日本政府、DPRKにミサイル発射の兆候ありとして破壊措置命令。非公表。
●1月29日 関西電力、高浜原発3号機を再稼働。プルサーマル発電で全国初。
●1月30日 横須賀配備の米イージス艦、中国が実効支配する西沙諸島の中建島12海里内を航行。「航行の自由作戦」の一環。
●2月1日 中国軍再編。80年代からの7軍区制が廃止、5戦区導入。即応体制強化。
●2月2日 DPRKがIMOに対し今月8~25日に「地球観測衛星」打上げを通告と判明。
●2月3日 日本政府がDPRKミサイル破壊措置命令を公表。日米韓、制裁視野に連携確認。
●2月3日 防衛省、DPRK衛星打上げ予告受けSM3搭載イージス艦3隻を日本海、東シナ海に派遣、首都圏と沖縄にPAC3配備へ。
●2月4日 安倍首相、衆院予算委で憲法改正を参院選の争点とする旨を明言。憲法9条2項改正の必要性にも重ねて言及。
●2月6日 DPRKが「衛星」打上げ期間を今月7~14日に変更と通告。
●2月7日 DPRKが地球観測衛星「光明星4号」を南に向け発射。機体は沖縄上空を通過。
●2月7日 国連安保理、DPRKの「衛星打上げ」受け緊急会合。安保理決議への重大な違反として強く非難する報道声明を発表。
●2月8日 日本政府、DPRKミサイル破壊措置命令を解除。イージス艦とPAC3も撤退へ。
●2月9日付 防衛省、民間の船員を予備自衛官として有事に活用する計画進める。海員組合は「事実上の徴用」と反発。
●2月9日 韓国国防省、DPRKミサイルの射程は米東海岸に届く1万2千キロと分析。
●2月9日 CDでDPRK代表、「地球観測衛星の打ち上げ」「宇宙の平和利用」と主張。
●2月10日 韓国政府、南北協力事業の開城(ケソン)工業団地の操業を全面中断。
●2月17日 外務省が日本の国連核軍縮OEWG参加を正式発表。(本号参照)
●2月18日 米国の対DPRK制裁法、オバマ大統領が署名し成立。核・ミサイル開発関与者への資産凍結、米渡航禁止など。
●2月19日 日本政府、DPRKへの独自制裁を閣議決定。送金原則禁止、船舶入港禁止、人的往来の規制強化。
●2月19日 戦闘が激化するシリア情勢めぐり国連安保理が緊急会合。ロシア提出の決議案採択を米仏が拒否し物別れ。
●2月20日付 米の50年代マーシャル諸島での核実験で被曝したとして、周辺海域にいた元漁船乗組員らが船員保険の適用申請へ。

沖縄

●1月21日 北谷浄水場・比謝川などでのPFOS検出問題。県、沖縄防衛局へ米軍の薬剤使用確認・基地内への立ち入り調査を要請。
●1月22日付 米海兵隊、「海兵隊航空計画2016」を策定。辺野古代替施設に5年で10施設建設。普天間飛行場返還は「25年以降」。
●1月22日 名護市教委、キャンプ・シュワブ内沿岸部及び陸上部の遺跡認定を申請。
●1月22日 辺野古移設関係業務・工事の契約業者65社中14社に防衛省・自衛隊OBが再就職。参院決算委で中谷防衛相が答弁。
●1月24日 宜野湾市長選。現職・佐喜真氏が27,668票で再選。新人・志村氏に5,857票差。投票率68.72%。
●1月25日 米アラスカ州からステルス戦闘機F22ラプター12機が嘉手納基地に飛来。
●1月26日付 PFOS検出問題。米太平洋空軍、基地内向けに「飲み水は安全」とする通知文。県企業局と「同意した」と記載。
●1月26日 米陸軍汎用揚陸艇「LCU2000」2隻、伊江港に初入港。車両やコンテナ等の備品を運搬。県、入港を把握せず。
●1月28日 「政府・沖縄県協議会」、首相官邸で第1回会合。
●1月29日 辺野古埋代執行訴訟第3回口頭弁論。福岡高裁・多見谷裁判長、県・国双方に異例の和解勧告。
●1月31日 北谷町ダイオキシン検出問題。沖縄防衛局が住民説明会を開催。ダイオキシン以外の特定有害物質の数値は公表せず。
●2月1日 辺野古埋立承認取消執行停止めぐり国地方係争処理委への県の不服申請が却下されたことを受け、新たに国を提訴。
●2月2日 県、米軍基地の環境汚染調査のため「環境調査ガイドライン」を策定へ。17年度からの運用目指す。
●2月6日 北朝鮮のミサイル発射通告を受け、石垣市新港地区にPAC3を配備。
●2月9日 米海兵隊、F35運用に向けた施設整備計画を本格化。17年会計年度予算案に2,640万ドル計上。嘉手納基地にも整備計画。
●2月10日 キャンプ・ハンセン内で山火事発生。原因は実弾射撃訓練。18時間後に鎮火。
●2月12日 北谷町、沖縄市、嘉手納町でつくる三連協、外務省へ嘉手納基地への外来機暫定配備の全面中止を要請。F22、F16の飛来で騒音激化。
●2月15日 辺野古代執行訴訟第4回口頭弁論。知事、「暫定案」での和解に前向き。国の工事停止が条件。
●2月17日付 外来機飛来で嘉手納町・沖縄市・北谷町の各地で騒音2~4倍に。北谷上勢、10日間で70db以上を459回測定。
●2月17日 軍転協定期総会。政府などに対し米軍基地の返還促進・地位協定改定・普天間飛行場の固定化阻止を要請する方針。
●2月18日 第3次嘉手納爆音訴訟口頭弁論。夜間騒音の影響で「年間4人死亡」と推計。
●2月20日付 60年代の米軍統治下の沖縄で撮影された核兵器の写真が米国立公文書館から見つかる。
●2月20日 辺野古代執行訴訟。高裁提示の「根本案」での和解協議は決裂の見通し。県、「非公開では対応判断できない」と説明。

くわしく

【特別連載エッセー「被爆地の一角から」94】  
「誰にでもできる政治参加へ」土山秀夫

公開日:2017.07.24

 年明け早々の1月11日、その種の集会としては珍しい「キックオフ集会」と銘打った集まりに出席した。学生を主とした若者の参加があったためか、サッカーかラグビーの催しかと見まちがえる呼び名は、実は政治的な、極めて今日的なテーマに続くものであった。
 『戦争法廃止を求める2000万人統一署名キックオフ集会』が正式な名称なのである。呼びかけ団体は「戦争への道を許さない!ながさき1001人委員会」「憲法改悪阻止長崎県共同センター」「女の平和in長崎」「N-DOVE(学生団体)」であり、これら4団体が共同して統一署名活動を始めようというのだ。もともと東京で大江健三郎さんらを中心とした「戦争をさせない1000人委員会」と他の3団体が話し合って『総がかり実行委員会』を立ち上げ、2000万人戦争法の廃止を求める統一署名を行おうと全国に呼びかけたのが始まりで、被爆地ながさきが逸(いち)早くこれに呼応して、県下で20万人を目標に活動を開始したのだった。
 筆者はこれまで各種の署名活動の要請を受け、その趣旨に賛同の場合はなるべく応じてきたつもりである。しかし甚だ不謹慎な言い方であるが、署名の効果についていつも頼りなさを感じていたことを告白しなければならない。政治家が署名目的や署名人の名簿にいちいち目を通す保証はなく、よほどのことがない限り、秘書や取り次いだ人間の手で処分されてしまうのが落ちではないか、との疑念を捨て切らないでいた。だが今回ばかりは今までにない衝動めいた意欲が起こり、積極的に取り組んでみようと決心した。署名位しなければ、と追いつめられた心境とも言えた。
 今年の1月4日、安倍晋三首相は年頭の記者会見で質問に答えて、夏の参院選時に「衆参同時選挙を行うことは全く考えていない」と全面否定した。ところが直後の1月6日には自民党の佐藤勉国対委員長が、「衆参同日選は全くないという話ではない」と発言。その3日後には自民党の二階俊博総務会長が、「安倍首相が衆参同日選をしたいと思っているのは間違いない。そう思っているのだから同日選があるかも知れない」と何とも思わせぶりな発言をしている。一方、首相は1月10日のNHK番組で「一部野党の協力を得て、参院で憲法改正の発議に必要な3分の2の議席を目指す」と発言するや、1月21日には参院審議の中で、「いよいよどの条項について憲法を改正すべきか、改正論議も現実的な段階に移ってきた」と更に踏み込んだ。そして2月3日の衆院予算委員会では、遂に「国防軍」設置を盛り込んだ自民党憲法改正草案を引用しつつ、9条2項(戦力不保持)改正の必要性にまで言及したのだ。
 これら一連の首相発言をどう読み解くか。筆者なりの解釈を以下に述べてみたい。衆参同日選に関しては、多分に政府と連動した自民党側の陽動作戦であり、野党の動揺や分断を図ろうとしたものであろう。首相自身は与党に加えて、政権に擦り寄るおおさか維新の会など“エセ野党”勢力を抱き込めば可決できる、とかなりの確信を持つに至っていることはほぼ間違いない。問題は後段の国民投票に対する民意である。首相の不安は、改憲に向き合う国民の意志が奈辺に在るのか、そこが掴みかねているからこそ、今回、自らの積極姿勢を示してそれへの国民の反応を探ろうとしたのではなかったのか。国民投票でもし敗れるようなことがあれば、自己の政権時代に改憲することは絶望的となるのを恐れているからだ。
 私たちの今回の署名活動が、想定以上の多数を結集できれば、参院選での野党協力と勝利に大きな弾みとなるばかりでなく、不幸にして国民投票に持ち込まれたとしても、否決の確固とした礎になることは疑いない。
 さあ、私たちの一筆で国の命運を決する意志を示そうではないか。

くわしく

【短信】北朝鮮が衛星打上げ    
日本政府は過剰な迎撃体制でミサイル防衛の存在感示す

公開日:2017.07.24

 2月9日、北朝鮮は地球観測衛星「光明星(クァンミョンソン)4号」を「光明星」ロケットで打ち上げ、地球周回軌道に投入するのに成功したと発表した。軌道上を何らかの物体が周回していることは、米国当局によっても確認されている。
 日本は韓米とともにこれを非難、イージス艦3隻を東シナ海と日本海、PAC3を沖縄本島、先島諸島、首都圏の計7か所に配備し監視・迎撃態勢をとった。
 国連安保理決議は、北朝鮮に対して「弾道ミサイル技術を使用したいかなる発射」をも禁じている。これは核兵器開発との関係を考慮して導入された禁止条項である。北朝鮮は国際海事機関(IMO)に衛星打上げの事前通告を行っているが、安保理決議違反の非難は免れえない。だが、予想飛行経路近辺のみならず遠く離れた首都圏にまでPAC3を配備した日本政府の対応は、ミサイル防衛(MD)の存在感を示す意図をもった、過剰反応としかいいようがない。
 もちろん、打上げ用ロケットと弾道ミサイルには技術的な共通点が多い。1月の核実験と考え合わせれば北朝鮮の視線の先に「核ミサイル能力」があることは誰も否定できない。しかし、日本市民は今一度冷静になって考える必要がある。北朝鮮が核ミサイルへの野望を抱いているとしたら、それを押しとどめられるのは外交交渉以外にはない。次号で詳報する。(田巻一彦)

くわしく

<寄稿>「北東アジア非核兵器地帯構想の実現に向けての宗教者の責務」 神谷昌道

公開日:2017.07.24

                           世界宗教者平和会議(WCRP)国際委員会
                           軍縮安全保障常設委員会
                           シニアアドバイザー 神谷 昌道

核兵器による威嚇またはその使用は、一般的に国際法とりわけ国際人道法に違反するのみならず、それが存在することすら、究極的な暴力の一形態である。また、「平和はそれぞれの宗教にとって中核をなすもの」であり、「汝、殺すことなかれ」を共通価値とする世界の主要宗教にとって、核兵器の廃絶は早期に実現されるべき共通の願いである。
 核兵器の廃絶は、一部の国々や組織のみの努力で実現するものではない。その信念に基づいてWCRP日本委員会は、終戦、被爆そして国連創設70年の節目であった昨年、核兵器の廃絶という目的を共有する他団体とのパートナーシップの拡大に努めた。例えば4月21日に東京で、核軍縮・核不拡散議員連盟(PNND)日本と円卓会議を持ち、『核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)日本ならびに世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会による核兵器廃絶に向けての共同提言文』を発表した。8月6日に広島市で、国内外の諸宗教連合体と国際シンポジウムを開催して、『原爆投下70年シンポジウム「二度と戦争を起こさない」―核兵器廃絶をめざして―』と題する共同声明をとりまとめた。11月6日に長崎市で、パグウォッシュ会議国際評議員数名を招待して科学者と宗教者の対話集会を開催。その際に『核兵器廃絶に向けた科学者と宗教者との対話集会~世界パグウォッシュ会議をうけて~』共同アピール文を発出した。さらに、核兵器の威嚇または使用に関する勧告的意見が国際司法裁判所によって示されてから20年となる本年7月に京都において、WCRP国際委員会・軍縮安全保障常設委員会が円卓会議を開催予定である。
 現在、WCRP日本委員会は、北東アジア非核兵器地帯構想の実現、核兵器の非人道性と非正当性の焦点化、さらには核兵器禁止条約の締結を優先課題と位置づけて核廃絶に取り組んでいる。北東アジアの非核化への具体的行動の一つが、今回の声明文である。
 WCRPのような国際諸宗教組織が持つ強みは、国境を越えて連帯を図ることができ、一国の利益を超越して公共善の実現のために幅広いアドボカシー活動を展開できることである。WCRPには朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の宗教者も参画しており、第9回WCRP世界大会(2013年11月オーストリア・ウィーンで開催)と第8回アジア宗教者平和会議(ACRP)大会(2014年8月韓国・仁川で開催)において、宗教者による「六カ国協議」を開催した実績もある。北東アジアの平和と安全に向けて、WCRPやACRPに課せられた責務は重大である。
 今回の声明文では、「核の傘」からの脱却、つまり核兵器に依存しない日本の安全保障政策の実現を訴えている。宗教者もまたその困難さを理解しつつも、唯一の被爆国として核廃絶を求める日本の訴えに信憑性を持たせるという意味において、それは避けて通れない道であると考えている。今回の声明文は、その課題に立ち向かう宗教者の覚悟の現れと言えるかもしれない。
 今後、広く日本の宗教界に対して声明文の呼びかけ人と賛同人を募る動きが活発化する。また、その進展に合わせて、シンポジウムや対話集会などの具体的プログラムが実施される可能性もある。本年9月26日を一つのめどに署名が取りまとめられ、日本政府や国連へ届けられることになろう。北東アジア非核兵器地帯の実現に向けての今後の宗教界の動向に注目したい。

1 第9回WCRP世界大会で採択された『ウィーン宣言』の一節を引用。全文は、WCRP日本委員会ウェブサイト内特設ページ(http://saas01.netcommons.net/wcrp/htdocs/wa9/)参照。
2『共同提言文』は、WCRP日本委員会ウェブサイト(http://saas01.netcommons.net/wcrp/htdocs/)参照。
3 『共同声明』は、同上ウェブサイト参照。
4 「共同アピール文」は、同上ウェブサイト参照。
5 諸事情により、前者の会合ではロシア代表が、後者では北朝鮮代表が欠席した。
6 毎年9月26日は、国連が定める「核兵器全廃のための国際デー」である。

くわしく

<資料>宗教者声明 「私たち日本の宗教者は、日本が『核の傘』依存を止め、      北東アジア非核兵器地帯の設立に向かうことを求めます」

公開日:2017.07.24

【2016年2月12日発表 宗教者声明】

 核兵器は、そのいかなる使用も壊滅的な人道上の結末をもたらすものであり、私たちの宗教的価値、道義的原則、そして人道法に反します。従って、宗教者にとって核兵器の禁止と廃絶は、神聖な責務であります。
 「核兵器のない世界」実現のためには、すべての国が核兵器に依存しない安全保障政策をとる必要があります。被爆を経験した日本は尚更であり、一日も早く「核の傘」から出ることが求められます。北東アジア非核兵器地帯の設立は、日本の安全を確保しつつ「核の傘」から出ることを可能にする政策です。それは、「核兵器のない世界」に向けた国際的気運を高めるとともに、深刻化した北東アジア情勢を打開する有効な方法でもあります。
 2013年7月、国連事務総長の軍縮諮問委員会が「事務総長は、北東アジア非核兵器地帯の設立に向けた適切な行動を検討すべきである」との画期的な勧告を行いました。また、2013年9月の国連ハイレベル会合において、モンゴルのエルベグドルジ大統領は、北東アジア非核兵器地帯の設立への支援を行う準備があると表明しました。さらには、米国、オーストラリア、日本、韓国などの著名な研究者たちが北東アジア非核兵器地帯設立への包括的なアプローチを提案しています。
 私たち日本の宗教者は、北東アジア非核兵器地帯の設立を支持し、これによって日本が非人道兵器である核兵器への依存から脱し、被爆国として積極的に「核兵器のない世界」実現に貢献することを求めます。
呼びかけ人(50音順)
 小橋 孝一(日本キリスト教協議会議長)
 杉谷 義純(元天台宗宗務総長、世界宗教者平和会議軍縮安全保障常設委員会委員長)
 高見 三明(カトリック長崎大司教区大司教)
 山崎 龍明(浄土真宗本願寺派僧侶)

くわしく

【宗教者キャンペーンが発足】核の傘ではなく非核兵器地帯を

公開日:2017.07.24

 16年2月12日、日本の宗教指導者4氏の呼びかけで、「北東アジア非核兵器地帯の設立を求める宗教者キャンペーン」が発足した。
 呼びかけ人は、小橋孝一(日本キリスト教協議会議長)、杉谷義純(元天台宗宗務総長、世界宗教者平和会議軍縮安全保障常設委員会委員長)、高見三明(カトリック長崎大司教区大司教)、山崎龍明(浄土真宗本願寺派僧侶)の各氏。協賛は世界宗教者平和会議日本委員会(WCRP)である。ピースデポは事務局としてキャンペーンを支援する。
 今後は以下に掲げる「宗教者声明」への賛同を拡大し、16年9月26日の国連核兵器廃絶国際デ―を目途に第1次集約とし、日本政府への提出などを行う計画である。
 WCRP国際委員会・シニアアドバイザーの神谷昌道氏からは、キャンペーン発足にあたっての寄稿をいただいた。次ページに掲載する。(編集部)

くわしく

Ⅲ 「公開作業部会」準備会議資料(抜粋訳) 【資料3】暫定議題

公開日:2017.07.24

 (国連公開作業部会の公式サイトにリンクあり)
暫定議題
多国間核軍縮交渉を前進させる
公開作業部会※
1.開会
2.議長の選出
3.議題の採択
4.作業計画
5.多国間核軍縮交渉を前進させるための:
(a) 核兵器のない世界の達成と維持のために締結される必要のある具体的で効果的な法的措置、法的条項および規範
(b) 多国間核軍縮交渉の前進に寄与するであろう他の諸措置についての勧告。諸措置には以下を含むが、それに限定されない。
(i) 既存の核兵器に伴う危険性に関連した透明性措置
(ii) 事故、過誤、無認可によるあるいは意図的な、核兵器爆発の危険性の低下および除去のための諸措置
(iii) 核爆発がもたらす多岐にわたる人道上の結末の複雑性や、それらの相互関連性に対する認識や理解を促進するための追加的措置
6.総会第71会期への報告
7.その他

※原注 国連総会決議70/33を受けて設置された。

くわしく

Ⅲ 「公開作業部会」準備会議資料(抜粋訳) 【資料2】1月28日会合の報告

公開日:2017.07.24

 (国連公開作業部会の公式サイトからの抜粋)
(前略)
 運営会議は、核軍縮交渉を前進させるための公開作業部会の議長にタイのタニ・トングファクディ大使が指名されたことを歓迎した。運営会議は、指名された議長による、公開の、透明で、包括的、包含的な方法で作業部会の作業を指導する、との意向について、支持を表明した。また、運営会議での検討のために提出された暫定議題について、概ねの合意がなされた。
 以下に示すような作業部会の暫定日程表が提案された。
● 2月22日から26日まで
● 5月2日から4日まで、および9日か ら13日まで
● 8月22日の週の3日間
 作業部会は総会の下部機関であり、決議70/33に記載の任務に照らして必要な変更を加えた国連手続規則に則って作業を行う。
(後略)

くわしく

 Ⅲ 「公開作業部会」準備会議資料(抜粋訳)【資料1】 国連事務総長事務所による 1月28日会合の召集状

公開日:2017.07.24

 (国連公開作業部会の公式サイトにリンクあり)
 国際連合事務総長より、国連加盟国およびオブザーバー国の常駐代表に対しご挨拶申し上げるとともに、謹んで、2015年12月7日に総会によって採択された「多国間核軍縮交渉を前進させる」と題する決議70/33に関してお伝えします。
 同決議の主文第2、3、5節に基づき、総会は以下を行うことを決定しています。

 「2. (略)核兵器のない世界の達成と維持のために締結される必要のある具体的で効果的な法的措置、法的条項および規範について、実質的に議論する公開作業部会を開催することを決定する。」、

 「3. 公開作業部会は、多国間核軍縮交渉の前進に寄与するであろう他の諸措置についても、勧告の策定に実質的に取り組むことを決定する。諸措置には以下を含むが、それに限定されない。(a)既存の核兵器に伴う危険性に関連した透明性措置、(b)事故、過誤、無認可によるあるいは意図的な、核兵器爆発の危険性の低下および除去のための諸措置、(c)核爆発がもたらす多岐にわたる人道上の結末の複雑性や、それらの相互関連性に対する認識や理解を促進するための追加的措置。」、
(略)

 「5. 公開作業部会が2016年にジュネーブで、国連総会の下部機関としてその手続き規則に則り、最長15日間の作業日にわたり、利用可能な時間枠の中で、これまで確立された慣行の通り国際機関や市民社会代表の参加や貢献を伴って招集されること、ならびに可能な限り早期にその組織準備の会合を開くことを決定する。」

 こうした背景のもと、事務総長は謹んで、同作業部会の運営会議が2016年1月28日午前10時に、国連ジュネーブ事務所パレ・デ・ナシオン第19会議室で開催されることをお知らせし、すべての国連加盟国とオブザーバーに対し、参加を呼びかけます。
 ジュネーブに本拠地がなく、国連ジュネーブ事務所に登録を行っていない代表団の氏名は、できるだけ早く作業部会事務局まで連絡してください。宛先は以下の通りです。

多国間核軍縮交渉を前進させる公開作業部会 事務局
軍縮問題事務所ジュネーブ支部
United Nations Office at Geneva, Palais des Nations, room C-113, CH-1211 Geneva 10, Switzerland
ファックス: (+011-41)22-917-0054
Eメール:oewg-ndn@unog.ch
ウェブサイト:www.unog.ch/oewg-ndn
 
 事務総長はまた、シェンゲン圏に立ち入るためにビザが必要な参加者はすべて、出発予定日前にできるだけ早くビザを申請するよう、お勧めします。申請の基準、要件、およびスイスへのビザ申請手続きに関する情報は以下を参照ください。http://www.bfm.admin.ch/content/bfm/en/home/themen/einreise/merkblatt_einreise.html.
 
 公開作業部会の準備に関わる詳細については、追って事務局より各代表部へ連絡します。情報はすべて、公開作業部会ウェブサイトから入手できます。
 国連事務総長はこの機会に、国連加盟国・オブザーバー代表各位に対し、重ねて敬意を表するものです。
2016年1月14日

くわしく

Ⅱ 「公開作業部会」参加に関する外務大臣宛要請書 ―ピースデポ

公開日:2017.07.24

2016年2月16日 
NPO法人ピースデポ

【要請事項】
 標記国連公開作業部会(OEWG)に関し、次のことを要請します。
(1) OEWGに積極的に参加し、核軍縮議論の深化と前進に貢献すること。
(2)「核軍縮を実現するための具体的で効果的な法的措置」の概念を幅広く理解し、議論に加わること。
(3) 13年「ビルディング・ブロック」アプローチ作業文書を生かすとすれば、今回のOEWGの目的にそって改訂し、提案すること。
(4) 諸提案を同時並行に追求することを許す合意形成をリードすること。
(5) 日本自らが核兵器依存から脱却する方向を明確にし、その立場からの発言や貢献を行うこと。

§1.はじめに

 日本政府は、今年1月にジュネーブに設置され2月から8月の3会期(15日間)にわたり議論が行われる上記公開作業部会(以下「OEWG」)への参加を、検討中であると聞いております。
 OEWGには、第70回国連総会決議「多国間核軍縮交渉を前進させる」(A/RES/70/33)によって、次の2つのマンデートが与えられています。
1) 核軍縮を実現するための具体的で効果的な法的措置、とりわけ核兵器のない世界の達成と維持のために締結される必要のある具体的で効果的な法的措置、法的条項および規範について、実質的に議論する。(決議本文第2節、これを「第1マンデート」と呼びます)。
2)多国間核軍縮の前進に寄与するであろう、他の諸措置についても、勧告の策定に取り組む。(例)現存する核兵器に関わるリスクに関連する透明性措置;事故、過誤、無認可によるあるいは意図的な核兵器爆発の危険性を低下、除去するための措置;核爆発がもたらす人道上の結末に関する認識や理解を促進させるための追加的措置。(同第3節)。
 さらに、OEWGには「実質的作業と合意された諸勧告に関する報告書を提出すること」が求められています(第7節)。同報告書は国連事務総長を通じて軍縮会議(CD)、国連軍縮委員会(UNDC)及び2018年までに開催される、核軍縮に関するハイレベル国際会議に送付されます(第8節)。
 マンデートの中で特に重要なのが第1マンデートです。「法的拘束力のある核兵器の禁止」の希求はもはや押しとどめることのできない世界の趨勢であり、その岩盤には核兵器使用による「壊滅的な人道上の結末」への懸念が存在しています。
 私たちは、唯一の戦争被爆国であり核軍縮において大きな国際的影響力を持つ日本が、公開作業部会に参加し、積極的かつ主導的な役割を果たすことを願い、この要請書を提出します。

§2.日本がOEWGに参加することの意義

 核軍縮議論の停滞の中で明確になってきているのが、<核兵器保有国・依存国>と<核兵器に依存しない国々>との間に深い溝が存在するという図式です。
 総会決議A/RES/70/33の投票結果は次のとおりでした。
賛成:138; 反対:12;  棄権:34
 138か国という圧倒的な多数(全加盟国の3分の2以上)が賛成した一方、5核兵器国はすべて反対、核兵器依存国(日本、韓国、オーストラリア、NATO諸国など)は反対もしくは棄権しました。
 5核兵器国は、第1委員会において連名の「反対理由」を発表し、核兵器国の支持や参画のない法的文書によって核兵器を廃絶することは不可能である、この決議は安全保障上の考察を無視しているなどと、決議を批判しました。
 この図式を視野に置きつつ、私たちはOEWGに日本が参加し、積極的な貢献をなすことには、次のような大きな意義があると考えています。
1)「『核兵器のない世界』の実現に向け、国際社会の取組を主導していく」という従来からの政府の方針からみて、不参加はありえない選択だと考えます。
2)核兵器使用による壊滅的な人道上の結末を誰よりも知っている戦争被爆国の歴史的使命として、具体的提案と議論によって核兵器のない世界の実現に貢献する絶好の機会です。
3)<核兵器国保有国・依存国>と<核兵器に依存しない国々>の間に「橋をかける」ことを旨としてきた日本の政策の蓄積を十全に活かしたユニークな貢献をすることができます。
4) 日本政府が、すでに平均年齢が80歳を超えた被爆者の悲願に応えるための回答を準備する場となります。
5) 日本が積極的に関与し議論に加わることによって、会議の成果の正統性と説得力が高められることを、国際社会は期待しています。

§3. 2013年から16年へ―目に見える前進を

 2013年に開催されたOEWGのマンデートは「核軍縮交渉を前進させるための諸提案を作り出す」ことでした。これに対して16年のOEWGは「核兵器のない世界の達成と維持のために締結される必要のある具体的で効果的な法的措置、法的条項及び規範について、実質的に議論する」ことをマンデートとしています。従って今回のOEWGに日本が参加するにあたっては、次のような観点から、13年OEWGに提出した「ビルディング・ブロック」作業文書を基礎にして今回のマンデートに合致した提案を行うことが考えられます。その場合、次のような要件が加わることが求められると思います。
1)核兵器国、日本のような核兵器依存国などすべての国が「核兵器のない世界」の平和を追求する準備をする必要があることを前提にした「ビルディング・ブロック」を構想すること。
2)「ビルティング・ブロック」アプローチが、ベンチマークと時間軸(固定的である必要はない)をともなった提案になること。

§4.提案されている「法的枠組み」の 諸オプションの整理

 ピースデポは、核兵器を禁止し廃棄するための「効果的な諸措置」を含む法的枠組みの交渉開始を追求するという観点から、「核兵器禁止のための法的枠組みの諸オプション」に継続的に関心を注ぎ、諸文献の調査を通して概念と課題の整理を行ってきました。
 別添の「<表>核兵器禁止・廃棄の法的枠組みの諸オプション」※に、以下の5つのオプションの概要、利点と課題をまとめました。この整理は、OEWGにおいて「法的枠組み」を検討する際の指針として有用であると考えています:
オプション1 包括的核兵器禁止条約
(Nuclear Weapons Convention:NWC)
オプション2 簡易型核兵器禁止条約
(Nuclear Weapons Ban Treaty:NWBTまたはBan Treaty)
オプション3 「枠組み合意」アプローチ
(A Framework Agreement Approach)
オプション4 「ビルディング・ブロック」アプローチ(Building Blocks Approach)
オプション5 混合型組み合わせ
(A Hybrid Arrangement)
 

§5. OEWG参加に関する要請事項

 私たちは、次のとおり要請します。

(1) OEWGに積極的に参加し、核軍縮議論の深化と前進に貢献してください
①「『核兵器のない世界』の実現に向け、国際社会の取組を主導していく」という政府の従来の方針にたつならば、不参加はありえない選択だと考えます。
②OEWGは、核兵器使用による壊滅的な人道上の結末を誰よりも知っている戦争被爆国として、具体的提案と議論によって核兵器のない世界の実現に貢献する絶好の機会です。
③<核兵器国保有国・依存国>と<核兵器に依存しない国々>の間に「橋をかける」ことを旨としてきた日本の政策の蓄積を十全に活かしたユニークな貢献が期待できます。
 OEWGは、日本政府が、すでに平均年齢が80歳を超えた被爆者の悲願に応えるための回答を準備する場ともなるでしょう。日本が積極的に関与し議論に加わることによって、会議の成果の正統性と説得力が高められることを、国際社会は期待しています。

(2)「核軍縮を実現するための具体的で効果的な法的措置」を幅広く理解し、議論に加わってください
 核兵器を禁止する直接的な法的枠組みが存在しない現状を、核兵器保有国は「核兵器は合法的である」ことの証左であるかのようにとらえ、禁止のための議論を回避しています。第1マンデートにおける「具体的で効果的な法的措置」には、適切に改訂されるならば、13年に日本が提案した「ビルディング・ブロック」アプローチも含まれます。是非、「具体的で効果的な法的措置」の概念を幅広く理解して議論に参加してください。世界から集まるNGO、市民、専門家の意見に耳を傾けてください。

(3) 13年「ビルディング・ブロック」アプローチ作業文書を生かすとすれば、今回のOEWGの目的にそって改訂し、提案してください
 13年OEWGに、日本がオーストラリア、ベルギーなど11か国とともに提出した作業文書「核兵器のない世界に向けたビルディング・ブロック」(2013年6月27日)は、兵器用核分裂性物質の禁止、CTBT発効、核実験モラトリアム、核兵器保有国による消極的安全保証等、核兵器の総数の削減、安全保障における核兵器の役割の低減、さらには非核兵器地帯の強化・新設などを例示しながら、「必要性も可能性もある」行動を列挙しています。この文書を生かすとすれば、今回のOEWGの目的にそって改訂し、提案してください。改訂にあたっては、例えば次の事項に留意してください:
①ベンチマークや時間軸を明示すること。「中間的目標」であっても時間軸への言及が必要と思われます。たとえば、核兵器の総数の削減においてそれが求められます。
②「非核兵器地帯の強化」の項目には、「北東アジア非核兵器地帯の設立」が明記されるべきです。
③「核兵器の役割の低減」は、②との関連において日本自身が核兵器依存から脱する誓約と行動によって裏うちされるべきです。
 現状のままの「作業文書」では、「ステップ・バイ・ステップ(漸進的)アプローチ」と同様に、核保有国などによる現状維持のための口実になりかねません。

(4) 諸提案を同時並行に追求することを許す合意形成をリードしてください
 先に示した「法的枠組み」の5つのオプションは、いずれも現段階では、その態様に関する確定的な共通認識は存在しません。したがって、OEWGには、特定のオプションを排他的に採用するよりもむしろ、議論を通して各オプションの整理が進み、理解が深まり、より良い提案になってゆくことを促進する役割が期待されます。
 ベンチマークや時間軸によって補強・改訂された日本の「ビルディング・ブロック」作業文書はその材料の一つとなりうるでしょう。

(5) 日本自らが核兵器依存から脱却する方向を明確にし、その立場からの発言や貢献を行ってください
 補強・改訂された「ビルディング・ブロック」作業文書の提案を含め、OEWGにおける日本の主張が、信頼性と説得力を持つためには、日本自身が核兵器に依存しない安全保障政策に転換する準備に入るとの誓約が、OEWGにおいて示されることが必要です。
 第70回国連総会で採択された日本提案の決議「核兵器完全廃棄に向けた新たな決意のもとでの団結した行動」(A/RES/70/40)の主文第10節は次のようにいっています。「関係する加盟国が、核兵器の役割の重要性や一層の低減のために、軍事・安全保障上の概念、ドクトリン、政策を継続的に見直していくことを求める。」
 日本が、OEWGにおいて自らこの見直し過程を断固として進めると表明し、その立場からの発言や貢献を行えば、同じように核兵器に依存している他の国々に大きな勇気を与え、核兵器に依存しない国々は日本の発言に対する信頼を高めるでしょう。
 北東アジア非核兵器地帯構想の協議を呼びかけることは、その具体的な一歩になるでしょう。

※編集部注 「別添」の〈表〉は、ピースデポ・ウェブサイト内に掲載のPDFファイル<www.peacedepot.org/media/pcr/160216_mofayousei_oewg.pdf>の最終ページを参照。

くわしく

【特集:日本政府は核軍縮のための国連「公開作業部会」の前進に貢献すべき歴史的使命がある】  Ⅰ 参議院「国際経済・外交に関する調査会」参考人意見(口述原稿) ―梅林宏道

公開日:2017.07.24

2月22~26日を皮切りに、ジュネーブで核兵器のない世界の実現と維持に必要な法的措置などを実質協議する国連公開作業部会(OEWG)会議が始まる。この会議が実現した背景と歴史的な意義、そして日本は政治レベルの決定を伴う政策転換を行いつつ、この会議に被爆国として貢献すべきという主張を、本誌主筆・梅林宏道が参議院調査会で参考人として意見陳述を行った(2月17日)。その口述原稿を第Ⅰ部に掲載する。その前日、ピースデポは外務大臣に日本の参加と貢献を促す要請を行った。要請書全文を第Ⅱ部に掲載する。2月17日、日本政府は参加を決定した。第Ⅲ部に1月28日に開催されたOEWG準備会議資料の抜粋訳を掲げる。


第Ⅰ部

参議院「国際経済・外交に関する調査会」
参考人意見(口述原稿)
当日の発言は必ずしも原稿どおりではありません。
実際の発言は国会議事録を参照ください。

 貴重な意見表明の機会を頂き有難う御座いました。
 私は大きくは「グローバルな核軍縮外交の現状」と、それと密接に関係して「日本の核兵器依存政策の転換の必要性」という2つの話題について意見を述べさせて頂きます。

§グローバルな核軍縮外交の現状

1.核軍縮の停滞
 グローバルな核軍縮の現状は、何よりも核軍縮の停滞によって特徴づけられます。2015年のNPT再検討会議が合意文書なしに終わったことは、それを象徴する出来事でありました。実際には、その困難はより実質的なところに現れています。
 第一に、しばらく続いていた核弾頭数の削減が停止しているという現実があります。
 まず、各国の核弾頭保有数の現状を図表11でご覧ください。現在地球上に存在する推定15,700発の核弾頭の94%を米国とロシアが保有しています。ところが、図表22に見られる通り2010年頃までは漸減していた米ロの配備戦略核弾頭数の削減は飽和状態に達し、それ以後はほとんど削減されていません。新START条約により、米ロは2018年までに配備戦略核弾頭を1550発まで減らせる約束ですが、目標は事実上すでに達成されているにも拘わらず、米ロ関係の悪化によって、その先の削減の見通しが全くありません。
 第二に、逆に米ロとも、核兵器の近代化に巨額の投資をしている現実があります。
 米国においては、今後10年に核兵器の維持と近代化に3500億ドルを費やそうとしています。これは冷戦期をはるかに超える投資です。一方、ロシアにおいては、ソ連崩壊後の遅れを取り戻すための野心的な近代化が謳われ、その結果が顕著に現れ始めています。
 詳細はレジュメ3に掲げましたので省略しますが、少なくとも2020年代半ばまでを見通し、両国とも新世代核戦力の建設を進めており、核不拡散条約(NPT)第6条で定められた核軍縮義務を誠実に履行しようとしている兆候を見ることはできません。米ロ以外の核兵器国の動向も同様です。
 さらに第三の問題点があります。それは、NPT上の核兵器国である5つの国連安保理常任理事国、いわゆるP5の核軍縮への共同意思形成がどの段階にあるか、という問題です。2009年以来、NPT義務の履行に関してP5の実務者会議がほぼ定期的に開催されてきました。しかし、5か国の会議は核兵器削減について話し合う段階のはるか手前の状態に留まっています。フランスは米ロに次いで約300発の弾頭を有し、中国は260発を有していますが、米ロとの保有量の差は大きく、両国とも米ロがまず自分たちと同レベルまで削減する責任があると強調しています。
 私の見解では、米ロのそれぞれの核弾頭が500発になる点がメルクマールになると思われます。オバマ大統領は2013年のベルリン演説で配備戦略核弾頭を約1000発まで削減可能だと発表しました。同じ頃、ジェームス・カートライト元米軍統幕副議長(2007-11年)は、米国の安全を損なうことなく500発まで削減可能と発表しました(2012年)。5か国が削減を話し合うテーブルに着くということは、画期的な意味を持ちます。核保有数を決定する根拠となる核抑止論は、相互不信の下で最悪を想定する理論ですが、削減テーブルの実現はその前提を変えることになり、大きな変化を生む可能性があるからです。

2.核軍縮のための国連公開作業部会   (OEWG)の重要性
 このような核軍縮の停滞のなかで、マルチの核軍縮外交は、新しい展開を見せています。
 2010年NPT再検討会議最終文書は、NPT文書として初めて、核兵器使用の「人道上の結末」について次のように言及しました。「核兵器のいかなる使用も壊滅的な人道上の結末をもたらすことに深い懸念を表明し、すべての加盟国がいかなるときも、国際人道法を含め、適用可能な国際法を遵守する必要性を再確認する」。これを受けて、2013年以来、核兵器の人道上の影響に関する3回の政府主催会議が開催されました。ノルウェー、メキシコ、オーストリアが開催国でした。これらの会議は、医学、環境、経済、社会などに関する事実ベースの情報や科学的知見を改めて再検討し集積する試みでありました。それらの過程で、新しい科学的知見も得られました。例えば、冷戦期において指摘されていた「核の冬」について、気象学者の最新のシミュレーションは、地域的な核戦争であっても、5年間にわたり地球上の穀物生産が10~40%低下する、いわゆる「核の飢饉」をもたらす可能性を示しました。
 これらの「人道上の結末」についての再認識は、核兵器の法的禁止への国際世論の高まりを生み出しました。
 このような経過の中で、メキシコ、アイルランド、オーストリアなどが主導して昨年12月7日、国連総会決議「多国間核軍縮交渉を前進させる」(A/70/33)が採択されました。決議は核軍縮交渉を前進させるための公開作業部会(OEWG=Open-ended Working Group)の設置を決定しました。部会に与えられた主要な任務を正確に読みますと「核兵器のない世界の達成と維持のために締結される必要のある具体的で効果的な法的措置、法的条項および規範について、実質的に議論する」という内容です。部会はジュネーブの国連本部において、2月、5月、8月の計15労働日の限度で開催されます。
 この部会は小さな始まりですが、核軍縮について「法的枠組み」を議論する初めての場となり、画期的な意味があります。
 しかし状況は複雑です。決議は賛成138、反対12、棄権34で採択されましたが、そこには意見の分岐の構造が明確に表面化しました。圧倒的多数の国が賛成したことは事実ですが、P5すべてが反対しました。バルト3国・ハンガリー・ポーランド・チェコなどNATOに加盟した東欧諸国の多くも反対しました。また、カナダ、ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギーなどNATO加盟の主要な西欧諸国とオーストラリア、日本、韓国というアジア太平洋の米国の同盟国すべてが棄権票を投じました。インドとパキスタンも棄権しました。投票の分岐の基本的な構造は明瞭です。日本が核抑止力依存の安全保障政策との整合性のために賛成できないと説明したことに現れているように、核兵器の保有国と依存国が反対もしくは棄権し、非依存国が賛成したことになります。<保有国・依存国>対<非依存国>という分岐です。

§日本の核兵器依存政策の転換の必要性

1.時代の要請
 マルチの外交努力の積み重ねの結果、やっと実現した核軍縮の「法的枠組み」の協議の場において、日本が果たすべき役割が問われています。戦時使用された核兵器の「人道上の結末」を体験した唯一の被爆国である日本が、核抑止力依存の安保政策のために「法的枠組み」の議論を回避するとすれば、日本に課せられた歴史的使命に背を向けることになります。日本はこの局面に正面から向き合い、日本の安全保障政策の核兵器依存からの脱却を構想すべきです。「法的枠組み」を巡る<保有・依存国>対<非依存国>の分岐の顕在化は、ブリッジ役を果たしうる有力な国の存在を必要としており、日本が政策転換によってその役割を果たすことができると考えます。
 日本が核抑止力に依存しない安保政策をとることを求める時代的要請は他にもあります。それは、北朝鮮が核兵器開発を合理化している論理を根本から批判し、北東アジアの安定的な非核化を実現するためには、核兵器国である米国や中国ではなく、核兵器に依存しない地域国家のリーダーシップが必要だからです。さらに、被爆者の平均寿命が80歳を超えた今、彼らの存命中に核軍縮問題における日本のリーダーシップを確立するという意味でも、現在のチャンスは、失ってはならないチャンスです。
 これは、事務レベルだけではなく、政治家レベルのリーダーシップが必要な局面であると考えます。

2.非核兵器地帯という選択肢
 中国の核実験(1964年)以来、日本の安全保障に関わる核兵器政策は<核武装>か<核の傘(拡大核抑止力)依存>かという2者択一論に支配されてきました。日本は、被爆体験に根差す強い反核世論の中で1968年に非核3原則と<核の傘>依存政策を確立し、一方でグローバルな核軍縮に努力するという政策の柱を立てました。
 しかし、非核兵器地帯を設立するという、<核武装>や<核の傘>のどちらでもなく、核兵器に依存しないもう一つの選択肢があります。非核兵器地帯は、1967年にラテンアメリカで初めて成立し、現在までに5つの地帯が国際条約によって実現している実績のある制度です(図表34)。すべての非核兵器地帯は、法的拘束力をもって少なくとも次の3要素を国際条約によって規定しています。①核兵器の不存在、②核保有国が地帯に対して核攻撃も攻撃の威嚇もしないという消極的安全保証、③条約の遵守、検証を保証する制度の確立、の3要素です。

3.北東アジア非核兵器地帯設立への包括的アプローチ
 2015年3月、私がセンター長を務めた長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)は、3年間の研究の成果として北東アジア非核兵器地帯を実現するための方法論を提言しました。そこで提案された非核兵器地帯は、スリー・プラス・スリーと呼ばれる6か国条約を基本としたものです。この構想では、3つの地帯内国家(日本、韓国、北朝鮮)が非核国として地理的な非核地帯を形成し、3つの周辺核兵器国(米国、ロシア、中国)が地帯への消極的安全保証と核兵器不配備の義務を負います。
 これによって、関係国はウィンウィンの利益を得ることができます。日本は中、ロの核の脅威から自由になり、北朝鮮は米の核の脅威から自由になり、米国や韓国は北朝鮮の核開発を押さえこみ、中国は日本の核武装の懸念を払拭できます。国際社会は、北東アジアを引き金とする核のドミノ現象を防止することができます。核兵器の役割を実質的に低減し、グローバルな核軍縮に貢献します。
 これをいかに実現するかに関して、著名な国際政治学者であり米大統領の特別補佐官を務めたモートン・ハルペリン博士が、2011年、包括的協定というアイデアを提案しました。RECNAはこれを精査し、4章からなる包括的枠組み協定を提案致しました。協定の締約国は先に述べた6か国を基礎に、章ごとに適切な国を追加します。
 4章の内容は次の通りです。
 第1章:朝鮮戦争の終結の宣言と締約国の相互不可侵・友好・主権平等などの基本原則。
 第2章:核を含むすべての形態のエネルギー開発の権利と地域安定と南北統一に資するエネルギー協力委員会の設置。
 第3章:北東アジア非核兵器地帯を設置するための条約。
 第4章:常設の北東アジア安全保障協議会の設置。第一義的には枠組み協定の履行を保証し、他の地域安保問題の協議に資する。
 RECNAの提言は、十分な事前準備の後、6か国協議をこのような新鮮なビジョンをもって再開することを提案しています。
 北朝鮮を関与させる可能性はあるのか、という疑問が必ず出されると思います。私は、可能性は十分にあると考えます。北朝鮮の最近一年の言動を振り返ったとき、幾つかの関与の窓が開いていました。2015年1月に北朝鮮は核実験の中止と米韓合同演習の中止を取り引きする提案を米国に行いました。2015年10月には、朝鮮戦争の停戦協定を平和協定にする交渉を、李沫墉(リ・スヨン)外相が国連総会で行いました。この内容は他の機会にも繰り返されています。
 安保理における制裁問題に関心が集中せざるを得ない当面の情勢では困難が続くと思います。しかし適切なタイミングが到来すると考えます。その場合においても、日本がリードして米・韓と事前の合意形成を図ることが重要であると考えています。
 ご清聴有難う御座いました。

編集部注 1 ピースデポ・ウェブサイト内に掲載。
<www.peacedepot.org/theme/nuke/statement160217-figure1.pdf>
2 同上。 <www.peacedepot.org/theme/nuke/statement160217-figure2.pdf>
3 同上。<www.peacedepot.org/theme/nuke/statement160217-resume.pdf>
4 同上。<www.peacedepot.org/theme/nuke/statement160217-figure3.pdf>

くわしく